スマホゲームユーザーを6つに分類すると重要なユーザーが見えてくる
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回の話は非常にシンプルです。
スマホゲームマーケティングにおける「DAU」とか「新規ユーザー獲得」とか「LTV」「ARPU」とか全部忘れてしまって
課金ユーザーだけの事を考えればスマホゲームにおける複雑なゲームマーケティングもっとシンプルなるのではないか?
という話です。
ちょっと乱暴な話に聞こえるかもしれませんが、今回お話をする
「課金ユーザーだけに振り切る」という観点は
新しい「気づきの発見」に繋がるかもしれませんので、あえて振り切った話をしたいと思います。
家庭用ゲームで重要なのはパッケージ購入ユーザー
トロネコは20年以上、ゲーム業界でマーケッターをしてきましたが、そのうち13年に渡って、家庭用ゲーム業界で働いてきました。
家庭用ゲームは基本的に「パッケージ販売ビジネス」であり
発売日にゲームがお店に並び、店頭から売れることによってゲーム会社の売上になります。
(厳密にはお店に並んだ時点で売上は確定している受注ビジネスなのですが、お店で実際に売れないと追加受注が来ないので体裁上、このように表現しています)
つまり家庭用ゲームはパッケージ売り切りビジネスですから
パッケージを購入するお客様=課金ユーザーと言い換えることができそうです。
家庭用ゲーム会社はパッケージ購入者の意見を「発売後アンケート」や「ユーザー調査」を持って把握し、次回作に活かします。
一方で、実際にゲームソフトは購入していないけど
・体験版を遊んだだけのユーザー
・中古ショップでゲームを購入したユーザー
このようなユーザーの声はあまり重視しません。
つまり家庭用ゲームにおいて価値あるユーザーは「パッケージ購入者」であるというわけです。
スマホユーザーの場合は「ノイズ」によって重要なユーザーが見えにくい
一方でスマホゲームの場合はどうでしょうか?
スマホゲームユーザーは
3つのユーザーによって分類され、3つのユーザーによってDAU(Daily Active USers)が構成され、これらを総称して「ユーザー」と認識しています。
新規ユーザー | 今日、インストールした人 |
既存ユーザー | 既にインストールして遊んでいる人 |
復帰ユーザー | 一度辞めたけど何かしらのきっかけで戻ってきた人 |
スマホゲームのサービス運用経験がある人なら、理解しやすいかもしれませんが、
スマホゲームの場合は、「DAU」を構成するこれら3つのユーザーの意見に耳を傾けゲームを改善しようとしがちです。
なぜならDAUはスマホゲームアプリの運営において非常に重要なKPI(Key performance Indicator:重要評価指標)と一般的に考えられているからです。
多くのゲーム運営者、ゲーム開発者、マーケターは
DAUを維持し、改善することに必死です。
だからこそ、DAUを構成するユーザーの声に耳を傾けないわけには行きません。
しかし、ここで注目して欲しいのは
DAUを構成する3つのユーザーは家庭用ゲームでいうところの「パッケージ購入ユーザー」に相当する「課金ユーザー」ではないのです。
次のような図があります。
DAUのうち、課金をしたユーザー(課金率)、さらにその課金額によってスマホゲームアプリの売り上げが決まります。
スマホゲームの課金率は「ゲームの内容」「ゲームジャンル」「IP版権モノ、または新規オリジナルモノ(既存ファンの有無)」によって大きく変動します。
一般的にDAUの2%から5%くらいが課金率のレンジと言われています。
(中には課金率10%といったゲームもありますが、レアケースです)
そう考えると、スマホゲームのDAUを構成するユーザーのうち、売上を構成する重要なユーザーはDAUの2%から5%くらいになります。
このユーザーの声を本来重視して耳を傾けるべきなのです。
しかし、スマホゲームの場合、「DAUを作ること」を目的にしてしまうと「課金ユーザー」「非課金ユーザー」関係なく全方位的にユーザーの意見に耳を傾けようとします。
しかしここで問題が生じます。
わかりやすいように表を作ってみましょう。
課金ユーザー | 非課金ユーザー | |
新規ユーザー | 新規ユーザーA | 新規ユーザーB |
既存ユーザー | 既存ユーザーC | 既存ユーザーD |
復帰ユーザー | 復帰ユーザーE | 復帰ユーザーF |
スマホゲームではDAUを構成するユーザーだけでも「ざっくり」分けると最低でも6種類のユーザーが存在します。(実際にはもっと細かく分けられるし、分けないとマーケティング戦略は作れませんが、今回はわかりやすいように簡易的に分けています)
