こんにちはトロネコです。
今回はちょっと怖い話です。
ビジネスには何事も「決断」が必要です。
様々な選択肢の中から「決断」する時には、その「決断がベスト」と思って選択するわけですが、
でも、それがただの妥協であり、思考停止の結果だとしたら
ゾッとしますよね。
考えることをやめた結果、その選択を「決断」した
でも当人は、その「決断」は間違っていない、妥協や思考停止の結果ではないと考えているわけです。
つまり、「決断」と「妥協」と「思考停止」は表裏一体という怖さが、ここに存在します。
これはゲーム会社に限った話ではなく、あらゆる企業や日常生活においても言えることです。
ただしゲーム会社の場合は
論理的思考で判断できる会社と、そうでない会社のギャップが大きいですし
論理的思考で判断できる会社でも、考える事に疲れて辞めてしまった結果、「思考停止」による「決断」をする場合があります。
なぜなら、それくらいゲームビジネスとは
答えがありそうで、答えがみつからない、常に時代と共に変化が問われるビジネスだからです
今回は「決断」と「妥協」と「思考停止」は表裏一体というテーマについて深く掘り下げて解説します。
ゲーム事業で決断が求められるとき
ゲーム事業は決断の連続です。
・ゲームジャンルは?ターゲットユーザーは?
・数多くのゲーム企画の中でどれを本開発するべきか
・投資コストは?どうやって回収するのか?
・あらゆるプロモーション設計から出稿媒体選びまで
日々、決断の連続です。
しかも、スピード感を持って決断しなければなりません。決断できないゲーム会社があるとするならば、無駄に開発費や制作コストが積み上がってしまう事もあります。
内容的には5億円で開発できるゲームだけど、決断ができず、実際には10億円もかかってしまった・・・・
いまプロジェクト終了の決断をして、ゲーム発売をしなければ5億円の損失で済んだのに、決断できずゲーム発売(配信)してしまい+5億円(合計10億円)の損失を出してしまった
といった事が実際にあるからです。
「決断」の精度をあげることが、ゲーム事業の成功失敗に大きく影響している事は疑う余地がありません。
実際にトロネコも20年以上のゲームマーケティングの仕事を通じて、「決断」の重要性を何度も実感してきました。
ゲーム業界において、決断ができる企業は強いですが
無知から生まれる決断しかできない企業は100%失敗します。
そして、それら失敗する「決断」は常に「妥協」と「思考停止」との隣り合わせに存在するのです。
ベストと思って「決断」したことが
見る人がみれば、ただの「妥協」であり、「思考停止」による判断だったりするのです。これが本当にやばいんですよね・・・
「決断」と「妥協」と「思考停止」の違い
「決断」と「妥協」と「思考停止」は表裏一体です。
いや、そんな事ないでしょう!
という意見もあると思いますが、ゲーム業界でイケていると思われている企業でさえも、常に「決断」と「妥協」と「思考停止」の境界線で戦っているのです。
この3つの違いについてまとめると次のようになります。
決断 | 現状の判断としては、これがベストであるという選択 |
妥協 | 現状の限られた選択肢の中での決断 |
思考停止 | これ以上考える事を辞めた状態ゆえの決断 |
「決断した!」
という言葉には潔さも感じますが、その決断は限られた選択肢の中での「決断」であれば、それは「妥協」に過ぎません。
また、これ以上考えることが疲れた、時間リミットに追われて決めなければならなかった、といった状態は「思考停止」という「決断」に過ぎません。
決断しました!
