こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回はゲームやエンタメ事業におけるプロモーション予算(宣伝費)の使い方についてその「考え方」をお話したいと思います。
会社によってプロモーション予算、いわゆる宣伝費については、さまざまな考え方があります。
・最初から予算が決められているパターン
・必要な予算を提案して会社から取りにいくパターン
たぶん、多くのケースでどちらかだと思うのですが本質的には後者の方が健全です。
なぜなら、必要な予算=目的を達成するために必要な予算
となりますから、必要な予算が確保された状態の方が、目的(目標)を達成できる可能性も高いからです。
でも多くのケースで、会社都合で予算の上限は決まっていてそのなかでやりくりしなければならない場面に遭遇します。
そんな時、これからお話をする「考え方」を持っておくと決められた予算の中でも目的達成に近づくことができますし、会社都合で一方的に押し付けられる予算金額に対してカウンターをあてることもできますので、知っていて損はありません。
悪い宣伝費の使い方
①宣伝予算がトップダウンで決まっているパターン
②さらに、その決まった宣伝費を使い切ることが目的になっているパターン
①②ともに良くない宣伝費の使い方の代表選手です。そして、この2つが合体すると、最悪の宣伝費の使い方になります。
①宣伝予算が決まっているパターン
トップダウンで目標売上XXX億円を出さなければなければならないから
宣伝費としてXX億円かける!といったパターンです。
でも、トップダウンでエイヤーで決まった金額ですから、その金額が足りているのか、足らないのか不明ですね。
②さらに、その決まった宣伝費を使い切ることが目的になっているパターン
宣伝予算としてXX億円とったので、それを使い切ることが目的なっているケースも多くみられます。この場合、予算を使い切ることが仕事になっています。
実際のところ、使い切ることが目的になってしまっている現場では、本人も周囲も自覚していない場合も多いです。
現場が自覺できていない状態を見分ける方法があります。
それは費用対効果の検証が事前に設計されていない場合です。宣伝費をかけることによる売り上げに対する効果算出ができない時点で、
宣伝費を使うことが目的化している状態に陥っている可能性が高いです。
これは、スマホゲーム、家庭用ゲームの両方で見られますが、どちらかというと、かけた宣伝費の効果測定がしにくい商材である、家庭用ゲームに多く見られます。
良い宣伝費の使い方
そもそも、必要なプロモーション予算(宣伝費)はどうやって算出するのか整理しておきましょう。
こちらのマーケティング戦略の作り方の話でも触れましたがフレームワークにそってマーケティング戦略をつくると、必要な予算がわかります。
①目的:このプロジェクトで達成したい状態 ↓ ②目標:目的が達成した状態を数値化したもの ↓ ③課題:目標をクリアするための障害になっているもの ↓ ④戦略:課題をクリアするための決め手になる方針 ↓ ⑤戦術:戦略を実行するためのアクションプラン |
マーケティング戦略はこんな感じでつくられます。
よって、戦術を実行するために必要なコストが適切なプロモーション予算(宣伝費)ということになります。
⑤戦術で必要なプロモーション予算は、①から④のパートがちゃんと作れていれば適正金額が算出されるわけです。
このように、マーケティング戦略に基づいて算出すると「良い宣伝費の使い方」を設計できます。
ここまで、ちゃんと設計できているケースはそれほど多くないのですが、トロネコはマーケターとしては最低限必要な作業だと考えています。
しかし、実はこれだけでは不十分なのです。
なぜなら、プロモーションとしてかけた宣伝費と、プロモーションによる効果は必ずしも比例しないからです。
むしろ、近年は、さらに比例しにくくなってきています。
もう少し踏み込んだ宣伝費の使い方
先日トロネコはこんなツイートをしました
最近はお金をかけたプロモーションが必ずしも施策効果と比例しません
お金より時間をかけて面白さにこだわり抜いたプロモーションの方がバズを生んだりします
お金はあくまで手段であり、まずは頭に汗をかいて考えるつくすことが重要です
お金を使わないと実現できないなら、そこで使えばいいのです
— トロネコ@ゲームマーケティングスペシャリスト (@toroneko_market) January 23, 2020
最近はお金をかけたプロモーションが必ずしも施策効果と比例しません
お金より時間をかけて面白さにこだわり抜いたプロモーションの方がバズを生んだりします お金はあくまで手段であり、まずは頭に汗をかいて考えるつくすことが重要です お金を使わないと実現できないなら、そこで使えばいいのです |
このツイートにほぼ集約されているのですが
世の中にあるあらゆるプロモーションは、必ずしもお金(キャッシュアウト)と、その効果が比例するわけではありません。
わかりやすい例をあげるならば、こちらでも記事で書きましたが最近Twitterでバズっている「100日後に死ぬワニ」という4コマ漫画があります。
漫画の製作費に数千万かかっているとは到底思えません(当たり前ですねw)
でも、この規模の施策効果をお金で解決しようとしたら数千万円かけても難しいかもしれません。
お金を使うことに対する考え方は非常にシンプルです。
「考え抜いた結果、お金がないと実現できないもの、解決できないからお金を使う」
たったこれだけです。
最初からお金で全部解決しようという考えに囚われてしまうと
「100日後に死ぬワニ」
のような企画を思いついても、例えば、お金をかけて有名人を使ったドラマ風映像を作りたがってしまったりします。
でも、有名人が出演しているドラマ風映像が、ユーザーの共感を生み、 「100日後に死ぬワニ」のような効果を出せるかというとそうではないですよね・・・・。ここは冷静に考える必要があります。
プロモーション予算と施策効果は比例しないという考え方
「100日後に死ぬワニ」 の例だけでなくこちらの記事では手書きで描いたイラストをTwitter投稿したことでティザサイト(予告サイト)の役割を果たしたというお話をしましたが、
プロモーション効果=かけたプロモーション予算
と比例しないのは明らかです。
ただ、共通して言えることは
プロモーション効果=かけた時間
とは比例します。
時間をかけて絞り出した企画案の中から厳選した施策と、施策実施スケジュールも決まっているので、数時間のブレストでぱっとアイディアを出してお金で解決した施策よりも成功打率は全然違います。 |
ならば、 「100日後に死ぬワニ」 のような施策アイディアを
たくさん出せばいいじゃん!なるほどね!
