こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回はもはやスマホゲームアプリでは切っても切れなくなった
コラボレーション施策についてのお話です。
家庭用、スマホゲーム、PCゲーム
あらゆるゲームでアニメや漫画、その他ゲーム版権とのコラボレーション施策が盛んに行われています。
なぜ、そこまで実施するのか、
それはメリットがあるからなのですが、
その一方で、コラボレーションには大きなデメリットも存在しており
過剰なコラボ施策は自社ゲームタイトルのIPを毀損してしまうリスクがあります。
トロネコもかつて、毎月、担当タイトルで何かしらコラボしているような状態がありましたが、結果的にそのゲームのブランド育成に大きな影響を与えてしまい、結果的にIPとして育てることができませんでした。
今回、実際の経験を元に、
過剰なコラボ施策がどれだけ自社タイトルのIP育成を阻害するリスクがあるのか、という話をしたいと思います。
ゲーム業界におけるコラボレーションの定義
例えばスマホゲームアプリで「トロネコRPG」という架空のゲームがあったとしましょう。
トロネコRPGのDAUや売上をあげたいために
様々な有名ゲームタイトルや漫画アニメ、キャラクターとコラボをするとしましょう。
コラボといっても、ゲームタイトルの場合は相互にメリットが見込めるなら無償で実施することもありますが、漫画アニメ、キャラクターの場合はほぼ100%、有償使用許諾によるコラボとなります。
これが現在のゲーム業界におけるコラボのベースの考え方になります。
本来のコラボレーションの意味は?
「コラボレーション」という言葉の意味をネットで検索すると
「協同作業、活動、合作」
といった意味であることがわかります。
このことからも
本来のゲームにおけるコラボレーションとは
「一緒にに協力することによって」
「単体ではできないサプライズと楽しさを提供する」
と定義することができます。
かつて、トロネコも担当していたタイトルでは様々なコラボを実施してきましたが、2010年代初頭くらいまでは基本的にこの考え方がベースでした、
つまり、お金による使用許諾ではなく
相互メリットの上で本当の意味でのコラボが成立していたわけです。
このように、スマホゲームにおけるコラボ施策が一般化する前の時代のコラボは
目の前の売上よりも
「作り手目線でのサプライズ、楽しさ」
「相互持ち出しによる相互メリット」
が重視されてきたわけです。
しかし、スマホアプリの登場後、コラボの意味が変わってきました。
なぜなら、コラボレーションをすることで、ゲーム内の売上やDAUといったKPIに影響があることがわかってきたからです。
そして、売上が稼げるスマホゲームでは大きなお金が動くこともわかってきたため、
「コラボ=キャラクターの有料使用許諾」
という考え方が一般化して、もはや、いまはこれを疑う人は誰もいないかもしれません。
よって、コラボレーションの実施目的は
「サプライズや楽しさ」から「KPI」に変わりました。
もちろん、現代のコラボ実施にあたっては「サプライズや楽しさ」を諦めたわけではありません。
しかし、かつてのゲームにおけるコラボと比べると明らかにサプライズは落ち、楽しさは感じにくくなってきたのは疑いようもない事実です。
結果、ユーザー視点から見ると
コラボレーションに対する「ワクワク感」「価値」は以前と比べると下がってしまった印象があります。
コラボできる相手(アニメ漫画ゲーム版権)に限りがあり、何度も同じ相手とコラボをした結果、ユーザーが慣れてしまったことも原因のひとつです。
内コラボがサプライズではなく、予定調和になってしまったというわけですね。
ゲームプロモーションにおけるコラボレーション施策のメリットとデメリット
なぜ、ゲーム会社がコラボレーションをやるのでしょうか?