という人を見ながら、
「それって、ただの妥協じゃん」
「考え尽くしていないで時間制限に負けただけじゃん」
という状態が多かったりします。
何度も繰り返しますが、「決断」と「妥協」と「思考停止」は表裏一体、背中合わせなのです。
世の中の現場は「妥協」でまわっている
しかしビジネスを進めていく以上、「決断」しないと前に進めません。
トロネコは「決断するな!」といっているのではありません。
ここで知って欲しいのは
「決断には見た目は同じでも、まったく異なる決断が存在するということです」
見た目は同じでも決断には
・無知ゆえの決断
・怠慢による決断
・諦めによる決断
・環境に依存した決断
などがあります。
ゲーム業界においては、これら4つの「決断」が実際に存在します。
マーケティング領域においては無知な決断をしがちですし、
決裁者の多くは必ずしもゲーム事業において万能ではなく、無知な世界で決断をしがちです。
多くの現場のプロデューサーが真面目で優秀とは限らず、中には「怠慢」や「諦め」で決断する人もいるからです。
また予算や自社の環境、リソースの範囲内で決断しなければならない場合もあります。
そもそもゲーム事業は常に時代と共に変化が問われるビジネスであるため
「答えがありそうで、答えがみつからない」
といった環境の中で決断を迫られる場合もあります。
致命的な決断をしても大企業なら、全然問題なく存続できますが中小企業は大きな痛手になります。
でも近年、スマホゲーム業界でも開発費、宣伝費が高騰する中で、大企業でも致命的な決断が連続すると、存続に関わる場合もあるのです。
「妥協」と「思考停止」から脱却して「決断」する方法
ならば、どうすれば「妥協」と「思考停止」から脱却して「決断」できるようになるのか?
これについては、トロネコの20年以上のゲームマーケティングの経験から、次の6つが効果的です。
①視野を増やす
「決断」は決断する人の過去の膨大な失敗、成功経験が影響を与えます。実体験がなく、机上の情報だけで判断するなら、その情報の精度に依存します。
もう少し分かりやすい例をあげるなら
「ファミコンを遊んで育った人」
「ファミコンを知らず、スマホゲームしかやったことがない人」
「全くゲームをやったことがない人」
この3人のゲームにおける人生経験も違います。
つまり精度の高い「決断」をするには、視野の多さが影響します。
もし、あなたの視野が不足しているなら、豊富な経験、視野を持っている人をメンバーに加えるだけでも対応できます。
やってはいけないことは、
視野がない、狭いことを自覚せず過信して、無知でありながら決断しようとすることです。
②なぜ、なぜ、なぜ、を繰り返す
経験豊かであっても間違った決断をしてしまう事があります。
20年以上、マーケティングをやってきたトロネコでも間違いをしてしまいます。
「間違ってしまう決断をしてしまうことがある」
ということを理解しているからこそ、常に止めない習慣みたいなものがあります。それが
なぜ、なぜ、なぜを繰り返すという習慣です
・なぜ、こんな結果になったのだろう
・なぜ、うまくいかないのだろう
・なぜ、この方法が正しいと言い切れるのであろう
といった感じで「なぜ」を止めない姿勢が重要です。
「なぜ」を止めない姿勢を、
ただ、指摘したいだけじゃん
文句をいいたいだけじゃん
という人もいますが、これは間違いです。
「なぜ」を繰り返すことは、「思考停止」に陥らない習慣だからです。
「なぜ」を辞めた時は「決断」できたときか
もしくは「思考停止」に陥った瞬間なのです。
③常識を疑う
「決断」は「常識」に基づいて行われる場合が多いです。
しかし、その「常識」は本当に常識なのか?と言われると怪しい場合があります。特にゲーム業界の場合は「常識」というだけで
・何も考えずゲームに実装される機能や
・何も考えずに実施されるプロモーションが
多すぎるからです。
よって、当たり前と思われている「常識」を疑ってみることも「妥協」と「思考停止」から脱却する方法として有効です。
下記はあくまでも一例ですが、「常識を常に疑う癖をつける」というのもおすすめの方法です。
④HOW思考を捨てる
ゲーム業界に限った話ではないですが、
・まず施策ありき
・まずゲームとはこうあるべき
・こういうものを作りたい
といったようなアイディア先行で物事が進められている場合が多いものです。そのプロモーションやゲーム機能は、たしかに面白いかもしれないけど、このゲームタイトルのユーザーに合致しているかは別の話です。
