こんにちは
トロネコです。
スマホゲームは新規ゲームを立ち上げる上で大きなリスクが伴います。
それでもゲーム会社が発展継続していくには、新規ゲームを立ち上げるチャレンジをし続けなければならないわけですが
ゲーム会社が、いまを生きていくには、既存タイトルをどれだけ維持継続させられるか
それも重要なミッションです。
でも、長年ゲーム運営して、色々なことを試したけど
手詰まり感がある既存タイトルも多く、悩んでいるマーケターの方も多いと思います。
そこで、今回はスマホゲームの既存運営タイトルを改善させるためのリバイバルマーケティングについて解説します。
近年、新規ゲーム立ち上げのハードルとリスクが高くなっている理由
新規ゲームの立ち上げと成功ほどリスクとハードルが高いものはありません。
アニメ漫画IPを使えば、新規立ち上げのリスクもある程度ヘッジすることができますが、とはいっても完全にリスクを排除できるものではありません。
そして有力なアニメ版権IPは数に限りがありますので、多くの新規ゲームはゲーム会社自社におけるオリジナルタイトルになります。
オリジナルタイトルはゼロからファンを獲得しなければなりませんので、新規ゲーム立ち上げハードルが高くなります。下記の記事でも解説しています。
しかし、近年の新作スマホゲームを見ると、PCオンラインゲーム、ニンテンドースイッチ、PS4と比べても遜色がないクオリティのゲームが続々と配信されています。
むしろパッケージ売り切り型の家庭用ゲームの方が開発費が安く、運用型のスマホゲームの方が開発費が高くなる傾向もあります。
開発費が高くなるということは開発期間も長期化します。家庭用ゲームの場合は開発期間が長期化しても、過去からある程度、未来が予測できるので時代の流れに大きく外すことはないのですが、スマホゲームの場合はトレンドの移り変わりも早いので
例えば2年前に企画を立てて開発開始した新作ゲームが、2年後の配信時点ではすでに、世の中で求められる水準に対して大きくビハインドしており、戦いにならないようなケースも出てきています。
よってスマホゲームの場合は、さらにその先の未来を予測したゲーム開発が必要となります。
そして市場にはすでに多くの強力な先行ゲームが存在します。
すでに多くのユーザーが人気のゲームアプリを遊んでいるので、そこに対して新規ゲームを投下するということは、いま遊んでいる人気ゲームをやめさせてまで、新規ゲームを遊びたくなるほどの「強い動機と強い理由」が求められます。
まとめると
・新規ゲームはそもそも立ち上げのハードルが高い
・新規ゲームの開発費(宣伝費も)はかなり高騰している
・市場の変化が早く予測しにくい
・強力な先行タイトルが存在しており、そこからユーザーを奪わなければならない
といった感じなのです。
よって既存運営タイトルは、今後ますます重要になります。
新規タイトル立ち上げのハードルが上がっている故に、いかに既存運営タイトルを維持継続していけるかが、スマホゲーム事業にとっては事業の生命線にも関わるのです。
今までは既存タイトルの売上が下がったら、外部に運営移管を行い、自社では新規タイトルの投入に集中するようなケースもありましたが、
既存タイトルの売り上げが下がったら、なんとか継続維持する方法を自社内で探し、解決する方法が求められています。
なぜなら既存タイトルは、数々の新規タイトルが失敗して消えていく中で、成功して生き残った価値あるタイトルだからです。
リバイバルマーケティングの考え方
ならば既存タイトルにおける問題を解決して、サービスを継続し、長期にわたって利益を生み出すためにはどうすればいいのでしょうか?
それが今回お話しする既存タイトルに対する「リバイバルマーケティング」という考え方です。まずはリバイバルマーケティングの基本的な考え方について解説しましょう。
大枠における基本的な考え方は
①現状分析→②選択と集中→③チャレンジ
という流れになります。
①現状分析
既存の運営タイトルの現状把握と、何が問題なのか?どうすれば解決できるのか?
