ゲームアプリマーケティングに使えるイノベーター理論【キャズムがわかるとヒットも仕掛けられる】
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回はマーケティング業界では一般的な知識である「イノベーター理論」をゲームマーケティングに活用する方法についてお話します。
学術的な知識として「イノベーター理論」はみんな知っているマーケターは多いのですが、実際にマーケティングの実務に落とし込んで活用できていない人が多いと思います。
そして、ゲーム業界においては、イノベーター理論は
現状では全然使いこなせていなかったりします。
しかし、それってすごく勿体無いのです。
なぜなら、ゲーム事業に「イノベーター理論」を取り込むことでマーケティング視点で「意思を持ってヒットを仕掛けること」ができるようになるからです。
トロネコはゲーム事業における成功確率をあげて、
新作タイトルをヒットさせるには「イノベーター理論」は必須だと考えます。
そこで、今回はゲームマーケティングにおいて、ヤバいくらいに使える「イノベーター理論」の使い方をご紹介します。
今回の使い方をマスターすると
「マーケティング視点でゲームをヒットさせる仕掛けるコツ」
がわかります。
これ本当に重要ですし、ゲーム事業以外にも使えるので是非マスターしてください!
【目次】
・一般的なイノベーター理論とは? ・ゲーム事業におけるイノベーター理論の使い方 ・イノベーター理論はペルソナ分析セットで作ると効果あり |
一般的なイノベーター理論とは?
そもそも「イノベーター理論」とは何でしょうか?
初めてイノベーター理論という言葉を聞いたという方に向けて「イノベーター理論」が何なのか?簡単にまとめておきましょう。
「イノベーター理論」とは、今から60年ほど前、1962年に作られた理論です。
スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が書いた「イノベーションの普及」という本の中で提唱された理論であり、その商品やサービスを使うユーザーの下記の5つで分類しています。
イノベーター(革新者)2.5% | 誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 情報に敏感、自ら情報収集、良いとおもったら購入 |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 既に話題になっている商品を購入。クチコミに影響を受けやすい |
レイトマジョリティー(後期記追随者)34% | 流行には懐疑的だが周囲の半分以上が支持している「これは間違いない!」状態になると安心して行動する |
ラガード(遅滞者)16% | 保守層。新しい物に興味がない人 |
イノベーター理論はこの5人のユーザー属性から構成されます。
これら5つのユーザーは商品やサービスの時間経過と比例して変化していきます。
表にすると以下のような感じです。
横軸がその商品の時間軸で、縦軸がユーザーのボリュームです。
商品が発売された直後には2.5%を占めるイノベーターがその商品を購入します。5人のユーザーの解説にもありましたが、イノベーターとは「誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい」という特徴を持ったユーザーです。
イノベーターを獲得し尽くすと、その次に「アーリーアダプター」を獲得するフェーズに入るといった感じです。
各セグメントのパーセンテージは決められた固定値であり、時間の経過とともに獲得できるユーザーのセグメントが変化していくというわけです。
横軸はその商品の時間軸という話をしましたが、
例えば、とあるゲームサービスの生涯時間軸を5年とするならば、その5年間で獲得するユーザー数の総数のうち、アプリ配信初期で獲得できる2.5%が「イノベーター」となります。
そして時間経過とともに獲得できるユーザーは変化してきますので、2.5%のイノベーターを獲得できるのは、そのゲームにおいては非常に限られた瞬間に過ぎないというわけですね。
時間の経過と共に初期で獲得した「イノベーター」は一部残っているけど、スマホゲームの特性としてインストールした瞬間に続々とユーザーは辞めていきますので、イノベーターの残存ユーザーに対して、「アーリーアダプタ」「アーリーマジョリティ」が時間の経過と共に積み上がっていくというイメージになります。
各ユーザーのパーセンテージは「イノベーター理論」において固定です。
まずは、この数字と名前と、各ユーザーの意味を覚えてしまいましょう。覚え方としては「イノベーター」「アーリーアダプター」を足すと2.5+13.5=16%
その次の「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」はそれぞれ34%ずつ。
最後の「ラガード」は16%
ぜんぶ合算すると100%になります。
5つのセグメントごとにユーザー特徴が異なりますので、その特徴も暗記してしまいましょう。商品のフェーズが進むにあたって獲得できるユーザー特性もガラッと変わります。
イノベーター(革新者)2.5% | 誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 情報に敏感、自ら情報収集、良いとおもったら購入 |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 既に話題になっている商品を購入。クチコミに影響を受けやすい |
レイトマジョリティー(後期記追随者)34% | 流行には懐疑的だが周囲の半分以上が支持している「これは間違いない!」状態になると安心して行動する |
ラガード(遅滞者)16% | 保守層。新しい物に興味がない人 |
イノベーター理論における「キャズム」とは?
