こんにちはトロネコです。
今回はちょっと怖い話をします。
「優秀なマーケターがゲーム会社を滅ぼしてしまうかもしれない!?」
という話です。
ちょっと大袈裟な話に聞こえるかもしれませんが、
頭が切れて、仕事ができて
かつ優秀なマーケターが仕事をやる気になって頑張れば頑張るほど
そのゲーム会社のゲームが売れなくなっていく・・・・

そんなことあるはずがない
と思うかもしれませんが、実際にそんなことはあるのです。
事業の発展と、成功を考えた場合、一般的には「頭の良さ」「仕事ができること」は重要な要素なのですが、実はゲーム事業の場合は、それがリスクになる場合があります。
実際にトロネコも20年以上、ゲームマーケティングの仕事をしてきて、そのような現場に何度も遭遇してきました。
今はそのような状況ではなく、毎日を生き抜くだけでも大変なゲーム会社もありますが、事業が成熟してくると、いずれは訪れる「あるある」なので、ぜひ、このような状態に陥らないようにして欲しいのです。なぜなら、このような状態に陥ると、
「間違いに気づくだけでも数年はかかるので、大きな遠回りになってしまいます」
時間は有限です。
そして事前に回避できるなら回避すべきです。
同じ遠回り道をして欲しくないという思いも込めて、お話したいと思います。
こんなマーケターやマーケティング組織がゲーム会社を滅ぼす
ここからは実際にあった、こんなマーケターやマーケティング組織がゲーム会社を滅ぼすかもしれない!?という話をしていきましょう。
実際に業界的には「あるあるな話」なので、
これらを事前に知っているだけでも価値があります。
極度なマーケティング依存
「マーケティングとはこうあるべきだ」
「マーケテイングのフレームワークはこんなやり方だ」
といったように
マーケティングの型にはめようとする極度なマーケティング依存のケースです。「理詰め」で物事をすべて語ろうとして、そこから外れる事は許容しないので、ユーザーの感情的な側面や、データでは収集しにくい世の中の変化や、未来予測がしにくいという弱点があります。
ゲーム事業って必ずしも論理的、理詰めでは語れない、人間の感情を動かすエンタメなので、過度な理詰めは、ユーザーの真意に踏み込めない、
どこかでみた教科書的な、参考書に載っているようなマーケティング戦略がつくられてしまい、うまくいかないのです。
でも、まだこれなら良いのですが、極端なマーケティング依存が加速すると
実は「結論ありき」で、結論に都合がよくなるように、マーケティング理論を持って行こうしたり
施策としてやるべき事が決まっている状態に対して、後付けでマーケティング戦略を作ったり
予算を取るため、誰かを説得するためのマーケティングになったり
状況はさらに悪化します。

実際に悪意を持って、意識して「結論ありき」で物事を進めようとする人なんていいないのですが、問題なのは「無意識」に、意識せず「結論先行」で物事を進めてしまっている状況に陥ってしまうケースがあるのです。
自分で気づいていない、正しいと思ってやっている故に、
組織もこれがヤバいとは分かっていない状態になってしまうのが本当に危険なのです。
目み見える市場調査、KPIデータ、SNSクチコミだけで判断しようとするため、見えない情報は抜けがちで、過度にデータに依存してしまうので、そこに存在するバイアスも排除ができず、データによって道を間違ってしまう事もあります。

このゲームタイトルの市場は1000万人あります!
とはいえ、1000万ダウンロードが期待できるわけではない。重要なのはその中で、このゲーム事業の可否を決めるユーザーの規模と属性と
彼らがこの新作ゲームに対してどう思っているのか?
などだったりします。

理詰めのマーケティング、過度なマーケティング依存は失敗を回避し、打率をあげられます。
しかし、それだけでは見えない世界が世の中にはあるので、失敗を確実に回避しきれないし、失敗を回避したからといってビジネスとして成功できるとは限りません。
マーケティングには柔軟性も必要なのです。
現実世界とのギャップ
現実世界を直視しない、見ようともしない
そんなマーケターも世の中には存在します。

