こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回はゲーム事業を成功させるために必要な「マーケティング思考による自社の強み把握とタイトル編成」というテーマでお話します。
トロネコは20年間に渡って家庭用、スマホゲームでの経験がありますが、家庭用ゲーム系のゲーム会社は比較的、自社の強みの把握と、それに基づいた開発タイトルの編成ができている傾向にあります。
一方でスマホゲームの場合は、この概念が抜けている会社も多く、常にゼロからフルスクラッチであらゆるゲームジャンルに手を出してしまい、自社の強みが蓄積されず、基礎体力が積みあがっていかないケースが散見されます。
今回のお話は家庭用ゲーム会社出身の方からみれば「ゲーム事業における常識で基本中の基本の話」で説明は不要かもしれません。一方で、ゲーム事業の経験が浅く、特にスマホゲームからゲーム事業に参入してきた人からすると「なかなか理解しにくい話」だったりします。
とはいえ今回の話はスマホゲーム会社でも理解している会社もありますが、今回、言語化することでその重要さをお伝えできればと思います。
成功しているゲーム会社には得意なゲームジャンルがある
サッカーゲームならコナミのウイニングイレブン |
レースゲームならポリフォニーデジタルのグランツーリスモ |
といったようにゲーム会社、ゲーム開発チームにはそれぞれ得意なゲームジャンルがあります。
パズルゲームを得意とする開発チームが、サッカーゲームや、レースゲームの新作を作ろうとしてもウイニングイレブンやグランツーリスモを超えるものは作れません。その逆もしかりで、面白いパズルゲームが作れるかというと疑問です。
なぜなら、 ウイニングイレブンやグランツーリスモには長年に渡ってそのゲームジャンルを作ってきた「経験」「アセット資産」「ブランド力」があるからです。
成功しているゲーム会社には自社が得意とするゲームジャンルがあります。
「自社の強みを理解し、そこに選択と集中をすることで他社の追随や参入を許さないゲーム事業が展開できます」
これは長年、ゲーム事業に関わっている人にとっては説明が不要ですね。
成功できないゲーム会社はいろいろなゲームジャンルに手を広げがち
一方で、成功できないゲーム会社はいろいろなゲームジャンルをつくりがちです。サッカー、パズル、レースゲームなど思うままに新作ゲームをつくってしまいます。
パズルゲームと、レースゲーム、サッカーゲームではゲーム開発やプロモーションにおいても求められるスキルが異なりますが、成功できないゲーム会社「すべてを同じゲーム」としてしか見ることができていません。
わかりやすいように極端な例をあげると次のようになります。
レースゲームを作ったことがない人がゼロからレースゲームをつくる |
↓ |
市場における及第点のレースゲームがつくれない |
↓ |
配信したけど結果が出ない |
↓ |
サービス終了 |
↓ |
レースゲームの開発アセットは破棄(もうレースゲームは作らない) |
ゲーム事業は必ず成功するものではなく、むしろ失敗することが多いのですが
でも、このような仕事の進め方では失敗しても、成功しても資産も残せませんし、経験や知識を次に活かせません。
なぜならレースゲームで失敗した経験はレースゲームの中でしか活かしにくいからです。次回、もしサッカーゲームをつくるならば、またゼロスタートとなります。(例外もありますがわかりやすいように極端な例でお話しています)
本気でレースゲームで勝負したいなら、レースゲームの経験がある開発チームの編成が必要ですし、1回の失敗では諦めないある程度の覚悟が必要です。しかし、成功しにくいゲーム会社の多くは、レースゲーム未経験でも「ゲームだから作れるだろう」と考えてしまうのです。
なぜ、スマホゲームでは、このような事が起こってしまうのかその理由は次の3つで説明できます。
・ゲーム事業責任者のゲーム事業における圧倒的な知識と経験不足 |
・ゲームプロデューサーのゲーム事業における圧倒的な知識と経験不足 |
・ゲームを「ゲーム」ではなく「サービス」として考えている |
家庭用ゲームの場合はこのようなケースが「絶対ない」とは断言しません。
しかし、スマホゲームに比べると家庭用ゲームはゲーム開発における「知識」と「経験」の継承がされやすい組織構造が長年に渡って構築されている、という点は否定できません。
もう少し踏み込むと(ここまでくると家庭用ゲーム出身者としては到底理解しがたいのですが、実際にありえる話ですので書きますね)
ゲームクリエイターは、転職しても「ゲーム作り」に関わりたいと願います。
