ゲーム事業における広告宣伝・PR広報・マーケティング・ブランディングの違い比較
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回はゲーム業界における「マーケティング」 「宣伝広告」 「PR広報」「ブランディング」といった4つの違いについて具体例をあげながら解説していきます。
なんとなく違いをわかっていても、うまく説明できない。
といった状況を解決します。
そして、それぞれの分野において重要な役割もご紹介します。
マーケティング
マーケティングとは何か?
「モノが売れる仕組みつくり」である
そして「モノが売れる仕組み」は
3つのマーケティングプロセスから構成される
これがマーケティングの正体です。
当サイトでも下記の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
【関連記事】「マーケティングの定義とは?」すぐに答えられますか【一言で簡単にわかりやすく解説】
3つのマーケティングプロセスを
ユーザーに対するアプローチという形で表現すると下記のようになります。
「①つくるマーケティング」でつくったゲームを
ゲーム配信直後は「②とどけるマーケティング」で伝えて
ゲーム配信後はゲームの運営の中で「③とどけつづけるマーケティング」で伝え続けるという流れになります。
とどけたい相手(ターゲット)は誰か
その相手に対してとどけたいゲーム(プロダクト)は何か?
そのゲームの中から切り取ってとどけたいこと(訴求軸)は何か?
これら「とどけるための戦い方」を整理したことが「マーケティング戦略」になります。
マーケティング戦略を実行する上で、お金を使った広告宣伝や、PR、時にはブランディングが必要なときもありますが、
マーケティングとは「モノが売れる仕組みつくり」ですから、
厳密にはお金を使った広告宣伝や、PR、時にはブランディングをしなくても、モノが売れていく「仕組み」をつくることがマーケティングでは重要になります。
マーケティングの定義である「モノが売れる仕組みつくり」を実現するには、必ず「①②③」のプロセスを1個も飛ばさず、段階を追って伝えている状態が必要です。
「①つくるマーケティング」ができていない状態で、その魅力を届けようとしてもユーザーには伝わりません。
「②とどけるマーケティング」とは「プロモーション」「宣伝」「広告」に相当するパートです。
「プロモーション」「宣伝」「広告」だけを使ってゲーム会社がユーザーに対して一方的に
このゲームは面白いよ
きっとあなた好みで、探していたゲームだよ
と繰り返し伝えてもうまく行きません。
これはマーケティングではなく、マーケティングの定義である「モノが売れる仕組みつくり」を実現するための手段のひとつである「広告」「プロモーション」であり、マーケティングとイコールではないのです。
広告宣伝
「広告宣伝」は「マーケティング」の一部に相当する機能になります。
前のパートでマーケティングとは
「モノが売れる仕組みつくり」である
そして「モノが売れる仕組み」は
3つのマーケティングプロセスから構成される
という話をしました。
この3つのマーケティングプロセスの2番目にあるのが「②とどけるマーケティング」です。これが「広告宣伝」または「プロモーション」に該当するパートになります。
「広告」「宣伝」「プロモーション」は同じ意味を持ちます。
厳密には「広告」といえばお金を使って雑誌、Webなどに広告を投下する「広告出稿」をさします。「宣伝」「プロモーション」といえば広告出稿に限定しないけど、基本的にお金が発生する商品の告知活動となります。
「広告宣伝」については「②とどけるマーケティング」「③とどけつづけるマーケティング」で行います。
ちなみに「②とどけるマーケティング」「③とどけつづけるマーケティング」の両者は基本的には同じ「広告宣伝」「プロモーション活動」なのですが細かく違いを整理すると以下のようになります。
・②とどけるマーケティング
ゲームが発売された直後に「①つくるマーケティング」によって作られた魅力を適切にユーザーにとどける
・③とどけつづけるマーケティング
ゲーム配信後に、スマホゲームならゲーム運営フェーズにおいて「①つくるマーケティング」と「②とどけるマーケティング」をぐるぐるまわしながら「とどけつづける」といったイメージになります。
当サイトでも下記の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
【関連記事】「マーケティングの定義とは?」すぐに答えられますか【一言で簡単にわかりやすく解説】
「広告宣伝」とは
このゲームは面白いよ
きっとあなた好みで、探していたゲームだよ
といったように一方的に「告白」をしているようなイメージです。
一方的に「告白」をしても「①つくるマーケティング」が実行できていないと「告白」を受けたユーザーは次のように感じてしまいます。
このゲームが面白いっていうけど、どこが面白いの?
