スマホゲームサービス終了をポジティブに変えるクロージングマーケティング

ゲーム開発

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今回はゲーム業界ではあまり語られていない
「ゲームアプリのサービス終了におけるマーケティング」をテーマにお話をします。

トロネコはこれを「クロージングマーケティング」と呼んでいます。

ところで、なぜゲームアプリのサービス終了に「マーケティング」が必要なのでしょうか?

それは、ゲームアプリをどうやって終えるかが、
そのゲーム会社に対するファンを増やし、結果的にそのゲーム会社に対するブランドを作るからです。

いきなり話が飛躍しすぎている印象を持たれるかもしれませんが、これが事実です。

 

結果、クロージングマーケティングが上手いゲーム会社は
5年後、10年後、20年後もゲーム会社として継続することができます。
なぜなら特定のゲームのサービスが終了しても、ファンとの信頼関係は続き
そのゲーム会社に対するファンが積みあがっていくからです。

とはいえ、クロージングマーケティングがうまいゲーム会社がどれだけ存在するかというと疑問です。クロージングマーケティングができているゲーム会社は数が限られてます。

でも、数が少ないという事は、ここをちゃんとやれば、ゲーム会社として大きなアドバンテージになる可能性があります。

話は変わりますが「ゲームアプリのサービス終了」って基本的にネガティブですよね。

ゲームアプリのサービス終了に関わる仕事なんて「社内からの興味は薄く」「やりきっても評価されず」「それ自体は楽しい仕事」ではありません。

 

結果、多くのケースで「サービスの終了」は軽視されがちで
お金も、人も充てられず、サービス終了日に向けて粛々と作業をしていくことになります。

ここからもゲームのサービス終了は基本的に後ろ向きであり、非注力の結果であり、サービス終了をどれだけ事故なく遂行してもゲーム会社で評価されるケースは稀です。

だからこそ会社も、そして現場もサービス終了に対して積極的にリソースを割いたりすることは、まずありません。

それゆえに限られた会社しか「クロージングマーケティング」をやろうとしません。

でも、それゆえに競合他社に対して未来に向けて圧倒的なアドバンテージを得ることができるというわけです。

家庭用ゲームに終わりはないけど、スマホゲームには必ず終わりがある

クロージングマーケティングは「スマホゲーム」のようなオンラインゲームおいて特に重要です。

なぜなら

家庭用ゲームに終わりはないけど、スマホゲームには必ず終わりがあるからです。

家庭用ゲームの場合、発売日を迎えると一旦終了になります。
1年後に続編が控えている場合でも、発売日と同時に区切りがつきます。
よって発売日を「終わりの日」と定義することはできるかもしれません

しかし家庭用ゲームはカードリッジ、ブルーレイディスク、ダウンロードデータなど形式に関係なく基本的に一度購入すれば永遠に遊べるわけですからゲームとして生き続けます。

どんなに月日が経ってもゲーム機とゲームソフトが物理的に使えれば遊べます。

1980年代に発売されたファミコンのマリオは、何十年たった現在においてもレトロゲームとして生き続けており、ファミコン版マリオに対して「終わり」という概念がそもそもありません

マリオに限らず、どんなにつまらないゲームで、続編が作られなくても
物理的にモノとして残るため「終わりはなく」存在し続けるのです。

つまらないゲームをゲームファンの中では「クソゲー」と呼びますが、「クソゲー」であっても、家庭用ゲームは永遠にゲームユーザーの記憶の中で生き続ける事ができるわけです。

 

一方でスマホゲームを始めとしたオンライン接続が必要なゲームは必ず終わりがあります。

サービス終了=遊べなくなる=そのゲームの終わり

というわけです。

遊べなくなるわけですから、その存在が世の中から抹消されてしまうようなものです。

かつて2010年代初頭に携帯ゲームでソシャゲが流行った時代がありましたが、多くのソシャゲはサービスを終了しており現在遊べません。

そんなソシャゲが、ファミコンのマリオのように、いまでもファンの心の中で生き続けているのかというと疑問です。

ここが、ソシャゲ、スマホゲーム、オンラインゲームには「必ず終わりがある」と考える所以です。

ゲームアプリのサービス終了はユーザーにとっては極めてネガティブと認識しよう

スマホゲームの終わりとは

・そのゲームが二度と遊べなくなる
・いままで育ててきたデータが無駄になる
・ユーザーによっては、明日から何を遊べばいいのか途方に暮れてしまう

といった感じです。

前のパートでお話した通り、この世界から抹消されてしまうようなショッキングな事態ですから、ファンにとっては「悲しい」どこでなく

そのゲームに費やした青春の1ページを、最初から無かったかのように破ってしまうようなくらいに「極めてネガティブなこと」なのです。

 

