「ゲームアプリ運営」で結果を出すためのヒントについてこっそりお話します
こんにちはトロネコです。
時間が過ぎるのは早鋳物で、1年なんてあっという間ですね。
でも、スマホゲーム運営はサービスが終了するまで続いていきます。日々ゲーム運営をしていくわけですが、長年、ゲーム運営をしているとある一定のサイクルについて気がつきます。
それは1年間を通して
売上、DAUなどが盛り上がる(獲得できる)時期と
売上、DAUなどが盛り上がらない(獲得しにくい)時期が
あるということを。
売上、DAUの増減はゲームユーザーの「プレイモチベーション」と「課金モチベーション」と連動しています。
つまり、1年間を通した季節やタイミングはゲームユーザーの「プレイモチベーション」と「課金モチベーション」に影響を与えるということが数値からもわかっています。
そこで、今回はスマホゲーム運営における1年間を通したゲーム運営の中で
売上、DAUなどが盛り上がる(獲得できる)時期と、さらに盛り上げる(獲得する)ための方法
売上、DAUなどが盛り上がらない(獲得しにくい)時期と、その中で盛り上げる(獲得する)ための方法
といった視点で解説します。
年間のゲームアプリ運営で売上やKPIが盛り上がる季節タイミング
年間のゲームアプリ運営において売上やKPIが盛り上がるタイミングといえば、下記になります。
いわゆるそのゲームにおける「商戦期」というわけです。
ゴールデンウィーク | 4末から5月初週にかけて多くの人が休暇に入るタイミング |
年末年始 | 12月から、クリスマス、年末、お正月にかけてボーナスによる購入意欲や、多くの人が休暇に入るタイミング |
夏休み | 7月下旬から8月にかけて多くの人が休暇に入るタイミング |
周年タイミング | そのゲームが配信された日を軸に前後0.5ヶ月程度のタイミングであり、ゲームに対する期待感が盛り上がる時期 |
ゲーム運営をやっている方、何年に渡って、複数のタイトルを運営されてきた人にとっては、これらタイミングは売上KPIが獲得しやすい時期であることは運営を通して実感していると思います。
実際のところスマホゲームの年間事業計画を立てる上でも、間違いなくこれらタイミングの売上は他の月と比べても多く計画されるはずです。
なぜ、これらのタイミングで売上やKPIが獲得できるのか?
その理由はとてもシンプルです。
可処分時間(=プレイモチベーション)×ユーザーのゲームに対する期待値(プレイ・課金モチベーション)=売上やKPIが獲得できるタイミング
というわけです。
ちなみに、夏休み、ゴールデンウィーク、年末年始に新作ゲームアプリを配信すると、1年後の周年タイミングと被ってしまうことになります。
これは、1年間で4回の商戦タイミングのうち「1回分」を自らの対応で失ってしまうことになります。よって、ゲームアプリの配信日は、これら商戦期と被らないように、または連続して決める必要があります。
例えば配信日を3月にすれば、1年後の1周年タイミングにおいては
「3月から4月にかけた周年タイミングからのゴールデンウィークへの突入」といった「連続性を持った商戦期」を享受できることになります。
これはゲーム運営をする上で非常に大きいメリットです。
一方で4末に新作ゲームアプリを配信するとゴールデンウィークと重複してしまうため、「商戦期」を1回分、損してしまうことになります。
新作ゲームアプリの配信日は、あまり考えずに決められてしまうのではなく、よく考えて決めるようにしましょう。
配信日は永遠に周年タイミングという商戦期として逃れる事ができません。
話がずれてしまいますが、発売日の決め方については「競合タイトル」とのパワーバランスも踏まえて決めることをお勧めします。なぜならユーザーが競合する場合、毎年周年タイミングはそのユーザーの可処分時間の取り合いになるからです。
もし自社タイトル同士でタイミングが競合するならば、自社リソース(お金、人)も取り合うという、悲しい状況になってしまいます。
年間のゲームアプリ運営で売上やKPIが盛り上がらない季節タイミング
一方で、年間を通して売上、KPIが稼ぎにくいタイミングが存在します。
具体的には10月、11月、2月が該当します。
長年、ゲーム運営をしていると、この3ヶ月は非常に苦労します。それがわかっているので事業計画における売上見込みも低めに計画しがちなのですが、その低めの計画すら下回ってしまう事があるくらいなのです。
これらのタイミングを「閑散期」と言います。
なぜ、10月、11月、2月が盛り上がらないのか?
