【家庭用/スマホ】ゲーム業界におけるIPとは何か?みんな間違っているかも!?

ゲーム業界

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今回はゲーム業界で働いていると頻繁に耳にする「IP(アイピー)」という言葉についてお話します。

最初にお伝えしておくと

「多くのケースでIPという言葉の使い方が間違っています」

言葉の使い方を間違えるだけならいいのですが、IPに対する「考え方」も間違っているケースもみられます。

というわけで、この記事を読んでIPを理解して頂きましたら、ぜひ、間違っている人にツッコミを入れられるようになってくださいねw

一般論として「IP」とは何か?

IPとは Interllectual Propery の頭文字を取った言葉で「知的財産権」を指す言葉です。

ワンピース、ガンダム、ドラゴンボール、ポケモンは日本を代表するIPとなります。

そして「知的財産」という名前の通り、「知的財産」としての価値があるものがIPと呼ばれます。

しかし、次のようなものをIPと呼べるのかというと、ここは疑問が残ります。

・まだ発表していない開発中の新規コンテンツ

・発売したばかりで人気もファンも少ない新規コンテンツ

・瞬間的に話題になったので「知名度」はゼロではないが、話題になっただけで人気とファンが比例しないコンテンツ

・過去に人気だったが、その後、時代の流れで人気を維持できず、現時点でも人気があるか怪しいコンテンツ

たしかに上記のようなコンテンツにも知的財産としての権利は存在しますが、ここで重要なのは

我々が使っているIPという言葉の意味には「ファン」「人気」といった「コンテンツとしての価値」が含まれているか?という点です。

ワンピース、ガンダム、ドラゴンボール、ポケモンは日本を代表するIPであることは疑う余地はありません。しかし「トロネコの大冒険」という完全新規ゲームがあるとすれば、それはIPといえるのか?というと疑問が残ります。

ゲーム業界で使われている「IP」という言葉の使用例

ゲーム業界でよく耳にする「IP」という言葉の使われ方は、ほとんどのケースで次のどれかに当てはまります。

①版権キャラIPを使ったゲームをつくる

ワンピース、ガンダム、ドラゴンボール、ポケモンといったキャラクターを使ったゲームをつくる等がこれに相当します。

②ゲーム会社の自社IPを活用したゲームをつくる

ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーなど自社のフランチャイズを使ったゲームをつくる事がこれに相当します。

③自社IPを作り育てていく

これからゲーム会社が自社で完全オリジナルゲームを開発し、発売して、それを育てて価値を高めながらIPをつくっていくケースが相当します。

④過去のIP(休眠IP・レガシーIP)をリブートして作り育てていく

過去にヒットした、人気があったゲームコンテンツを再利用して、もう一度IPとしての価値を高めながら活用していく

ゲーム業界のおける「IP」という言葉の本当の意味は?

冒頭でお話しましたが、「IP」とは「知的財産権」を指す言葉であり、コンテンツとしての価値が発生するものを指します。

よって、厳密にはゲーム会社をはじめとした、あらゆる企業が自ら作ったあらゆる創作物には知的財産権が存在するわけですから、ファンの有無、人気、不人気に関係なく全てのコンテンツは「IP」と呼んでも、それ自体は間違いありません。

しかし、ゲーム業界における「IP」という言葉には次のような意味が含まれています。

・一定のファンが存在する
・それを使うことで一定の売上が見込める
・利用価値があるコンテンツ

つまり、ゲーム業界におけるIPという言葉には次のようなメリットや価値を踏まえて使われているのです。

・IPには既にファンが存在しているため、その都度、ゼロからファンを集める必要がない

・ファンが存在しているので、ある程度の売り上げ見込みが計算でき事業としてのリスクヘッジになる

 