ところで、「キャズム」という言葉をご存知ですか?
キャズムとは「深い溝」という意味なのですが、実は「イノベーター理論」においては「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間に、この「キャズム」という深い溝が存在します。
この「キャズム」は「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間にのみ存在します。その他、セグメント間には存在しないのです。
この「キャズム」とは何なのか?というと、
「アーリーアダプター」を超えて「アーリーマジョリティ」に踏み込むための超えなければならない「壁」みたいなものです。
実はイノベーター理論において、この「キャズム」を超えられるかが
「イノベーター」「アーリーアダプター」という限られたユーザーによる、限られた世界におけるヒットで終わるのか
「アーリーマジョリティ」以降を巻き込んだ国民的な大ヒットとなり社会現象を巻き起こすトレンドを作れるのか
そのゲームの伸びしろと、売上規模が決まります。
とはいえ、そもそも「イノベーター」「アーリーアダプター」というニッチな世界におけるヒットを狙っている商品なら、別にキャズムを超える必要はありません。
別にニッチな世界のヒットであっても、やり方次第では大きな利益を得ることができますし、ビジネスとして成功できます。
しかし、ゲーム事業の場合は「高額な開発費やマーケティング費」など、「キャズム」を超える前提で事業設計されているゲームも多いため、「キャズム」を超えないと事業が成立しないケースも多いのです。
一方で、キャズムを超えず「イノベーター」だけで高ARPUと低DAUだけで売上と利益をあげているゲームも存在します。
必ずしもTVCMをやっているからといって「キャズム」を超えているゲームとは限りません。
ちなみに、モンスト、パズドラ、ドラクエ、ポケモンGOなどはキャズムを超えているゲームであり、イノベーター理論においては、現在、キャズムを超えた先のユーザーを獲得するフェーズにあたります。
「キャズム」の前後に存在する2つのセグメントについて改めて紹介しましょう。
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 情報に敏感、自ら情報収集、良いとおもったら購入 |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 既に話題になっている商品を購入。クチコミに影響を受けやすい |
「キャズム」を超えるとは「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティー」に踏み込むという事です。
他のセグメントには存在しない「キャズム」がなぜこの2つの間だけに存在するかというと、それは
イノベーター理論において、この2つのユーザー(アーリーアダプターとアーリーマジョリティー)の特徴が、極めて大きくガラっと変わるからです。
キャズムを超えることとは全く別の事業フェーズに入るようなイメージなので、戦い方も、戦っている相手も全く別のものになります。
「アーリーアダプター」は自ら情報を取りに行く「攻めのユーザー」ですが
「アーリーマジョリティー」は自ら情報を取りにいかない「守りのユーザー」と表現できそうですね。
そして「アーリーマジョリティ」は「クチコミに影響を受けやすい層」です。
つまり、キャズムを超えて「アーリーマジョリティ」に踏み込めると、クチコミが加速して、お金を使った宣伝をしなくても爆発的にその商品は売れていきます。
いわゆる、ブーム、トレンドが起きるわけです。
例えば「鬼滅の刃」もある時点でキャズムを超えたというわけです。
「鬼滅の刃」や「パズドラ」「モンスト」もこのキャズムを超えて社会的ブームを作り出したわけですが、
ここで重要なのは、どこまで事前の段階で「キャズムの場所」を特定した上で、マーケティングを仕掛けてきたのか?というと疑問です。なぜなら、多くのケースで、「気がついたらキャズムを超えていた」と後で気づく事が多いからです。
でも、ちょっと考えてみてください。
新作ゲームにおいて「キャズムの場所」が事前にわかると、キャズムを超えるために必要な「インストール数」「到達する時間とタイミング」「到達するために必要なこと」がわかります。
これが事前にわかると、マーケターとして「ヒットを仕掛ける戦略」が作れると思いませんか?
