スマホゲーム・家庭用ゲームがヒットするめに必要な3つのこと【ゲームクリエイター/マーケター必見】

ゲーム開発
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最近、新作ゲームをヒットさせるハードルがあがっている理由(ゲームアプリマーケティング)

こんにちはトロネコです

ゲーム業界で働いている人なら、最近、強烈に感じているかもしれません。それは

「新作ゲームをヒットさせるためのハードルが、急激にあがってしまったということを」

新作タイトルを発売しても、簡単にヒットを生み出せないですし、むしろ全く売れず失敗する事が多いと感じるかもしれません。

原因としては既にたくさんのファンを抱えた先行タイトルが存在している状態であり

それでいて新規ユーザーを獲得できるようなホワイトスペースは、ほぼ塗りつぶされてしまっていて、新作タイトルを配信してもユーザーを獲得しにくくなってしまったという

ゲームアプリ市場の成熟化が原因と考えられるでしょう。

さらに、海外、特に中国資本による圧倒的な開発費をかけて作られたスマホゲームの日本参入により、スマホゲームに求められる基本的な品質基準が大きく引き上げられたというのも要因かもしれません。

これまでのスマホゲームの開発、売り方では、戦いにならない状態になっているという現実があります。

 

しかし、トロネコはこれらの状況は一時的なことだと思っています。

なぜなら、このような状況は家庭用ゲーム業界では大なり小なり規模に違いはありますが、何度も繰り返されてきたことであり

ゲームの見た目のリッチさや、お金をかけたパワーマーケティングは、ゲームの面白さの本質と必ず一致しないからです。

 

むしろ、現状の厳しい市場感はゲームのそのものの本質を見つめ直す良い機会になると思っています。本質に気づき、自ら変化できたゲーム会社次の時代を生き残っていけるとも思っています。

ならばその本質とは何か?

それは、「ゲーム事業全体を通してマーケティングの本質に踏み込むこと」です。

当サイトでも繰り返しお話をしていますが

マーケティングとは「ゲームが売れるための仕組みをつくること」であり

プロモーションとマーケティングは同じではなく

プロモーションはマーケティングにおける「ゲームが売れるための仕組みをつくること」の一部に過ぎません。

そしてマーケティングとは、マーケティング部門や営業部門だけが持っているスキルではなく、ゲーム事業に関わるすべての人、ゲームクリエイターも持っているべきスキルです。

そう考えると、マーケター、ゲームクリエイターを分けて考えること自体が適切ではなく、両者は同一で語るべきかもしれません

 

 

ところで、どれだけの人がマーケティングの定義である「ゲームが売れるための仕組み」について理解しているでしょうか?

下記の記事でも書いていますが、定義について理解している人はまだ多くはないのです。

具体的には

マーケティングの定義は「ゲームが売れるための仕組みをつくること」であり、その仕組みは次の3つのマーケティングプロセスから構成されます。

これについてはこちらの記事を読んで頂ければと思いますが、これら3つのプロセスを実行する目的とは何なのか?

実はこの「目的」に、みなさんが作っているゲームが成功するか、失敗するか、運命の分かれ道となります。

今回はゲームをヒットさせるために必要な3つのことについてお話をしましょう。

ゲーム・家庭用ゲームがヒットするめに必要な3つのこと

市場とファンの存在

いま開発しているゲームが売れるのか?それとも全く売れないのか?

どのくらいの事業規模が狙えるのか?

まったくビジネスとして成立しないのか?

