こんにちはトロネコです。
PCオンラインゲーム、スマホゲーム、家庭用ゲームにおいても有名IPを使わない自社による完全新規タイトルを成功させるハードルは高くなっている昨今、新規開発をやめて既存タイトルに注力するゲーム会社は増えています。
そこで重要なのは
既存のオンラインゲームのDAU、MAUといったユーザーアクティビティをどうやって維持するか?そして、どうやって増やすのか?
という点です。
そこで、今回はスマホゲームに特化して
既存タイトルのDAU・MAUを改善するための「考え方」の手順について解説します。
既存ゲームのDAU・MAUを改善するための5つのプロセス
DAU、MAUを改善するための手順、プロセスについて順を追って解説します。
下記の順番で考え、対応を進めていきます。
①市場規模を整理する
「皆さんが開発、運営しているPCゲーム、スマホゲームを遊んでくれるターゲットユーザーの市場規模ってどのくらいですか?」
「50万人?100万人?300万人?」
「もし300万人だとしたら、皆さんが開発、運営しているゲームにおいて、その市場規模が存在するという証拠は何ですか?」
まず市場規模を改めて整理しましょう
ゲーム開発段階、ゲーム配信前にマーケティング戦略で「市場規模」は明確になっているはずです。なので、すぐに数字と、その根拠も出せるはずです。
もし、皆さんが開発運営しているゲームを遊んでくれるユーザーの市場規模がわからない状態でゲーム事業をしているなら、DAU、MAUは改善できませんし、改善できるとしても、正解を見つけるまで無駄な時間を費やしてしまいます。
もし市場規模がわかっていないなら、今からでいいので整理しましょう。
ここでの市場規模というのは下記を指します。
・ユーザーを奪い合う直接競合するベンチマークタイトルの市場規模
・ベンチマークタイトルの中でも獲得余地があるユーザー市場規模
・市場調査などから算出されたユーザーの中でも「遊びたい」とポジティブな意向を示したセグメント
つまり、このゲームの存在、魅力を伝えれば高い確率でゲームを遊んでくれる可能性のあるユーザーが市場規模に相当します。
ここでの市場規模に下記は楽観的、かつ絞りきれていないので該当しませんので注意してください。
・ゲーム全体市場からの算出
・市場調査などから算出されたユーザーの中でも「面白そう」くらいのゆるい粒度で算出された市場規模
・年齢、性別、職業だけによる抽出
・ゲームジャンル、ゲームコンセプトが近い他社タイトル
・IPタイトルの場合、漫画、小説、アニメ視聴者
好きなゲームジャンルだからといって、皆さんのゲームをプレイする決め手にはなりませんし、IPを使ったゲームタイトルの場合、そのIPの漫画を読んでいたファンだからといってゲームを遊ぶわけではありません。
もう少し踏み込むと
このゲーム事業にとって重要な顧客になってくれるターゲットユーザーの市場規模を整理します。
②ゲームアプリのプロダクトフェーズを整理する
今回は既存タイトルのDAU、MAUを改善することが目的です。
既存サービスタイトルの話なので、すでに半年、1年、3年・・・・しばらく期間運営されているゲームになります。
ここでのポイントは2つあります。
・運営が必要なオンラインゲームはサービス開始からプロダクトのフェーズがどんどん変化する
・配信日にプレイ開始したユーザーと、1年後にプレイ開始したユーザーは属性が異なる
そこで、今、皆さんが運営しているゲームが、どのフェーズにいるのか?