逆説的な話をするならば、
「このゲームは絶対にキャズムを超えることはできない」
と事前にわかっているならば
それを踏まえて収益を最大化する戦略や、「イノベーター」「アーリーアダプター」だけの世界でヒットを作り出す戦略も作れると思いませんか?
ここに、ゲーム事業に「イノベーター理論」を取り入れる価値があります。
ゲーム事業におけるイノベーター理論の使い方
「イノベーター理論」について理解できましたでしょうか?
まだよくわからないという方は、前のパートに戻って、全部暗記してしまってください。
その上で「イノベーター理論」をゲーム事業にどうやって活用するのか?という話をこのパートでお話をしていきましょう。
ずばり、「イノベーター理論」の各セグメントにあたるのが、そのゲームの「ターゲットユーザー」です。
「市場調査」「ユーザーリサーチ」「特定の版権キャラを使っているならそのファン層」など、様々な情報を踏まえて「マーケティング戦略」を経て、そのゲームで狙っていく「ターゲットユーザー」を決めますが、
イノベーター理論の表に当てはめながら考えると、どのようなターゲットユーザーなのか、その特徴がより鮮明になります。
ターゲットユーザーの表現については
「コア」「ミドル」「ライト」とか、「1stターゲット」「2ndターゲット」とか、「メインターゲット」「サブターゲット」とか、いろいろな言い方がありますが、どんな言い方でも結構です。
ペルソナ分析を併用することで、各ターゲットユーザーの内訳や思考や嗜好性が明確になるのでおすすめです。
上記の表のように「イノベーター理論」における各フェーズに対して、
これから配信発売しようとしているゲームや
既に配信中のゲームが、どの部分に当たるのかを整理することが重要です。
これによって
・いまの居場所はどこか?
・まずは、どのターゲットの獲得が必要か?
・イノベーター理論に当てはめるとそのユーザーはどんな特徴か
・キャズムの前後にあるユーザーはどんなユーザーか?
といったように、
これからやるべきこと、いわゆるマーケティング戦略をさらに具体化させて、アクションプランに落とし込むことができるためゲーム事業の成功確率を高めることができます。
このように、ヒットに対する時間軸と獲得ボリューム、獲得ユーザーの中身を整理することで、「意識してヒットを作り出す戦略立案」にイノベーター理論は非常に使えるというわけです。
言い換えるならば、「意識してヒットを仕掛けるマーケティング」ができるということです。
ゲーム事業における「イノベーター理論」は非常に重要で、トロネコもマーケティング戦略を作る上では必須事項として盛り込んでいます。
イノベーター理論はペルソナ分析セットで作ると効果あり
ところで、マーケティング戦略における「ターゲットユーザー」とは、ゲーム会社やマーケターによって様々な粒度が存在します。
「粒度」とは「細かさ」「詳細さ」という意味です。
例えばトロネコが見てきた多くの「マーケティング戦略資料」に書かれているターゲットって、下記くらいの粒度だったりします。
「1stターゲット」20代男性、会社員、アニメ好き
「2ndターゲット」30代男性、会社員、漫画好き |
しかし、これはターゲット設定としてほぼ活用できません。
「20代男性、会社員、アニメ好き」
といってもどんなユーザー特性なのか、あまりにも広すぎて、これではよくわかりません。
「20代男性、会社員、アニメ好き」と書かれたターゲット設定資料があるならば、それは「ターゲット設定なんてしていない」ということを自白しているようなものです。
そもそもターゲット設定の目的は、そのターゲットを獲得するための「課題」を洗い出し、課題を解決する「戦略」を策定することです。
イノベーター理論とペルソナ分析をセットで考えると、ターゲットのインサイトについてもっと深堀りができます。
例えば、5つのイノベーター理論のセグメントのうち、下記3つだけ「ペルソナ分析」とセットで深掘りするだけでも、ターゲットユーザーの内訳が鮮明になってきます。
