こんにちはトロネコです。
日々、膨大なスマホゲームが新規に配信され
その影でたくさんのタイトルがサービス終了しています。
サービス開始から数年かけてサービス終了に至るタイトルもあれば、配信から僅か数ヶ月から半年でサービス終了となるタイトルもあります。
一方でサービス終了とは無縁で10年強で続いているゲームもあります。
今回、まず最初に伝えたいことは
新作スマホゲームを出すなら
最低1年はサービスを継続する覚悟がなければ
新作タイトルを配信するべきではありません
これは絶対にです。
半年、または数ヶ月でサービス終了判断するならば、最初から配信しない
もし、タイトルを発表してしまったら配信自体を中止するべきです。
ゲームアプリは配信するまでにも膨大な開発費がかかります。
しかし、配信後もコストはかかりますし、サービス終了でもコストはかかります。
つまり配信することで金銭的なリスクは、さらに大きくなることを理解する必要があります。
そして
配信することで、そのゲームに対する評価はもちろん
結果的にサービス終了になることでも
会社やそのタイトルに対するブランド的なリスクも高まります。
短期間でサービス終了をすることは
金銭的なダメージだけでなく、すぐに可視化できないものの長期的なブランド毀損による
将来における金銭的な損失を受けることを理解する必要があります。
サービス終了の判断のほとんどは「金銭的な損失」で行われる
今回は「ゲームアプリがサービス終了になる理由」という記事でも書いていますが
サービス終了になる判断を行う際には様々な理由があります。
ただし、その中でも大きな理由となるのは「お金」の問題です。
「初期開発コストはもちろん、毎月の運用コストを回収できず、赤字である」
このような状態になるとサービス終了判断を行います。
長く運営しているゲームタイトルの場合は、新規ユーザー獲得や既存ユーザーの減少によって、今後の売上を試算できるようになるため、ある程度、サービス終了の時期も予測できるようになります。
よって、損益分岐点の切り替わるタイミングを想定した上で計画的にサービス終了時期を見定めることができるのです。
一方で数ヶ月から半年でサービス終了になるタイトルの多くは
ユーザー獲得、維持もままならない状態
今後、改修しても売上の改善が見込めない状態
といった場合が多く、
企業としての投資活動が正常に行えず、このような差し迫った金銭的な理由よるサービス終了が多いのです。
企業はあくまでも投資活動をすることが目的ですから、儲からない事業は撤退するのはごく普通の判断かもしれません。しかしゲーム事業の場合は、ゲーム事業そのものから撤退しない限り、今後も新作タイトルをリリースしていくことになります。
今回の記事で取り上げているような「極めて短期間」によるサービス終了は自社ブランドを確実に毀損して、将来の事業に影響を与えることを理解する必要があります。
自社ブランドに対する意識が低い
そもそも、一部のゲーム会社を除いてゲーム会社の多くは自社ブランドに対する意識があまり高くありません。
自社の看板で発売して良い「ゲームのクオリティ」「基準」が明確に定めらている会社は本当に限られています。
その結果、
これ、本当に2022年の今の時代に出していいの?