すでに冒頭で触れてしまった部分もありますが、スマホアプリを例に改めてコラボ施策のメリット、デメリットを整理してみましょう
コラボレーション施策のメリット
①DAUがあがる(新規ユーザー、既存ユーザー、離脱ユーザーを活性できる
②その結果、売上あがる
メリットはこの2つです。
コラボをする相手にもよりますが
コラボ相手がアニメ、漫画などキャラクター版権なら
内容次第では、アニメ漫画ファンの興味を惹けますので
コラボきっかけで「トロネコRPG(架空のゲームですよ)」のような無名ゲームを知り、インストールして遊んでくれるかもしれません。
その結果、瞬間的に売上、DAUを改善させることができます。
※コラボ相手がゲームアプリならユーザーの相互送客も期待できます。
コラボレーション施策のデメリット
①ユーザーがコラボレーションの刺激に慣れてしまった結果、コラボがない時のゲーム運営のKPIが下がります。
②コラボを重ねるたびにコラボによる施策効果は下がります。
③ゲーム運営サイドが、一度コラボの味を知ってしまうと辞められないし、
やらないと売上やDAUも下がるので、定期的にコラボをしなければならなくなります。
④コラボには他社版権の使用許諾のために結構なお金がかかります。もしコラボ施策がハズレてしまうと大きな損失になります。
⑤コラボの結果、集客できるユーザーはコラボ目的であり、売上もコラボ依存しがちのため、コラボを実施している自社ゲームタイトルの存在価値が薄れてしまいます。
⑥結果、自社タイトルの育成、ブランド化に影響が出てきます。
コラボばっかりやっているゲームは最終的に、そのゲームが主役なのではなく、そのゲームはコラボをするための「ただの箱」になってしまうのです。
ゲームが「ただの箱」になってしまうと、そのゲームに価値はありません。よって自社IPとして育てることも、IPとして継続することもできなくなってしまうのです。
過度なゲームアプリのコラボは自社IPの価値を棄損するという恐ろしさ
コラボ施策におけるメリット、デメリットを列挙してみましたが、みなさんどう感じましたか?
スマホアプリの多くが短期的な売上、KPIといったメリットを得るために、膨大なデメリットを背負っているような気がしてきましたよね。
本来、健全なゲームビジネスは、マリオやドラクエが証明しているように自社IP、ブランドを育てて、何十年にもわたって長期に愛され利益を生み続けるところにあります。
しかし、スマホアプリの場合は、コラボによって自社IP、ブランドの育成を諦めて、目の前の売上を取りに行っているケースが殆どです。
自社ブランド育成を諦めていないスマホアプリもありますが、スマホプリからブランド形成できたタイトルは数える程しかない、または存在しないのかもしれません。
毎年、新しいタイトルを次々とヒットさせられれば、この方法でもゲーム会社は生き延びていけますが、
近年、家庭用ゲーム、スマホアプリゲーム、いずれでも新しいヒットタイトルを作り出せない市場環境になってくると、コラボで売上を稼ぐ方法は、その場しのぎのゲーム事業をやっているようなものです。
もっと深く考えていくと、コラボってゲームの基本的な面白さとは無関係です。
基本的に不要だし、むしろゲーム事業を本気で考えるならリスクが高いのです。
もちろん目先の売上も必要ですが
多くのゲーム運営、マーケタ―は、コラボレーション施策によるリスクをあまり真剣に考えていません。
とはいえ、リスクをわかっている人でも、売上、KPIといったプレッシャーに日々晒されているわけで、コラボを止められないのも事実です。
コラボに依存してしまうと、辞めたくても辞められない状態になります。
スマホアプリにおけるコラボレーションとは、一度始めたら、辞められないドーピングのようなものなのです。そして、常習性が高い劇薬です。
そんな劇薬であるコラボですが、近年、実施ハードルもあがっています。
なぜならコラボ先のアニメ、漫画IPの許諾料は高騰化していますし
コラボ先としてインパクトを残せる相手が限られているからです。
よって同じコラボ先と繰り返しコラボをしたり、半年前には別のゲーム会社とコラボしていたキャラクターが、半年後には別の会社とコラボとしているという、よくわからない状況になっています。
本来のゲームにおけるコラボレーションとは
「一緒にに協力することによって」
「単体ではできないサプライズと楽しさを提供する」
という話をしましたよね
いま、皆さんが実施しようとしているコラボに「サプライズ」や「楽しさ」はありますか?
そして、それによって失うものを理解していますか?
売上やDAUもビジネス上では重要なのでそれは否定しません。
ただし売上、DAUしか見ていない状態でのコラボ実施は極めて危険です。
コラボレーションに依存しないゲーム開発、運用がおすすめの理由
目先の売上を稼ぐためにコラボは必要です。
でもゲーム会社として10年後も生き残っていくための自社コンテンツの育成も必要です。
両方ともゲーム事業を行っていく上では重要です。
そう考えていくと
今の売上を稼ぐための「スマホアプリ」
10年、20年後の未来をつくる「家庭用ゲーム」 |
その両輪でまわしていくのが「ゲーム会社」としては理想です。
家庭用ゲームで将来への投資を行い
スマホゲームで投資を回収していく
といった役割分担ができれば、
家庭用ゲームからスピンアウトしたスマホゲームがコラボ漬けになっても
あくまでもIPのスピンアウトですから
本編である家庭用ゲームが続いていけばIPの棄損リスクを軽減できます。
IPって何?という人は下記の記事で詳しく解説しています。合わせて読んでみてください。
【関連記事】【家庭用/スマホ】ゲーム業界におけるIPとは何か?みんな間違っているかも!?