まずは適切な分析が必要です。
こちらの記事でも書いていますが、バケツのどこに穴が空いているのか?どうすれば穴を塞ぐことができるのか?実態の把握と分析が必要です。残念ながら、ここの分析が適切にできていない、間違っているケースが非常にお多いのです。
②選択と集中
運営ゲームは、今まさに走り続けているゲームですから、それを止めることはできません。つまり「走りながら原因を究明して解決しなければならない」というわけです。
走りながらできることには限界がありますので、選択と集中が求められます。多くの現場では選択と集中が適切に行われず、
できること、やりたいこと、目についたことを、ただ実行しているにすぎません。
選択と集中の中にはコストを見直す必要もあります。ランニングコスト、新規開発コストを見直すことになりますが、ここで重要なのは
「コスト削減を行い、キャッシュアウトを止める」ということではありません
多くの現場では、コスト削減による見た目のPL(Profit and Loss statement)改善だけに注意が行きがちですが、これは既存運営タイトルの寿命を縮めてしまいます。
既存タイトルは現在進行形でゲーム運営を行なっており、サービスを止めることはできません。ここで重要なことは
「無駄を排除して、必要なところには投下する」という選択と集中の思考が求められます。
③チャレンジ
チャレンジなきゲーム運営をしてしまうと、実際に遊んでいるユーザーは
ゲームが使い回しすぎる
なんか最近つまらなくなった
と感じさせてしまいます。
よって、ただの定番運営ではダメで、ユーザーを飽きさせないように、メリハリのあるゲーム運営が求められます。
つまりタイミングや、規模感にメリハリをつけつつも、絶対にチャレンジをやめてはいけません。チャレンジをやめた時点で、既存タイトルを維持することはできません。
【スマホゲーム】既存運営タイトルを改善させるリバイバルマーケティング
ここからは実際のリバイバルマーケティングについて解説します。
今回は「考え方」について解説しますので、使えそうな「考え方」があったら、皆さんのゲームマーケティングに組み込んでみてください。
コスト最適化
運営フェーズにおける新規開発費
運営中のゲームでも新規機能追加などで開発が必要になります。新規開発における「選択と集中」によってコストの最適化を行います。
ROI(Return On Investment)という考え方があります。
新規機能を追加したら、ユーザーは遊んでくれるのか?満足してくれるのか?それに比例して利益が上がるのか?
といったことを考えます。
新規機能追加で1000万円かけたら、1500万円の利益を獲得できるとするなら、ROIは1.5になります。1000万円かける価値があるのです。
新作ゲームを開発する際には新作ゲームの開発費に対してROI的な視点で分析できているゲーム会社はいますが、運営フェーズの開発費に対しては、できていないケースが多いのです。
運営費
ゲーム運営の現場では運営費が最適化されていない場合もあります。
例えばこんなケースです。
・業務に対して過剰に運営メンバーが存在する
・高いスキルが必要な作業に高いスペックの人材が投入されている(その逆もあり)
・運営内容に対して過剰にQA(Quality Assurance)がされている
・効果は不明だが、今までやってきたことだから、やめられない業務がある
他にもあるかもしれませんが、運営費においても再考できることはあります。
販売管理費
販売管理費とは企業の営業活動に必要なコストのことであり、ゲーム会社の場合は、ゲーム開発部門以外の営業管理部門の人件費や、オフィス賃貸、コピー用紙、電気代などが含まれます。
小さいゲーム会社の場合は、ゲームプロデューサーがマーケター、宣伝担当も兼任しているところもあるかもしれませんが、宣伝マーケティング部門はゲーム開発部門外に設けているケースが多いと思います。
つまり宣伝、マーケター、SNS運用、デジタル広告運営、ユーザーサポート、分析などの人件費の見直しもコスト削減においては必要です。
これら人員が売り上げ規模に対して過剰に配置されている場合もありますので、ここを削減することでもゲーム運営のスリム化に貢献できます。
業務改善
ゲーム運営を行う上で、「無駄」が存在していないか分析することも必要です。
無駄を排除して、短時間で実務が実行できるように「ゲーム運営組織の最適化」を行うこともコスト削減につながります。
ユーザー獲得施策
新規ユーザー、復帰ユーザー獲得施策は基本的に行わない
既存運営タイトルは基本的に長期運営を行い、見込みユーザーを獲得し尽くしたゲームが多いため、ユーザー獲得施策においては「新規ユーザー、復帰ユーザー獲得施策は基本的に行わない」という方針を明確に打ち出すこと必要です。
「新規ユーザー、復帰ユーザー獲得施策は基本的に行わない」という判断に対して否定的な考え方を持つ人もいると思いますが、長期運営タイトルであればありほど
「新規ユーザー、復帰ユーザー獲得施策をやっても数が取れない」
「仮に数が取れても、見た目だけの数であり継続率、課金率は高くない」
