スマホゲームアプリ開発におけるビルドの定義とは?CBT、OBTテストに最適なビルドについても解説

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スマホゲームアプリ開発におけるビルドの定義とは?CBT、OBTテストに最適なビルドについても解説

スマホゲーム、家庭用ゲーム開発において用いられるビルド、ロムの定義について詳しく解説します。

突然ですが質問です。

「プロトタイプ、α、β、ファイナル、マスター版」さまざまなビルド、ロムのフェーズが存在しますが、それぞれの定義と、役割について説明することができますか?

 

説明できる人もいれば

うまく説明できない人もいるかもしれません。

 

そして説明できたとしても、ゲーム会社によって、その定義がバラバラだったりするものです。

トロネコも20年以上に渡って家庭用ゲーム会社、スマホゲーム会社で仕事をしてきましたが

家庭用ゲーム会社では「ロム」と呼ぶものが

スマホ会社では「ビルド」と呼ばれるように

その中身の定義について業界的に完全に統一されていない印象があります。

 

開発チームやゲーム会社の数だけ「定義」と「役割」が存在するため、

今回、改めてここで整理してみたいと思います。

ビルド・ロムの定義と役割

最初に「答え」を全部お話しましょう。

ズバリ、ビルド(ロム)の定義と役割は次の表の通りです。

ビルド名称
定義
実装内容
開発進捗
テスト
判断軸
コアの面白さ グラフィック UIデザイン 当たり前機能 アセット バランス ゲーム運営 バグ対応 開発内テスト CBT OBT チューニングテスト
モック ゲームコアの遊びを動かしてみた状態
紙企画ではわからない、動かしてみて面白さを確認するためのビルド
※ビルドにせず別の方法で検証する場合あり
10% ゲーム企画
1st モック、プロトタイプに近い言葉、または中間の言葉
※とりあえず動く物を切り出しただけの状態を指す
20% ゲーム企画
プロトタイプ ゲームコアの遊びの面白さ確認、ジャッジできるビルド 25% 本開発
α 基本ゲーム概要実装済
アセット開発未着手、体験サンプル版に近いもの
40% ポテンシャル
β 運営アセット除く、基本的なゲーム全コンテンツ実装済 70% 投資
Final バグのみ残す状態 95% 品質
Master すぐに発売、配信できる状態 100% 配信

この表に書かれてあることで、ほぼ今回お伝えしたいことは盛り込んでいます。

 

ちなみに、モック、1st、プロトタイプが混在しているゲーム会社が多いかもしれません。

「それぞれ同じ意味を持つけど、使っている言葉が異なる」

「または、それぞれ微妙に異なる意味を持っており、使い分けている」

といった会社もあるかもしれません。

 

とはいえ、この表で重要なのはビルド(ロム)には

・定義

・実装内容

・必要なテスト

・何をジャッジするか?

この4つの項目がセットで実施される必要があります。

 

ビルド(ロム)は、ただ開発進捗の状況を示す言葉ではなく

「ゲーム企画の面白さを判断して、さまざまなゲーム企画の中で、ビジネスとして投資する価値があるものを選択して、そこに投資する判断をするための点なのです」

 

よって

事業性がないもの、見込みがないゲーム企画は、その時点でプロジェクトを中止して

損失を最小限に抑えたり、または、課題を発見して対策を行い、事業としての成功率を高めることもできます。

 

ゲーム事業の場合、プロトタイプ版を超えると、開発費が一気にかかってきます。

まして、β版まで作っていながらプロジェクトを中止したら、損害は甚大です。

 

実際にはβ版まで作っていながら、そこで全部作り直したようなケースもあります。そうなると、そこまでかけた開発費や時間は全て無駄になってしまいますよね。

でも、β版に至るまでに何度もジャッジしたり、改善するビルドフェーズは存在したのですが、適切な対応をしていなかったために、いろんな無駄を出してしまうケースは後を断ちません

 

