こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回は初心に戻って改めて「KPI」とは何か?解説します。
YouTubeで動画も公開していますので、その動画に沿ってKPIについて解説していきます。
実際のところKPIというワードは知っていても、多くの人がその意味や使い方について理解していません。
実際にゲーム会社で働いている人も理解をしている人は多くはなく、むしろ一部の人しか理解していない状態だったりします。
ただし、この状態は大きな弊害を生みます。
KPIを理解しているであろう人の見解が全て通ってしまい
理解していない人はその見解に従うような関係ができてしまうからです、
しかし、必ずしもKPIを理解している、知っている人の見解が正解ということはありません。多くの人がKPIに対して正しい知識と理解を持ち、実際の現場で議論を交わせるような状態を作ることが何よりも重要です。
今回はただKPIとは何か?
という話に留まらず、その先にあるKPIを使いこなし、ゲーム事業の核心に迫る方法まで解説します。
KPIとは何か
KPIとはKey Performance Indicatorの頭文字を取った言葉であり重要業績評価指標という意味になります。
ゲーム事業において、最も重視している指標を指します。
もう少し踏み込むと、そのゲーム会社のゲーム事業において、最も重視している指標になります。よって
どのKPIを重視するのかは、ゲーム会社ごとに異なります。
DAUを重視している会社もあれば、MAUを重視する会社もあります。
一方でとにかく利益重視の会社もありますし、利益はそこまで追求せず、売上に注力する会社もあります。
この重視するKPIの違いがゲーム会社ごとに生じる理由は
内そのゲーム会社の経営層の方針や、そのゲーム会社の会社のフェーズや、そのゲームタイトルのフェーズや方針などに影響を受けます。
とはいえ、多くのゲーム会社で重視しているKPIは
アクティビティに関するKPIと課金に関するKPIになります。
なぜならゲーム事業はこの2つのKPIの掛け算で成立しているからであり、両方が成立しないとゲーム事業はうまくいかないからです
アクティビティと課金に関するKPIのどちらか一つだけ達成できてもゲーム事業はうまくいかないのです。
KPIの種類
主なKPIについてここで網羅しておきましょう。
下記以外にもKPIは存在しますがゲーム運営においては、このKPIでカバーできます。
大カテゴリ | KPI名称 | 名前の詳細 | 読み方 | 定義 | TIPS |
アクティビティ
|
DAU | Daily Active Users | ディーエーユー、またはダウ | 重複なし、1日あたりのユニークユーザー数 | 現状をリアルに知ることができる |
WAU | Weekly Active Users | ダブルーエーユー、またはワウ | 重複なし、1週間あたりのユニークユーザー数 | 曜日による行動特性を把握できる | |
MAU | Monthly Active Users | エムーエーユー、またはマウ | 重複なし、1ヶ月あたりのユニークユーザー数 | 大型プロモの影響を受けやすい | |
HAU | Hourly Active Users | エイチーエーユー、またはハウ | 重複なし、1時間あたりのユニークユーザー数 | 時間軸による行動特性を把握できる | |
課金
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ARPU | Average Revenue Per User | エーアールピーユー、またはアルプ | ゲームをプレイした全ユーザーにおける課金単価 | 獲得ユーザーの質を把握できる |
ARPPU | Average Revenue Per Paid User | エーアールピーピーユー、またはアープ | 課金ユーザーにおける課金単価 | 最重要ユーザーの質を把握できる | |
PU | Paid Users | ピーユー | 課金したユニークユーザー数 | 獲得ユーザーの課金意欲を把握できる | |
PUR | Paid Users Rate | ピーユーアール | ゲームをプレイした全ユーザーにおける課金率 | 獲得ユーザーの課金意欲を把握できる | |
LTV | Life Time Value | エルティーブイ | 一定期間における課金総額、顧客生涯課金額 | 獲得ユーザーの質を把握できる | |
アクティビティ×課金
|
ARPUDAU | Average Revenue Per UsersDAU | エーアールピーユーダウ、アルプダウ | DAUに対する平均課金単価 | DAUと課金単価の分析に使う |
ARPUWAU | Average Revenue Per UsersWAU | エーアールピーピーユーダウ、アルプワウ | WAUに対する平均課金単価 | WAUと課金単価の分析に使う | |
ARPUMAU | Average Revenue Per UsersMAU | エーアールピーピーユーマウ、アルプマウ | MAUに対する平均課金単価 | MAUと課金単価の分析に使う | |
投資指標
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ROI | Return On Investment | アールオーアイ | 投資収益率、広告費に対する利益を表す指標 | ROI = LTV ÷ CPI ROI1.1を超えたら投資する価値あり |
ROAS | Return On Advertising Spend | ロアス | 広告費に対してどれだけの売上をあげられたのか表す指標 | 売上は上がっても利益が出ていると限らない ゲームによって売上が上がるタイミングが異なる |
|
CPI | Cost Per Install | シーピーアイ | 1インストールユーザーの獲得コスト | アプリ配信の時間経過や獲得方法によってCPIは変化する |
ここでのポイントはKPIには大きく分けて3つのカテゴリが存在して
アクティビティKPIと課金KPIを掛け合わせることでゲーム事業は成立しているという点です。
この方程式こそゲーム事業の全てです。
そしてこの掛け算によって出た結果がうまくいったのか、失敗したのか判断するために投資指標のKPIが存在します。
いろんなKPIがありますが、ここでピックアップしたKPIを全て理解して運用できれば一見、難しそうに見えるスマホゲーム事業も、何も難しくないのです。
なぜKPIが必要なのか?KPIで何がわかるの?