これはゲーム会社にはとても価値があります。

これらに対する価値を感じて、多くのゲーム会社はアニメや漫画などの版権IPや自社のゲームIPを使ったシリーズタイトルの続編を作ったりします。

つまり、ゲーム業界におけるIPという言葉の根底には「熱狂的ファンの存在」があり、ファンの存在=人気度がIPの価値を決めるのです。

IP価値のベースである「ファン」を獲得するには「時間」「お金」「労力」「能力」など様々な要素が必要です。

IPは簡単に、すぐに作れるものではないのです。

既に存在する人気IPを使う理由には、そういった様々なIPを作るためのハードルをショートカットできるのです。

自社、他社IPを使うことは、「ゼロスタート」ではなく常に「アドバンテージを持った状態(=ファンが存在する状態)」でスタートできるというメリットがあります。

これがIPを使う最大、かつ唯一の理由です。

ゲーム業界のおける「IP」に対する間違った使用事例

ゲーム業界における「IP」=ファンの存在

という話をしました。

言い換えればファンが存在しないとそれはIPとしての価値はないですし、言葉として使ってもいいけど、「自称IP(=勝手にIPと名乗っているだけ)」に過ぎません。

そこでゲーム業界で頻繁に使われる間違った(違和感がある)IPという言葉の使い方についてご紹介しておきましょう。

①膨大な自社の過去有力IPを活用する

ここでの自社の過去IPとは、

いまは使われていないけど過去人気だった、過去にヒットしたIPを指しているケースが多いのですが、現在進行形で使われ続けていないコンテンツはIP力としての価値が大きく毀損していると考えるのが現実的です。よって「過去有力IP」という言葉には違和感があると共に、企業として本質的な「課題」に気づいていない恐れがあります。

②休眠IP、過去IPをリブートさせる

ゲーム会社の経営者なら誰しも「休眠IP、過去IPをリブートさせる」ことで、事業の柱を作りたいと思うものです。これは全く健全な考え方です。

そして、「休眠IP、過去IPをリブートさせる」ということは決して不可能ではなく可能です。

ただし現実を適切に把握して分析することが重要です。

なぜなら「休眠してしまったIPを起こす」にはお金も時間も労力も、それを実行する人の能力も必要です。

さらに過去ファンと、これから獲得したい新規ファンとの間での「そのIPに対する認識のギャップ」も考慮しなければなりません。

なぜなら歴史ある休眠・過去IPほど年齢を重ねた熱心なコアファンが存在しており、これから獲得する新規ユーザーとの世代ギャップによる衝突は避けられないからです。

よってリブートさせるには緻密に設計された「マーケティング戦略」と「それを実行するプロモーション」がセットで必要です。それでもリブートさせるハードルは高く、容易なことではありません。

そのくらい「リブート」という言葉は重い言葉であり、簡単に使えるものではないのです。

③休眠IP、過去IPを使って売り上げを見込む

これは間違ったIPという言葉の使用例になります。

売り上げが見込めないから「使うことをやめた」「新作ゲームの開発をやめた」結果、「休眠IP」「過去IP」になったわけですから、ただ使うだけでは売り上げは見込めません。

「なつかしさ」を武器に「過去のファン」に売り込む事は可能ですが、「年齢を重ね、生活環境が変化し、過去の記憶も薄れている過去ファン」を動かすのは「時間」「お金」もかかりますし、「絶対的な市場規模が少ない」ため事業としてどこまで魅力があるのか、まで踏み込んで検討する必要があります。

「ただ過去IPを使って新規事業を立ち上げる」といった考え方ではうまくいかないので、②で説明したように

「休眠IP、過去IPをリブートさせる戦略や施策がセットで必要」となります。

 

④自社で完全新規IPをつくる

「自社で完全新規のゲームを立ち上げて、新規IPをつくる」という考えはトロネコとしても大賛成です。なぜなら、ゲーム業界自体が「新規IPの創出」を繰り返すことで発展してきたからです。

そして、ゲーム会社としての最終的な運命は

「自社で完全新規IPをつくれるか」に全てかかっています。なぜなら

「自社で完全新規IPをつくり続けられる会社」しかゲーム業界では厳密には「生き残れないし」「成長できないし」「会社としての社会における存在意義を示せない」からです。

 

もし、他社の版権IPだけでゲーム事業をまわしているゲーム会社があるならば極めて危険です。

なぜなら、そのゲーム会社の運命は他社の版権IPの「人気の変動」に大きく左右されますし、もし版権の許諾が途中で打ち切られるようなことがあったら、そこで会社が止まってしまうからです。

だから、他社版権で急成長をしたゲーム会社は、どれだけ早急に自社IPを作りゲーム事業の地盤を固められるかが最優先ミッションとなります。

そして自社IPの創出に成功したゲーム会社も、次の自社IPの創出が最優先ミッションになります。

とはいえ「自社で完全新規IPをつくる」という言葉は「軽々しく使えるもの」ではないとトロネコはいつも考えています。なぜならIPといての価値がある自社IPを作るには

「膨大な時間」「お金」「労力」「汗と涙」が必要だからです。

だからこそ、自社IP創出の重要性について、いま気づいたとしても、すぐに自社IP創出はできません。自社IP創出には数年かかる覚悟を持った上で取りかかれるかが重要なのです。

自社IPをつくる方法については次のパートで説明します。

 

