【家庭用スマホゲーム共通】ユーザーに対する「感謝の気持ち」って何?(ブランドマーケティングの正体)
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
ゲーム運営をやっていると、頻繁に出会う
「感謝の気持ちをこめてコイン100枚プレゼント」
といった施策を見るたびに、「感謝とは何なんだろう?」と考えさせられています。
そこで今回はゲーム事業、ゲーム運営における「感謝」とは何か?いままで踏み込んでこなかった領域に踏み込みたいと思います。
そして「感謝」の伝え方を学ぶことで、時間はかかりますが、その積み重ねによって、実はゲーム会社、企業のブランドをつくる「ブランディングマーケティング」の一部に繋がるかも!?という話もします。
ゲームプロデューサー、ゲーム運営担当者、マーケター必見です。
【目次】 ・感謝とは何か? ・感謝を伝えたい相手は誰か? ・感謝の気持ちはどうすれば伝わるのか? ・なぜ感謝の気持ちを伝えたいのか? ・感謝の気持ちを伝えるタイミング ・感謝の気持ちが伝わる事例集 ・感謝の気持ちが伝わらない事例集 ・感謝の積み重ねはブランディングマーケティングの一部 |
感謝とは何か?
突然ですが「感謝」とはそもそも何なのでしょうか?
「ありがとう」という言葉は「感謝」を伝えるシンプルな方法ですが、なぜ、「ありがとう」という言葉を発したいのか?と考えていくと、
「気持ちを伝えたいから」
というシンプルな答えにたどり着きます。
「感謝」とは「自分の気持ちを相手に伝えて、かつ適切に伝わる状態」が必要となります。
よって、相手に伝わらない「感謝の表現」は一方的な押し付けにもなるリスクがあり、相手の捉え方次第ではネガティブに働く可能性もあります。
ありがとう、ありがとう!っていつも言っているけど信じられないよ・・・
と思わせたら本来の目的を達成できません。
感謝を伝えたい相手は誰か?
ゲーム事業における感謝を伝えたい相手は誰なのでしょうか?
これは「ユーザー」である事は疑いようありません。
スマホ、家庭用、PC問わずゲームの作り手は、ユーザーに対して感謝を伝えたいと思っています。
しかし、もう少し掘り下げてみると「感謝を伝える相手」がさらに鮮明になります。スマホ、家庭用ゲーム問わず、ユーザーは次の4つに大きく分類できます。
・未プレイユーザー(=将来遊んでくれるかもしれないユーザー) |
・新規ユーザー |
・既存ユーザー |
・離脱ユーザー |
未プレイユーザーは感謝の対象としてはマッチしません。
新規ユーザーはその定義設定にもよりますが、今日インストールした新規ユーザーに対して、いきなり感謝といわれても言われた側は納得感がありません。
離脱ユーザーは何かしら問題があってゲームを辞めたわけですから、問題を先に解決してからにして欲しいでしょう。
となると、感謝を伝えたい本当の相手は「既存ユーザー」になります。
既存ユーザーこそ、DAUと売上を支え、このゲームを生かしてくれている真っ先に感謝を伝えたい相手です。
ここがブレずに鮮明になって、ゲーム開発メンバー内で目線が合っていると、既存ユーザーにどうやって「感謝を伝えるか」という価値ある議論ができます。
↓DAUを構成するユーザーについては下記参照してください
感謝の気持ちはどうすれば伝わるのか?
では「感謝の気持ち」はどうやったら相手に伝わるでしょうか?
感謝の気持ちを伝える方法(テクニック)については後ほどお話しますので、ここでは「どうやったら伝わるのか、本質的な部分」について、一言でまとめてみました。
まとめると次のようになります。
「相手の心をゆさぶり、動かし、その結果、共感させ、熱狂的なファンになる状態をつくること」
究極的にはこの状態を作り出せれば「感謝の気持ち」が伝わったといえます。
コミュニティマーケティング、ファンマーケティングに繋がる部分がありますね。
なぜ感謝の気持ちを伝えたいのか?
なぜゲーム事業において、なぜ感謝の気持ちをユーザーに伝えたいのでしょうか?
