こんにちはトロネコです。
今回は当たり前のことだけど
多くのゲーム事業で出来ておらず
でもゲームマーケティングにおいて重要なことについてお話します。
それは
「ゲーム事業において最も重要なユーザーは既存ユーザーである」
「でも、多くのゲーム事業において、既存ユーザーよりも新規ユーザーを重視する傾向にある」
ということです。
これはスマホゲームに限った話ではなく、家庭用ゲーム、PCオンラインゲームにおいても言えます。
一度獲得した既存ユーザーを大切にせず
むしろ軽視した上で新規ユーザーを重視するゲームが多いのです。
「一番重要なユーザーは既存ユーザーである」
「既存ユーザーを大切にしなければゲーム事業の目的を達成できない」
ここに真実はあるのですが、多くの人はここに気づきません。
その理由についても解説します。
なぜ既存ユーザーよりも、新規ユーザーを重視してしまうのか?
ゲームの現場にいると、既存ユーザーよりも新規ユーザー獲得が重視されている状況に頻繁に遭遇します。
なぜ、ゲーム事業では新規ユーザーを獲得し続けることが最重要課題になっているのでしょうか?
実際のところ次のような事を公言するゲーム事業責任者もいます。
ゲームマーケティングの仕事は新規ユーザーを獲得して、DAUを改善することである
一見、正しいように聞こえるかもしれませんが、実際のところ、これは大きな間違いです。
現実的には新規ユーザーばかりに注力すると結果的にそのゲームは衰退します。
その理由は後ほどお話するとして・・・・
なぜ、ゲームの現場では新規ユーザーの獲得ばかりに意識が向いてしまうのでしょうか?
それには次のような原因があります。
「ゲーム事業の目的が、数字による売上やKPIの獲得になっているから」
特にマーケティング部門では、新規ユーザーを獲得し続けることが仕事であり、新規ユーザーを獲得することが評価軸になっている場合があります。
そして、新規ユーザーを獲得することで、瞬間的には見た目の売上を積み上げることが可能です。つまり宣伝でDAUは作れる、新規ユーザーを獲得することが事業としての成長につながるという考え方があるのですが・・・
でも、それって本当にそうなのでしょうか?
結論をお伝えすると
新規ユーザーばかり重視しても、ゲーム事業は成功しません。
むしろ、新規ユーザーを重視して既存ユーザーを蔑ろにした結果、事業としての寿命を縮めてしまうことの方が多いのです。
その理由について深く掘り下げてみましょう。
ゲーム事業において新規ユーザーより既存ユーザーが重要な3つの理由
さて、ここから本題です。
なぜ、新規ユーザーより既存ユーザーの方が重要なのでしょうか?
理由はいろいろありますが、今回はその中から3つの理由に絞って解説します。これだけを知っておくだけでも、マーケティングの視野が広がるので、ぜひ身につけておきましょう。
①既存ユーザーは新規ユーザーの何倍も価値がある
ゲームアプリは無料で遊べるため、インストールした瞬間から続々と離脱していく特徴を持っています。
これは、ゲームアプリの特性ゆえに仕方ないのですがインストールした翌日に平均50%は辞めてしまいます。興味がある方は下記をご覧ください。詳しく解説しています。
例えば新規ユーザーは
・インストール翌日に50%が辞める
・インストール1週間後に70%が辞める
・インストール1ヶ月後に90%が辞める
というわけです。
(この数字はあくまでも参考値であり、タイトルによて変動します)
つまり、インストール初日に100人存在した新規ユーザーは1ヶ月後には90人が辞めてしまい10人しか残っていないということになります。
これはスマホゲーム事業をやっている人なら、特段驚くことではありません。
でも、重要なのはここからです。
1ヶ月後に残った10人は、様々な困難を乗り越えた精鋭ユーザーです。100人の中から選ばれた10人ですから、この時点で新規ユーザーと比べても何倍もの価値があるユーザーなのです。
そもそもゲーム事業や、ゲームアプリマーケティングの本質は
新規ユーザーを獲得することが目的ではなく
1ヶ月後にどれだけ残ってくれるのか
残ってくれたユーザーをどうやって維持できるのか?