①で算出した「市場規模」の数字を踏まえてイノベーター理論で分析します。
イノベーター理論はこちらです。
イノベーター(革新者)2.5% | 誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 情報に敏感、自ら情報収集、良いとおもったら購入 |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 既に話題になっている商品を購入。クチコミに影響を受けやすい |
レイトマジョリティー(後期記追随者)34% | 流行には懐疑的だが周囲の半分以上が支持している「これは間違いない!」状態になると安心して行動する |
ラガード(遅滞者)16% | 保守層。新しい物に興味がない人 |
①で算出した「ターゲット市場規模」が100万人とします。
現在、50万人とれているとします。
そうするとイノベーター理論は市場全体に対するパーセンテージが明確に決まっているので50万人獲得している状態は「アーリーマジョリティ」付近に現在位置していることがわかります。
アーリーマジョリティの特徴としては
「既に話題になっている商品を購入。クチコミに影響を受けやすい」
というものがあるので、これから新規ユーザーを獲得したいなら、アーリーマジョリティ以降のユーザー属性を踏まえたアプローチが必要になります。
イノベーター理論については当サイトでも解説していますので参考にしてください。
③DAU、MAUを改善するためのターゲットユーザーを設定する
DAU、MAUは3つのユーザーから構成されています。
DAU = 新規ユーザー+既存ユーザー+復帰ユーザー
多くの現場では次のようなケースが見られます。
新規ユーザーをとってDAUをあげよう
離脱ユーザーを復帰させてDAUをあげよう
これは間違っているわけではないのですが、考えて欲しいのは
「現在のプロダクトフェーズと、残存市場規模を踏まえて新規ユーザーってとれる余地あるの?」
「離脱ユーザーを復帰させても、そもそも離脱した原因は改善されているの?(また離脱するよ)」
「現在のプロダクトフェーズ、残存市場を踏まえて新規ユーザー獲得、離脱ユーザーを復帰させても、それって獲得するだけの価値があるの?」
ということです。
そして、理解して欲しいのは
「既存ユーザーはずっとプレイし続けてくれた精鋭ユーザーであり、現在のそのゲームタイトルを支えているユーザーであり、離脱せず遊んでくれてきたという事実は、これから獲得する新規ユーザー、離脱ユーザーと比べても何倍も価値があるよ」
ということです。
このようなことを考えながら、ゲームのプロダクトフェーズと残存市場を踏まえた上でDAU、MAUを改善するために効果的なターゲットユーザーを決めます。
④ターゲットユーザーの想定される離脱原因を洗い出す
DAU、MAUを改善するためのターゲットユーザーの選定ができたら、そのユーザーがゲームを辞めてしまう、辞めてしまった離脱要因を洗い出します。
この離脱要因の洗い出しはちょっと複雑です。
既存ユーザー × プレイ開始時期 × プレイ経過日数
既存ユーザーもどんどん辞めていきます。現在プレイしているユーザーを既存ユーザーとしていますが、でも既存ユーザーは離脱ユーザー予備軍なのです。
よって既存ユーザーが離脱する際の原因を洗い出します。
既存ユーザーもゲーム配信日直後からプレイしているユーザーと、半年後に入ってきたユーザーではユーザーの質は異なりますし、プレイ経過日数によっても変化します。
どこユーザーをターゲットにするかによって、離脱要因も変化しますので洗い出しましょう。
新規ユーザー × プロダクトフェーズ
これから新規ユーザーを獲得してDAUを改善しようと思うなら、イノベーター理論によるプロダクトフェーズに基づく、これから獲得する新規ユーザーの属性に合わせた離脱要因を洗い出します。
配信日当日に獲得した新規ユーザーと
配信からしばらく経過したプロダクトフェーズに基づく新規ユーザーでは離脱要因は同じではありません。
復帰ユーザー × 離脱時期
離脱ユーザーを復帰させてDAU、MAUを改善しようと考える場合は、離脱したユーザーがいつ離脱したのか?離脱時期によって離脱要因が異なります。
配信直後day1で離脱したユーザーと
day60で離脱したユーザーでは離脱理由は全く異なります。
day経過による一般的な離脱要因(参考)
参考まで一般的なゲームで考えられる典型的な離脱要因について簡単に列挙してみました。
day経過によってユーザーの離脱原因は変化します。皆さんのゲームタイトルも、どのユーザーをターゲットにするか、そしてゲームのプロダクトフェーズなども踏まえて離脱原因を洗い出してみてください。
