スマホゲームアプリの継続率(リテンション率)の計算方法と獲得ユーザーのDAU積み上げ試算方法
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回はネットを探してもあまり情報が出ていない「スマホゲームアプリの継続率(リテンション率)の計算方法」を解説します。
さらにプロモーション施策ごとに想定継続率を設定することで
その施策がDAUに対してどれだけのインパクトを与えるのか?
つまり施策によってDAUがとれだけ積み上がって改善するのか?
様々な施策がどのようにDAUを改善するのか
その算出方法もご紹介します。
これがわかると、あらゆるプロモーション施策設計において、どれだけのDAUを改善する効果が見込めるのか事前にシミュレーションすることができます。
シミュレーションできることで、プロモーション施策における「適切な予算」「獲得目標」といった数字設定ができるので、精度の高いゲームアプリマーケティングが実行できるようになります。
スマホゲームアプリにおける継続率とは?継続率の計算方法を解説
リピーター率、リピート率といった言葉も使われているらしいのですが、実際のところゲームマーケティングの現場でトロネコは聞いたことがありません。
スマホゲームにおいては継続率(Retention Rate/Return Rate)といった言葉がほとんどです。
Retention RateとReturn Rateでは厳密に意味は違いますが、いずれも継続率という日本語で同義語として使われています。頭文字だけをとってRR(アールアール)と呼ばれている現場もあります。
継続率について言葉で説明すると非常にわかりにくくなるため、簡単なグラフを作りましたので、こちらで解説していきましょう。
横軸day1、day2、day3はゲームインストールからの日数経過です。
day1、day2という表現も1day、2dayという表現でも構いません。英語表記としてはday1の方が正しいのですが、1dayという表現でも全く構いません。むしろ国内では1dayという表現も普通に使われています。
(day1という表現でなければ絶対にダメ!と表現方法にこだわる人もいますが、全く気にしなくて結構です。なぜなら、そこにこだわる意味は一切ないからです)
縦軸A、B、Cはインストールしたユーザーになります。
day0とはユーザーがインストールした初日になります。
よって、day0の時点ではAからJまで10人のユーザーはすべて残っています。よって継続率は100%です。
インストールした日がday0です。
インストールしでアプリを起動したわけですから100%のユーザーは残っているわけです(当たり前の話ですよね)
day1でFからJまで5人がゲームを離脱してしまいました。よって10人のうち5人離脱しましたので継続率は50%となります。
そして14日後、プレイしているユーザーはAだけになりますので、10人のうち1人しか残っていないため、継続率は10%となります。
これが継続率の基本的な考え方です。
文字で説明するとうまく伝わりにくいかもしれませんが、グラフで説明すると理解しやすいと思います。
継続率の定義はゲーム会社によって異なる
このシートでは、理論上、14日間プレイし続けたAが存在しますが、実際にはどこか1日でサボってプレイしていなかったかもしれません。
また、day1でゲームをやめてしまったユーザーJは、実際のところday3、day6、day9、day12で一瞬ゲームに戻ってきているかもしれません。
このように
どれだけの期間、頻度でゲームをプレイし続けたら継続ユーザーとみなすか
どれだけの間ゲームをプレイしていなければ離脱ユーザーとしてカウントするかは、そのゲーム会社が定義します。
一般的には7日ゲームをやめてしまっている状態なら、もう戻ってこない離脱ユーザーと認識され継続率から外れるケースが多いようです。一方で7日以内でゲームに戻ってくれば継続率としてカウントされます。
実際に土日を含む7日間もゲームから離れてしまっているユーザーって、もう、そのゲームをプレイする気がないと判断されるからです。
5日間ゲームから離れているのは、ただ休みがなかったからだけかもしれません。だから7日を離脱ユーザーの定義としているケースが多いようです
ちなみに話を戻すと
継続率を算出する母数や、ゲーム配信した直後などでユーザーの行動が定まっていない時期では次のような継続率のブレが生じます。
day1 | day2 | day3 | day4 | day5 | day6 | day7 | |
ケースA | 50% | 45% | 40% | 38% | 35% | 32% | 30% |
ケースB | 50% | 45% | 40% | 45% | 35% | 32% | 30% |
ケースAは一般的な継続率の数字ですが、継続率のブレが生じるとケースBのようになります。ゲームを遊んだり辞めたりするユーザーの母数と動きが大きく継続率にブレが生じるというわけです。
上記の表はダミーのサンプルですがday4で継続率がアップしています。
実際にこんな違和感ある継続率をたまに見かけます。
どれだけの間ゲームをプレイしていなければ離脱ユーザーとしてカウントするかは、「ゲームジャンル×コンセプト=ユーザー属性」によって異なります。
またゲームのプレイサイクルによっても検討すべきなので、ゲーム会社ごとに定義は異なります。
とはいえ、土日を挟んで1週間経っても帰ってこないなら離脱したとみなすケースが多いです
一般的な継続率とゲームジャンルにおける継続率の違い
ところで平均的な継続率はどのくらいなのでしょうか?気になりますよね
数多くのゲームアプリの運営経験があるなら継続率の数値感覚も身についているかもしれません。しかし、ゲーム会社によって得意なゲームジャンルや、環境もありますので、
同じゲーム会社に長く勤めていて、同じようなゲームばかり担当していたら、一般的な継続率がどれほどなのかわからないものです。