価値ある本物のIPを作るには10年単位で時間とお金がかかる

価値あるIPとは何か?と考えると次のように定義します。

①現在進行形で熱狂的なファンが存在する状態

IP価値を構成するものは「ファンの存在」です。

「ファン」とはTwitterのフォロワー数や、Youtubeのチャンネル登録者数だけで語れるものではなく、実際にそのIPを使った商品やゲームを発売した時に「売り上げ貢献できるか」というコンテンツ価値で表現されます。

よってTwitterのフォロワー数ではなく、そのIPを使った関連商品の「売り上げ」で判断する方が適切です。

ここで重要なのは、IP力とは「知名度」ではなく「ファンの存在」であることです。瞬間的に知名度を稼いでTwitterフォロワー数がアップした状態が必ずしも「IP力」と比例しないのです。

Twitterフォロワー数は瞬間的な知名度の上昇を反映しやすい指標ですが、フォロワーが現在進行形でそのIPを好きでい続けているかは疑問が残ります。

②「点」ではなく「線」で繋がって、世代を超えて語り継がれる状態

価値あるIPの定義として、もうひとつあげるなら「世代を超えて語り継がれ楽しまれているか」という点があります。

10年前に人気があったけど、その瞬間(=点)で終わってしまい継続性がないもの(=線にならなかったもの)はIPとしての価値がありません。

つまり、高校生の時に流行った、懐かしい!、でも今となっては過去のコンテンツにはIPとしての断絶が存在します。

つまり、価値あるIPとは露出を絶やさず常に走り続けて10年単位で親子世代で楽しまれ続けている状態が求められるわけです。

ここに気づくと、半年や1年で急激に人気を得たコンテンツはIPとしての価値が不安定であり、全く気が抜けない状態である、ということがわかります。

そして「線で語り継がれていかず、どこかで断線してしまった時点で過去のキャラクターとしてIPの価値は急激に毀損していきます」

ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、ドラゴンボール、ワンピース、ポケモンがそうであるように、常に現在進行形で「生きているIPコンディション」を維持し続ける必要があります。

 

前置きが長くなってしまいましたが、もし、これを読んでいるみなさんが「価値ある本物のIPを作りたい!」と心の底から願うなら

「瞬間的な点」ではなく「線で繋がっているという点」を作り続けることが必要です。

つまりIPを作りたいなら「認知度を高め」「ブームを作ること」ではなくファンの人生における「時間の流れ」といっしょに「根気よく お金やヒト、モノをかけ続ける覚悟」が必要です。

トロネコもIPを作り出すプロジェクトに何度も関わりマーケティング戦略を策定してきましたが、気にしている項目の一部だけご紹介しましょう。

①誰に対するコンテンツで、どんな感情で楽しんで欲しいのか

②点ではなく線で繋がるストーリー設計と、時間経過によるファン感情の変化

③ファンがどのように新たなファンを生み出すのか(クチコミの連鎖設計)

④これらを踏まえた月単位ではなく1年単位でのマーケティング戦略

⑤チームとして芯はブレず、ただしファンのニーズに応える柔軟な心を持っているか

これらを話すと長いので今回は割愛しますが

ざっくりまとめると

「時間がかかるので会社もチームメンバーも相当の覚悟が必要です」

「スマホゲームのように結果が出ないとサービス終了判断をしなければならない事業との相性は悪いです」

「厳密にファンはお金では獲得できず、時間経過による人生体験における共感でしか積み上がらない」

という点があります。

 

自社IPを作りたいなら捨てるべきこと

ここでちょっとしたお話をしましょう。以前このような話を知り合いからいただきました。

「自社IPを作りたい」「そのためにスマホプリの初動でお金をかけてユーザー認知度を獲得したい」

これは「線」ではなく「点」で考えている状態であり、「IP力」と「認知度」を間違えているわかりやすい例です。

特にスマホゲームの場合はスマホゲーム配信直後における「即時的な結果を求める傾向が強い」と言えます。しかし、これは「IP作りと矛盾する考え方」です。

なぜなら価値あるIPを本気で作りたいなら

・10年単位で時間とお金がかかる
・ファンの声に耳を傾け「IPとしての軸をぶらさず」やりきる覚悟が必要
・ファンの人生と共に時間経過の中で忘れられない共感を生み続けること

これらがIP作り(=ファン獲得)には必要だからです。

ですから、ホンモノのIPをつくるには10年単位で時間とお金がかかりますし
ハードルが非常に高いため、多くのゲーム会社はお金を出して他社のIPを借りてくることで時間の流れを飛び越えて、ファンを獲得するわけです。