からです。
スマホゲームの場合、アプリ配信直後に獲得したユーザーが、そのゲームアプリの生涯において、最も継続率や課金率が高いユーザーになります。ゲーム運営の時間経過とともに、獲得できるユーザーの質は低下します。
既存ユーザーとのリレーション施策に注力する
新規ユーザー、復帰ユーザーの獲得が難しい故に、今遊んでいる既存ユーザーとのリレーション施策に特化することで、「DAUや売上を落とさない」ことに振り切るという判断もあります。
新規ユーザー獲得余地があるならLTVが高いプロモーションに特化する
もし、新規ユーザー獲得を諦め切れないならLTV(Life time Value)が高い媒体に限定してプロモーションを実施するという判断もあります。
ユーザー数は獲得できませんが、確実に売上には寄与するユーザーが獲得できるプロモーション施策が存在するなら、限定施策として実施するのもありです。
リバイバルアップデート
マイナーチェンジ、見た目リニューアルではなく、本質的な改善を行う
大型アップデート、リニューアルアップデート、新章開始・・・
表現の方法は様々ですが、ゲームアプリの場合はアップデートを通して、ゲームが大きく変わったことをアピールしようとします。
ここには
「リニューアルしたことで、辞めたユーザーも戻ってきて欲しい、既存ユーザーを満足させてこれからも遊び続けてほしい」
という目的が存在するわけですが、実際は次のようなケースがほとんどです。
・見た目が変わったけど遊びの本質は変わらない
・ユーザーが離脱した原因追求が甘く、かつ原因の解決がされていない
2Dを3Dに変えただけで「リニューアル」と謳っても、瞬間的に振り向いてもらえるかもしれませんが、振り向き続けさせることはできません。
多くのゲームアプリのリニューアル、大型アップデートを車のモデルチェンジに例えると
マイナーチェンジ、ビックマイナーチェンジ止まりなのです。
本質的なリバイバルアップデートを行うには
ゲームとしての欠陥に直視して解決する「リコール」と、それらを反映した「フルモデルチェンジ」が必要になります。
そのためには、
「なぜ、これまで多くのユーザーが辞めたのか」
「今遊んでいるユーザーの不満は何か」
「どうすれば、これからも遊んでもらえるのか」
といった原因究明にどれだけ向き合えるかが重要になります。
改善にはストーリー性とタイミングが重要
多くのゲーム会社が原因究明ができたら、すぐに問題解決を行いゲームに反映しようとしがちです。
これは正しくもあり、間違いともいえます。
知っておきたい事実として次の2つがあります。
・既存ユーザーでさえ、改善に対して気づかない。まして新規ユーザー、離脱ユーザーに改善項目を気づかせるのは容易ではない
・改善したことを伝えるには、ただ事実を伝えるだけでは伝わらない。ストーリー性(=伝え方の話)とタイミング(=ユーザーの心が開いたタイミングのこと)を考慮しなければならない
この2つはとても重要です
どんなに適切な課題解決ができても、それがゲーム運営において価値を生まなければ意味がありません。
改善するなら早い方がいい
改善は時間との勝負だ
この意見は賛成です。でも、トロネコが伝えたいことは、これらスピードとセットで、改善したことを伝える上での「ストリー性とタイミング」も重要です。
これらが全てセットで連携しないと、リバイバルアップデートの効果を最大限に発揮できません。
リバイバルアップデートに合わせてプロモーションも実施する
ストーリー性(=伝え方の話)とタイミング(=ユーザーの心が開いたタイミングのこと)が重要」というけれど、伝えるにしても限界はあるよ
という意見も十分理解できます。
よって、リバイバルアップデートに合わせて、必ずプロモーションも連動して実施しましょう。TVCM、Webキャンペーン、SNS施策など複合的に連携して、リバイバルアップデートしたことをターゲットユーザーに伝えるようにしましょう。
その時に注意して欲しいのが
ストーリー性(=伝え方の話)とタイミング(=ユーザーの心が開いたタイミングのこと)
なのです。
もう一度ゲームを遊びたい!これからも遊び続けたい!という感情を起こさせるストーリーある伝え方とは?
その伝え方が一番、ユーザーに届きやすいタイミングとはいつか?
これらをゲーム開発とマーケティングが連動して設計実行することでリバイバルマーケティングの効果を高めることができます。
まとめ
同じタイトルのゲーム運営を長くやっていると
固定概念や、そのゲームの常識に縛られて問題の本質が見えなくなってしまいます。つまり、「何をすればいいのかわからない」「何をしても改善できない状態」になってしまうのです。
しかし、どんなタイトルにもリバイバルマーケティングの余地は存在します。
むしろ新規タイトルを立ち上げるよりも、長期運営によって一見手詰まり感が満載のように見える既存運営タイトルのリバイバルマーケティングの方が簡単なのです。
なぜなら、既存運営タイトルには既存ユーザーが存在するから。
まずは既存ユーザーに向き合うこと、
それがリバイバルマーケティングの入り口です。
というわけで今回はここまで!