こんにちはトロネコです。
最近、このような相談を多くいただきます。
「既存スマホゲームアプリの継続率をなんとかしたい!」
「改善する方法について教えてほしい!」
その理由としてはゲーム会社を取り巻く次のような背景があります。
「新規タイトルの成功率が低く、既存タイトルの維持と収益性改善がゲーム会社の経営上、非常に重要である」
新規タイトルを仕込まないとゲーム会社としての未来はありません。
しかし、新規タイトルを成功させるハードルは年々上がっている中で
今を生きるために既存タイトルの「継続率」を重視するゲーム会社はかなり増えています。
そこで、実際にトロネコが行っている既存タイトルの継続率を改善する上で、どこをチェックして、どんな対策をすればいいのか?
いわゆる「観点(=物事の見方、考え方)」について解説します。
実際に観点を踏まえて継続率改善のために何をすればいいのか?
そこを知りたい人も多いと思うのですが、
これはゲームタイトルごとに異なります。
なぜならゲームタイトルごとに「状況」「課題」「ゲーム内容そのもの」「ユーザー属性」など・・・・・コンディションが異なるからです。
よって継続率を改善するための100%正解で、どんなタイトルにも汎用的に使えるテクニックは存在しません。
しかし、「観点」をベースに、それらコンディションを踏まえて、対応方法を考えることはできます。それがマーケターの仕事(トロネコのお仕事)になります。
「観点」を整理しておくと、継続率を改善する上で、どんな手順を踏めばいいかわかります。
今回はトロネコの観点をご紹介しますので、よろしければ参考にしてくださいね。
既存スマホゲームの継続率を上げてKPI売上を改善する手順と観点
今回の話は「既存タイトル」に絞っていますので予めご了承ください。
ここからは「観点(=物事の見方、考え方)」のみを解説します。上から順番通りに時系列で導き出します。
現状把握
①タイトルフェーズ
例えばサービスから3年経過した既存タイトルがあるとします。
3年前にこのタイトルは次のことを決めて開発され、市場投入されたはずです。下記について整理して明確にしましょう。
ターゲット市場 | 獲得できるユーザー数:10万?100万?300万?1000万? |
ターゲットユーザー | 獲得できるユーザーの内訳、属性、年齢、性別、今遊んでいる競合ゲーム、課金額、可処分所得、可処分時間、生活行動・・・ |
獲得済みユーザー | 例えば市場規模の上限が100万人のゲームを開発したなら、上限100万人のうち3年間で何人インストールして獲得できましたか?
その結果、残っている市場は何人ですか?(何人、まだ獲得の余地はありますか?) |
獲得したけど離脱したユーザー | 獲得したけど離脱したユーザーはどんなユーザーで、何人ですか? |
現在残って遊んでいるユーザー | 現在残って遊んでくれているユーザーはどんなユーザーで、何人ですか? |
下記で説明しているイノベーター理論を使って整理しても構いません。
これらを整理することで
現在の既存タイトルのフェーズがどこにあるのか?「現在地」を明確にすることができます。
まずは「現在地」を明確にします。今、自分がどこにいるかわからない状態では課題も対策も取れないからです。
②ユーザー属性
既存タイトルの「現在地」がわかったら、「現在(今)」を構成しているユーザーの属性を整理します。
これは現時点でのDAU、MAUをイメージして整理するとわかりやすいです。
例えば今日のDAUは10万DAUだったとします。
こちらの記事で詳しく書いていますが10万人のDAUは「新規ユーザー」「既存ユーザー」「離脱ユーザーからの復帰ユーザー」で構成されます。
この10万人は現在の既存タイトルを構成しているユーザーなので、その内訳を明確にしていきます。
ここはちょっと複雑なのですが、ざっくり下記のような項目を埋めて整理していきます。(下記の数字は全部仮です)
新規ユーザー | 既存ユーザー | 離脱ユーザー(=復帰ユーザー) | |||||
重課金 | 中課金 | 微課金 | 無課金 | 課金 | 無課金 | ||
DAU比率 | 20% | 3% | 2% | 1% | 29% | 0% | 45% |
継続率 | day1〜day2くらい | 「dayXX以降を既存ユーザーとする」というように、そのゲームにおける既存ユーザーの定義設定による。 | day1〜day7くらい | ||||
LTV | XX円 | XX円 | XX円 | XX円 | 0円 | XX円 | 0円 |
他で遊んでいる競合タイトル | タイトルA | タイトルB | タイトルC | タイトルD | タイトルE | タイトルF | タイトルG |
つまり、この既存ゲームタイトルは
「誰が支えているのか」「それって、どんなユーザーか」
整理していきます。
③モチベーション整理
この既存タイトル、仮に3年経過したタイトルとしましょう。3年間の間に、そして今この瞬間にもユーザーは「ゲームを楽しみ」「ゲームを遊びたいと思い」「ゲーム内課金」をしています。
でも一方で「ゲームをやめようと思ったり」「実際に辞めているユーザー」も日々発生しています。
新規ユーザー | 既存ユーザー | 離脱ユーザー(=復帰ユーザー) | ||||
する理由 | しない理由 | する理由 | しない理由 | する理由 | しない理由 | |
プレイモチベーション(新規/復帰) | ○ | ○ | – | – | ○ | ○ |
継続モチベーション | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
課金モチベーション | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
また、3年経過した、今、このタイミングで新たにインストールしたり、かつて辞めた人が復帰しようとしたり、もしています。
表の中の「○」の部分には様々な「理由」が存在します。その理由をかきだして整理していきます。
明確な理由がわかっているなら、それを記入します
明確な理由はわかっていないけど、なんとなく仮説が立てられそうな場合はそれを記入します
全くわからないけど、ユーザーがどんどん辞めている状態なら「わからない」ことを明確にします。
このように書き出してみることで、知っているような気になっていただけで、全然、自分たちのタイトルを理解していない現状に直面するかもしれません。
でも「わからないこと」を明確にする事が継続率改善のヒントを知る上では重要です。
分析・検証
ここまでで、この既存ゲームの状態はかなり整理されてきました。
でもあくまでも「推測」や「仮説」に基づいたものがメインであり、継続率を改善するために「これだ!」という正体みたいなものを見つけた状態ではありません。そこで、整理した情報をもとに次の分析を行います。
④どこに課題がありそうか?