ですからプロトタイプ版までにポテンシャルのあるゲーム企画を選出して、可能性がないゲーム企画はリジェクト(≒中止)する必要があります。

この見極めが上手いゲーム会社はビジネスとしても健全であり、結果的に面白い、良質なゲームを世の中に出すことができます。

 

逆いうと、見込みがない、ポテンシャルもない、事業性も低いゲームの企画がをリジェクト(≒中止)せずに、気がついたら、ほぼ完成状態まで開発されていることもあります。

これは今回紹介している「ビルドの定義と役割」がうまく理解できていない、社内でまわっていない証拠なのです。

 

【重要】ビルド・ロムのフェーズによって判断軸が異なる

ところで、それぞれのビルド、ロムについて、さまざまなテストを行い客観的な定性定量評価によって、そのビルドのポテンシャルや事業性をチェックします。

実はこのようなテストが適切に行われていないケースは多く、それがゲーム事業の不確実性に影響を与えているのは事実です。

 

テストを行った結果、ゲーム会社の経営層は「判断」を行います。

この「判断軸」という項目が非常に重要であり、このゲームの

「ポテンシャル」=事業性

「投資」=事業性、収益性

「品質」=予定通りの事業性、収益性が見込めるか?

というジャッジを行います。

例えば「β版」では「投資」判断を行いますが、ここで「事業性」「収益性」があると判断した宣伝費や追加開発費、オンラインゲームの場合はゲーム運営費などをさらに投資する判断をします。

 

また「Final版」ではゲームとしてのクオリティに問題がないか?予定している「事業性」「収益性」に影響はないか?判断します。

問題があると判断したら、配信日の延期による改修などを行います。

 

ビルド名称
定義
実装内容
開発進捗
テスト
判断軸
コアの面白さ グラフィック UIデザイン 当たり前機能 アセット バランス ゲーム運営 バグ対応 開発内テスト CBT OBT チューニングテスト
α 基本ゲーム概要実装済
アセット開発未着手、体験サンプル版に近いもの
40% ポテンシャル
β 運営アセット除く、基本的なゲーム全コンテンツ実装済 70% 投資
Final バグのみ残す状態 95% 品質

 

この表に書いてあることは、ビジネスを行う上では、ごく当たり前のことばかりです。

しかし、実際のゲーム開発の現場では適切に運用されているケースは少ないかもしれません。

なぜなら、

明らかに品質に問題がある状態でゲーム配信を決めたり

そのような判断をする上での明確なファクト(テストなどによる裏付け)がない状態だったりするからです。

実はゲーム事業がうまく行っていない現場の多くが、このような

ビルドのフェーズにおける

「定義」「役割」「検証」「判断」ができていないことが多いのです。

ビルドのフェーズによって、これら「定義」「役割」「検証」「判断」は異なるため、これらを理解しているかによって、健全なゲーム事業ができるかは大きく分かれます。

 

いずれにしても「判断」するためには「検証」が必要です。

検証は各種テストによる客観的な定性定量評価によって行われます。

このテスト設計が適切にできていないケースも散見されますので要注意です。間違ったテスト結果によって、間違った判断をすることほど、悲しいことはないからです。

ちなみにCBT、OBT、チューニングテストについては下記の記事で詳しく解説しています。

 

 

 

まとめ

今回の表は、これまでの経験を踏まえた上で作成した「トロネコオリジナルのシート」です

よって、何も気にせず、このまま皆さんのゲーム開発現場に取り入れていただいて結構です。取り込んで頂ければゲーム事業における成功率は確実にアップすると思います。

定義とテストと判断軸を決めることで、「やる」「やらない」といった事業判断ができるようになりますし、事業判断を行うポイントをゲーム開発のフェーズにおいて設置することができます。

大手ゲーム会社はもちろん、中小ゲーム開発、開発専門会社、個人開発でも、今回のシートは参考になると思いますので、ぜひ使えそうなところから、どんどん活用してみてください。

youtubeチャンネルではもっと詳しく解説しています

ちなみに、今回の内容はかなり細かい内容になっているので、youtubeチャンネルではもっと詳しく解説しています。

合わせてご覧いただくことで理解が深まりますので、ぜひご活用ください