イノベーター(革新者)2.5% | 誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 情報に敏感、自ら情報収集、良いとおもったら購入 |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 既に話題になっている商品を購入。クチコミに影響を受けやすい |
なんかターゲット設定作りができそうな気がしてきましたね。
しかし、これだけでは戦略を考えるだけで不十分だったりするので、トロネコはさらに、「ペルソナ分析」をここに被せます。
「市場調査」×「イノベーター理論」×「ペルソナ分析」=「ターゲット設定」
これらを組み合わせると、ターゲットの特徴がさらに鮮明になるだけでなく、精度の高い「マーケティング戦略」が作れて、
さらに、精度の高い「プロモーションプラン」が作れるようになります。
ちなみにこんなことを言う人がいます。
ペルソナ分析なんてマーケターのエゴだし、仕事をやっているアピールをするためのツールだし、全くを持って使えないよ
これは非常に的を得ている意見でして、ある意味「正解」なのです。
「ペルソナ分析」だけ作ってもそれは、市場調査やユーザーインタビューに基づいたペルソナ分析だとしても「絵に描いた餅」に過ぎません。
そしてゲーム事業においてなんら活用できないですし、ただただペルソナ分析を熱く語るマーケターや調査担当は、自己満足に過ぎないのです。
ただし、今回説明した「イノベーター理論」と組み合わせることでマーケティング戦略策定のパーツとしてペルソナ分析は大活躍してくれます。
つまり
「市場調査」×「イノベーター理論」×「ペルソナ分析」=「ターゲット設定」→「マーケティング戦略策定」
この構造まで組み合わせることができて、初めて各パーツの価値が出てくるわけです。しかし、多くのケースで「ペルソナ分析」単体で語られたり、いきなり「ターゲット設定を始める」など
点やパーツだけで議論を進めてしまうのが間違いの始まりです。
ペルソナ分析については、下記で書いていますので合わせて読んでください。
成功したゲームの理想的なイノベーター理論モデル
実際のところ、ゲームがヒットした場合の成功モデルとしてのイノベーター理論はどうなるのか?気になりますよね。
そこで、理想的なイノベーター理論のモデルについてご紹介しましょう。
特定のタイトルのデータではなく、理論上の理想的な成功モデルとなります。
細かい説明は次のパートで話はでてきますが、ここで押さえて欲しいことは、
・事前登録ではイノベーターを取りきる
・配信1ヶ月でアーリーアダプタを取りきる
・配信1ヶ月でTVCMなどますプロモーションを行い、2ヶ月目でアーリーマジョリティに踏み込む
・配信1年目でアーリーマジョリティを取りきる
これがヒットするゲームの理想像です。
市場調査をすれば、このゲームで獲得できる市場規模がわかりますので、そこから逆算することで
時間軸における、必要獲得数が算出できます。
これらについて細かい解説を次のパートではしていますが、非常に細かいので興味がある方のみ読み進めてください。
イノベーター理論を使ったテクニック事例
最後まで読んでくれた人にマーケティング戦略の策定に使える、イノベーター理論を使ったテクニックをお話します。
①市場調査で購入可能性があるユーザーを赤、青、黄色のセグメントに分ける
それが、そのゲームの市場上限であり、獲得できるユーザーの上限です。
例えばわかりやすいように「トロネコの大冒険」という架空のゲームがあるとします。市場調査をしたところ、このゲームのジャンルやコンセプトから、獲得できる市場上限は1,000万ユーザーと言う数字がでました。(という設定で話を進めますね)
②イノベーター理論によると各セグメントのパーセンテージが決まっていますので、それにそってユーザーを配分する
市場調査で明らかになった「トロネコの大冒険」の市場ボリューム1,000万ユーザーを「イノベーター理論」において分解すると各セグメントのユーザー数は下記の通りになります。
イノベーター(革新者)2.5% | 25万 |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 135万 |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 340万 |