これらを左右する要因は「市場とファンの存在」です。

 

例をあげてみましょう。

500万人の熱狂的ファンが存在する人気漫画のゲーム

現時点でファン0人の完全オリジナル新作ゲーム

これらは説明をするまでもなく、市場とファンの存在が全く異なります。

 

人気漫画のゲームを作るなら、既に500万人の熱狂的なファンが存在するわけですから、新たにファンを獲得する必要はありません。ただシンプルに500万人のファンを満足させるゲームを作ればいいのです。

500万という市場規模の中でのビジネスになります

 

 

一方で現時点でファンが0人の完全新規オリジナルゲームは、ファンを1人、2人、1万、5万、10万人と増やしていくことから始めなければなりません。

それには膨大な時間とお金と労力がかります。

漫画連載20年かけて積み上げた500万人の熱狂的なファンと同じ状態をたった、1年でつくれるわけありません。時間はお金では買えないのです。

 

「時間はお金で買うことができる」という考え方を持っている人もいますが、これは厳密には不可能です。

なぜなら

ファンというものは、人生という時間の流れとシンクして「体験」を積み上げたことでファンとしての熱量が蓄積されていくからです。

お金をかけて、短期間で情報を伝達したり、体験の量はつくれたとしても、ユーザーの人生とシンクした「体験」は、時間という要素が必要となります。

 

ファンをゼロから積み上げていくことの大変さはゲーム会社も知っています。そこで、ファンを作れないと自覚している会社や、

ファンを作るだけの時間の猶予がない会社は、自らファンをつくらず、既にファンが存在する人気漫画の権利を借りてきてゲームを作ります。

または、1度、ファンがつくれると、そのゲームの続編をつくることで、ゼロでからファンをつくる苦しみを回避しようと考えます。

 

よって500万人のファンが存在する人気漫画のゲーム化と

ファン0人からスタートする完全自社オリジナルゲームではまったく難易度が異なります。500万人という数字は仮ですが、50万人、100万人であってもファンが存在する状態からのスタートは

ほぼゲーム事業の成功が保証されたようなものだからです。あとはファンが求めているものを間違えず、期待値を超えるだけで成功できます。

一方でファン0人からスタートする完全自社オリジナルゲームを成功させるのは極めて大変な作業です。

・どこに市場が存在するのか?

・その市場はどうすれば攻略できるのか?

・戦うべき競合は誰なのか?

いろいろ考えることがあります。

これを明確にする作業が「マーケティングの定義」の中で登場した3つのプロセスの1番目に相当する「つくるマーケティング」なのです。

 

「競合が存在しないホワイトスペースを探し出し、そこで勝負をするべき」という意見も聞かれますが、ゲームは歴史も長く、みんなが見落としているようなホワイトスペースを探すのは不可能ではないけれど、極めてハードルの高い話です。

またゲームは嗜好性の高い商材であり、多くのユーザーが既に何かしらゲームを遊んでいるレッドオーシャンの状態であり、これ以上の未開拓のユーザーを発掘することも難しい状況ですから

新規ゲームが成功するには、他のゲームからユーザーを奪い取ってくるしかないのです。

 

ゲームの面白さ

「ゲームの面白さ」はゲーム事業を成功させる上で重要な要素です。

500万人のファンが存在する人気漫画をゲーム化しても、ゲームがつまらなければ事業として失敗します。

一方でファンが0人からスタートした、完全オリジナルゲームを立ち上げたとしても、ゲーム自体が抜群に面白ければ成功するチャンスはあります。

 

かつて、ゲームアプリの市場においては、ゲームの面白さがそれほど重要とされておらず、そこそこ面白ければ売れた時代もありました。

2000年代前半にはガラケーでソシャゲがヒットしましたが、ゲームの中身というよりは、

人間同士の繋がりや、自己顕示欲を刺激することによる「サービスの楽しさ」が受け入れられた時代もあったわけです。

その後、ガラケーからスマホゲームの時代になっても、ゲームシステムを流用したガワガエだけのゲームアプリが続々と作られました。

しかし、現在、どこかで見たような汎用的なゲームシステムに、人気漫画のキャラクターを乗せたゲームでは戦えない状況になっています。

家庭用ゲーム業界ではずっと前から気づいていたけれど、ようやくスマホゲーム業界でも気づいたわけです。

ゲームに必要なのはゲームそのもののコアな部分における面白さだということを

 

ただし、これからのゲームの面白さは1000万人が面白い!と感じるものではなく、10万人でもいいので、面白い!と感じてもらえるターゲットの絞り込みが重要になります。