でも、仕事としてゲームプロデューサーをしている人は、ゲーム業界以外への転職に全く抵抗がありません。
「仕事としてゲームをつくっているのか」
「人生をかけて命を削ってゲームをつくっているのか」
ここに決定的な違いがあります。
これはゲーム開発だけでなく、ゲーム事業におけるマーケター職にもいえることです。
この「差」は、今後のゲーム事業においては凄く効いてくるとトロネコは考えています。
成功しているゲーム会社は社内と社外開発でタイトルを切り分けている
成功しているゲーム会社は「内製」「外注」でタイトルの切り分けを考えています。
【内製】 | 自社の強み、ノウハウの積み上げ、資産構築に繋がるゲーム開発 ※完全オリジナルタイトルなど |
【外注】 | 開発会社の強みを生かしたゲーム開発、または新たな発明が不要な世の中に正解は存在するゲームシステムのガワ変えタイトル ※キャラクター版権タイトルなど |
このパターンがすべてではないですが、ゲーム開発はそれ自体が経験であり知識になります。自社の資産にしたいゲーム開発は「内製」を前提で考えます。
成功できないゲーム会社は社内と社外開発でタイトルを切り分けられていない
一方で、成功できていないゲーム会社の多くは「内製」「外注」の切り分けの重要さを理解できていません。
AAAタイトル(大規模開発費をかける注力タイトル)であっても外注に出したりします。しかし、冷静に考えてみると、かけた開発費分の経験と知識は自社に残らず開発会社に積みあがります。
開発会社との良好な関係や、開発ラインの確保が永遠に継続するなら良いのですがそこが崩れるとゲーム開発に大きな影響を与えるリスクがあることも理解していません。
成功しているゲーム会社とそうでない会社の違いはマーケティング思考によるタイトル編成力
成功しているゲーム会社とそうでないゲーム会社の違いがなぜ生まれてしまうのか?前のパートでその原因として下記をあげましたが
・ゲーム事業責任者のゲーム事業における圧倒的な知識と経験不足 |
・ゲームプロデューサーのゲーム事業における圧倒的な知識と経験不足 |
・ゲームを「ゲーム」ではなく「サービス」として考えている |
もう少し踏み込んでみると
「マーケティング思考によるタイトル編成ができる組織、人材、役割の不在」
が原因になります。
とはいえあらゆるゲーム会社に「タイトル編成の部門」が存在しているわけではありません。むしろ、存在していない会社の方が多いかもしれませんが、成功しているゲーム会社は改めて説明をするまでもなく、
「マーケティング思考によるタイトル編成マインドが体に染みついているので、間違った判断をする前にストッパーが効く組織が構築されている」
といえます。
論理的ではなくても、感覚的に「これおかしいよね」という声が「自然と現場や決裁者レベルの両方からあがる」という意味です。
これからゲーム事業を立ち上げる場合の成功のヒント
ここまで説明してきた内容を踏まえて、これからゲーム事業を立ち上げる会社があるとすれば成功するためのヒントをまとめておきましょう。
・ゲーム市場のトレンドや未来を分析する |
・リソースを元に自社の強みを考える |
・強みを元にタイトル編成を設計する |
・自社のゲームブランドの向かうべきゴールを設計する |
ここが事前に整理できるだけでも、成功も失敗も自社の資産として蓄積し
ゲーム会社としての成長が描けます。
既にゲーム事業をしている場合の改善のヒント
既にゲーム事業を展開している場合の改善のヒントも書いておきましょう。
・理シースや実績を元に自社の強みを理解する |
・強みを元にタイトル編成を設計する |
・自社のゲームブランドの向かうべきゴールを設計する |
・上記にはまらないゲーム開発、事業は一旦やらない方針を決める |
レースゲームか、サッカーゲームか、パズルゲームか、どの分野でNo1を取って、足固めをしてから次のチャレンジをするのか。手広く仕掛けるのではなく、選択と集中がゲーム事業には重要です。
まとめ
今回、ゲーム事業を成功させるために必要な「マーケティング思考による自社の強み把握とタイトル編成力」というテーマでお話しました。
余談ですがタイトル編成ができているゲーム会社なら、配信日の決定も管理されています。よって配信日が同じ時期に被ることもなく、スマホゲームタイトルAとBが1周年、2周年で同月で重複するようなことも絶対にありえません。
なぜなら重複することでアプリストア上の露出や各種プロモーションによる重複を自社内で作ってしまい、その結果、売上や利益を最大化できないことを理解しているからです。
というわけで、今回はここまで!