レイトマジョリティー(後期記追随者)34% | 340万 |
ラガード(遅滞者)16% | 16万 |
つまり、市場ボリュームがわかれば、その中身もイノベーター理論において自動で見えてくるというわけですね
③イノベーター理論における「イノベーター」とは何か考察する
「トロネコの大冒険」におけるイノベーター層は25万人いるということがわかりました。
このイノベーター層とは
家庭用ゲームでいえば「店頭予約数」
スマホアプリで言えば「初動で獲得できそうな事前登録数」
家庭用、スマホアプリ共通でいえば「Twitterフォロワー数」
など様々な数字目標に置き換えられます。
つまり、このゲームの発表から初動で獲得できるユーザー(イノベーター層)の上限は25万人くらいというわけです。
25万人をきっちり獲得できるというわけではありません(むしろ25万人きっちりは取れないので、まぁ肌感覚として7掛けくらいが現実的な数字でしょう)
これによって、「予約本数」「事前登録数」などの数字のファクト(根拠)と、それを元にした目標数を立てやすくなります。
イノベーター層の特徴といえば下記のような特徴でしたよね?
イノベーター(革新者)2.5% | 誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい |
この特徴と「ペルソナ分析」をかけあわせれば、イノベーター層を獲得するための戦略が立てられます。
例えばゲームアプリならば、そのゲームアプリのイノベーター層の心を動かす施策がいくらでも考えられるでしょう。
むしろ、ターゲットユーザーの顔や状態が明確になっているので、施策なんていくらでも考えられますね!
でも現実的にこんなことはありませんか?
【ゲーム会社社長】事前登録は50万を目標にしよう!
社長からそんな鶴の一声があるとします。
でもイノベーター理論における「イノベーター層」の人数は25万ですよね?
事前登録50万ということはあと25万足りていません。
イノベーター理論によると「トロネコの大冒険」のアーリーアダプタは135万人いるという算出になっています。
つまり、アーリーアダプタ層に踏み込んだ事前登録獲得戦略が必要というわけです。
冒頭でイノベーター理論の横軸は「時間」と言う話をしました。
この時間軸はゲームの配信開始時から始まると考えても結構ですが、ゲーム配信前の「事前登録」の時間軸に置き換えることもできます。
つまり、「トロネコの大冒険」の事前登録フェーズで、事前登録数50万を獲得したいなら
タイトル発表時には「イノベーター層」を獲得する事前登録獲得戦略
「イノベーター層」獲得後に「アーリーアダプタ層」を獲得する事前登録獲得戦略
これらを作成する必要があります。
しかも両者のユーザー特徴は異なりますので、施策ベースに落とし込むなら、それぞれのユーザーを獲得するための「目的の異なる施策」が必要ということになります。
多くのゲームでは1つの事前登録施策だけで、事前登録を集客しようとしています。複数の施策を用意していていも数を増やしただけで同じターゲット向けの施策だったりしませんか?
でも、イノベーター理論を踏まえると、「トロネコの大冒険」の事前登録は2つのフェーズから構成され、特徴が異なる2つのユーザーセグメントを獲得するための施策が最低2本は必要だということがわかってきます。
イノベーター(革新者)2.5% | 誰よりも早く購入する。新しいもの好き、誰よりも先に手に入れたい |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 情報に敏感、自ら情報収集、良いとおもったら購入 |
なぜならイノベーターとアーリーアダプタのユーザー特徴は異なりますし、トロネコの大冒険の市場調査によると、事前登録50万達成にはアーリーアダプタに踏み込む必要があるからです。
④イノベーター層だけに割り切ったビジネスもアリ
【ゲーム会社社長】事前登録は50万を目標にしよう!