スマホゲームがサービス終了になるにあたっては運営が困難である事が原因になるわけですが、

どんなに小さなスマホゲームでも、DAUが0人という事でない限りファンは存在します。

サービス終わったら明日から何をすればいいんだろう

サービス終了によって途方に暮れるファンもいるのです。

実際に遊んでいたスマホアプリが終了する最後に立ち会った経験がある人なら、この「途方に暮れる感」は理解できるのではないでしょうか。

ユーザーにとって、この衝撃は相当なものですが
実際にサービスを運営しているゲーム会社側がどれほど、この深刻な状況を理解しているのかというと疑問です

(この認識のギャップがクロージングマーケティングを疎かにする原因でもありますが・・)

 

ゲーム会社にとっては、お金を儲ける上で阻害となるゲームのサービス終了に過ぎませんが、実際に遊んでいたファンにとっては、そんな言葉で片付けられる話ではありません。

 

ここで、注目したいのは

ゲームのサービス終了まで遊び続けてくれたユーザーは
途中で辞めていったユーザーと比較にならないほど、
そのゲームの熱狂的なファンであり皆さんの会社のファンだったりします。

・熱狂的なファンを
・ゲーム会社による自己都合のサービス終了で
・アンチファンに変えてしまうかもしれない

という視点で考えられると
ゲームのサービス終了がどれほどゲーム会社のブランド、信用、未来にとってインパクトあるものなのか理解できると思います。

サービス終了に向けた対応次第で

「熱狂的な残存ユーザーがそのゲーム会社のファンでい続けるか、ファンを辞めるのか、むしろアンチファンになってしまうのか?」

たった1タイトルのサービス終了であっても
それが積みあがっていくと、ゲーム会社の未来にとって大きな影響を与えるのです。

短期間でサービス開始、終了を繰り返すゲーム会社は自らブランドを棄損していると認識すべし

ここまでの内容を理解しているなら、

例えば「配信3か月でサービス終了」といった判断はゲーム会社としてはまずありえません。

なぜなら、ゲーム会社の信用を失い、ファンを失い、自らブランドを棄損する行為だからです。

5年続いたゲームアプリのサービス終了も
配信3か月でサービス終了するゲームアプリも

いずれもファンが存在するということを忘れてはいけません。

もしアプリ配信3か月でサービス終了するなら
最初からサービス開始を踏み切るべきではないのです。

(配信6ヶ月で終了も、3ヶ月で終了も同じようなものです。最初からサービス開始に踏み切るべきではありません)

短期間でサービス終了するようなタイトルが続くならば
今後、そのゲーム会社が新作ゲームが配信しても遊んでくれない状況になるかもしれません。

なぜなら信用を裏切り続けることで

またすぐにサービス終了するのではないか?

という疑心暗鬼にユーザーは潜在意識の中で揺れ動くようになるからです。

もし、ユーザー心理をこんな状況にさせてしまったら、
今後のゲーム事業に大きな影響を与えるのは明白です。

でも、そんな影響は未来において「じわじわ」とボディーブローのように効いてくる事が多く、いますぐ右ストレートパンチをくらうわけではありません。

そして、ゲーム会社は人材の入れ替わりも早いですし、どれだけの人が5年後、10年後の未来のことを考えられているかというと疑問です。

ゲーム会社の経営者は5年後、10年後の未来よりも今月の売上の方が重要だったりするものです。

だからこそ現場では短期間でサービス終了してしまうことに罪悪感を抱かず、何度も繰り返してしまうのです。

短期間でゲームサービスを終了してしまうことが、続いているゲーム会社は、ゲーム開発の決裁プロセスか、ゲーム開発そのものなのか?