マーケターって世の中のことを一番知っている人では?
と思うかもしれませんが、たしかにゲームのニュースサイトや、他社ゲームの内容や売上はチェックするかもしれません。
しかし、そこで終わっている人が多いのも事実です。

そもそもゲームのニュースサイトに書かれていることは事実であることには間違い無いけど、本当のことはそこには書かれていなかったりします
本当のことは対外的に書けないので都合の良いことだけが書かれており、それをそのまま鵜呑みにすると間違った理解をしてしまうこともあるのです。
「プロモーション施策Aはうまくいった、KPIも改善した、大成功だった」
と書かれている記事が、本当にそうであるかは怪しいのです。
ゲーム会社で仕事をしていると、ゲーム会社がトレンドを作り、最先端の情報を持っている特別な存在であり、自分もその中の一人だと勘違いしがちです。
世界は常に変化し続けており、昨日と同じ今日は無いし、明日も新しい世界が広がっているという、シンプルな事実に気づきません。
毎日の仕事をこなすことが目的化しがちで
作り手のゲーム会社と、現実世界の間に大きなギャップを抱えたまま仕事をしてしまうのです。
・こんなゲームをみんなも好きなはずだ(俺も好きだし)
・こんなTVCMならみんな気に入ってくれるはずだ(だって俺も気にっている)
みたいな事が実際に起こるわけです。
ユーザー視点の欠如
前のパートで解説した「現実世界とのギャップ」に近い部分はあるかもしれませんが、ユーザー視点が欠如したマーケターも多く見られます。
これはマーケターに限らず、ゲーム開発者にも見られることなのですが、どういうことかというと
ゲームマーケター(ゲーム開発者)とターゲットユーザーとのゲームに対する乖離が大きい
という点です。
ゲーム内容やプロモーションが複雑難解すぎて、ターゲットユーザーが理解不能だったり
そもそもゲームとしての面白さがズレていたり
そんな事が多いのです。
もう少し分かりやすい例を挙げるならば
ユーザーは500円の豚骨ラーメンを食べたいのに(食べ慣れているのに)、5000円の伊勢海老ラーメンを作って提供しているような感覚のズレに近いかもしれません。
頭が良い人が作った、頭が良い人が楽しめる難解なカードゲームを、我々一般庶民が楽しめるかというと、必ずしもそうではありません。
なぜ、このような事が起きてしまうのは
ユーザー視点が完全に欠如していたり
そもそもゲームが好きではなかったり(ビジネスとして職業として、たまたまゲームの仕事をしている)
過去のゲーム経験、ゲームによる感動体験など、ターゲットユーザーとの間に大きな乖離があるケースが多いのです。
特にスマホゲームの場合は、このようなケースが本当に多いのです。
なぜ、このようなことが起こってしまうのか?
なぜ、「過度なマーケティング依存」「現実世界とのギャップ」「ユーザー視点の欠如」といった事が起きてしまうのでしょうか?
原因は結構シンプルだったりします。
ゲームが好きではない、あくまでも仕事である
このような違和感が起きてしまう原因の多くは、ゲーム会社で働いていても、
・ゲームが必ずしも好きでは無い(むしろあまりやらない)
・仕事なので担当しているゲームタイトルた他社のゲームはやっている
といった「ゲームに対して本気で好きでは無い状態」が影響している場合が多いのです。
だから次に転職するなら、ゲーム会社ではなくてもいいし
そのゲームタイトルの担当を外れたり、ゲーム以外の部門に異動したらゲームをしなくなったりします。
これでは、ユーザー目線で物事を判断したり、現実世界とのギャップを埋めているように本人は思っていても、埋められないわけです。
なぜなら、顧客であるターゲットユーザーは心の底からゲームをプレイしたい、ゲームを愛している人たちだからす。
本気で愛している人の気持ちを、愛していない人が理解するのは難しいものです。
過去だけから未来を推測しようとしている
極度に「マーケティング依存」してしまうマーケターはデータドリブンであり、過去だけから未来を推測しようとしがちです。
データはあくまでも過去に起こった事実の一部を数値化、可視化しただけに過ぎません。
その数値も過去の全てを把握するには難しく、あくまでもKPIツールなどで収集できるように設計された数値に限定されます。
(KPI設計した人の世界の中で収集できるデータだけで世界を分析しようとしているわけですね)
ましてユーザーの感情とか定性データはKPIツールでは収集できないですし、アンケート、市場調査、ユーザーインタビューを実施したとしても、その設計や、実施タイミングなど、もっと手前の理由で不十分なケースも多いのです。
しかし過度なマーケティング依存のマーケター、理詰めのマーケターは過去のデータをもとに未来を推測しようとします。