というと、そうでもありません。
なぜなら 「100日後に死ぬワニ」のような施策は
まさにチャレンジ施策のようなもので、100%数字が残せるかというと確実性が弱いからです。
そこで、最初に答えをお話すると次の2つを両軸で設計してください!
①確実に数字が取れる施策(鉄板施策)
②想定を超えたノビシロが期待できる施策(チャレンジ施策)
①確実に数字が取れる施策(鉄板施策)
スマホアプリでいえば、運営型のWeb広告、Youtuber広告、TVCMなど、数と質がある程度担保できる施策です。まずここで足元を固めます。
ただし、この施策の弱点は予算によって結果が見えてしまうので足元は固められても、それ以上の上振れが見込めない点です。
②想定を超えたノビシロが期待できる施策(チャレンジ施策)
爆発的な上振れが狙える(夢を描けるでもいいです)施策を仕込みましょう。
「100日後に死ぬワニ」あくまでも一例ですが、結果的にお金がかかってもいいので、時間はじっくりかけてチャレンジできる施策を用意しましょう。
まとめると
①鉄板施策+②チャレンジ施策の組み合わせが賢いお金の使い方、配分方法です。
できれば①の鉄板施策で目標数値はほぼクリアできる試算が作れていて、②チャレンジ施策で目標値の達成と、さらなる高い場所が目指せる設計になっているのがベターです。
でも、多くの場合で①鉄板施策にたよりがちで、②のチャレンジ施策はないがしろにされる傾向があります。
なぜなら①は数字も質も見込みやすく、それほど時間もかからずお金で解決できるからです。
一方で②は必ずしもお金で解決できない場合が多く、時間と労力と、考えるとう多大なストレスがかかるので辛い作業です。かつ、時間をかけた割には結果が出ない場合もあります。
よって①だけをやっている方が、ぶっちゃけな話として、すごく楽なんですね。
でも、①だけではもう戦えない時代でして、②もセットで設計する必要があります。ここが両軸で設計できると凄く強いです。
チャレンジ施策の成功確率を上げる方法
実はトロネコが経験上、生み出した②チャレンジ施策の成功確率を上げる方法がありますので、ここでお話しますね。
それは
お金と比例せず、1年かけてチャレンジ施策に相当する施策を5から10本用意します。
体験型のWebコンテンツ制作でもいいですし、まさに、 「100日後に死ぬワニ」のような4コマ漫画施策でも構いません。
(ここでも話をしていますが「100日後の死ぬワニ」からは100日間に渡った点ではなく線のプロモーションができるので当たるとコスパが非常に高いですね)
ただし5~10本をアプリ配信の1年前から徹底的に企画を練って作り込んで仕込みます。
さらに、その施策を時系列に並べて、それぞれの施策に効果としての役割まで持たせます。
でも多くのゲームのプロモーションでは、②チャレンジ施策的なものって1本から2本しか用意されないことが多いのですがここが結果がでない点です。
なぜなら、どんなに時間をかけて練り上げたチャレンジ施策でも成功確率は5割くらいだからです。(トレンドを作るのはいろいろな要素が絡んでくるので、百発百中なんてありえません!)
1本から2本しか用意していなければ、運悪く外してしまうと施策効果ゼロで終わってしまうリスクがあります。
しかし 5~10本あると、さまざまなチャレンジが張れるので(チャレンジ施策の中でもリスク分散もできる)結果的に2本から5本くらい、打率5割くらいでバズをつくることができます。
なぜなら
・同じ戦略
・同じターゲット
でも
そのターゲットを刺す戦術はひとつとは限りません。
まして最近は、SNSなどメディアが多く、ユーザーの趣味嗜好やタッチポイントが多様化しすぎていますから、例えば同じ施策でもFacebookと、TwitterとTiktokで実施しても、結果が異なる場合があります。
例えば、1本しか仕込まないならFacebookと心中するしかないのですが
10本仕込むなら同じ施策でもFacebookだけでなく、それ以外にも仕込めますからチャレンジ施策であってもリスク分散ができます。
リスク分散ができると、断然成功確率が違うし、さらにオマケとして、施策結果を踏まえて、まだ実施していない他の施策に対しても設計途中で軌道修正をかけるヒントが入手できるのです。
結果、これを繰り返していくと、後半の施策にいけばいくほど成功確率がアップするのです。
まとめ
今回はゲームやエンタメ事業におけるプロモーション予算(宣伝費)い方の使い方についてその「考え方」をお話をしました。
皆様にとって新しい気づきのきっかけになればトロネコも嬉しいです。
というわけで今日はここまで!