そもそも、ゲームは嗜好性の高い商材であり、多くのユーザーが既に何かしらゲームを遊んでいるレッドオーシャンの状態です。

その中で新規タイトルが最初の一歩を踏み出すためには、10万人でもいいので圧倒的に面白い!と感じてもらえる厳選された面白さに踏み込めるかが重要です。

ゲームの拡散力

既に多くの人が何かしらのゲームを夢中で遊び、課金している状態です。

新作ゲームが成功するためには、そんな夢中になっているユーザーを引き剥がして、遊んでもらう必要があります。

 

もしみなさんの会社が無制限にお金を使える状態なら、無制限に開発費や宣伝費をかけて、ユーザーを獲得することができるかもしれません。しかしビジネスとしては収支があわず失敗してしまうでしょう。

また宣伝費をかけても獲得できるユーザー数には限界があります。みなさんのゲームタイトルのターゲット市場が仮に100万人だとしたら、宣伝費をかけて獲得できるユーザーは20万人、2割程度といわれています。

つまり無限にお金があっても獲得できないユーザーが存在するわけです。

TVCMをどれだけ流しても獲得できないユーザーは必ず存在しますから

 

 

「ゲームは嗜好性の塊である」という話をしましたが、スマホゲーム、家庭用ゲームの両方で共通して言えることですが

最強のユーザー獲得はクチコミです。

・友達に誘われたから

・友達がやっているから

・仲間外れにされたくないから

・そのゲームをプレイするように強制されたから

 

リアルな人間関係におけるクチコミ効果によるユーザー獲得ほど、強力なものはありません。

 

具体例をあげると

モンスターハンターは4人でプレイすることで遊びの幅が広がるゲームなので、友達を誘ってゲームを買いにいく

というマルチプレイゲームですが、「友達を誘う」というわかりやすい現象がPSP(プレイステーションポータブル)時代のモンハンではありました。

当時、モンハンがPSPで発売されるとゲームショップには友達4人でモンハンを買いにいったわけです。

 

これはスマホゲームでも同じことです。

宣伝で1人インストールさせたら、そこで終わるのか

それとも、その人が他の誰かを誘って拡散効果が見込めるのか?

ということです。

 

宣伝で獲得できるユーザーはターゲット市場の2割程度であり、残りの8割は副次効果によるインストールになります。実際に目に見えないだけで、実態としては無限に宣伝費を使えても、ターゲット市場の10割すべてを宣伝費だけで獲得することはできません。

(実際に長年マーケターをやっていると、宣伝で獲得できる限界の存在を知る事になります)

 

宣伝で獲得した1ユーザーが、友達を誘うかどうかは

そのゲームの遊びの中身、拡散伝播性に大きく依存するわけです。

 

でも誤解して欲しくないのは、ただ4人マルチプレイのゲームを開発すれば、勝手に拡散伝播するというわけではなりません。

ひとりよりも2人、2人よりも3人、3人よりも4人いるとゲームが楽しくなる

損得勘定抜きで、自然な気持ちで友達を誘っていっしょに遊びたい

一緒に遊ぶことでゲームも楽しくなるし、友達とも仲良くなれる

といった「マズローの5段階欲求説」を刺激するようなゲームのコアな遊び、仕組み、プレイサイクルに「拡散力」「伝播力」を盛り込めるかが重要なのです。

しかし、多くのゲームでは、この深い部分に踏み込むことをせず

・ただマルチプレイ機能を実装したから

・友達招待機能を実装したから

・SNS連携機能を実装したから

・いま遊ぶとゲーム内アイテム(=インセンティブ)をプレゼントするから

といった表面的な機能や施策で拡散、伝播させようとしています。

これが本質的にうまくいかないのは既にご存知でしょう。

 

ゲームにおける本質的な拡散力、伝播力はゲーム企画、開発段階から「つくるマーケティング」ができているかにかかっています。

マーケターはゲーム開発段階で「マズローの5段階欲求」に相当するプロセスやユーザー感情に影響する要素が実装されているのかチェックすることも役割のひとつだからです。

ゲームは発売・配信前に勝負がついている

恐ろしい話ですが、多くのゲームが発売する前で勝負がついています。

配信発売に踏み切るわけですから、ある程度の勝機を持っているはずなのですが、自分自身が認識していないだけで多くの場合は

「負け確定」の状態で発売配信に踏み切っているのです。

 