どこに問題がありそうか?推測をします。
具体的には
・どこのユーザーに継続率を改善できそうな余地があるか?
・そのユーザーを改善することで、どのくらい継続率を改善できるか?(そのユーザーの継続率は改善できそうだけど、改善したところで事業へのインパクトが薄いユーザーは注力する必要ないかも・・・)
みたいな「あたり」をつけていきます。
⑤課題ををクリアするための障害になるものは何か?
ユーザーのあたりがついたところで、このユーザーの継続率を阻害している「課題」と「課題をクリアするために必要なこと」を仮説でもいいので洗い出していきます。
例えば
「day3に継続率が急に落ちているけど、これってday7に登場するボスが強過ぎて、みんなここで心折れてるんじゃね?」
みたいな「あたり」をつけます。
継続率に影響する要因はゲームジャンル、及びそのゲームをプレイするユーザー属性(=ターゲットユーザー)によって変動します。とはいえ、継続、離脱につながる原因はパターン化できます。
⑥設計
仮説から導き出した課題をもとに検証するためのテスト設計をします。
どんなテストを行えば、仮説を検証できて、課題を解決するためのヒントが得られるか?考えながら検証方法の設計を行います。
テストの方法としては「チューニングテスト」がおすすめです。
テストそのものをプロモーションまで活用しようと思うなら既存タイトルであっても「OBT/CBT」みたいなテストを検討する方法もあります。
これはタイトルの状態を踏まえて判断が必要です。
詳しくは下記でも説明しています。
具体的なテストについては
トロネコオリジナルのテストの設計シートを用意していますので、これを使って設計します。
⑦テスト実施
最後に「仮説」を「検証」するための「テスト」を実施して
継続率に影響を与えている原因を探し当て、改善するための適切な「対策」を探します。
テストを実施すると次の2つのデータが入手できます。
・定量データ(数字やアンケート結果からわかるもの)
・定性データ(数字やアンケート結果から見えにくい感情的なもの)
実はここに大きなポイントがあります。
KPIのように数字で可視化できる部分で我々はゲーム事業を判断しようとします。しかし、ゲームは「心を動かすエンタメ」なので、数字で見えない部分に継続率に影響を与えている原因のヒントが隠れているケースは多々あるのです。
具体的には、とあるユーザーがアンケートで10点満点で8点をつけていたら満足しているように思うかもしれませんが、不満だらけの場合もあります。これには次のような理由があるからです。
・8点の定義はユーザーによって異なる
・意図して8点をつけるユーザーもいる ・何も考えず適当に8点をつけるユーザーもいる ・感情とスコアは必ずしも連携すると断言できない |
つまり、テストでは数字で見える部分も参考にしますが、その先の潜在意識に隠れている部分まで踏み込んで深掘りしなければ意味がありません。
踏み込めるか?それはテストを実施する運営者の経験とスキルが大きく影響します。
想定スケジュール
ここまでの流れで、継続率を改善するためのヒントを探し、具体的な打ち手まで明らかにできます。
大体のスケジュールは次のとおりです。
適切なデータが用意できるなら現状把握、分析に1週間から2週間
並行してテストの人材リクルート、テスト設計を行います。
重要なのは重要なのは「誰に何を聞くべきか?」であり、特に適切な「誰」を「明確にして」適切なテスターを集められるかが重要です。
テスト対象者としては「開発メンバー」「開発以外の社内メンバー」「外部メンバーリクルート」など選択肢はあります。
テスト自体は最短で1日、最大でも5日程度になります。
着手から完了まで約1ヶ月程度になります。
さらに結果が出てからゲーム内に反映するための開発期間も必要です。
よって、例えば周年キャンペーンのタイミングで継続率が改善している状態でプロモーションを踏んでいこう!と思うなら、そこから逆算して半年前には今回紹介した手順を完了しておく必要があります。
スケジュールがギリギリでは何もできません。またテストを実施する事が目的になっている(テスト実施しろ!と言われたので)というケースも見られますが、継続率の改善は困難です。
既存タイトルの継続率改善は長期視点で取り組んでいく必要があります。
まとめ
既存タイトルの継続率を改善するための手順と観点について解説しました。実際にテストをしなくても、「現状把握」を整理するだけでも「継続率」に影響を与えている原因について「あたり」をつけることは可能です。
ただし、あくまでもそれはゲーム開発サイドの「仮説」に過ぎず、実際のユーザーの反応とは大きなギャップがある事が多々あります。
そのギャップを見つけることが、継続率を改善するための一歩になります。
まずは現状整理から始めてみてはいかがでしょうか?
皆様の参考になれば幸いです。