【保存版】オンラインゲーム・スマホゲームの事業計画・売上KPI試算シミュレーションの手順

スマホゲーム

今回の記事はこんな方におすすめの内容になっています。

・新作ゲーム(既存ゲーム)の売上の試算シミュレーションをしたい

・会社の事業計画で新作ゲームの売上試算が必要になった

・数字の根拠になるファクトを提示できるロジカルな試算をしたい

そんな方におすすめ、ロジカルな新作ゲームの事業計画・売上試算シミュレーションの手順について解説します。

前提

まず大前提として、この記事では下記を踏まえて解説します。

 

・試算シートは皆さんの手持ちのものを使ってください(多分、自社用のフォーマットがあるはず)

・売上の試算をする上での考え方と流れを解説しますので、細かいやり方までは踏み込んでいません(書ききれないため)

・抜け漏れなく全ての手順を踏むと、ある程度、裏付けを持った試算が可能です

・全ての手順を踏むには「時間」と「お金」もかかりますので、難しい箇所はスキップしていただいても構いません

・ただし、各手順におけるデータの精度が落ちると、その分だけ試算の精度も下がりますので予めご了承ください。

 

そもそも手順がわからない!という方も多いと思いますし、抜け漏れが多くて勿体無いケースもあるので、そこをフォローできる記事になれば幸いです。

 

全体の流れ

手順の流れは次のとおりです。5つのフェーズから構成されます。

これを数字番号の順番の通りで必ず進めてください。

 

新規タイトルは全てを網羅することをお勧めしますが、既存タイトルで、すでに該当する数値がある場合は、それを使っても構いません。

とはいえ、既存タイトルでも市場やゲーム内容に大きな変化がある場合は、スキップせずに新たに数値を抽出することをお勧めします。

 

①市場規模の算出

②課金に関する算出

③試算シミュレーション作成

④仮説に対する検証

⑤試算シミュレーション最終版の作成

 

①市場規模の算出

まず、最初に新作ゲームをプレイしてくれるユーザーボリュームを算出します。

目的

このゲームを遊んでくれるターゲットユーザー(=顧客)になりうる市場ボリュームを把握します。その市場ボリュームが、このゲームのポテンシャルの上限値であり、時間経過に比例してそのユーザーを獲得しながら、売上試算の推移のベースを作ります。

ここで算出した数値で、ゲーム配信から12ヶ月、24ヶ月の新規ユーザー、DAU、継続率の試算のベースとして使います。

やり方

代表的なやり方としては次のようなものがあります。

・市場調査(新作ゲームをプレイしてくれる顕在ユーザー、潜在ユーザーの可視化)

・類似タイトル実績(同じモチーフ使用、同じゲームシステム、ゲームジャンルを使用しているベンチマークタイトル相当)

 

ポイント

市場調査、類似タイトル実績から抽出した一部の数字だけで12ヶ月、24ヶ月の新規ユーザー、DAU、継続率の試算の予測を算出してはいけません。

数値の単体使用ではなく、複合的に掛け合わせて、精度を上げるようにしてください。

 

②課金に関する算出

市場ボリューム=ユーザー獲得数の数値がわかったら、続いて新作ゲームの課金に関する数値を算出します。

目的

獲得したユーザーがこのゲームをインストールして、起動して、ある程度の日数をプレイして、どのくらい課金するか?課金単価を算出することで、売上試算に役立てます。

やり方

代表的なやり方としては次のようなものがあります。

・新作ゲームの設計開発において想定されたインゲーム、アウトゲーム、ゲーム運営によるLTV、課金単価、課金率の算出

実はゲーム業界では、ここが抜けている現場も多いのですが、大前提として開発チームは特定の課金KPIを想定したゲーム設計を行います(行っているはずです)

例えばプレイ開始から180日間における平均LTVの合算を2000円に想定しているので、その課金KPIを達成するためにゲームシステム、課金要素を盛り込んで開発するわけです。

 

そのLTVを想定しているから、このゲームは、そのゲームジャンル、そのゲームシステム、プレイサイクル、ガチャ、マネタイズになっているはずです。

なので、もし想定の課金KPIを考えずにゲームを企画、開発しているなら、今からでも遅くないので、開発とすり合わせて、そのゲームシステム、ゲーム企画における想定される課金KPIを洗い出してみてください

 

・類似タイトル実績(同じIP使用、同じモチーフ使用、同じゲームシステム、ゲームジャンルを使用しているベンチマークタイトル相当)

類似タイトルの実績データがわかるなら、それも参考になります。ただし、同じIP使用、同じモチーフ使用、同じゲームシステム、ゲームジャンルを使用しているベンチマークタイトル相当といったような部分が相当、似ているタイトルでないとあまり参考になりません。

ポイント

数値の単体使用ではなく、複合的に掛け合わせて、精度を上げるようにしてください。市場調査によるターゲットユーザーボリュームの精度は高くても、課金KPIの算出の精度が低いと、精度の低い売上試算を作り出してしまいます。

 