ところで、なぜKPIって必要だと思いますか?
それはKPIは数字でゲーム事業の現在のコンディション状態を把握できる便利なツールだからです
しかもそれらKPIは決められた計測ルール、定義で算出されていますので、ブレがない共通言語としてゲーム事業に使えます。
ゲームがうまくいっている、うまくいっていない
といった状態を個人の感覚だけで判断すると誤った結果をもたらしてしまいますよね。だからブレがない共通言語としてのKPIが必要なのです。
数字で表現されているKPIを使うことで、
ゲームユーザーがどれだけ遊んで、どこで課金して、どこで辞めているのか?がわかります。
しかも数字ですから分析に使いやすく、全体像や傾向を判断する上でも使えるのです。これは便利ですよね。
KPIではわからないこと、KPIの弱点とデメリット
ここまでの話を聞くと
KPIすげー!!KPIって万能ツールじゃん!!!
と感じてしまうかもしれませんが、
実はKPIは万能ツールではありませんし、KPIに過度に依存するとゲーム事業は失敗します。
ここが非常に重要なポイントなのです。
KPIは今、この瞬間と過去の結果に過ぎません。
今この瞬間といっても、リアルタイムにゲーム内KPIってウォッチすることが結構難しかったりするので、1時間前にゲーム内で発生した事象の結果が数字になって表示されているだけに過ぎないんですよね。
これはどういうことかというと
・過去実績データから未来を予測することはできる
・でも未来は必ずしも過去実績データそのままに進むわけではない
ということなのです。
過去の数字データだけで、これからのゲーム事業を予測して計画しようとすると、確実に失敗します。世の中は常に変化しており、過去と全く同じような環境は2度とやってこないからです。
(過去の環境に似ている状態は未来に存在するかもしれませんが、完全一致ではないという意味です)
なので、過去のデータはあくまでも過去の結果であり、それを全て鵜呑みにして未来の計画を立てるのはリスクが高すぎるというわけです。
とはいえKPIは価値ある過去データであることは事実です。
そのデータを踏まえた上で、何かしら別の要素を掛け合わせて少しだけ先の未来を予測することができる人こそが、優秀なマーケターであり、優秀なプロデューサーであるといえます。
さらにKPIにはもう一つの大きな弱点があります。
それはKPIは数字で羅列されたパラメータに過ぎず、その数字からは人間の感情までは把握できないという点です。
DAUやMAU、売上が瞬間的に上がったとしても
その数字の裏でゲームに対するさまざまなユーザー感情が存在します。そのユーザー感情を理解できないと、判断を間違ってしまう場合があります。
運用型ゲーム事業はどれだけ長期にわたって運用を行い、利益を出していくかが重要です。
つまりKPIという数字だけではなく、その裏に隠れているユーザーが感情をどこまで掘り下げられるかが長期運営には必要なのです。
KPIは作ることもできる!過度なKPI依存はリスクあり
ちなみにKPIは作ることもできます。
仮に膨大なプロモ予算を持っているゲームタイトルが存在するなら、そのプロモ予算が尽きるまでユーザーを獲得することができるからです。
またゲーム配信直後は事前登録からの流入も期待できるため、配信初月のKPIは基本的に高めに出ます。
ただし高いKPIが出たといって、実はそれは瞬間的な数字変動に過ぎず、本質的にはダメな場合も多いのです。多くのゲームアプリは配信後、半月から1ヶ月で大きくKPIを落としてしまいます。
そのKPIの数値は適正なのか?
作られた数字ではないのか?
その裏側に隠れている本当に大切なことは何か?
ここを見失わないようにしましょう。
KPIは現状を把握する共通言語として非常に使えますし、実際にゲーム事業においてKPIを理解して運用することは必須になります。
しかし、過度にKPIに依存してしまい、そこから抜け出せなくなると危険です。
・現状把握ができず誤った判断をしてしまったり
・実はすごく可能性があるのに、その可能性を潰してしまったり
するからです。
まとめ
まずはKPIについて正しく理解して、正しく活用する方法を学ぶこと
そして次に
実際のゲーム運営の現場でそれを実践すること
これが重要です。
でも多くのゲーム会社では「正しく学ぶこと」ができていない状態ですし
さらに実際のゲーム運営の現場で実践して活用できていないのです。
あくまでもKPIは過去の結果に過ぎないわけですが
DAUやARPUが上がった、下がった
そんな過去の結果を社内共有したところで、そこに意味がありません。
過去の結果と、別軸の要素を掛け合わせて
少しだけ先の未来を予測して、それをゲーム事業に反映していく
これができるかが重要なのです。
KPIの基礎知識、活用方法、現場における実戦については
トロネコもゲーム会社様からもご相談をいただくことが多いので
お困りの場合はトロネコまでご相談ください。
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