こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
そういえばちょっと前の話ですが、
とあるレコード会社に所属するミュージシャンの担当の方からこんな相談を受けました。
簡単にまとめるとこんな感じです。
・いつか武道館でライブをやりたい
・でも武道館の収容人数14,471人に対して現在のTwitterフォロワー数は全く足りない ・いろいろ試しているけどどれもうまくいかない ・音楽性はマス受けではなく、ニッチ受けである ・これから、どうすればいいのかヒントを欲しい |
ということでした。
この相談に対してトロネコは困ってしまいました。
なぜならマーケティング視点では
「なぜ武道館でライブをやりたいのか?」→目的
「Twitterフォロワー数を増やせば武道館に行けるのか」→目標
「いろいろ試してみたというけど、何がダメだったのか」→課題
といったものが不透明だからです。
つまり、このアーティストを売り出すための戦略がよくわからない状態だったのです。
戦略がない状態では施策アイディアが先行してしまう、通称「HOW思考」になりがちですし、HOW思考だと、その施策を実施しても「目的を達成できるのかわかりません」ので、いつまでたっても結果がでにくいです。
また、「HOW思考」の場合は、失敗しても
施策の設計が適切にされていないゆえに、なぜ失敗したのか?
わからないため、成長できず
同じような失敗を繰り返し、先に進めません。
HOW思考については下記の記事でも触れていますので参考にしてみてください。
【参考記事】なぜ、HOW思考で作られたプロモーション施策は結果がでにくいのか?【マーケティング戦略が重要です】
そこで、今回はゲームからちょっと離れて、
ミュージシャンを売り出すマーケター視点で「戦略の組み立て方」を作ってみたいと思います。
結局のところ、このミュージシャンから十分なヒアリングできずに終わってしまったので明確な戦略は出せないのですが、今回は「戦略の組み立てる上での考え方」について書いてみました。
ちなみに今回はレコード会社所属のミュージシャンを売り込むマーケティング戦略として書いていますが
「アマチュアバンド」「youtuberの歌い手さん」など
あらゆるケースにも応用ができる「考え方」になっています。
マーケティング戦略の作り方は下記でも説明していますので、合わせて読んでください。
【参考記事】【基本編】マーケティング戦略のつくり方【汎用性の高いフレームワークをご紹介】
ちなみにあくまでも、今回の話は「考え方」であって
今回書いてある方法がこのミュージシャンを売るための戦略として通用するものではありません。
だって、売り込みたいミュージシャンの魅力についてはなんらわからない状態で「考え方」を書いているからです。
もし戦略→施策まで落とし込みたいレコード会社関係者様がいたら
是非お気軽にご相談くださいね。
ミュージシャンを売り込む「マーケティング戦略」における「目的」とは?
まず、ミュージシャン本人にとっての目的とは
「武道館でライブをやること」ではないはずです。
武道館は憧れの場所だけど、武道館でライブをしたらすべての目的を達成して、そのバントやミュージシャンは引退するわけではないからです。
「武道館でライブをやること」はあくまでも通過点であり
武道館ライブの先には、ミュージシャンとして達成したい、叶えたい何かしら別の「目的」があると推測されます。
音楽で世界平和を実現したいとか
音楽でお金を儲けたいとか
音楽で歴史に名前を刻みたいとか
これはあくまでも一例ですが
たぶん、ここにミュージシャンにとっての「目的」が潜んでいます。
と考えると
「武道館でライブをやること」はそれ自体が「目的」ではなく
「武道館でライブをやること」は「目的」を達成するための「目標」であり
目標の中でも「定性目標(数値化できない目標のこと)」だと言えます。
※なんか複雑でわかりにくくなってきましたが、そういうことです。
そう考えていくと、このミュージシャンを売り込むプロモーション担当になったアナタは、このミュージシャンをヒットさせるためのマーケティング戦略を立案するにあたって
このミュージシャンの本当の「目的」を明確にする必要があります。
例えば「目的」について、こんな設定をしてみましょう
自分たちの音楽を通してファンの人生を救いたい
うーん、まだ目的としては不足しているかもしれません。
「救いたい」相手の性別、年齢、国籍など明確にするとさらに「目的」が鮮明になりそうです。
例えば「目的」を
「音楽を通して悩める20代、世界すべての男性を救いたい」
「まずはアジアから救っていきたい」
という粒度まで設定できるならば、より目的が鮮明になります。
(この目的が適切かどうかは、ここでは問題ありません。あくまでも一例です)
目的が鮮明になればなるほど
「目的」を数値化した「目標」も鮮明で具体的なものを設定できるようになります。
マーケティング戦略における「目標」とは?
「音楽を通して悩める20代、世界すべての男性を救いたい」
「まずはアジアから救っていきたい」
このようなことを「目的」に設定したなら
その目的を達成できる数値「目標」はいろいろなものが考えられそうですが
仮にTwitter、インスタグラム、Youtubeチャンネル登録者に設定するとしても、登録数だけでなく登録者の年代、国別なども「目標」設定に入ってきそうです。
なぜなら目的を
「音楽を通して悩める20代、世界すべての男性を救いたい」
「まずはアジアから救っていきたい」
と設定したからです。
この時点で「武道館でライブをやること」は「目的」を達成するためのひとつの要素だけど、それでは「目的」達成できないということになります。
なぜなら、武道館で20代男性限定ライブをやっても
海外の方も来場してくれるかもしれませんが
基本的に日本の若者しか救えないので「目的」を達成することにはなりません。
とりあえずここでは
・100万人のTwitterフォロワーを獲得する
・ただしアジア地域の20代男性から満遍なくフォローしてもらう |
ということを仮の「目標」と設定してみましょう。
あくまでも「マーケティング戦略の考え方」を学ぶことが今回の目的なので、この数字はダミーですし、適当です。
マーケティング戦略における「課題」とは?