最近は、これについてゲーム会社も気づき始めており、ゲーム配信前、発表する前に社内でプロジェクトを中止したり、厳選した企画しか通らなくなってきています。

それでも、多くのゲームが発売、配信され、スマホゲームの場合は配信後、3ヶ月以内でサービス終了となるタイトルあります。

配信3ヶ月でサービス終了となるゲームがあるとすれば、それは配信をするべきではなかった、配信する前にやるべきことがあったはずです。

しかし、多くのケースで、

・もしかしたら売れるかもしれない

・作ってしまったから、とりあえずだそう

といった判断が存在しています。

 

多くのケースで

「市場やファンの存在」

「ゲームの面白さ」

「ゲームの拡散力」

を担保できない状態で配信、発売に至っています。

ならばどうすれば「負け確定」とならない状態で配信発売に踏み出せるのでしょうか?

成功確率をあげるために必要なこと

トロネコはマーケターなので、マーケティング視点で成功確率をあげる方法をお話しましょう。

これからあげる事をやれば成功確率を確実に高めることができます。

①マーケティングの定義を構成する「3つのマーケティングプロセス」を実行する

当サイトでは、さらに細分化した「マーケティング100リスト」も公開していますので、これをチェックリストとして使って頂くと、やるべきことが明確になると思います。

②仮説と検証を繰り返して真実に近づく

技術の進化と、ユーザーの変化によって、求められるゲームも変化します。

とはいえ、スーパーマリオをいまプレイしても面白いように、ゲームのコアの部分は大きく変わらないのですが、細かいニーズは変化し続けています。

そのニーズを理解するためには

仮説と検証の繰り返しが必要です。

市場調査やユーザーインタビューは必要ですが、実際のゲームプレイと紐づいていないため、そこに真実は存在せず、あくまでも仮説に過ぎないのです。

そこで、仮説を検証する必要があるのですがCBT、OBTよりもチューニングテストが仮説検証にはおすすめです。

下記の記事でも詳しく書いていますのでお時間のある時にでもご覧ください。

③企画書にゲームクリエイターの意思を込める

一番最初にペラ1枚のゲームの企画書をつくった時に

・このゲームが他にはない唯一無二の面白さは何か?(独自性)

・その面白さはシンプルに伝えられるものか(届け方)

・そして誰に遊んで欲しいゲームなのか(ターゲット)

この3つが明確になっていれば大きな失敗を回避できます。

 

しかし、多くの場合が

他のゲームでも代用できるような面白さであり

他のゲームでつかったパーツの組み合わせで構成されており

遊んでみないとその面白さはわかりにくく

「20代男性、漫画好き」くらいのターゲット設定しかできていない場合がほとんどなのです。

何が面白くて、誰に向けて作られたのか曖昧なゲームの企画書が出来上がり

プロトタイプ版がつくられ、本開発が進められ

完成したものをマーケティング担当(=プロモーション担当)が売らなければならない、という状態では、奇跡が起きない限りまず売れません。

とはいえ、1000回に1度くらい奇跡が起こるのもゲーム業界の面白いところなのですが、999回は奇跡が生まれるわけでもなく、失敗して消えていくのです。

まとめ

「ゲームがヒットするために必要な3つのこと」

というテーマでお話をしました。

今回の内容は必ずしも皆さんの会社の状況にマッチしない場合もあると思いますし、今回の内容は必ずしも正解とは限りません。

でも、こういった方法や考え方があって、それを踏まえて自分たちはどう思うのか?何ができるのか「皆さんの中で議論ができるか」が重要です。

ネットでこんな記事を見つけたけど、どう思う?

そんな会話がゲーム会社やゲーム開発をされている皆さまの中で始まると大変嬉しいです。

というわけで今回はここまで