HOW思考については下記の記事で書いていますが、結論ありきで進められているのがHOW思考であり、これは「思考停止」の代表的な症状です。
HOW思考を徹底的に排除すると、「妥協」と「思考停止」から脱却して「決断」することができるようになります。
⑤議論をし尽くす
多くの現場では
議論を尽くしたようにみえて、全然議論できていない場合があります。
とはいえ議論を尽くすといっても時間をだらだらとかければいいという話ではありません。
「限られた時間の中で質の高い議論を行う」
これが重要です。
議論を尽くすには、抜け漏れがないように議論をするための準備が大切です。
・アジェンダの作り方
・事前情報の収集
といったフォーマット化によって改善する事もできますが
・議論を進行する人のファシリテーターとしてのスキル
・圧倒的なゲーム業界における経験値
も影響します。
前者は仕組み化(当サイトではマーケティングの標準化と呼んでいます)である程度対応できますが、後者は議論を仕切る人の能力に大きく依存してしまいます。
⑥判断できる人に決裁権を委譲する
「決断できない」「判断できない」
のであれば無理に、あなたが決断しようとしない
決断できる人、判断できる人に決裁権を委譲することをおすすめします。
ゲームのようなエンタメ事業においては
論理的×感情的
この2つを組み合わせた決断が必要です。
いずれも経験と知識と能力が求められます。決裁権を持っている人が必ずしも正しい決断できるとは限らないのです。
決断できないなら、決断できる人に任せればいいのです。
「妥協」と「思考停止」を排除した「決断」ができるとゲーム事業は変わる
「妥協」と「思考停止」を排除した「決断」ができるとゲーム事業は変わります。
とはいっても、どのように変わるのか?
イメージがつかない人もいると思いますので、実際に変化が期待できる3つのことについて解説しましょう。
①あらゆる精度が上がる
ゲーム開発、プロモーションにおける精度があがります。
少なくても過去の結果を基にした判断においては、同じ失敗を繰り返さない「決断」ができるようになります。
②組織が成長する
「妥協」と「思考停止」から脱却して「決断」する方法として紹介した6つのことを実行していくことで、個人ではなく組織が成長します。
個人ではなく、組織の成長という部分がポイントであり
属人性を排除して、会社そのものが継続的に成長し続けるベースがつくれるのです。
③判断のスピードがアップする
スマホゲーム会社の場合は会社のカルチャーもあって、判断、決断のスピードは圧倒的に早いものがあります。
一方で家庭用ゲームの場合は根回しが必要だったり、判断のスピードが遅かったりします。
(もちろん上記には例外もあります)
無駄な先延ばしを行わず、決断のスピードアップができるゲーム事業ができるようになります。
つまり
見込みがないゲームを最後まで作り切ってしまいゲーム発売しなければならない状態になったり
見込みがあるゲームにリソースを集中投資すべき判断が遅れて、機会損失をしてしまったり
といったことがなくなるわけです。
今回の記事の冒頭で例にあげた
内容的には5億円で開発できるゲームだけど、決断ができず、実際には10億円もかかってしまった・・・・
いまプロジェクト終了の決断をして、ゲーム発売をしなければ5億円の損失で済んだのに、決断できずゲーム発売(配信)してしまい+5億円(合計10億円)の損失を出してしまった
といった事も回避できるようになります。
まとめ
今回は「ゲーム開発とマーケティングにおいて、妥協と決断と思考停止は表裏一体・背中合わせ」というテーマでお話をしました。
一番ヤバいのは
妥協や思考停止をしていないという自負と過信をもって決断しているような場合です。
いまは会社の業績がなんとなくうまくいっていたり
もしくは失敗していても、他の好調な事業で埋め合わせができているので、その深刻さが表面化していないだけであっても、状況や時代の変化によって、急に深刻化する場合があります。
そうなるともう手遅れだったりしますので、
今回、お話をしたような内容を日常的に、少しづつ実行していく事から始めるのが現場にストレスを与えず、ゲーム事業を成功するための秘訣です。
というわけで、今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。