その原因もシンプルです。
・前後の商戦期におけるリバウンド効果と
・季節的なモチーフ(売り物、訴求軸)が存在しない空白期間だからです。
プレイモチベーションがあがりにくい状態(=ユーザーコンディションが良くない)
プレイモチベーション、課金モチベーションがあがるモチーフが存在しない
タイミングというわけですね。
このように年間を通して、商戦期と閑散期が存在するという事実を理解する事が必要です。実際に、ここでは数字は出しませんが、きっと皆さんも過去の運営実績を並べると、今回あげたタイミングで売上やKPIの増減に気づくはずです。
そして、ここで重要なのは
「商戦期」においては、さらに売上やKPIを伸ばし、その後のゲーム運営の貯金を稼ぐ
「閑散期」においては、できるだけ売上KPIの減衰を抑え、「商戦期」で稼いだ貯金を食い潰さないようにする
これこそが、年間を通して安定したゲームアプリ運営が可能となり、結果的に長期に渡ってゲーム運営ができるようになります。
では、どうすればいいのか?
その方法について、少しだけお話をします。
「商戦期」で売上やKPIを伸ばし、その後のゲーム運営の貯金を稼ぐ方法
「商戦期」で売上とKPIを伸ばす方法について解説します。
その前に、皆さんは「商戦期」の目的って何だと思いますか?
ガッツリ、売上と利益をあげることです!!
といった声が聞こえてきそうですね。
これは正しいともいえますが、一方でゲームアプリ運営の最終目的が「長期間における利益の最大化」であることからすると、間違った考え方といえます。
商戦期においてガッツリ利益を出したい!
それは、今年の事業計画を達成する上では重要なのですが、実際のところ商戦期で売上を出しても商戦期以降で、大きく売上を下げてしまうとトータル的には事業計画は達成できませんし、数年単位で見ると大きく目的達成できなくなります。
そこで、商戦期に対する視点を次のように変えてみましょう
商戦期は年間のゲーム運営において「貯金」ができるタイミングであり
ここでどれだけ「貯金」できるかが今後のゲーム運営に影響を与える
我々は商戦期の貯金(資産)をマネジメントしながら年間運営をしているのだ
商戦期においては「売上」「利益」も稼げますが、その一方でユーザー獲得、DAU改善などゲームユーザー、ゲームファンの獲得ができるタイミングでもあります。
つまり、いかにユーザーを獲得、維持して、今後のゲーム運営や、待ち構えている閑散期を乗り越えていけるかが重要というわけです。
サンプルとして、商戦期の一つである「周年タイミング」についてあげて解説してみましょう。
「トロネコの大冒険」という架空のゲームアプリがあるとしましょう。
10月が1周年タイミングだとすれば、10月の1周年施策という「点」ではなく、その後のどうなっていったのかという「線」が重要だということに気づくことでしょう。
そして、「10/1から10/31までの1周年記念キャンペーン期間」に入る前の「9月にどのような状態を維持してきたか」といった1周年施策前の「点」も重要になってきます。
そもそも、商戦期は何をやっても平常時よりも盛り上がりやすいタイミングです。
なぜなら下記の計算式でも説明したように
可処分時間(=プレイモチベーション)×ユーザーのゲームに対する期待値(プレイ・課金モチベーション)=売上やKPIが獲得できるタイミング
盛り上がる要素が詰まっているタイミングだからです。
ポイントは
・その盛り上がりをどこまで事前にあげられるか
・そして盛り上がりの減衰をどこまで抑えて維持できるか
商戦期の前後の施策設計がどこまでできているかが、極めて重要なのです。
これを「点」ではなく「線」で考えるマーケティングとして下記の記事で解説しています。
ゲームアプリ運営において、多くのマーケターやゲーム開発、運営担当者は物事を「点」でしか考えていません。
彼らにとって重要なことは「商戦期」における会社から設定された事業計画目標を達成することにあります。
だからこそ、手段を選ばず、無理をして同月における数字を出すことに注力してしまいます。この場合、一見、「貯金」を作ったかのように見えるかもしれませんが
・作られたKPIという名前の貯金なので、商戦期が終われば、むしろ状況は悪化したり
・商戦期で大成功しても、その後の維持施策が用意されておらず、大成功が無駄になってしまったり
といったことがゲームアプリ運営の現場では永遠に繰り返されています。
商戦期においては、商戦期だけでなく、その前後もセットで設計実行すること
この意識を持つだけで商戦期における結果も、その後のゲーム運営も大きく改善する事ができます。
「閑散期」で売上やKPIの減衰をできるだけ抑える方法
続いて「閑散期」で売上とKPIを伸ばす方法について解説します。
伸ばすというよりも、KPIや売上を維持するといった意味合いもありますが、やり方次第で閑散期という存在そのものを無くすこともできます。
代表的な閑散期としては10月、11月、2月がありますが、なぜ盛り上がらないのか?