そのために膨大なお金と労力を使って新規ユーザーを獲得しています。
(新規ユーザーを獲得して瞬間的なDAUとかMAUを稼ぐ事が目的ではありません。念のため)
そして、1ヶ月後に残った10人がDAU(Daily Active Users)や売上を構成し、今日と未来のゲーム事業を支えています。
もし、2ヶ月後に、この既存ユーザーの10人が全員辞めてしまったらどうなるでしょうか?
膨大なお金と労力を使って獲得した新規ユーザー100人は全く無意味になってしまいます。
まず、大前提として既存ユーザーはあらゆる困難を乗り越えて生き残った精鋭ユーザーであり、新規ユーザーの何倍もの価値がある
同じ既存ユーザーを獲得するには、膨大なお金と労力が必要である
という「当たり前のこと」を理解することが重要なのです
そう考えると、新規ユーザーよりも既存ユーザーの重要性に気づくはずです。何倍も価値があるユーザーなのです。
②ゲームの売上のほとんどは既存ユーザーから生み出されている
実際のところ、皆さんの担当タイトルの売り上げのほとんどは「既存ユーザー」から生み出されています。
これはスマホゲームに限らず、家庭用ゲームにおいても同じです。
既存ユーザーが購入して、その結果、売上と利益が生まれているわけです。
「既存ユーザー=そのゲームのファン」
という考え方ができると納得感はあるかもしれません。
例えばアイドルのファンクラブの会員が、ゲームにおける既存ユーザーになります。
一方で家庭用ゲームにおける新規ユーザーは、今回、ゲームを購入したスポット的なユーザーであり、次回作も購入してくれる保証はありません。まだファンになりきれていないのです。
スマホゲームにおける新規ユーザーは、明日辞めるかもしれない、遊び続けてお金を払ってくれるかもわからない状態です。
つまり新規ユーザーを獲得できても、継続的に売上が期待できるかというとわかりません。
とはいえ、新規ユーザーから売上が全く期待できないわけではないですが、既存ユーザーに比べたら簡単に期待できるほど、熟成されていないのです。
もう少しわかりやすい例えをするなら
スポーツの月額会員と、1回だけお試し参加したドロップイン会員を比較すれば明確です。
そのスポーツクラブの売り上げを支えているのは間違いなく月額会員です。ドロップイン会員は今日、1回使ってお金を払ってくれますが、それっきりかもしれません。
スポーツジムの事業を安定させるためには月額会員を維持し続けることが大前提となります。
今の売上のほとんどは、既存ユーザーが支えている
と考えることができると、既存ユーザーを軽視するようなことはできなくなります。
そう考えると、新規ユーザーよりも既存ユーザーの重要性に気づくはずです。何倍も重要なことに。
③ゲームアプリのサービス終了の殆どは既存ユーザーの離脱が原因
家庭用ゲーム、スマホゲーム共通ですが長年、ゲーム事業をやっていると、時間経過と共に新規ユーザーが取れなくなってきます。
家庭用ゲームで例を挙げると、続編を発売しても前作を大きく越えられず現状維持が精一杯になったり、スマホゲームは、ターゲットユーザーを獲得し尽くしてしまうと、新規ユーザーを獲得できる余地がなくなってきます。
ゲームタイトルが時間経過によってユーザーが固定化されたり、新規ユーザーが取れなくなると、ゲームの存続は既存ユーザー頼みになります。
そして、残った既存ユーザーから理解と支持を得られなくなると、そのゲームは寿命を終えます。
こう考えると、多くのゲームは新規ユーザーが取れなくなったから寿命を終えるのではなく、これまでのファンを維持できなくなったから終わるのです。
いや、新規ユーザーが取れなくなったからゲームが終わるんだ
という意見もあるかもしれません。
でも、それは既存ユーザーを軽視して定着せず、新規ユーザーを継ぎ足すことで延命をしてきただけなのです。
でも、既存ユーザーが維持できるなら、そのゲームは理論上は永遠に生きていくことができます。
家庭用ゲームで例えるならば、
10万本しか売れないシリーズタイトルでも、10万本がずっと売れ続けていければ、そのゲームは理論上は永遠に生き続けることができます。
ゲーム事業で既存ユーザーを軽視してしまうケース
ここまでの話をご覧頂いて、既存ユーザーの重要性を感じたでしょう。
でも、こう思う人がいるかもしれません。
既存ユーザーを軽視していないし。ちゃんと考えてるしー。
多くの人は別に悪意を持って既存ユーザーを軽視したりしてません。でも、結果的に軽視してしまい、ゲーム事業の寿命を縮めているケースが多いのです。
無意識に既存ユーザーを軽視している代表例についてご紹介しましょう。
既存ユーザーよりも新規ユーザーに厚い「おもてなし」をしてしまう
既存ユーザーより、新規ユーザーに対して厚く「おもてなし」をしてしまうことで、既存ユーザーが離れてしまうケースです。
・新規ユーザーがあっという間にレベルアップしてしまい、既存ユーザーとの貯金が無意味になってしまう程の報酬を用意する
・既存ユーザーが長い時間をかけて獲得したアイテムを、最近始めたばかりの新規ユーザーが簡単に獲得できてしまう
といった事が挙げられます。
ゲーム会社としてはどうしても新規ユーザーを獲得したい!