↓こちらは皆さんが検討協議する上での叩き台として使っていただくための参考までの一例です
day1 | ・ダウンロード、ローディングなど仕様によるもの
・ゲームが期待したものと違う ・チュートリアル ・遊び方がわからない、操作がわからない ・負ける、勝てない ・ガチャが外れた |
初期離脱(低次の離脱) |
day3 | ・負ける、勝てない
・プレイしたらどんな未来、楽しさがあるのかわからない |
初期離脱(低次の離脱) |
day7 | ・プレイしたらどんな未来、楽しさがあるのかわからない
・お金の有無に関係なく課金する必要性、価値を感じない |
ゲーム内容に対する離脱 |
day14-day30 | ・コンテンツ不足、カンスト、ゲーム内容の飽きなど
・このゲームを続けていくことに対する不安や不満 |
ゲームの将来に対する離脱 |
day90-day180-day360 | 同上+時間経過による不安、不満、不信感の増加、競合タイトル出現 | ゲームの将来に対する離脱 |
⑤優先順位と対応スケジュールを決める
DAU、MAUを改善するためのターゲットユーザーを決めて
さらにそのユーザーの離脱原因が整理できたら
解決する離脱原因の優先順位と、対応スケジュールを決めます。
全ての離脱原因を解決することは「実現性」「期待効果」「時間」「お金」などの制約において不可能ですので方針を決めます。
このプロセスを踏むことで「穴の空いた水漏れするバケツ状態」の「穴」を塞ぎ、健全なゲーム運営に持っていくことができます。
DAU、MAU改善スピードを加速させる4つのテクニック
ここまでのプロセスを踏むことで、皆さんが運営する既存ゲームタイトルは「穴の空いた水漏れするバケツ状態」から、「穴を埋めた状態」に近づきました。
でも、これをやっただけでは長期的にDAU、MAUは改善するのですが短期的、中期的にはDAU、MAUはわかりやすいレベルで改善しません。
お金も時間も余裕があるゲーム会社ならまだしも、猶予があまりないゲーム会社は待っていられないですよね
そこでDAU、MAUの改善スピードを加速する「テクニック」をプラスします。
この部分が抜けているゲーム会社も多いので注意してください。
①直感的に理解できる「ビジュアル的訴求」をプラス
水が漏れ続けているバケツの穴を塞ぐという作業は、ユーザーにとっては、ゲーム配信直後から当然の如くやっておくべき「当たり前のこと」に過ぎません。
「当たり前のこと」を改善するのは大切ですし、一部既存ファンからは評価されますが、辞めてしまったユーザーを振り向かせるのは困難です。
そこで、誰でもわかる、理解できる、気になってしまう「改善」「アップデート」「進化」をプラスします。
わかりやすいビジュアル的な訴求をセットで仕掛けるというわけです。
②ユーザーの期待値、または可処分時間がとれるタイミングに設定
その上で、ユーザーの期待値、可処分時間が取れるタイミングに仕掛ける設計をします。
例えば下記のようなタイミングはユーザーの期待値、可処分時間が獲得しやすいです。
・周年タイミング(期待値)
・一般的な商戦期タイミング(何かやってくれるという期待感)
・GW、年末年始、連休など学校、職場が休みのタイミング(可処分時間)
③訴求軸、メッセージをシンプル、かつ明確にする
ターゲットユーザーも設定したし、離脱要因も解決したし
新しいリニューアル感あるわかりやすいビジュアル訴求も作ったし
周年タイミング、年末年始といった時期も設定できたし・・・・
色々やればやるほど「伝えたいこと」は増えていきますが「伝えいたいこと」の多くは全部伝わりません。
よって
それを伝えることで、ターゲットユーザーにゲームをプレイしてもらえる訴求軸、メッセージを絞ります。「プレイするきっかけになる訴求軸」を考えましょう。
④プロモーションミックスで情報を伝える
ここでようやく宣伝、プロモーションが登場します。
あとはターゲットユーザーに対して適切にプロモーションで魅力、改善点、改良点、進化内容を伝えるだけです。
注意して欲しいのは
ターゲットユーザーに対して複数回、頻度を持って情報を伝えるという意識です。
TVCMだけ、インフルエンサー施策だけ、ネット広告だけ
といった単発施策の積み上げは効果がありません。
「点」ではなく「線」で考えるプロモーション設計が重要になります。
まとめ
新規タイトルのヒットのハードルが高くなっている現在において、既存タイトルをどれだけ長期運営して、利益を出し続けるか?
ゲーム会社が存続していく上で非常に重要なポイントです。
今回の内容が皆様の参考になれば幸いです。
もっと深く相談したい!という方はこちらからお仕事をご相談ください。