「トロネコの大冒険」は超ニッチなゲームでして、かつ低予算で開発してまして、低DAU、高ARPUで勝負するプロジェクトなので「イノベーター層」だけで十分ですー。事前登録1万人でもOKですー
みたいな会話も「イノベーター理論」を理解していれば可能です。
つまり、あらゆるゲームが必ずキャズムを超える必要はないですし、限られた熱狂的なファンだけで支えられるゲーム事業でもいいわけです。
もし「トロネコの大冒険」は社運をかけた「パズドラ・モンスト級」を目指すAAA(トリプルエー)タイトルならば「キャズム」を超えないわけにはいきませんから、事前登録において「イノベーター」だけに甘んじることなく、「アーリーアダプター」まで踏み込む必要はあります。
事前登録フェーズから「アーリーアダプター」に踏み込んでおくことによって、その先にある「キャズム」を超える事前準備をすることができるからです。
⑤ゲーム業界におけるキャズムとは何か?と考えてみる
キャズムを超えら何が起きるのか、今回の記事の前半で下記のようなことを書きました。
「キャズム」を超えて「アーリーマジョリティ」に踏み込めると、クチコミが加速して、お金を使った宣伝をしなくても爆発的にその商品は売れていきます。
いわゆる、ブーム、トレンドが起きるわけです。
つまり、キャズムを超えるとは、クチコミによって爆発的にそのゲームが拡散されていく状況といえます。
宣伝費と比例せずに、自然とゲームがインストールされていきます。いわゆる「オーガニックユーザー」がバンバン取れるというわけですね。
1,000万人の市場があるとして、それをすべて広告やプロモーションで獲得するのは不可能です。
有償広告・プロモーション経由
オーガニック経由(自然インストール)
この比率はゲームタイトルや、フェームの運用フェズ、ゲーム会社の方針によって異なりますが
2対8くらいの比率になります。
つまりお金をかけて獲得した2のユーザーが、残りの8を連れてくるというわけです。
この8を獲得できる世界に踏み込めるかが「キャズム」を超えられるかにかかっています。
⑥家庭用、スマホアプリでクチコミが最大化できるタイミングを分析する
トロネコは家庭用、スマホアプリの両方で長いマーケターキャリアがありますが、ゲーム事業において、クチコミが拡散するタイミングがあります。
まとめると下記になります。
クチコミが最大化タイミング | その理由 | |
家庭用ゲーム | クチコミが最大化できるのはそのゲームが一番遊ばれているタイミング
それは発売週の日曜日です。
|
なぜなら家庭用ゲームは流通の都合上、ほぼ木曜発売であり、初週の木金土日の4日間で生涯販売数の半分以上を売るためです。
購入してみんな遊んでいる状態の最高潮は日曜日というわけです。 |
スマホアプリ | クチコミが最大化できるのはそのゲームが一番遊ばれているタイミング
スマホアプリの場合、DAUで計測できるけど、それは発売週の日曜日です。 |
スマホアプリの場合は、インストール翌日には半分がやめます。
よってインストール直後からできるだけ短く、遊べる時間が確保されている初週の日曜日がもっとも良質なDAUが計測できるタイミングだからです。 また事前登録からの転換インストールや、ストアFeatureの掲載からのインストールなどを考慮すると日曜日がクチコミが期待できる最良タイミングです |
もっともそのゲームが遊ばれているタイミングこそ
クチコミが拡散されているタイミングです。
家庭用ゲームも、スマホアプリも、発売や配信初週の日曜日が
もっともクチコミがされているタイミングであり、それ以降どんなに宣伝やクチコミをしかけても、発売や配信初週の日曜日を超えるクチコミのタイミングは、二度と来ないのです。
でもこんな意見もあると思います。
でもさ、運用1年後に最高のDAUを残して、復活させた経験ありますよー。だから初動で失敗してもまだまだチャンスありです!
ずばり、これは間違いです。
なぜなら、運用1年後に復活できたように見えても、それは本当に到達できた最高頂かといえないからです。もっと高い山に登れたはずだからです。
⑦キャズムを超えたいなら発売、配信週最初の日曜日が勝負
イノベーター(革新者)2.5% | 25万 |
アーリーアダプター(初期採用者)13.5% | 135万 |
【キャズム】 | |
アーリーマジョリティー(前期追随者)34% | 340万 |
レイトマジョリティー(後期記追随者)34% | 340万 |
ラガード(遅滞者)16% | 16万 |
「トロネコの大冒険」のキャズムを超えるために必要な数字は明白ですね!
