本気でゲーム事業で成功したいならROASは捨てROIで議論するべきです
こんにちは
ゲームマーケターのトロネコです。
今回はよく質問をいただく「ゲーム事業における重要なKPI、KGIとは何か?」
というテーマでお話をしていきましょう。
KPIについては下記の記事でまとめていますので、今回の記事はこちらも合わせて読んでいただくことをお勧めします。
KGIとKPIの違いを理解しよう
KGIとKPIって何?
よくわからないですよね。
KGIはKey Goal Indicatorの略称であり「重要目標達成指標」という意味になります。
一方で
KPIはKey Performance Indicatorsの略称であり「重要業績評価指標」となります。
簡単にまとめてみましょう
KPIは最終ゴールであり、KPIはそれを達成するための中間目標であり
最終ゴールを達成できるかチェックするための数値目標といった感じです。
まぁ、これはあくまでも建前の話で
ゲーム会社によってはKGIをそこまで現場レベルまで落としてこない場合もありますし
今期の事業計画を組織内に周知することがありますが、あれもKGIの一種だったりします。
今期のKGIは年商100億円、利益50億円!
というやつはKGIですし
我が社の将来の目標はRPGでNo1ゲーム会社になること!
というやつもある意味KGIだったりします。
ただし、ゲーム会社によって重視している最終目標はバラバラです。
「とにかく売上を!!」
「いや利益でしょ!!」
「現状維持でOK!!」
といった感じで本当にバラバラなので、組織として会社としてKGIを明確にして
かつ、それが現場が理解できるレベルまで粒度を下げて伝える必要があります。
なぜなら、
現場が追っているKPIはKGIを分解した、KGIが達成できるかをチェックするための中間目標だからです。
KGIがよくわからない(一応、事業計画は知っているけど)状態で
現場にKPIだけ追わせるから、実態のない目標として現場のモチベーションが上がらなかったりするからです。
KPIの設定は会社によって異なる
ゲーム会社によってKGIの基準がバラバラという話をしましたが
KGIがバラバラならKPIもバラバラです。
我が社はDAUを重視するぞ!あと利益もね
という会社もあれば
何よりもMAUを重視します!あとは売上もね
という会社もあるわけです。
ですから、まずは自分の会社が何をKPIとして重視しているかは理解しておく必要があります。
KPIで何を重視するかは会社ごとにバラバラであり
このKPIを重視するべきだ
というルールは存在しないというわけですね
KPIなんて一切見ないし、気にしない!
という人も中にはいるかもしれません。
でも、これは自分の会社のKGI(最終目標)が存在しないと暴露しているのと同じです。でも大企業になると事業計画はもちろん、数字目標を立てて株主に提示する必要があるので、発言と実態に矛盾が生じます。
KPIを鵜呑みにして完全依存するのは危険です。
という記事を下記でも書いています。でも
KPIを完全に理解していない、スルーしてしまうのはもっと危険なんです。
もし、「KPIなんて気にしない」なんていう現場に遭遇したら、優しく指摘してあげましょう。
DAUとMAUなら重要なKPIは圧倒的にDAUである
DAUはDaily Active Usersの略称であり、1日あたりのユニークなユーザー数を指します。
MAUはMonthly Active Usersの略称であり、1ヶ月あたりのユニークなユーザー数を指します。
ユニークというのは「重複なしの個別ユーザー」という意味です。同一ユーザーが1日、1ヶ月の間で複数回、来店した場合は重複カウントは排除して計算します。
DAUとMAUではどっちを重視すかはゲーム会社でも違いますし
タイトルによっても異なります。
まとめると次のようになります。
DAUは今日の状態を把握できます。
つまり1週間前のDAUと今日のDAUを比べると、まさに今、起こっているこのゲームの課題や実態がわかるというわけですね。
一方でMAUは「今月の総括レポート」みたいか感じです。
1ヶ月をまとめた上でのユーザーの動向を把握できます。月初で盛り上がって、月末で盛り下がっても、その月の結果としてMAUには月初の良かった数字が反映されるわけです。
よって、今現時点のゲームの状況把握には向きません。
しかし、長期運営ゲームタイトルなど、DAUでほぼ変動が見られないようなゲームがあるなら、MAUで俯瞰的に分析する方は効率が良い場合もあります。
ただし、基本的にはDAUを重視しましょう
