こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
コロナウィルスによりゲーム業界もテレワークが進んでいます。
ZOOMなどを使ったオンライン会議で目の前の「日常業務」については対応できている部分はあるのですが、これはあくまでも一過性に過ぎない状態です。
実はこれから1年で、ゲーム業界では大きな変化が起きるとトロネコは考えています。
・これからどんな事が起こりえるのか
・そしてこれからのゲーム事業には何が必要なのか?
・そのためには、いま何をすればいいのか?
こんな疑問に対する「答え」を今回の記事では探しながら書いていきます。危機感を持ちながら、未来を先回りしていまから準備する対策も含めてお話します。
①コロナウィルスは年単位で影響を及ぼす可能性
コロナウィルスに関しては専門家の皆様にお任せするとして、冷静に考えればゲーム業界も年単位で影響を受けると思われます。
ゲーム会社、マーケター個人としても、いま目の前の仕事をこなすことではなく、その先、1年、2年後の未来を見据えたアクションが、いま必要です。
ざっくりあげてみると
・可処分所得大幅減 |
・遊びのスタイルの変化 |
・購入、課金方法の変化 |
・情報のタッチポイントの変化 |
など、といった部分に大きな変化が生まれ、これまでの常識や経験は役に立たなくなります。(これ以外にもいろいろあります)
のちほど今回の記事で関連した話も出てきますが
「どのような未来を予想し、どのような打ち手を取るか」
既に考え始めており、それを実行する意思を持っている状況でないと、時代の流れに取り残されてしまうリスクがあります。
②ゲームユーザーの可処分所得減による遊ぶゲームの選択と集中の実施
コロナウィルスの影響により「失業したり」「ボーナスが出なかったり」「給料が減ったり」既に起こっていることも含め、さまざまな未来が予想されます。
可処分所得が減っても、ゲーム好きは急激には変わらないですし、スマホゲームなら基本プレイ無料で遊べますので、ゲームに使う時間は極端に減らないと思いますが、可処分所得が減ることで、ユーザーによるゲームに対する取捨選択が行われると思われます。
「1番目に遊びたいゲーム作品にはお金を使おう」
「2番目に遊びたいゲームは、いままでと同じようにお金は使えない」
「完全新規タイトルなど、当たりハズレが大きいゲームは敬遠しよう」
といった状況が考えられます。
つまり、
「既にファンがいるゲームは遊ばれ続けるけど、いまファンがいないゲームは遊んでもらうためのハードルが非常に高くなる」
ということになります。
そもそも、コロナと関係なく、これまでも完全新規タイトルをヒットさせるためのハードルは高かったのですが、それがもっと高くなります。
また「 2番目に遊びたいゲーム」でなんとかやってきたゲームは今後厳しくなると思われます。ターゲットユーザーにとって「1番目に遊びたいゲーム」になれるかが重要になります。
③貯金があるゲームが残り、貯金がないゲームは淘汰される
「1番目に遊びたいゲーム作品にはお金を使う」という話をしましたが、言い換えれば「何よりも最優先して遊ばれるゲームは、熱狂的なファンがいるゲーム」とも言えます。
これは、いままで長い年月をかけてファンと共に積み上げてきた「貯金」がある状態です。
一方で、一見、ファンがいるように見えるけど、実は熱狂的なファンの数は少なく「プロモーションで数字を作ってきたようなゲーム」も世の中には存在します。しかし、このような「コツコツとファンを獲得して貯金をしてこなかったゲーム」は淘汰される可能性があるのです。
ならば、いまからファンを獲得すればいいのでは?
というと実際のところ短期間でファンは作れません。なぜならファンはそのゲームと一緒に過ごしてきた人生の時間と比例してファンの濃度が深まっていくからです。
真面目にゲームの面白さを追求してきたゲームと、そうではないゲームの差が明らかになるのです。
ならば、いまからファンの獲得を諦めるしかないのか?。
というとそういうわけではありません。
「1番目に遊びたいゲーム」になれないと生き残れないならば、どうやって「1番目に選んでもらうのか」、何をやるべきことは答えが出ているはずです。
④「数」の勝負から「質」の勝負にシフトする
今後、起こりうる流れをまとめてみましょう。
ユーザーの可処分所得減 ↓ ユーザーのゲームに対する取捨選択が発生 ↓ 選ばれなかったゲームの売上、利益が減る ↓ 手段が制限される(例:リアルイベントなどプロモ活動の自粛、他にもあります) ↓ さらに売上、利益が減る ↓ お金が使えなくなる |
このような流れはありえる未来です。結果、何が起こるかというと
「マーケティング=お金を使ってユーザーを獲得するプロモーション」という認識に染まっているほど、このサイクルを解消する打ち手が見いだせなくなり「打ち手なし状態」になってしまいます。
以前に「マーケティング=デジタル広告でユーザーを獲得すること」と考えていたマーケターがいたのですが、今期からそのタイトルの宣伝費0円になった瞬間に何もできなくなった(厳密には何も打ち手が考えられなくなった)、いわゆる思考停止状態に陥ってしまいました。
まさに、現場ではこのような状況が起こりえる可能性があります。
でも、当サイトで何度もお伝えしている通り
「マーケティングとは、モノが売れる仕組みづくり」であり