これら6つのユーザーがゲームに対する要望は同じではありません。
それぞれユーザーの状態、ゲーム体験、趣味嗜好も異なるため、様々な要望を持っています。
この6つのユーザーセグメントの中でも重視すべきユーザーは「A、C、E」になります。そして、今の売り上げを支えているのはユーザーCですから、ユーザーA、Eよりも優先順位は高くなると思われます。
課金ユーザー | 非課金ユーザー | |
新規ユーザー | 新規ユーザーA | 新規ユーザーB |
既存ユーザー | 既存ユーザーC | 既存ユーザーD |
復帰ユーザー | 復帰ユーザーE | 復帰ユーザーF |
もし、ユーザーB、D、Fの声ばかり聞いて、DAUを数字上は改善・維持できたとしても、ユーザーCを無視したゲーム運営をするならば、このゲームはサービスを継続できないことでしょう。
なぜなら、売上があがらなくなるからです。
ここで2つほど問題を出しましょう
【問題1】マーケター、ゲーム開発の皆さんのゲーム事業の目的は何ですか?
答え:利益を獲得すること
建前としては「ユーザーに楽しんでもらえる面白さを提供すること」かもしれませんが、利益を確保できなければサービスは継続できません。
【問題2】ゲームタイトルを成功させるためには、どのユーザーの意見を重視し、ゲームのアップデートや運営計画を設計すべきですか?
答え:課金ユーザー
非課金ユーザーを無視しようという話ではありません。
でも非課金ユーザーは今後、課金してくれるか不明です。一方で課金ユーザーは、いま課金してくれている重要なお客様であり、このゲームを支えている本人なのです。
ゲーム事業継続のためには間違いなく「課金ユーザー」を重視する必要があります。
(とはいえ、繰り返しますが非課金ユーザーを無視しようという話ではなりませんよ)
つまり「課金ユーザー」をないがしろにすると、このゲームは運営継続できなません。しかし、みなさんは「課金ユーザー」の事を考えていますか?
実は課金してくれるかわからない、ユーザーばかりに注力して、DAUを維持改善することに意識が向いていませんか?
見せかけのDAUを作ることが、マーケティングの目的になっているケースが多いので注意が必要です。
課金ユーザーに振り切るとマーケティング戦略がシンプルになる
6つのユーザー区分があり、それぞれのユーザーのニーズや課題はバラバラであるという話をしました。
実際のところ6つのユーザーは一部共通する部分もあるかもしれませんが、完全一致ということはまずありません。
なぜならユーザーの流入経路、課金・非課金など明らかに違いがあるからです。
課金ユーザー | 非課金ユーザー | |
新規ユーザー | 新規ユーザーA | 新規ユーザーB |
既存ユーザー | 既存ユーザーC | 既存ユーザーD |
復帰ユーザー | 復帰ユーザーE | 復帰ユーザーF |
そんな「違い」がある6つのユーザーに対して、ゲーム内外で実施する「たった1本の施策」で6つのユーザーを全てカバーできるはずがありません。
毎日、ゲーム運営のためにゲーム内施策を実施したり、ゲーム外でマーケティング施策を実施していると思いますが、それら施策ですべてのユーザーをまんべんなく満足させることは不可能なのです。
そこで「マーケティング戦略」を立てて
注力すべきターゲットユーザーを決めて
そこに対するゲーム内外の施策設計をしているはずです。
「DAUをつくること」に注力すると、
「新規ユーザー、既存ユーザー、復帰ユーザーを取らなければならない・・・・」といった「八方美人」のような「曖昧なマーケティング戦略」に陥りがちです。
ここにマーケティングの落とし穴があります。
でも、そうしないとDAUを構成するユーザーを集めてこれないから、仕方なくそうしているマーケターは多いかもしれません。
つまり、DAUという数字を作ることがマーケティングの目的になっている状態であり、本質に踏み込めていないのです。
新規ユーザーって獲得した翌日に半分、1週間で7割は辞めてしまいますし、離脱ユーザーを戻しても再び辞めやすいですし、LTVも新規ユーザーの半分以下になります。
そんな荒波を乗り越えて、残ったのが「既存ユーザー」であり、さらにその中で「課金」してくれるのが「課金ユーザー」なのです。 |
このように考えてみると、「課金ユーザー」がどれほどの選抜エリート集団であり、非常に貴重な存在なのかわかってくるはずです。
そこで、いろいろなユーザーのことは一旦全部忘れて「課金ユーザー」だけに絞って注目してみるのはいかがでしょうか?