みたいなゲームを世の中に出してしまうケースを見かけます。
(厳密にいうとゲームに限らず、非ゲームアプリや各種サービスにも言えることです)
実際のところ家庭用ゲームの世界でも「このゲーム本当に出していいの?」みたいなケースは多く見られますが、スマホゲームの場合は流通コストがかからないこともあり、家庭用ゲームよりも問題があるクオリティのゲームが、いまだにたくさん配信されています。
そのような状況を見ると
ゲーム会社としての自社ブランドに対する意識が低さを感じずにいられません。
無料のゲームだからといっても、ゲーム会社の名前を冠にしたゲームですから
ユーザーはそこにクオリティや楽しさを期待します。
実際に遊んだ結果、期待に対して裏切られた体験はなかなか消えないものです。
それによって、これからのゲーム事業において様々な弊害が生まれるのですが、その重大性について、我々はあまり真剣に理解していないのです。
短期間のサービス終了で想定されるリスク
クオリティが低いゲームを出すことで次のようなリスクが想定されます。
「このゲーム会社のゲームは質が低い」
「次に出る新作ゲームも質が低いだろうから期待するのはやめよう」
つまり、今、配信した新作ゲームのクオリティの低さが、未来のゲームビジネスにじわじわ効いてくるわけです。
新作ゲームをインストールする、または購入する「きっかけ」は過去の信頼関係も影響します。
過去に遊んだA社のゲームは面白かったから今回の新作も「及第点」はクリアしているだろう
という潜在意識の中でユーザーは購入、またはインストールの判断を無意識の中で行います。
信頼関係=ゲーム会社のブランドとも言い換えることができます。よってブランド力がある=信頼関係が築かれているゲーム会社の新作ゲームは「目に留まりやすい」のです。
完全新作タイトルでも、ゼロベースからの勝負ではなく
一歩進んだ場所からアドバンテージを持って勝負できるので勝率も上がります。
一方で、短期間でサービスが終了する場合には次のようなリスクがあります。
「このゲーム会社が出すタイトルってすぐにサービス終了してしまうよね」
「次に出る新作ゲームも短期間でサービス終了してしまうかもしれないから課金は様子を見よう」
つまり、短期間でサービス終了する経験をしてしまったユーザー心理は、将来配信される新作ゲームの課金率に影響を与えます。
仮にそのゲームがIPモノなら、今後のそのゲームのIP展開に影響が出ます。
ゲーム事業は単なる1本のゲームタイトルだけでなく、最近はアニメやグッズ、リアルイベントなどIP展開を複合的に実施しています。
IPタイトルには単なる1本のゲームタイトルに縛られない、IPファンが存在します。
IP展開においてはファンとは信頼関係=ブランドが大変重要です。
たった1本のゲームでも、短期間でサービス終了することでIPファンとの信頼関係に影響を与えます。
会社が短期間で、そのゲームをサービス終了判断をしたのは、あくまでもそのゲームタイトルの収益性の問題に過ぎないかもしれません
でも、その判断によって失うものが、単体タイトルに止まらず、数値化、可視化しにくいファンとの信頼関係、言い換えるならブランドに大きな影響を与えます。
その結果、ジワジワとゲーム会社全体の収益性や将来に影響を与えるのです。
経営者視点で見れば、ここは極めて重大です。
しかし、どこまでその重大性を理解できているかは会社によって様々であり理解していない会社もあるのです。
どうすれば短期間でのサービス終了を回避できるか
ならばどうすれば短期間でサービス終了してしまうようなゲームを出さないようにするのか?
回避する方法についてご紹介しましょう。
まずはゲーム開発視点での回避方法になります。
シミュレーションテストを行う
短期間でサービス終了になるゲームの共通点として事前にシミュレーションテストを行なっていないことが多いです。
そもそも数年単位のサービス運営におけるシミュレーションテストは不可能ですが、配信直後から数ヶ月までなら、
どうすればユーザーを維持して課金してもらえるのか
配信前にテストを行い、事前に問題を解決できます。
配信初期を乗り越えれば、半年でサービス終了するということはまず回避できます。
またテストにより事前に解決できない課題も見つけられます。
その場合、配信を延期するか、プロジェクト自体を中止するという判断もできます。
このテストとはCBT、OBTではなく「チューニングテスト」を指します。ここではチューニングテストをシミュレーションテストと言い換えているだけで内容は近いものがあります。
下記でも詳しく解説していますが、必ず配信前にテストを行ってください。このテストはCBTやOBTでは代用が難しいテストです。
課金ユーザーを重視する
ゲームアプリがサービス終了になる最大の理由は「お金問題」です。
よって、究極的には課金ユーザーを維持し続ければ、事業規模は小さくてもサービスを継続できます。
賛否両論はありますが
それだけでもサービス終了を回避するゲーム運営は可能です。
ゲーム運営をしているとどうしても、広くユーザーの声に耳を傾けがちです。これは企業の姿勢として正しいのですが、ここで重要なのは
・このゲームのターゲットユーザーは誰か?
・現在のゲームの収益を支えている人は誰か?
・これからのゲームの収益を支える人は誰か?