「つくる」「とどける」「とどけつづける」といった3つのプロセスから構成されています。
【マーケティングの定義、プロセスについてはこちらの記事を参照ください】
最終的に「お金」でなければ解決できない時に手段として「お金」を使いますが、基本的に「 モノが売れる仕組みづくり」がマーケティングの本質ですから、お金(宣伝費)を使うことがマーケティングではないのです。
お金を使うプロモーションから、まず頭を使うプロモーションへ
どんな状況でも思考停止にならなず
数から質への急激なシフトがマーケターには求められるようになります。
⑤完全新規タイトルへのチャレンジ判断が鈍る
お金がない ↓ 完全新作ゲームへの投資ができない ↓ 既存ゲームの延命 またはリスクが低い既存ゲームの続編、またはキャラクターモノへの投資 |
といった流れになる可能性があります。
これによって次のような弊害が生まれます。
・ゲーム開発、マーケ現場のモチベーション低下 |
・チャレンジによる打席数の低下による若年層の経験積み上げ不足 |
・未来への投資をしないことへのゲーム会社としての成長鈍化 |
そもそも、シリーズモノ、キャラクターモノは続編の回数を重ねるたびに「既存ファンの中で飽きられる(マンネリ化)」ので、緩やかに減衰していく傾向にあります。
続編のたびに鮮度を維持しているゲームもありますが、ごく一部です。
シリーズモノ、キャラクターモノ はゲーム会社の安定を生み出しますが、現状を大きく変えるには力不足であり、ゆるやかにゲーム事業は縮小していきます。
よって、ゲーム会社に必要なことは
「どんな状況でも未来へのチャレンジを止めないこと」にあるのですが、「それができる会社」「それができない会社」「できるけど重要だと理解していない会社」などに分かれると思われます。
長年、ゲーム業界にいてわかったことは「チャレンジを止めたゲーム会社に未来はない」という事実です。
無駄なチャレンジは、そもそも「チャレンジ」ではないので即止めるべきです。しかし、価値あるチャレンジも止めてしまうような状況になると、直近は良くても長期的にはゲーム会社としての存続にかかわってきます。
⑥圧倒的に面白く、本当のファンを獲得できたゲームしか戦えなない
そもそもゲームとは「面白いコンテンツの集合体」です。
しかし、ソーシャルゲームからスマホゲームの時代には「ゲームの面白さにこだわらず、ガワ替えでで結果を出してきたケース」も多くみられました。
つまり言い換えれば
ゲームを「コンテンツの提供」ではなく「サービスの提供」と考えているゲーム会社もいました。
スマホゲーム市場自体が数年前からレッドオーシャン化しているので、既に厳しい市況でしたが、今回のコロナウイルスの影響が効いてくる頃には、極めて厳しい状況になると思われます。
ある意味、本来あるべき姿に戻るだけなのですが、ゲームは「ゲームサービス」から「ゲームコンテンツ」への急激なシフトが始まります。
そして、いままで真面目に「圧倒的に面白いゲームコンテンツ」を提供してきたゲーム会社はさらに支持を得るようになります。
⑦本当の意味での「ゲームマーケティング力」があるゲーム会社だけが生き残る
ところで「完全新規タイトルをヒットさせるハードルが高くなる」という話をしましたが視点を変えるとちょっと異なる未来が見えてきます。
お金がない ↓ 【視点を変える】 各社完全新作ゲームへの投資ができない ↓ 【視点を変える】 競合が減る 圧倒的に面白いゲームを作れば勝機あるかも? |
ユーザーの可処分所得減 ↓ ユーザーのゲームに対する取捨選択が発生 ↓ 【視点を変える】 ユーザーに選ばれるゲームになるにはどうすればいいのか? |
といった感じです。
つまり、本当の意味での「マーケティング」が試される時代になると考えています。(くどいですが、マーケティング=プロモーションではないですよ)
・ファンを作ることと、プロモ費用は比例しません
・TVCMやデジタル広告ではファンは作れません
「マーケター=新規ユーザーを獲得することが仕事」という考えに染まっている状態からいかにはやく脱出できるかが重要になります。
なぜならマーケティングの定義は「モノが売れる仕組み作り」であり、お金を使って見せかけの数字を作ることではないからです。
そして、「ファンをつくること=SNSや動画サービスを使ったユーザーリレーション施策」でもありません。
これも「手段」に過ぎず、「とどける、とどけつづけるマーケティング」の一部に過ぎません。
「つくるマーケティング」にどこまで踏み込めるのか?これまででも重要でしたが、今後のゲーム業界ではここに踏み込めなければ淘汰される未来が待っています。
まとめ
今回はちょっと悲観的な話ばかりになってしまいましたが、最後に希望が持てる話をさせてください。
「人間は夢と希望がなければ生きていけない」
「だから、夢と希望を与えてくれるゲームはなくならない」
とトロネコは信じています。
これはゲームに限った話ではなく、映画も音楽も演劇もTDL、USJも、エンタメ系全般に言えることだと思うのです。
とはいっても、いま世の中に存在するすべてのゲームが「夢と希望を与えてくれているか?」といえば疑問もありますが、 「夢と希望を与えてくれるゲームを作り続けている限りゲームはなくならない」と考えています。
だからこそ、「本気で人生をかけてゲームをつくり、それを届けられるゲーム会社」だけが必要とされる時代になります。
というわけで、今回はここまで!