パズルゲームやシミュレーションゲームばかりしか担当していないなら、他のゲームジャンルの継続率はあまりピンとこないかもしれません。
そこで今回、トロネコが長年ゲームアプリマーケティングをやってきた中で感じた経験や、世の中の様々なデータを分析した中で算出した目安になる継続率をご紹介します。
そしてゲームジャンルによっても継続率が異なるという「ゲームジャンルによる継続率の傾向」についてもお話しましょう。
ここからは1day、2dayという表現を使います(day1でも1dayでもどっちでもいいのですが)
ゲームジャンル | 1day | 3day | 7day | 14day | 30day |
一般平均 | 50% | 40% | 30% | 15% | 10% |
パズル | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
シミュレーション | 40% | 30% | 20% | 15% | 10% |
RPG | 50% | 40% | 30% | 15% | 10% |
一般平均はあくまでも目安です。本当に目安に過ぎません。
なぜならゲームジャンルによって継続率の目安が大きく変わるからです。
厳密にいえばゲームジャンルだけでなく、IP版権やゲームコンセプト、ゲームの中身によっても継続率は変動します。これらの要素の影響がむしろ大きい場合もあります。
この事例は課金額の記事でも話をしましたが、課金額も継続率もゲームジャンルやその他要因の影響を受けます。
もっと踏み込んで話をするならば、ゲームジャンル×ゲームコンセプトごとで継続率が異なる理由は、それを好むユーザーが異なるからです。
つまりユーザー属性の違いが継続率に影響を与えます。
(とっても深い話なんです)
RPGは一般平均に近いイメージです。これには理由があって、RPGは誰でも楽しめる間口の大きいメジャーなゲームジャンルですから、大ヒットすればするほど平均の継続率に近づきます。
(国民的RPGになればなるほど、遊ぶユーザー属性も平均化していきますので、継続率も平均値にどんどん近づくイメージです)
一方でパズルゲームは継続率は高い傾向にあります。その代わりユーザー課金額の記事でも書きましたがARPUが低いため、「高い継続率による高DAU×低ARPU」といった構図になります。
最後にシミュレーションゲームについては14day、30dayでは継続率はRPGと同じですが3day、7dayでやや減少する傾向が見られます。これはゲームジャンルとしての影響が考えられます。
これらはあくまでも一般的な考え方ですから、皆さんの担当しているゲームが当てはまらない可能性は高いです。だだし一般的な数字を把握した上で、そこに大きく未達しているなら何かしら問題があると考えるための参考値としては使えると思います。
AppAnnieというサービスがありますが、こちらの有料会員になれば他社のゲームアプリもおおよその継続率を知る事ができます。
(ただしあくまでも推測値ですし、どこまでその数字を自社のマーケティングに使えるかは全く別の話です)
これも深ーい話なんですが、他社の継続率をどんなに知ったからといって、それが自社のゲーム事業に役立つとは限らないんですよ。(むしろあんまり役立たなかったりします。そこに本質的なものがなかったりするからです)
データは過去の結果に過ぎません。それを知ることで未来予測に役立ちますが、でも厳密にいうとゲームアプリの場合って、ゲームジャンル×ゲームコンセプトの掛け合わせで無限のバリエーションが生まれるので
他社タイトルの継続率を知ったところで、自社のビジネスに役立つのか?という話です。大体の平均値だけ知って、感覚を身につけるだけでいいと思います。
(知っておいてもいいんですが、結局自社タイトルが売れるか、売れないかが全てですから)
ちなみに、他社のKPIとか継続率ばかりに注意がいってしまい、データを集めたり、データ購入したり、それを並べて分析することばかりに時間をかける人がいますが、ぶっちゃけの話、それやっても自社ゲームは成功しないですよ。
むしろ、過去のデータや他社のデータにとらわれてしまい
どこかでみたようなゲームの二番煎じしか作れないで失敗するケースや、ただの数字遊びで社内の決裁会議を通すための内輪向けのゲーム事業になってしまうリスクの方が大きいです。
トロネコはマーケターなので数字は超重視します。
でも、その一方で、数字の重要性は理解しつつも、あくまでも参考程度にとどめつつ、過度に依存すると高確率で事業が失敗することも知っています。
マーケティング分析における重視すべき継続率の期間とタイミング
「継続率はどこまで追いかければいいのか?」
「どのタイミングを注力して意識すればいいのか?」
これもゲーム会社、各マーケターの観点(どこを見るのか?)によって異なります。30dayを超えたら緩やかに継続率は下がっていきますので、30dayを超えた後に急に継続率が下がったりするような事があるならば、よほど事故のような何かがあったかもしれません。
そう考えると継続率において重要なタイミングは1dayから7dayと言えます。なぜならこの期間がもっとも継続率の減衰率が大きいからです。
ゲームジャンル | 1day | 3day | 7day | 14day | 30day |
一般平均 | 50% | 40% | 30% | 15% | 10% |
パズル | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
シミュレーション | 40% | 30% | 20% | 15% | 10% |
RPG | 50% | 40% | 30% | 15% | 10% |
まず、注目したいのはインストールしてから1日後に平均値で50%程度のユーザーが離脱するという点です。
ゲーム配信前からゲームの事前登録を実施して
いざゲームを配信したのに1日後には50%辞める状態はスマホゲーム業界では「当たり前」「常識」として考えている人が多いのですが、冷静に考えれば「異常」だと思いませんか?