ここを理解することです。
ゲームのオリジナリティを重視
新しいゲームを企画する上で、どうしても「現在、人気の流行っているゲームの仕組み」に影響を受けがちです。
流行っている仕組みを採用することで、そのゲームとしてのオリジナリティは薄れ
ユーザーにとってはそのゲームである必要性も低下します。
極端な考え方ですが
サービスを継続できるケースもあります。
サービス終了=この世界におけるそのゲームの存在意義がなくなった時
とも言い換えることができます。
必要としている人がいる限り、サービスは継続できる可能性が高まるからです。
低コストで運営を回せる設計
ゲームがサービス終了になる最大の理由は「お金」という話をしましたが、サービス開始以降に
低コストで運用を回せるアプリ設計をすることもサービス延命にプラスです。
これはゲーム会社の規模や人件費なども影響します。
例を挙げるならば「トロネコパズル」という架空のゲームがあったとしましょう。
A社は月売上1億円でも赤字でありサービス終了しなければならないけど
B社なら月売上3000万円でも全然サービスは継続できるというケースが実際にあるからです。
プロジェクト設計
プロジェクトを立ち上げる際に、どうしても夢をみがちな数値目標を設定がちです。
その結果、巨大な開発費と運用費を計上してしまい、それが達成できない故にサービス終了となる場合も多いのです。
そもそもちゃんと事業計画とか収支計画とか、開発予算、宣伝予算、スケジュール管理ができているのか?
という話です。
投資活動として現実的な範囲でプロジェクトを設定することでも短期間でもサービス終了を回避できます。
プロジェクトをやめる、リジェクトする勇気も必要
初期開発費をかけて、数年もかけて開発したゲームを発売中止にするのは勇気が必要です。
でも、シミュレーションテストの話をしましたが、新作ゲームの大半は配信前に
うまくいくか、うまく行かないか
テストをすればわかります。
絶対に上手くいかないことを現場ではわかっているのに
奇跡が起きることを期待して配信してしまったり
結局のところ失敗しても会社の損失だけど、自分は痛まないから配信しちゃおう!と思ったり
そもそも、配信中止の声を社内で発言できる環境ではなかったり
配信しないと、ゲームクリエイターとしてのキャリアが積み上がらないので(開発中止したタイトルは履歴書にも書けないので)失敗してもいいのでゲームの配信を希望する人もいます。
でも、これだけは言わせてください。
結果的に短期間でサービス終了することで会社も現場も、そしてユーザーも
みんな不幸になります。
よって、プロジェクトをやめる、リジェクトする勇気も必要です。
ゲーム会社の中では、世の中に出ていないだけで膨大なタイトルが社内でリジェクトされて
自社が定めたクオリティを満たさない限り、世の中にゲームを出さないと割り切っている会社もあります。
そういった会社がゲーム会社としてのブランド毀損のリスクもなく、むしろ成功を納めています。
つくるマーケティングが重要
トロネコは当サイトでもたびたびお話ししていますが「つくるマーケティング」を実行することで、短期間でサービス終了になるような状況を回避できます。
「マーケティング100リスト」でも列挙していますが
これら項目を全てチェックすることで、半年でサービス終了するようなゲームを生み出す確率を大幅に減らせます。
どうしてもサービス終了しなければならない時の対処法
とはいえ、ゲーム事業はどんなに準備をしても、世の中は100%上手くいく保証はありません。
むしろ新作ゲームの多くは失敗します。
そして、我々は人間ですから失敗することはあります。
どうしても短期間でサービス終了しなければならなくなった場合は次の点について考えて、対策をとりましょう
・ユーザー心理
・短期間でサービス終了することに対する納得感
例えば別会社にサービスを移管してでもサービスを継続する方法はないのか?
もしくは、このサービス終了に対して誠意を持ってお詫びをしながら、次の受け皿(=新作タイトルなど)を同時に用意できないか?
またはサービス終了後でも遊べる「オフライン版」を提供するなど
完全にユーザーを納得させられなくても、着地点を探すことはできます。
まとめ
最後にまとめましょう。
短期間でサービス終了になるような事態は事前に回避できます。
・プロジェクトの設計方法や体制構築
・配信前のシミュレーションテスト
などでも事前にいくらでも回避できますし、うまくいかないことがわかっているなら
更なる損失を出さないためにもプロジェクトの中止判断もできます。
しかし、結果的に短期間でサービス終了になるのは、このようなプロセスを適切に実行していないケースが多いのです。
そして、短期間でゲームアプリがサービス終了になることは、そのタイトルの損切りだけでなく
ゲーム会社としてのブランドに影響を与え
その負債はそのゲーム会社で働く未来の誰かが背負うことになります。
それって、あまりにも無責任です・・・・・
自分たちのゲーム会社を変えていきたい!そう願うなら、勇気を持って変えていきましょう!
そして、変えられるのは皆さんです。