先ほどお伝えした通り、その原因はとてもシンプルでした。
・前後の商戦期におけるリバウンド効果と
・季節的なモチーフ(売り物、訴求軸)が存在しない空白期間だから
ならば解決方法もシンプルです。
前後における商戦期のリバウンドを軽減する策を打ち
モチーフを作ってあげればいいだけです
前後における商戦期のリバウンドは先ほど解説した「「点」ではなく「線」で考えるゲームマーケティング戦略・プロモーション設計」ができていれば、ある程度は緩和する事ができます。
それでも想定されるリバウンドを軽減する効果も踏まえた上での新しいモチーフを閑散期につくるのです。
例えば次のような施策モチーフを用意します。
ハーフアニバーサリー | ゲームアプリ配信日の半年後が10月、11月、2月になるように配信日を決めることで「ハーフアニバサリー」という、そのゲーム独自の記念日を作る考え方です。 |
独自のお祭りや記念日 | 閑散期をそのゲームにおける独自のお祭りや、記念日として宣言してしまうことで、閑散期にモチーフを作ってしまうという考え方です。XXXフェス、XXX祭、XXX感謝祭という形で毎年定常化することで閑散期を潰していきます。 |
大型アップデート | ゲームの大型リニューアルや、アップデートは商戦期にあてるのが常識と考えがちですが、商戦期は結果が求められるタイミングであるため、サーバートラブルやバグによる失敗は容認できません。そこで閑散期にあえて大型アップデートをかけることで、商戦期に向けたコンディション調整と、大型アップデートをモチーフとした盛り上がるタイミングを作ってしまうという考え方です。
毎年、10月、11月、2月は大型アップデートのタイミングとかにすると、それだけで閑散期を打ち消す事ができます。 |
他にもアイディア次第で、いくらでもそのゲーム独自のモチーフは考える事ができます。
そして賢いマーケターなら、多くのゲームアプリ運営で10月、11月、2月は閑散期であり、TVCMの媒体単価も安くなる傾向にあることを知っているため、ここを新作ゲームアプリの配信日に設定します。
つまり閑散期を、周年タイミングという商戦期で上書きしてしまおうという考え方です。
まとめ
年間のゲーム運営を通して「閑散期」「商戦期」の存在は明らかになっています。
そして、それを踏まえて月別の売上目標をゲーム会社では期首に計画しています。
つまり、この時点で「閑散期」「商戦期」を理解して計画しているわけです。でも「閑散期」「商戦期」にどう向き合っていくべきか、多くのマーケターやゲーム開発運営の現場では事前に考えられていません。
商戦期が迫ってから対策を考えたり、閑散期で厳しい結果が出てから悩んだりしているだけです。
トロネコも長年、ゲームマーケティングをやってきたり、多くのゲーム会社の状況を見てきて、なぜ、このような状態から改善できないのか?考えてきましたが、一つの答えに辿り着きました。
それは、ほぼ間違いなく99%の人が物事を「点」でしか考えられていないということです。厳しい言い方をするなら「その場しのぎの仕事しかしていない」ともいえます。
ゲームアプリ事業は長期にわたって勝ち続ける必要があるビジネスです。ですから、「点」でしか物事が考えられない状況では戦いになりません。
今回ご紹介した「商戦期」「閑散期」の話はあくまで一例に過ぎません。「線」で考えられる思考回路にスイッチできるかが、ゲームアプリ事業において成功確率を高め、ゲーム会社が組織として、事業として成長できるかに大きな影響を与えることは間違いありません。