③試算シミュレーション作成

①②でさまざまな数値が集まりました。

そこで、ユーザーボリューム、DAU、継続率、LTV、課金単価、課金率を組み合わせて算出した仮説における試算シミュレーションを作成します。

皆さんの会社で使用している試算シートを使って作成してください。

売上試算シートが完成するはずです。

多分、多くの現場ではここまで終了しているケースが多いかもしれません。でも、これだけでは精度がまだ低いので、ここから精度を上げる作業をします。

④仮説に対する検証

実は③で作成した試算シミュレーションは、市場調査、他社実績、開発チームによって生み出された「ただの仮説」に過ぎません。

なぜなら、

・市場調査は必ずしも完璧ではない(設計や実施方法でもバイアスかかりまくりです)

・類似タイトルのデータをそのまま使えるとは限らない(むしろ使えないことの方が多いかも)

・開発チームによって作成されたこのゲームの仮のKPIはあくまでも仮です(根拠のない思い込みかもしれません)

 

 

そこで、ここからは、ここで作成した試算シミュレーションの精度を検証して、ブラッシュアップしていきます。

方法としては次のようなものがあります。

CBT、OBTの実施

CBT、OBTはテストの限界があるため、プレイ開始からday1-day3程度の継続率程度が検証の限界です。でも、プレイ開始から初動の継続率の精度が上がれば、その後の継続率も予測しやすくなるので、獲得ユーザーの減衰からのDAU予測の精度が上がります。

ただし、CBT、OBTは課金に関する検証ができません。なぜなら、実際に課金はできないし、課金をさせたような機能や仕掛けを実装しても、実際の課金モチベーションと同じ状況は作れないからです。

(CBT、OBTで課金に関するKPIの参考になるようなものを収集してもいいのですが、そんな数値を使って売上試算をすると、本質を見失ってしまうことも多いのです)

チューニングテストの実施

チューニングテストは設計次第では、最大、プレイ開始からday14までの継続率、課金状況の検証が可能です。

もちろん、100%正しいデータは取れませんが、CBT、OBTと比べるとチューニングテストは設計次第で課金に関する参考値を算出することができます。

 

ポイント

それぞれ得意不得意があるので、組み合わせて検証することで試算シミュレーションの精度を高めることができます。

 

CBT、OBT、チューニングテストは精度が重要です。精度を上げるには設計が重要になります。詳しくは下記の記事が参考になるかもしれません。

 

 

⑤試算シミュレーション最終版の作成

①②を持って作成した③の仮の売上試算を

④で検証して修正を加えたことで、精度の高い試算シミュレーションを⑤で作成します。

 

最後に

⑤で作成した試算シミュレーション最終版に対して3つほどのパターンを作成します。

例えば次のような感じです。

 

パターンA:ポジティブ

①の市場におけるノビシロ、④で判明した改善箇所が対応できてうまくいった場合

→定義:様々なプラス要素に加え、すごく頑張った上で達成可能な上限値

 

パターンB:ノーマル

④によって作成された精度の高い試算シミュレーション

→定義:普通に頑張れば現状で達成できる数値

 

パターンC:ネガティブ

①におけるマイナス要素、④によって判明したリスクと、それに対する改善ができなかった場合

→定義:うまくいかないネガティブな問題が発生したが、最低限着地できる数値

 

ポイント

ここまで来ることができれば3つの売上試算が作成できます。

 

ここでのポイントは「ネガティブ」でも収支上は赤字にならない、損失を生まないようにします。

もし、損失が生まれるなら、④で検証しているので、そこで発見した課題を解決します。そうすれば、最悪のケースでも、この新作ゲームは会社に対して損失を与えません。

とはいえ、どうやっても課題は解決できないし、どんなに試算しても「ネガティブ」のケースで収支上赤字になるようであれば、このゲームはリジェクト(開発中止)判断をします。

 

言い換えれば、プロジェクトを中止する判断基準をここに設けることができます。

 

「ノーマル」は、普通にやれば達成できる数値にします。もちろん利益がでる試算シミュレーションにします。

「絶対にこれはうまくいく」「ほぼ間違いない」と100%断言できる数値で算出した硬い売上試算が「ノーマル」です。

なので、「ノーマル」の売上試算シートでは、このゲームに対する投資とリターンが適切なのか?という視点で投資判断軸で決裁者はジャッジします。

 

例えば、黒字になるけど、1億円かけて、1年後に1.2億円しか儲からないなら、それって別のことに投資した方がいいんじゃないの?という判断をするわけです。

最後に「ポジティブ」はこのゲームの振れ幅、ノビシロです。どこまで目指せるのか?実現可能な世界における上限値になります。非現実的、夢や妄想、希望や憶測は含めてはいけません。いろんなことが予想通りに進み、うまくいった場合のアッパーを盛り込んでください。

ただしその数値は①②③④のプロセスを通して、ある程度、裏付けされたものである必要があります。

 

まとめ

今回、オンラインゲーム・スマホゲームの事業計画・売上試算シミュレーションの手順について、全体的な流れをご紹介しました。

とはいえ、各項目については

どうやってやればいいのか、わからない人も多いかもしれません。今回の記事に全てを盛り込むことは物量的に難しいのですが、当サイトの中には、ヒントになる記事もたくさんありますので、他の記事を読んでいただければ、やり方は見つかるかもしれません。

ちなみに

トロネコにお仕事を依頼されている企業様には、今回紹介したような内容の各項目についてご相談があった場合は、その設計や、やり方について都度インプットさせて頂いています。今回の案件単体ではお仕事はお受けしておりませんが、そういう部分も含めてコンサルティング業務にご興味がある企業様は、ぜひ、トロネコまでご相談ください。

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