IPを本気で作りたいなら「覚悟」が必要です。なぜなら実際に下記のような事が世の中には起こっているからです。

・全く目が出ないプロジェクトで「終了」を告げられたけど、あと1年踏ん張ったらIP化に成功した
・みんなが失敗すると反対した新規プロジェクトだけど自分を信じて押し通したら大きなIPになった
・大ヒットしてIP化目前まで行ったけど周囲からの言葉を聞きすぎた結果、IP管理に失敗してしまいIPとして途絶えてしまった

ここに書いてあるのは特定のタイトルを指しているものではなく、あくまでもサンプルなのですが、このような事が現場ではよく見られます。

ここを突破できる「強い意志」と「覚悟」、それらを「継続できる状態作り」が必要です。

そういう状態が会社組織の中で特定の人ではなく「組織の文化」として染み付いた状態が作れれば、自社IPを生み続ける、失敗してもそこで止まらず生み続ける「仕組み」が作られます。

こでもトロネコが常々お話している「マーケティングの定義」である「モノが売れる仕組み作り」であり、それを構成する1番目の要素「つくるマーケティング」の一部なのです。

ゲーム会社が他社IPを使い続けることによるメリットとデメリット

魅力的な自社IPですが、そう簡単に作れるものではありません。IPを作る組織や経験、時間的猶予もない新しいゲーム会社は、どうしても自社IP創出より、世の中に存在する既存IP、他社IPを使ったゲーム事業をしがちです。

これにはメリットとデメリットがあります。

メリット

メリットはIPの定義の部分でもお話しましたが価値ある他社IPは既にファンが存在する状態であるため次のようなメリットがあります。

・ゼロからファンを獲得する必要がないので「時間」「お金」の節約ができる

・ファンが存在するためお金がかかるゲーム事業において大きな失敗を回避できる(リスクヘッジ)

・ファンが存在しているため、ゲーム事業の事前試算が可能であり、適切な投資ができる

 

デメリット

一方で他社IPを使うことによるデメリットもあります。

これは「他社IPを使うことそのもの」のデメリットというよりは、ゲーム会社としての将来を踏まえた上でのデメリットといえます。

他社IPを使うことで、ゼロスタートではなく、ある程度のファンがいる状態でスタートできるというメリットは非常に大きいので、使うこと自体は全く悪いことではないのです。

しかし、他社IPを使い続けることで次のようなデメリットは覚悟しなければなりません。

他社IPは永遠に自社のものにはなりません

・他社IPにかけたコストや労力は他社IPのIP価値アップに貢献します

・でも、かけたコストや労力は自社の資産になりません

他社IPを使うことは「短期的」には自社のゲーム事業を安定させますが、ゲーム会社の将来を考えると危ういのです。

とはいえ他社IPを使う事を否定しているわけではありません。ゲーム会社として事業の安定と成長を望むなら

【守り】他社IPを使ったゲームによる事業の安定

【攻め】自社IP創出によるゲーム会社としての成長

この2軸をセットで展開できるかにすべてかかっています。ただし一部を除き多くのゲーム会社で、わかっていてもこれができないのは現状です。

なぜなら、【守り】他社IPを活用するスキルと【攻め】自社IPを創出するスキルはまったく別物であり、圧倒的に後者のハードルが高いからです。

トロネコは両方のゲームにおけるマーケティングをやってきましたが、それぞれ求められるスキルセットが全く異なります。

よって「他社IPでヒットを出した人」を「自社IP創出にアサイン」しても結果がでにくいのです。「他社IPでヒットを出した組織」は「自社IPを創出するヒント」をインプットすることもできません。

これは家庭用ゲーム、スマホゲーム会社の両方で苦戦している点ですが、家庭用ゲーム会社は長い歴史の中で「自社新規IP創出との戦い」をしてきましたが、まだ適応力はあるのですが、スマホゲームの場合はそういった経験が少ないので会社組織的に苦戦しがちです。

これはスマホゲーム自体が、「ゲーム運営」という「必ず終わりがあるゲーム」という特性を持っている点も影響していると思われます。

なぜなら、スマホゲームという商材自体がIP創出に必要な「点ではなく線で繋げる考え方」と相反する存在だからです。

まとめ

というわけで、今回「ゲーム業界におけるIPについて」お話してみました。

かなり奥の深い話ですので、全部話しきれていませんが、これを読んで頂いた皆様にとって「少しでも新たな気づき」になると幸いです。

今回紹介した内容について、もっと詳しく知りたい!

または、これから自社で新規IPを立ち上げよう!と思っている方がいましたらLINEチャットで気軽に無料相談できる「トロネコのカベウチ」、もしくはメールにてご連絡ください。

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