ゲーム画面は地味だし、映像を見ても面白そうに思えないし
「誇大広告」という言葉があります。
その商品が持っている魅力以上に、大きく見せようという見せ方ですが、どんなに大きく見えても、ゲームを遊んでもらえなければ広告としての意味がありません。「①つくるマーケティング」ができていなければ、どんなに「広告」をしてもユーザーの心を動かすことはできないのです。
マーケティングができていなくてもお金があれば「広告宣伝」を実行することは可能です。
その結果に「認知」を上げることはできますが、「マーケティング」ができていない状況では、「ただの認知」で終わってしまい、売上に結びつかないのです。
「広告宣伝」はそれ単体ではなく「マーケティング」とセットで設計されることで価値を生みます。
PR広報
ゲーム事業におけるPR(Public Relation)とは
ゲーム会社から直接、情報伝達するのではなく、ゲームメディアを通して情報伝達する手段です。
厳密にゲーム会社のTwitterは広告宣伝、プロモーションなのか?PRなのか?と言われると区別が難しいですし、もしゲーム会社が自社でゲームメディアや、それに準ずる強力なメディアを所有している場合、そこで自社商品を告知することが広告宣伝、プロモーションなのか?PRなのか?という議論もあるでしょう。
ただし、ここではわかりやすいように
ゲーム事業におけるPR(Public Relation)とはゲーム会社から直接、情報伝達するのではなく、ゲームメディアを通して情報伝達する手段である
と定義しておきましょう。
「広告」の場合は見え方そのものが「広告」としてユーザーには見えます。分かりやすい事例をいうとWeb広告やTVCMは明らかに広告そのものです。
広告はゲーム会社側の資金次第で出稿掲載ができる「コントロール性」に優れていますので、好きな時に企業から情報発信が可能ですが、企業による広告色が強いとユーザーは
広告かぁ、ちょっと身構えてしまう。
となってしまうわけです。
実際にこんなセリフをユーザーは言葉にはしませんが、無意識の中で「身構えて」しまうので情報の伝達はできても、情報の浸透度や共感度が落ちます。
一方で、PRはメディア(第三者)を経由して情報を伝えるため、そのメディアの信用度を借りながら情報をユーザーに伝えられます。
PRは「②とどけるマーケティング」「③とどけつづけるマーケティング」の一部として存在し、ゲーム事業の場合はゲームメディアを通してユーザーにとどけられます。
新聞に記事が掲載されたら社会的な存在感のような箔が付くように、PRには信用度と情報の浸透度、共感があります。ただし、ゲーム会社のPR担当であるあなたがどんなにゲームメディアにPR活動をしても、そのネタを掲載するかはゲームメディアの判断次第ですから、PRはゲーム企業による「コントロール性」が低くなります。
広告とPRの違いをまとめると次のようになります。
比較項目 | PR | 広告 | 補足 |
信用度 | ○ | △ | PRはメディアの力を借りて第三者の評価としての印象を与えられる |
伝達度 | × | ○ | 広告に比べるとPRはゲーム企業側が希望する情報伝達がしにくい |
共感度 | ○ | △ | PR記事の書き方次第ではユーザーに対する共感度が高くなる |
コントロール性 | × | ○ | 広告はゲーム企業が自由に出稿できるがPRはゲームメディア判断 |
コスト | ○ | × | PRは基本無料のプロモーション活動といえる |
まとめると
メディアを通して代弁しながら情報を伝える「第三者目線」がPRです。
PRにはお金が発生するペイドパブリシティと、お金が発生しない無料パブリシティが存在します。お金が発生するペイドパブリシティは「広告」と「PR」の良いとこどりを狙った施策です。記事、動画、SNS投稿の中に「PR」と記載する必要があります。
ゲーム業界においてPRに対する意識はゲーム会社ごとで大きく異なります。
家庭用ゲーム会社のように長年にわたってゲームメディアとの関係を築いてきた会社はPRに対して独自のコネクションを持ち注力しています。
一方でスマホゲーム会社の場合は、あまりPRに人的工数を割かない、もしくはあまり重要視していないケースも見られます。