続いて「目標」を達成するためのハードルとなるもの。
つまり「課題」を明らかにしていきます。
ここで課題になるのは
アジア、20代男性という設定をしたことで
「言語、文化、時差などによる問題」
「異なる国における20代男性に共感できるテーマの違い問題」
「Twitterの存在を知るきっかけ問題(Twitterは普及してない地域があるかもしれません)」
など、
ミュージシャンを売り込む上で様々な課題が見えてきます。
この課題をクリアしないと「目標」を達成できそうになさそうです。
ポイントは「課題」は出し切る必要があるという点です
課題を出し切れないと、戦略策定に進むことができません。
なぜなら、「課題」を解決し「目標」を達成し、結果的に「目的」を達成するための「方針」「戦い方」がマーケティング戦略だからです。
この課題の洗い出しが不十分だと「適切なマーケティング戦略」が導き出せません。
マーケティング戦略における「戦略」とは
課題が見えてくると
課題を解決するための「戦略」も見えてきます。
今回、下記を課題にしました。
「言語、文化、時差などによる問題」
「異なる国による20代男性に共感できるテーマの違い問題」
「Twitterの存在を知るきっかけ問題」
これによって次のようなマーケティング戦略のイメージが見えてきます。
(このマーケティング戦略も仮です)
・言語に依存しない、視覚による共感を考慮する
・日本の文化の影響力が高いアジア地域に振り切ってまず攻める ・日本文化の中でも20代に刺さるモチーフを盛り込む ・振り切ったアジア地域でTwitterによる露出を稼ぐ |
他にもいろいろ課題を解決する戦略方針がありそうですよね。
でも、ここでの戦略はあくまでも「課題」に対する「解決策」「方針」になりますので、「課題」が出し切れていなければ「戦略」も出し切れないという関係になります。
とりあえず「課題」を解決する「マーケティング戦略」になりそうな事をまとめてみましょう。
あくまでもダミーの戦略ですが次のような「マーケティング戦略」がつくれそうです。
・日本文化で共感を獲得できるタイ、台湾から着手
・20代に訴求力がある日本アニメとコラボをした映像楽曲で
・Twitterを発信媒体として振り切って展開して
・アジアの20代男性にムーブメントをつくる
(繰り返しですがこの戦略が正しいとかは別で、今回は考え方の話ですよ)
こんな感じで戦略が作れるようにトレーニングしていきましょう。
実際には今回の掘り下げ内容は不十分ですので、もっとミュージシャンからヒアリングが必要です。
さらに、このミュージシャンの奏でる音楽やメッセージが誰のハートを揺さぶるのか?
音楽性やカリスマ性、人間性、メッセージ性
まぁなんでもいいのですが、
ミュージシャンという商材の魅力や強み、弱み
ターゲットユーザー、競合ミュージシャン
まぁいろいろあるわけですが、マーケティング戦略策定前に深く掘り下げるべき要素はたくさんありそうです。
なんか難しそうに感じるかもしれませんが
マーケティング戦略は汎用的なフレームワークがありますので、下記で説明しているフレームワークにそって作れば誰でも「マーケティング戦略」を作り上げることができますので、ぜひ活用してみてください。
【関連記事】【保存版】ゲーム事業におけるマーケティング戦略のつくり方(フレームワークを使った立案方法)
マーケティング戦略から導き出す「施策案」
戦略が決まると、あとはそれを達成する施策案を考えるだけです。
ここからは柔軟なアイディア出しが重要になりますが、戦略が決まっていればブレることもなく、まとめられます。
・誰に
・何を
・どうやって届けるのか
という点をマーケティング戦略からブレイクダウンして作るだけです。
難しそうに感じるかもしれませんが、実はマーケティング戦略が完成していれば、このような「施策」を考えるのは簡単です。
なぜなら世の中には数多くの「参考になる施策例」が存在しており、そこをヒントにする事で施策アイディアは無限に考えられるからです。
ただし、絶対にやってはいけないこと
そして多くの人が実際にやっていることがあります。
それは
マーケティング戦略から考えず、施策アイディアから考えるということです。
これを冒頭でもお話した「HOW思考」というのですが
「HOW思考」で考えられた施策アイディアは
それを実行しても「目標」や「目的」を必ず達成できるわけではありません。
なぜなら
その施策はマーケティング戦略から導き出されたものではないからです。
よって、なんか賑やかしになったなぁ
盛り上がったなぁ、KPIによさそうな影響が出てそうだなぁ
と思っても
本当にそうなのか、気のせいなのか
失敗したのか、成功したのか、失敗したなら失敗した原因は何か?
といった事が全くわかりません。
これが「HOW思考では成長しない理由」になります。
同じような失敗を何度も繰り返し、我々は体力を消耗してくといわけです。
まとめ
というわけで、今回はミュージシャンの例を踏まえて、マーケティング戦略の作り方を実践的なテーマで作ってみました。
トロネコはゲームマーケターですが、マーケティングスキルがあると、ゲームだけでなく様々な分野でも応用が利きます
というわけで今回はここまで!