これは「感謝の気持ち」を伝える側の企業内におけるポジションによって異なります。
①単体ゲーム担当(プロデューサー、マーケター、運営ディレクター) ・そのゲームに対する熱狂的なファンを作り、事業として成功したいから ・仕事とは関係なく、ただ純粋に自分の作品(=ゲーム)を遊んでくれて応援してくれている人に気持ちを伝えたいから |
②企業のブランドマネージャー ・自社のゲーム事業対する熱狂的なファンを作り、事業として成功したいから |
ゲーム会社の場合、①のケースがほとんどで、②をしっかり戦略的にやっている会社はほぼないと思います。ただし、結果的に②が組織に染み付いた文化の中で、それっぽいことが自然にできている会社はあります。
いずれのケースにおいても
「感謝の気持ち」がうまく伝わると、その結果、ユーザーの中で「共感の連鎖」が発生し、ファンになってくれて、それら体験はユーザーの人生体験となります。
ひとつひとつは小さくても積み重なっていくと、それが企業のブランド(無形の価値)に繋がっていきます。つまり、感謝の気持ちを伝えたいという想いは「ブランドマーケティング」の一部でもあるのです。
感謝の気持ちを伝えるタイミング
感謝の気持ちを伝える上で「タイミング」は重要です。
分かりやすい事例をあげると、
「誕生日でもないのに、異性からいきなりプレゼントを貰ったら、ちょっと引きますよね?、しかも、毎日貰ったら何か裏があるのかと勘ぐってしまいます」 |
これは極端な例ですが、プレゼントをあげる上でもタイミングが重要であるように「感謝の気持ち」を伝える上でもタイミングが重要です。
ゲームの場合、わかりやすいタイミングとしては次のようなものが「感謝の気持ち」を伝えるタイミングとしては良いと思います。
・ゲーム起因による固定の記念日 | 1周年、誕生日、1000日記念などキリ番の日、特別認定された記念日など |
・何かしら達成したとき | 100万ダウンロード達成、100万本販売突破など |
・季節変動要因 | お正月、バレンタインデー、ホワイトデー、クリスマスなど |
・ユーザー起因によるもの | ユーザーの誕生日、ユーザーがプレイ開始から1周年など |
ポイントは、感謝されたタイミングにおける「受け手視点」での納得感があるか、ないかです。
ちなみにユーザー起因に関するものについては、下記の記事が参考になりますよ
ゲームアプリ運営視点での周年施策はもう古いかも!?【ユーザー視点が必要です】
感謝の気持ちが伝わる事例集
ではどうやったら「感謝の気持ち」が伝わるのか事例をあげてみましょう。
オンラインPCゲームや、スマホアプリの場合は大きく分けると、「サービス運営中」「サービス終了時」が「感謝の気持ち」を伝えたい時になります。サービス開始前は伝えても伝わりません。
家庭用ゲームのようなパッケージ販売型の場合は、「発売後」にずっと感謝を伝えていく必要があります。なぜなら続編につなげる必要があるからです。
今回はスマホゲームの事例をピックアップしてみました。ビジネス形態は異なりますが家庭用ゲームでも参考になると思います。
サービス運用中 | ・手書きイラスト(1枚絵、四コマ漫画でも可) ・作り手からの言葉(手紙、寄せ書き)人間味、想いが伝わる手法は「感謝の気持ち」を伝える上では有効です。 |
サービス終了時 | サービス終了時 ・手書きイラスト(1枚絵、四コマ漫画でも可) ・作り手からの言葉(手紙、寄せ書き)このあたりはサービス運用中と共通部分として活用できます・サービス終了後もゲームが遊べる ・サービス終了後のアイコン維持 |
スマホゲームってサービス終了と共に「まるで最初からなかったように消えてしまうゲーム」です。家庭用ゲームのように「モノ」として残りません。よって、「サービス終了後もオフラインでそのゲームが遊べるようにする」といった対応をしたゲーム会社もいました。
※スクウェア・エニックスさんのゲームでありました
また、それが難しいゲームの場合はストアから完全に消さず、サービス終了の最終アップデートで、アプリアイコンに「ありがとう」の文字を入れて、それをストアに残しているゲームもあります。
※コロプラさんの「ドラゴンプロジェクト」はこれをやっています。
サービス終了が決まると、サービス終了に向けて、ゲーム内で様々な「ありがとうイベント」を実施しますが、それらもサービス終了後には物理的に残りません。記憶だけでなく「モノ」として残す姿勢を示すことも「感謝の気持ち」や「そのゲーム会社にゲームに対する姿勢」を伝える手段として有効です。
感謝の気持ちが伝わらない事例集
一方で、感謝の気持ちが伝わらない事例もあげておきましょう。実際のところこれらをやっているゲーム会社は多いので、この機会に見直しをおすすめします。
なぜなら、じわじわとゆっくりですが、そのゲーム会社のブランドが棄損されているからです。
・使いまわしのバナー
・広告色が強い作られた感のあるクリエイティブ
・「ありがとう」の多用
・短期のゲーム運営終了
上辺だけのように感じる言葉や、行動と実態が伴わないようなケースが重なると、感謝の気持ちは伝わらなくなってきます。
特に同じゲーム会社で3か月~6か月でサービス終了するゲームタイトルが重なると、行動と実態が伴わないので、それ以外のゲームタイトルで「感謝」を伝えても、伝わりにくくなってきます。
また、わかりやすい例をあげると、毎年、年賀状を送ってくるけど、「一言コメント」もなく送ってくるような人は、気持ちが全然伝わってこなくて、むしろ嫌悪感すら感じるかもしれませんね。
まとめ:感謝の積み重ねはブランディングマーケティングの一部
言葉で伝える、視覚的なもので伝える、姿勢や態度で伝える、いずれにしても、「感謝」を積み重ねていくと、共感の連鎖を生み、そのゲーム会社のファンが作られていきます。
そうやって積み重ねたものが企業のブランドの一部を長年に渡って形成し、現存する家庭用ゲーム会社はまさに「過去の誰かの積み重ね」によって「いま」があります。
ひとつ、ひとつの積み重ねは本当に小さく、効果が見えにくいのですが、その積み重ねが企業を作っていく、という点に気づけば「適当な感謝」なんてできないですよね・・・。
機会があれば、ぜひ、チームメンバーの中で今回お話した「感謝」について議論してみてください。
というわけで、今日はここまで!