これは、ユーザーが辞める理由を理解して、事前に手を打っておくことで軽減することができます。
7day=1週間=土日を挟んでいるので、土日を潰してまで遊びたくなるか?これがスマホゲーム配信初動におけるユーザー維持の重要ポイントになります。
ちなみに家庭用ゲームの場合は木曜日発売が慣習であり、木金土日の書4日で一部のロングセラータイトルを除き多くのゲームは生涯ゲームの50-60%を売り切ります。これはそのゲームを買いたいというユーザーの熱量が発売初動に集中するからであり、ここで店頭の品切れなど勢いを出せない家庭用ゲームは在庫を残してしまうわけです。
何を言いたいかというと
スマホゲームも家庭用ゲームも配信、インストールから1週間くらいが勝負であり、そこを超えると購買意欲、インストール意欲、遊ぶ意欲が急激に低下します。
プロモーション施策で獲得したユーザーの想定継続率をもとにしたDAU積み上げ貢献度を算出する方法
各プロモーション施策で獲得したユーザーの想定継続率がわかっているならば、プロモーションで獲得したユーザーが何日後にどれだけ残存していて、その結果、DAUにどれだけの影響を与えているのか?
そのような算出もできます。
「トロネコのお仕事ご相談ページ」でも掲載していますが、下記の資料の右下に「施策で獲得したユーザーのDAU残存シミューレーション」ができるシートをご用意しています。
マーケティングの支援をする際には、こちらのシートでDAUのシミュレーションを行なってデータ提供をしています。
例えばプロモーション施策で1000人のユーザーを獲得したら、1日後には50%、1週間後には30%の残存するとした場合、その残存数がそのタイミングにおけるDAUに対する積み上げ貢献ができる数字になります。
これをひとつひとつ手作業で計算していると時間が足りないので
「施策で獲得するユーザー数」「獲得したユーザーによるDAU貢献度」を瞬時に算出できるトロネコオリジナルのツールを使って現状分析と、目標に対する達成進捗を管理しています。
これができると、あらゆるプロモーション施策の「設計」と「効果検証」ができるため、精度の高いマーケティングができるようになります。
こちらのシートを単体で販売はしていませんが、トロネコとお仕事をさせていただく場合は、こちらの仕組みを使ってトロネコが継続率や想定DAUを算出してアウトプットしたものを提供しています。
よって、作業時間を除けば、ほぼ即時的に継続率に関するシミュレーション結果を提供できます。
リテンションや継続率についてはこちらの動画でも詳しく解説しています。
継続率(リテンション率)を知り、計算ができることによるメリット
継続率を理解して、さらに使いこなすことでゲーム事業において様々なメリットがあります。
例えば一例ですが、ざっくりあげてみると次の通りです。
・会社の事業計画で使うゲームアプリの売上、見込DAUなどが簡単に算出できる
・事業計画に対して現状のDAU推移が足りているのか?不足しているのか?計算できる
・個別プロモーション施策によって獲得したユーザーのDAU積み上げどがわかる
・継続率の推移をもとにゲーム内で改善すべき箇所を推測できる
・コストに対する獲得DAU、売上の相互関係が理解でき、適切なコストを算出できる
・完全新規ゲームタイトルを企画開発するにあたって「ゲームジャンル×コンセプト」だけである程度の見込みシミュレーションがつくれる
他にもたくさんあります。
継続率がシミュレーションできるかは、ゲームアプリマーケティングにおいて基本中の基本であり、かつ重要なことなのです。
まとめ
今回、継続率について解説しましたが、文字にすると本当に難解な内容になりがちです。
この難解になりがちな領域もトロネコのオリジナルのシートや資料を使うことで誰でも使えるようになります。
目標獲得ユーザー数、想定継続率を入力するだけで、DAU改善見込み、将来の売り上げ見込みも自動算出できるため、マーケティング知識や経験差分を軽減しながらマーケティング業務ができる「マーケティングの標準化」を行っています。
「マーケティングの標準化」ができればゲーム内外施策による獲得ユーザー数と想定継続率からDAUがどれほど改善する効果があるか事前に試算して、施策設計と目標設定、目標に対する進捗状況、効果検証まで実施できるのでゲーム事業に大きく貢献できるようになります。
ご興味がございましたらメールにてご相談ください
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回お話した内容について、下記にてもっと詳しく解説しています。