スマホゲームの場合、PR活動をどんなに頑張っても明確にKPIには反映しにくいことや、効率化と結果を追求する傾向にあるので手薄になりがちです。一方で家庭用ゲームの場合は単純に「今回の新作ゲームを単発で売る」のではなく、来年以降も新作を発売していくための「長期に渡ったプロセスのひとつ」としてPR活動を考えていますので、「目先の売り上げのためだけでなない」という認識がPR活動には含まれているのです。
PRと広報の違い
よくあることとして
PRと広報を混同しているケースがあります。
ゲーム事業の場合は次のように整理することができます。
PR | 個別ゲームタイトルに紐づいた無償のプロモーソン活動。ゲームメディアへのアプローチやプレスリリースの作成、無償でゲームをニュースとして発信する方法を企画したりする人 |
広報 | ゲーム企業の情報を外部に対して発信する人。個別ゲームタイトルに紐づかない |
PR広報が混同しているケースは、小さな会社で、ひとりでその両方を兼任しているケースが挙げられます。ただし、役割は全く異なるので
「PR」の仕事を「広報」と表現するのは間違っていますし、その逆も同じです。
ブランディング
マーケティング、宣伝広告、PR広報について解説してきましたが、最後に取り上げるのは「ブランディング」です。
「ブランド」とはユーザーがその商品、または企業、ゲームに対して感じる印象、価値になります。
「ブランディング」とはユーザーがその商品、または企業、ゲームに対して感じる印象、価値を作り出す活動になります。
「サッカーといえばウイイレでしょ」
「ハンティングゲームといえばモンハンでしょ」
このようにゲームの場合は時間をかけて蓄積された「面白さ」「信頼」「体験」「イメージ」などから構築される目に見えない価値が「ゲーム業界におけるブランド」であり、このような価値を作り上げる活動が「ブランディング」になります。
ブランディングが成功している状態は、熱狂的なファンが存在している状態であり、ゲームだけでなく、マーケターが目指すゴールがここにあります。
ブランディングに成功すると、新しいサッカーゲームや、ハンティングアクションゲームが登場しても、ウイイレやモンハンのポジションは簡単に揺らぐことはなく、むしろ存在価値が高まる場合もあります。
どうすればブランドは作られるのか?
ゲーム業界におけるブランドとは、そのゲームの熱狂的なファンによって作られ、ブランドの価値はファンの数によってきまります。
ブランド化できた状態とは、ゲームがIP化できた状態とも言い換えることができます。
【参考記事】【家庭用/スマホ】ゲーム業界におけるIPとは何か?みんな間違っているかも!?
こちらのIP化における記事でも書いていますが
ゲームのIP化を実現するためには下記が必要であると記事内で書いています。
・10年単位で時間とお金がかかる |
・ファンの声に耳を傾け「IPとしての軸をぶらさず」やりきる覚悟が必要 |
・ファンの人生と共に時間経過の中で忘れられない共感を生み続けること |
これらがIP作り(=ファン獲得)には必要となります。
つまり「宣伝広告」で「認知」を高めることはIP化につながる小さな一歩に過ぎません。厳密には単発の広告ではIPは作れないのです。
冒頭でマーケティングについて「モノが売れる仕組みつくり」という話をしましたが
「仕組み」をつくって、それを長年にわたって回し続けて、ユーザーの信頼を獲得、維持し続けて、熱狂的なファンを増やし続けることがゲーム業界における「ブランディング」には必要なのです。
ブランディングって難しそうだけど、実は「マーケティング」ができていれば、あとは時間をかければできる可能性は高いのです。そう考えると、達成不可能なほどに難しいものではないのかもしれません。
まとめ
「マーケティング」 「広告宣伝」 「PR行動」「ブランディング」といった4つの違いについてゲーム業界における具体例をあげながら説明してみました。
トロネコはこれら4つの要素について網羅的に企業支援を行っています。もしご興味がございましたらメール、またはLINEチャットで気軽にご相談できる「トロネコのカベウチ」でご連絡ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。