こうやって考えると、スマホゲームと家庭用ゲームの戦略的な住み分けができそうな気がしてきませんか?
家庭用ゲーム出身のゲーム会社なら、この方法が取れるので
スマホゲーム出身のゲーム会社と比べると圧倒的なアドバンテージがあります。
しかし家庭用ゲームを作っていないスマホゲーム出身のゲーム会社は、このやり方は難しそうですね。
ならば、スマホゲーム出身のゲーム会社はどうすればいいのでしょうか?
取れる手段は非常にシンプルです。
スマホゲーム会社がとるべきコラボレーション施策の方法
①出来る限りコラボに頼らないゲーム開発、ゲーム運営をする
極論を言えば、コラボを一切せずゲーム単体で売上と成長していけるゲーム設計とゲーム運営をするべきです。
こんな話をすると絶対に無理!
という意見もでてきそうですが、例えば有名アニメ漫画版権を使ったゲーム化はそもそもコラボができなかったりしますので、絶対に無理ということはありません。
②そのゲームとユーザー属性や嗜好が合致する相手とのみコラボをする
そのゲームが「ただの箱」にならず
相互にメリットがあって成長していける相手とのみコラボをすることも手段としてはおすすめです。
③そのスマホゲームがヒットしたら、スマホゲームだけに依存しないIPを確立する別の方法も同時で模索する
そのスマホゲームに対する依存度が高いことがコラボ施策の多用につながっているなら、そのスマホゲームがヒットした時点で、別のIP成長方法も検討するべきです。
家庭用ゲーム展開をしてもいいですし、キャラ展開でも構いません。
もし、そのスマホゲームのサービスが終了してもIPとして生きていける方法を確立することでコラボ施策によるデメリットを軽減することができます。
この3つを押さえておくだけでコラボにおけるリスクを回避できます。
とくに3番目は非常に重要です。自社IPが特定のゲームにIPの拠り所を依存しない状態を早く作るべきです。
自社内競合に対する恐れがIP展開を減速させる
多くのスマホゲーム会社は、同じスマホゲームアプリの世界で同IPを使ったタイトルを出す事は、カニバルから、売上が減ってしまうと考えがちです。
トロネコRPGが売れたから、トロネコレースをつくると、
トロネコファンがカニバって分散するからトロネコRPGの売上は減るという考え方です。
※カニバル:自社の商品が売れることによって、自社の別の商品の売り上げが減るという共食い現象
しかし、コラボに依存せず、未来に目を向けたゲーム事業を目指すならば
カニバルことを恐れてはいけません。
(どうせ、他社のタイトルにユーザー取られるなら自社アプリから取られた方がいいですよね・・・)
そうやってIPを確立できれば、コラボ漬けになっても、それは数あるIP展開のひとつですから、IP棄損のリスクはさがるというわけです。
「トロネコRPG」がヒットしたらをコラボ漬けにしてもいいけど、そんなコラボ相手に負けないようにIPとしての確立も注力すべきです。
過度なコラボの依存でゲームタイトルが毀損してしまう原因は、ゲームタイトルがコラボ相手にIP力として負けているという点が大きいのです。
「だからこそ、コラボをしても負けないようにIP育成をする」
「むしろ相手からコラボさせて欲しいといわれるくらいにIPとして成長する」
ここがポイントです。
まとめ
今回、コラボ施策におけるメリットとデメリットについてお話しました。
最後にまとめましょう!
「家庭用ゲームは終わりがないゲーム」
サービス終了がないので発売日を迎えても、ずっと記憶に残り続けるゲームです。
「スマホゲームは終わりがあるゲーム」
サービス終了と同時にそのゲームの寿命は尽き、IPとしても終わります。
「スマホゲームはコラボ漬けにすることで運営の寿命は縮まる」
サービス終了しないためのコラボ施策が結果的にそのゲームIPとしての寿命を縮めます。
これらを理解できていれば、
何をするべきかもう答えは出ているハズです。
ぜひ、コラボ施策のメリットとデメリットを理解しながら、うまく付き合っていくマーケターになってくださいね!
というわけで今回はここまで!