何かしら会社の仕組みに問題があると考えるべきです。

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ネガティブをポジティブに変える「クロージングマーケティング4選」

最後にクロージングマーケティングの種類について、おすすめ順でご紹介しましょう。

①サービス終了にあたって手厚いユーザーリレーション、ゲーム運営を行う

一番のおすすめはゲーム開発サイドの顔が見えるユーザーリレーションとゲーム運営です。具体的には次のような方法が考えられます。

ゲーム運営

かつて遊んでいた人も最後に遊びたくなるような
集大成的な最期のイベントを用意する
(例:歴代ボス総出演など)

サービス終了日に向けたゲーム内の「おもてなし」を用意する
(例:ありがとうログボ、歴代人気キャラプレゼントなど)

ゲーム運営におけるポイントは、新規に開発をせず、既存のアセットだけで
最後の最後までユーザーを楽しませる「おもてなしの精神」を出せるか次第です。

サービスが終了してしまうという事実は変えられないけど、最後の日まで手を抜かず「おもてなし」をする姿勢を打ち出し続ける事です。

ユーザーリレーション

情報発信ではなくユーザーを巻き込む、ユーザー主体型のリレーション施策を用意する
例)SNSを使って既存ユーザー、かつて遊んでいたユーザーにそのゲームの想い出をテキスト、またはスクショ等で語り合えるような施策も有効です。

 

もちろん、これまでサービスを続けてこれた「感謝の気持ち」をSNSで伝える事は最低限必要です。

ただし、一方的に伝えるのではなく、ユーザーを巻き込んでみんなで「その気持ちを共有できる」ユーザーリレーション施策を考えるようにしましょう。

そして重要なのは「ゲーム運営」と「ユーザーリレーション」は単体ではなく
必ずセットで設計する必要があります。

サービス終了の発表と同時に、終了する最後の日まで
どのように「おもてなし」をするか、そして、その「おもてなし」はユーザーの期待値を大きく超えてサービス終了というネガティブな現実も、ポジティブに変換するほどのものでなければなりません。

②ゲーム外で楽しめるコンテンツを用意する

サービスが終了して、ゲームが遊べなくなっても
そのゲームの世界観や記憶を振り返れるファンの拠り所になりえるコンテンツを作るというのも手段です。

運用コストのかからないYoutubeを活用して
「設定画」「フルサイズのBGM」「シナリオ」などを動画として公開するのも
クロージングマーケティングにおける「おもてなし」としては使えます。

他社版権モノでは難しいと思いますが、自社版権モノなら可能な施策でしょう。

ゲーム自体はサービス終了になってしまいますが
これらの施策は、そのゲームがかつて存在した「記憶」を残すことはできますし
何が起こってもおかしくない世の中ですから
未来へのささやかな可能性を残すこともできます。

もし何かで火がついたり、市場変動や会社の方針が変わったら、これら資産をベースに再チャレンジをする余地も残せます。

③サービス終了告知と同時に新作発表する

ネガティブな情報をポジティブに変えるわかりやすい方法が
サービス終了の告知と同時に、新作の発表を行うというものです。

ただし、必ずしも「トロネコの大冒険」のサービス終了と同時に
「トロネコの大冒険2」を発表するといった関連性のあるタイトルである必要はありません。

「トロネコパズル」でもいいのです。

全く違うタイトルであっても
「トロネコの大冒険」の意思と想いを引き継いだ新作タイトルであば
伝え方次第ではポジティブに変換することは可能です。

④サービス終了後でもオフラインで遊べるようにする

一般的に多くみられるケースが、サービス終了後でもオフラインで遊べるようにプログラム修正した状態でアプリ配信をするというものです。

これは一見、良さそうに見えますが
開発費もかかりますので、この手段を取れるゲーム会社は限られるでしょう。
また、手間をかけた割には、ユーザーの心にどこまで伝わるのか?
という課題はあります。

また、もしやるなら、そのゲーム会社のスマホゲームはサービス終了時に
必ずオフラインで遊べるようにする、といったルールを設けるくらいに徹底的にやるべきです。

特定のタイトルはやるけど、特定のタイトルはやらない

という足並みがそろわない状態は
クロージングマーケティングの目的をゲーム会社のブランディングとするならばむしろ統一感がなくユーザーに対して違和感を与えるかもしれません。

まとめ

今回、サービス終了時に必要な「クロージングマーケティング」についてお話しました。
何かしら皆さまの気づきになれば幸いです。

というわけで今回はここまで!