なぜなら、どんな長期運営タイトルでもDAUの変化は必ずあるからです
あとは、MAUばかりに慣れてしまうと、
いざDAUの分析力が求められるようなシーンに遭遇すると苦労します。
新規タイトルや競合他社が多いタイトルを運用する際は、どれだけDAUを分析できるかが重要になるからです。
ROASは宣伝効果のKPIとしては不十分
マーケティングをやっている人と話をすると2通りに分類できます。
ROASを重視する人と、ROIを重視する人にです。
ROASとはReturn On Advertising Spendの略称であり「広告の費用対効果」になります。
広告費1円あたりの売上による回収率を計測するKPIです。
ROASは「売上÷広告費×100(%)」といった計算式で算出できます。
一方で
ROIとはReturn On Investmentの略称であり「投資に対する利益」になります。広告費1円でどのくらいの利益を得られたのか?ということを判断するKPIです。
ROIは「利益 ÷ 投資額 × 100」といった計算式で算出できます。
ROASは売上、ROIは利益に対する回収率である
とりあえず、これだけは覚えておきましょう。
ズバリ、ROASは売上に対する回収状況を把握するため、売上が上がっていれば、それが儲かっているのか、あまり関係ありません。
つまり、ちょっと乱暴な言い方をすれば
ユーザーを獲得することが宣伝、マーケターの役務であり、あとは知らん
といった
宣伝、マーケティングという縦割り意識の視点が強いKPIです。広告代理店やデジタルマーケティングなどに特化した会社では多いかもしれません。
(なぜなら、彼らにとって獲得したユーザーが利用するゲームや、サービスはブラックボックスであり、そこに踏み込むことができないからです)
一方で、
ROIは投資に対する回収率を指すKPIなので、ゲーム会社のプロデューサー、マネージャー、経営層視点のKPIです。
獲得したユーザーが利益を生み出せているのか、ユーザーの質と、ゲーム内の状態の両方が重要だ
といった感じですね。
結局、売上がどんなに上がっていても、儲からないと意味ないし、利益を出すことが会社の使命だからです。
会社は基本的に自社の事業に投資して利益を得ますが、もし投資する資金が1億円あって、それを自社のタイトルAじゃなくて、別のタイトルBに投資した方が儲かるなら、そっちの方がいいわけです。
よってROIで議論ができるゲーム会社は
宣伝マーケティング部門とゲーム開発部門のリレーションがうまくいっているケースが多く
ROASだけでしか判断できないゲーム会社は宣伝マーケティング部門とゲーム開発部門だ断絶しているケースが多いのです。
ゲーム事業の90%はゲームで決まります。
もう、改めて言う必要もない事実なので、ROIで議論をするべきです。そしてマーケターや宣伝は、ただユーザーを連れてくるだけでなく、
ゲーム内で利益を生み出せる状態がゲームとして作れているのか?
そこまでチェックするべきです。
ROIはただユーザーを連れてくるだけでなく、ゲーム運営、ゲーム開発、全体の収支まで踏み込まなければ議論することができないKPIになります。
ROIで議論できていないなら、できるようにしましょう。
もしROASを採用していても、うまくいかず
いずれROIに踏み込まなければならない時が必ず来ます。
結局、最後はROIに踏み込むという未来が来ます。そうしないとゲーム会社はうまくいかないからです。
ならば、迷わずROASではなくROIで議論するべきです。
ゲームアプリ事業の収益構造についてはこちらの動画でも解説していますにで、お時間のある時にご覧ください。
まとめ
まずはKPI、KGIについて正しく理解して、正しく活用する方法を学ぶこと
そして次に
実際のゲーム運営の現場でそれを実践すること
これが重要です。
でも多くのゲーム会社では「正しく学ぶこと」ができていない状態ですし
さらに実際のゲーム運営の現場で実践して活用できていないのです。
あくまでもKPIは過去の結果に過ぎないわけですが
DAUやARPUが上がった、下がった
そんな過去の結果を社内共有したところで、そこに意味がありません。
過去の結果と、別軸の要素を掛け合わせて
少しだけ先の未来を予測して、それをゲーム事業に反映していく
これができるかが重要なのです。
KPIの基礎知識、活用方法、現場における実戦については
トロネコもゲーム会社様からもご相談をいただくことが多いので
お困りの場合はトロネコまでご相談ください。
お仕事に関するご相談はこちらまで
KPIについて、もっと詳しく学びたい人はこちらの動画をご覧ください。