【ユーザーインサイト】ファンが存在するIPのゲーム化は「期待値ギャップ」が大きいほど失敗します

ゲーム開発

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今回はシリーズモノや版権キャラクターなど「既存ファン」が存在するIPを使ったゲーム化は、ファンの期待値とのギャップがあるほど失敗しやすいという話をしたいと思います。

いわゆるユーザーインサイトに踏み込んだ「ファンの期待値コントロール」の話になります。

結構、奥の深い話ですので、意味不明な部分も出てくるかもしれませんが、できるだけわかりやすく解説しますのでご了承ください。

 

ファンの期待値とのギャップはIPタイトル訴求の失敗原因になります

既存ファンが存在している有名キャラクターコンテンツがあるとしましょう。

そして、それをゲーム化するプロジェクトが進行中だとします。

有名キャラクターは既に多くのファンに支えられているキャラクターであり、そのキャラクターの生まれた歴史から「アクションのイメージ」が定着しているとするとしましょう。

【冒険、アドベンチャー、格闘的なイメージが強いキャラクターだとしましょう】

この場合、ファンが求めるゲームは当然「アクション性の高いゲーム」になります。

しかし、ここに対して、ファンが求めるものと異なる「パズルゲーム」を作ってしまうと

とりあえずインストールして遊んでみたけど期待していたものと違ったからゲームを辞めた

となってしまいます。

これが「ファンによる期待値のギャップ」です。

実はゲームをやめる原因には様々な要件があるのですが

「ファンによる期待値とのギャップ」はゲーム離脱の大きな要因のひとつであることがユーザー調査、テストを通してもわかっています。

 

他にもいろいろなゲームを辞める原因はあります。下記の記事で詳しく書いていますので参考にしてみてください。

【関連記事】スマホアプリ継続率リテンションに影響する22大離脱要因まとめ(なぜユーザーはゲームを辞めるのか?)

 

重要なのは「ファンによる期待値とのギャップ」で辞めたユーザーは「そのキャラクターに対する熱心なファンである」という点です。

そして、このようなファンは今後、このゲームアプリを長年に渡って支えてくれる可能性が極めて価値の高いファンであり、配信1年後に獲得したユーザーとは比較にならないほど重要なファンなのです。

よって、まずやるべきことはファンの期待値に沿うように「パズルゲーム」ではなく「アクションゲーム」を第一に考えるべきです。

しかし、実際には「アクションゲーム」が作られないケースが多いのが事実です。

 

なぜ、「アクションゲームが作られないのか?」
そして「間違いはなぜ起きてしまうのか?」

今回、深く掘り下げていきます。

なぜファンの期待に応えられないゲームが作られるのか

ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのナンバリング新作は必ず「RPG」であるように、ファンも「いつものRPG」を期待しています。

しかし、明らかに「RPG」を期待しているのに、「パズルゲーム」が作られてしまう場合があります。

長年に渡って「RPG」のブランドを築いてきたドラゴンクエストやファイナルファンタジーでは、あまりない話かもしれませんが、例えばキャラクター版権モノではあり得る話です。

世界観やキャラクター性から「アクションゲーム」がふさわしいキャラクター版権モノなのにアクションゲームではなく、パズルゲームが作られてしまうのです。

といった事が起こるわけです。
(この例はダミーなので特定のタイトルを指しているわけではありません)

なぜ、アクションゲームではなく、パズルゲームが作られるのでしょうか?

 

その理由は非常にシンプルです。

①ゲーム会社側の事情
 開発費の節約、開発期間の短縮、既存のゲームエンジンを流用前提の企画

②作り手の一方的な思い込み

 アクションゲームではなくパズルゲームを作りたい

③ユーザーの期待値やニーズの理解不足

 

これ以外にも原因があるかもしれません。しかし、これらに共通していることは

いずれも、ユーザー視点が欠けているという点です。

冷静に考えれば、このような事はまずありえないのですが、さまざまな事情から実際に起こりうる話です。

しかし、冷静になって考えてみてください。

ユーザーの期待値に反するゲームはユーザーの反感を生み、そのゲームやコンテンツにおける「離脱」に繋がります

その結果、ゲーム事業の場合は、アプリ配信日以降で苦戦しそうなのは容易に想像できそうです。

なぜ、こんなことが起こってしまうのでしょうか?