そこに注力するばかり、既存ユーザーを軽視してしまうのです。
これらに似たケースとして次のようなものもあります。
・辞めていたユーザーがいまゲームにカムバックすると豪華報酬をプレゼントする
既存ユーザーはこのゲームを長く支えてきたという自負があります。そんな既存ユーザーの心理としては、自分たちを「おもてなし」して欲しいものです。
既存シリーズファンの期待に反する対応をしてしまう
ゲーム初期から遊んでくれているファンと
今、ゲームを始めた人は
そのゲームに対する想いや、ゲームに希望するモノは必ずしも同じではありません。
イノベーター理論の記事でも解説していますが、ユーザーは獲得するタイミングで、同じ1ユーザーでも属性が全く異なります。
重要なのは
既存ユーザーが喜ぶこと≠ 新規ユーザーが喜ぶこと
は同じではない、ということを理解する事です。
例えば下記の記事でも書いていますが、ゲームIPが長期化する中で、タイトルのリブートを行うときは慎重な判断が必要です。間違った方向に進むと既存ファンを全て失ってしまう可能性があるからです。
ゲームIPのリブート=新規ユーザーを獲得するための手段
という考え方は間違っていませんが、完全新規ユーザーだけを相手にするなら、別に既存ゲームIPのリブートである必要はなく、完全新規タイトルを開発すればいいのです。
しかし、完全新規タイトルを開発するのではなく、あえて既存ゲームIPのリブートという選択をしたからには、既存ユーザーも取り込むことを前提としているはずです。
既存ユーザーも取り込みたい、でも既存ユーザーから総スカンされてしまうと、そのゲームIPは終わります。
家庭用ゲームのシリーズ作品、既存ファンが存在するIPを使ったリブーるゲームアプリ、既存ゲームアプリの機能改修など、既存ファンを失うリスクは日常的に存在するので注意が必要です。
IPのリブートを行う時に、既存ファンについて、どこまで考え抜かれているのか?そこが重要です。
まとめ
新規ユーザーを全く獲得しなくても、既存ユーザーを維持できれば、そのゲームは生きて行けます。
ゲームアプリで例えるならDAU(daily Active Users)の減少は既存ユーザーが辞めるからであり、既存ユーザーが辞めなければ理論上はDAUは横ばいで維持できるからです。
だからこそ、既存ユーザーは重要であり、我々はもっと重視する必要があります。そして
「新規ユーザーはゲームを始めた瞬間から既存ユーザーになる」
ということに気づければ、
ただ新規ユーザーを獲得することが重要ではなく、獲得した新規ユーザーが既存ユーザーになったとき、どうやって維持定着させていくか、その重要性に気づくはずです。
皆さんは、既存ユーザーを意識して家庭用ゲーム、スマホゲームの運営をしていますか?
新規ユーザー獲得ばかり意識しすぎてしまい、既存ユーザーを軽視していませんか?
既存ユーザーを維持することが、ゲーム事業において重要です。