・このゲームを課金してくれるであろうユーザーのペルソナを明確にする |
・そのユーザーがこのゲームに求めるモノを徹底的に研究して提供する |
・課金ユーザーを徹底的におもてなしして、長く遊んでもらう |
マーケターとして、本来やるべきことは「DAU作り」ではなく、このゲームを事業として成功させ、その結果、多くの人に長く遊んでもらう状態作りです。そう考えれば、まずやるべきことは非常にシンプルです。
「課金してくれるユーザーの声に耳を傾け続ける」
非常にシンプルなマーケティング戦略だと思いませんか?
課金ユーザーだけに絞るとCBT・OBTの目的も変わる
ゲーム事業をやっているならCBT、OBTをやったこともあると思います。
CBT・OBTには様々な目的を課すケースが多いですが、CBT、OBTという施策自体はそもそも万能ではないので、本来は目的を絞るべきです。
そこで多くのケースで下記を目的にしたCBT・OBTが実施されています。
サーバー負荷テスト |
バグチェック |
インストール数に対する継続率(離脱ポイントの抽出) |
ユーザー満足度・改善点の抽出 |
しかし、課金ユーザーだけをターゲットにすれば重要なのは「課金マインドの創出」「課金ポイントチェック」「課金からの消費サイクルの確認」・・・・みたいな目的に振り切ることができます。
「なぜならゲーム事業存続のために重要なのは、家庭用ゲームのパッケージ購入に相当する課金ユーザーだからです」
そうすると、一般的なCBT・OBTでは「課金」を実装しないので、それでは意味がなく「課金」を実装した状態でのテストが必要になります。
・・・・と考えていくとCBT・OBTのあるべき姿、設計方法が変わってくるのです。
CBT、OBTで数字上は良いKPIが出ても、
本来チェックしたいのは「課金ユーザー」の動向でしょう。
しかしCBT、OBTでは無課金ユーザーを含んだDAUという集団でしかテストができません。
ここに気づけると、CBT、OBTの設計方法も変わってきます
まとめ
今回、「気づき」のためにちょっと極端なテーマで話をしましたがいかがでしたでしょうか?
実際のところ、「課金ユーザー」だけに注力すればいいか?といえばそうではありません。
なぜなら、「課金してくれないユーザー」も、このゲームを支え、その魅力を広めて、新しいファンを連れてくる重要なユーザーだからです。
永遠にそのゲームを課金しないユーザーも、売上には直接貢献しないけど、間接的に売上貢献してくれるという発想の転換が重要です。
そして、ゲーム内課金はしてくれないけど、ゲーム外のマネタイズ方法で、このゲームと長く付き合って頂ける可能性もあります。
このような考え方ができると、そこからIP戦略が作れます。
よって今回の話は「課金ユーザーだけに傾倒しよう」というわけではありませんので誤解がないようにしましょう。
というわけで、今回はここまで!