それはそもそものゲーム事業の「目的」が「整理」されていない事が原因です。

もちろん、必ずしもユーザーが求める「アクションゲーム」を作らなければならない、というわけではありません。

様々な状況を踏まえて、もしみなさんが

あえて「パズルゲーム」を選ぶならば(選ばなければならないなら)

その選択を踏まえた上で

「事業を成功させる戦略」がセットで必要なのです。

 

 

しかし、多くのケースで、勢いでゲームを企画して作ってしまい、開発終盤で市場調査やCBT、OBTの結果、またはタイトル発表後にSNSでの反応で「ユーザーの期待値とのギャップ」に気づたような経験ありませんか?

実際にタイトル発表後にユーザーインタビューやCBT、OBTを

開発チームが目の前にすることで

これまら開発してきたゲームが、ユーザーの期待値と大きなギャップを含んでいることに気づかされるケースは多々あります。

 

しかし、この時点で全部作り直すことはできませんので、もう手遅れなのです。。

このような「手遅れ」が様々な会社で、または同じ会社の違う部門で何度も繰り返されているのは事実です。

ここをマーケターである我々は変えなければなりません。

何度もゲーム化された歴史あるIPならゲームジャンルの多様性は許容される

ところで、ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーのナンバリング最新作は必ず「RPG」という形態を取っていますが、

ドラクエやFFのスピンアウト、番外編、派生作品では「アクション」「サンドボックス」「カードゲーム」「音ゲー」「シミュレーションゲーム」など様々なタイトルが存在します。

しかし、このような派生作品に対してゲームファンはそれほど抵抗なく許容していると思いませんか?その理由は極めてシンプルです。

「時間をかけてユーザーの中にそのゲームIP、キャラクターの多様性が理解され浸透されてきたゲームは許容される傾向にある」

というわけです。

ナンバリング最新作「ドラゴンクエスト11」がRPGとしてちゃんと発売されていれば、それとは別展開のサンドボックスゲームの「ドラゴンクエストビルダーズ」の存在はユーザーの中で「ドラクエの世界観を楽しむ派生タイトル」として許容できるのです。

まぁ、こんなことは、改めて言葉にするまでもないかもしれませんね。

 

でも、ここで理解しておきたいことは

歴史あるゲームにはこのようなファンの中で「多様性における許容」が出来ているため、「IPファンの期待値に対するギャップを軽減しやすい」という点です。

 

つまり、言い換えると「様々な展開がファンとして許容できる状態」とは

IP化が成功して、IPとしての存在が価値が認められている状態とも言えます。

 

下記の記事でIPに対して詳しく解説しています。

【参考記事】【家庭用/スマホ】ゲーム業界におけるIPとは何か?みんな間違っているかも!?

この記事の中で

IP価値を構成するものは「ファンの存在」です。

という表現をしていますが、IP化とファンの存在は切っても切れない関係であり、IPとしてある程度確立されたゲームやキャラクターなら

そのゲームやキャラクターが持つ期待値とのギャップは

ある程度は緩和されて受け入れられる可能性があります。

このゲームの本流はRPGだけど、音ゲーも、まぁ、ありかな・・・

となるわけです。

 

 

完全新規タイトルは最初に作ったゲームからIPのイメージがつくられる

ところで、「これから完全新規のゲームを立ち上げよう!」という人も多いと思います。

スマホゲーム、PS4、ニンテンドースイッチで・・・機種は問いませんが、

ここで重要なのは

「最初に立ち上げたゲームの内容がファンを作り、そのゲームに対するファンの期待値が決定される」

ということです。

「完全新規タイトルは、1本目でどんなゲームを作るかでその後のIP化への道がほぼ決まるのです」

 