過去のデータから、過去に犯してしまった失敗を繰り返さないようにすることはできますが、未来を過去のデータから予測するのはちょっと難しいのです。
なぜなら、世界は常に変化し続けているからです。
未来を予測するためには、いま、この瞬間どうなっているか?ユーザー感情も踏まえて考える必要があります。
ゲームシステムは全く同じ、ターゲットユーザーも全く同じ
シリーズものか、またはガワ替えだけのゲームを永遠に作り続けているゲーム会社が存在するなら、過去のデータから未来をある程度、推測できますが、多くのゲーム会社の新作タイトルは、新しいコンセプトやジャンルだったりするので、その都度、周辺環境は変わってしまいます。
人間は論理的に物事を判断すると考えている
実はかつてトロネコもそう考えていました。
「人間は理論的に物事を判断して、我々が描いた設計図の通りのプロセスをたどるはずだ」
と・・・・。
でも、実際には物事を論理的に判断できる人は少数派で、多くの人は論理的に判断しようとしながらも、感情的に判断しがちです。
「コロナだから自粛しなければならない、外でお酒を飲むわけにもいかない」
わかっていても、外出してお酒を飲んでしまうのは
論理的な判断よりも、感情的な判断が勝っている証拠です。
それでもコロナ禍なのですから論理的な判断を重視しようと人間は自制します。しかしエンタメの世界には自制は関係ありません。
USJやディズニーランドに行ったら自分を開放するでしょうし
ゲームや映画を見ても論理的思考の自分が存在するとしても、そこは感情に任せた行動をします。
特にゲームのような、エンタメの場合は感情的な部分が判断の大部分を占めるため、
「人間は理論的に物事を判断して、我々が描いた設計図の通りのプロセスをたどるはずだ」
という考えに染まると物事がうまく進まなくなるのです。
まとめ:ならばどうすればいいのか?
ならばどうすれば良いのか?
この答えもシンプルです。
「ゲームや仕事に対する経験や、できる、できないよりもユーザー視点を徹底的に追求することを諦めない人を担当にアサインする」
これは結構重要です。
言い換えるならば、「ユーザー視点のあくなき追求をすることがもっとも重要」ということです。
実際のところユーザー視点を追求することを諦めない人が、経験やキャリアや実績よりも勝る場合が多いと感じています。
もちろん経験や実績も重要です。なぜなら経験や実績は大きな失敗を回避できる能力に優れているからです。でも、これらの軸で選ぶ場合は
「マーケティングは論理思考と感情思考のミックスができる人をアサインする」
ことをお勧めします。
言い換えるならば、
「過度なマーケティング依存におる論理的思考ではなく、数値化できない常に変化し続けるゲームの面白さの根底にある感情思考に踏み込んで、両者をミックスできる人が最強」
ということです。
どういうことかというと
定量的な数字から過去を知り、反省をして、
定性的なユーザー感情から、これから起こりうる未来を予測し
両者をミックスすることで、今とこれからの戦い方を明確にしていく
といった感じ

言葉にしたら簡単そうだけど、めちゃくちゃ難しいこと言ってるじゃん!
と言われそうですが、でも、これがマーケティングの真髄ですし、やり方はあるので、その通りにやれば難しくはありません(ちょっとばかり時間はかかりますが)
そこまで難しいことをしなくても
・ゲームのニューサイトもみる、SNSもみる、実際にゲームも遊ぶ
・でも、そこでの点の情報だけで判断しない
・全体を踏まえて判断する
というだけでも対策としては使えますよ。
というわけで今回はここまで!