25万+135万=合計180万がキャズムを超えるために必要な数字となります。
しかし、この数字は1年かけて越えればいいわけではありません。
繰り返しですがキャズムの正体は「クチコミの伝播力」ですから
これを最大化できるのは発売、配信した最初の日曜日というわけです。
つまり、「トロネコの大冒険」を意識して「キャズム」を超えさせたいなら
配信初週の日曜日にキャズムを超えられるようにプロモーション設計&投下していくことで、マーケティング視点で仕掛けるヒットをつくるお膳立てがつくれるというわけです。
つまり、事前登録のお話をしましたが、
事前登録で50万人を目標にするなら、「イノベーター」「アーリーアダプター」の事前獲得が必要であり、それは配信初週の日曜日にキャズムを超えるために活用することが目的になります。
キャズムを超えた後はどうなるの?
プロモーション施策で数字上のキャズムを超えることは不可能ではありませんが、超えた後に「アーリーマジョリティ」の中で伝播していくかは
プロモーションではなく、ゲームの面白さにかかっています。
最近、パワーマーケティングをするゲーム会社も増えてきましたが結果的にパワーマーケティングが生かされていないケースも多いです。
こちらの表の通り「キャズム」を超えた先にある「アーリーマジョリティ(34%)」という巨大な市場は、もはやプロモーションでは取れない市場です。
(厳密には取れなくはないけど、お金は無限ではないし、宣伝では動かせないユーザーも多いので全部獲得するのは無理という意味です)
「キャズム」を超えた後の広がりは「プロダクトそのもの」にかかっています。
・「トロネコの大冒険」が1人で遊ぶゲームなのか
・4人で遊ぶゲームなのか
・1人で遊ぶとしても誰かに伝えたくなる要素があるのか
・ゲームとして理解しやすく、広い世代に楽しめるものか
など、クチコミに直接影響する要素があります。
・そもそも面白いゲームなのか?
・遊べるコンテンツが十分なのか?(ユーザーのコンテンツ消費スピードに対応でいているのか)
・クチコミしてくれる世代に遊ばれているのか?(40代と20代ではクチコミの手段や密度も違いますよね)
・クチコミを阻害する社会的情勢や、競合ゲームタイトルはないか?
という要素も影響します。
つまり、このようなゲームとしての基本的な部分が解決できていない場合は、意図的にプロモーションで数字上の「キャズム」を超させて、発売最初の日曜日で「クチコミ」を最大化させてもその先が続かず、この表みたいに急降下してしまいます。
キャズムは超えたけど、その後は伸びず・・・
そんなゲームはプロモーションが問題ではなく、ゲーム本編に課題があるのです
それを回避するのが、当サイトでも何度もお伝えしていますが、ゲーム開発においても、マーケターが関わる必要があるというわけです。
それが「3つのマーケティングプロセスであり、つくるマーケティングに相当します。
つくるマーケティングができるとキャズムを超えた後の広がりが違いますし、これができないなら、そもそも「キャズム」を超えるチャレンジができません。
つくるマーケティングについては、下記で書いていますので参考にしてください。
【参考記事】「マーケティングの定義とは?」すぐに答えられますか【一言で簡単にわかりやすく解説】
まとめ
今回、イノベーター理論について解説してきました。
結論をお伝えすると「イノベーター理論を理解せずに、新規タイトルのマーケティング戦略なんてできない」
ということになります。
すごく重要で、かつ、意識しながらヒットを作り出せる考え方になりますので、ぜひ皆さんのゲーム事業にも取り込んでみてください。
実際のところトロネコが作るマーケティング戦略資料には必ずイノベーター理論を盛り込んだページが登場します。
今回ご紹介した内容について、もっと詳しく相談したい!という方はLINEチャットで気軽に無料相談できる「トロネコのカベウチ」、もしくはメールにてご連絡ください。
みなさまのお役に立てればトロネコ幸せです。