極めて当たり前の話ですよね。

たとえば、新規タイトルの1本目で「パズルゲーム」を作ったなら、そのIPに対するファンの期待値は「そのパズルゲームの内容がベース」となって構築されます。

わかりやすい例をあげると、ぷよぷよは落ちモノパズルとして誕生したわけですから、何十年経っても落ちモノパズルとしてのぷよぷよのイメージがベースになります

RPGとしてのぷよぷよシリーズも存在しますが、ファンからすると期待値とのギャップがここに存在するわけです。

 

1本目でファンになったユーザーは次回作も「パズルゲーム」か、「それに近いゲーム性」を期待しますし、ゲーム発でキャラクター展開をするにしても、「それに近い展開」を自然と期待します。

 

もし次回作が「パズルゲーム」ではなく「アクションゲーム」や「RPG」を作るとするなら「既存ファンにおける期待値とのギャップ」が生じますので、ここをどう解決するのか対策をセットで考える必要があります。

別に「アクションゲーム」を作ってはいけない、という話ではありません。

「期待値のギャップが生まれる」ことを事前に理解して、

「ギャップを埋める策(ギャップをポジティブに転換する方法)をセットで考えておく必要があるというわけです。

 

まとめると

完全新規タイトルは最初に作ったゲームからIPのイメージがつくられるので、どんなIPに育てたいのか?その戦略とセットでゲーム企画も考える必要があります

というわけです。

 

むしろIP展開を事業のコアに置いているプロジェクトであるならば、これは絶対に避けては通れない話です。

でも、ぶっちゃけると気が付いたら既にゲームの企画が立ち上がっていて、もう後戻りできない状態で、後付けでIP展開を考えていたりしませんか?

そんな後付けの戦略ではそのプロジェクトの成功確率は低いです。

だからこそ、プロジェクトに最初から参加して、そんな状態を変えるのもマーケターの役割です。

ファンの期待値のギャップから想定されること

さて、今回、話をしたいことは殆ど話をしてしまったので、最後に「ファンの期待値のギャップ」はどんな事態を引き起こすのか?という話を最後にしましょう。

次の3つにほぼ集約されます。

①ゲームアプリの継続率の低下

ゲームインストールをさせて、初動プレイさせても継続できず離脱してしまいます。

例えば「RPG」を期待していたのに「パズルゲーム」だったという期待値のギャップが生じるからです。

②ゲーム会社に対する信用低下(企業ブランド棄損)

凄く期待していたのに、その期待が裏切られるほどがっかりすることはありません。ちょっと、このゲーム会社は信用ならない・・・・

となると、次回、全く別の新作ゲームの発売にも影響する可能性がありそうです。

③ネガティブインフルエンサーの創出

裏切られるとその想いはSNSで瞬く間に伝搬します。

でも、ここで注目して欲しいのは、事前の期待値をあげるプロモーションが成功すればするほど、ネガティブな反応は大きいという点にあります。

その結果、本作だけでなく今後のゲーム事業に影響してくる可能性がありそうです。

ゲーム会社の最終ゴールは「特定タイトルのファン獲得」ではなく
時間をかけて「そのゲーム会社に対するファン獲得」することです。
その結果、ゲーム会社としての企業ブランドが構築されます。

単体タイトルの期待値のギャップは、ゲーム会社としての企業ブランド構築にも影響を与えるという事を想定しながら仕事ができると、全く違った仕事の進め方ができるようになります。

まとめ

今回、「ファンの期待値」というテーマでお話をしました。

ここまで踏み込めているゲーム会社は非常に少ないのですが、ゲーム事業においては重要なことであり、ここに踏み込めると大きく現状改善をすることができます。

というわけで、今日はここまで!