ゲーム会社が10年、20年と成長するためにおすすめ「マーケティングの標準化」の導入とは
こんにちは
トロネコです。
今回はマーケティングを使って、いかに組織力アップするか
組織力アップにおすすめ「マーケティングの標準化」についてお話をします。
ところで「マーケティングの標準化」という言葉は聞いたことがないかもしれません。
ネットを検索しても出てこないと思います。
なぜなら、実際のところ、そういうものは存在せず、発案して推進している考え方だからです。
このサイトも「マーケティングの標準化」に向けた活動のひとつなのですが
長い間、ゲーム業界でマーケティングをやってきた経験から、「マーケティングの標準化」はゲーム会社において必要なことだという結論に至りました。
そこで今回は
・「マーケティングの標準化」とはどんなものなのか?
・「マーケティングの標準化」ができると、どんな効果があるのか?
・「マーケティングの標準化」を行う方法は?
これら3つについて解説していきます。
様々な業界でも使える「考え方」ですが、私がゲームマーケターということもありますので今回はゲーム業界における「マーケティングの標準化」というテーマでお話をします。
組織力アップにおすすめ「マーケティングの標準化」とは?
「マーケティングの標準化」とは簡潔にまとめると次のようになります。
「マーケティングの標準化」ができると
・年齢経験に関係なく
・短期間で実戦投入できる人材を育成できる
・同じような失敗のを繰り返すことを防ぎ
・組織としての基本戦闘力が上がる
という感じです。
マーケターとして求められるスキル、仕事の進め方、ルールを誰でも閲覧、利用できて、短期間で使いこなせるように「仕組み化」「ツール化」することを「マーケティングの標準化」と呼んでいます。
トロネコが勝手に「マーケティングの標準化」と呼んでます
そもそもゲーム業界のマーケターの多くは、誰から教えられることもなく
自分独自のやり方で生き抜いてきた人が多いのです。
もちろん先輩マーケターに弟子入りして学んだ人もいるかもしれません。でも、学ぶにしても体系的に学ぶわけではなく実体験やインプットを通じて学んだ人が多いのではないでしょうか?
私自身も誰から教えられたわけではなく、自分で切り開いてきたところがあったので
結論から言うと凄く時間を無駄にしてきた部分があります。
しかも、そのやり方が周囲に共有されることもなく、自分の中に閉じてしまい
個人商店化、いわゆる属人化しがちなのがゲーム業界におけるマーケティングの欠点です。
そして、ゲーム業界におけるマーケティングのプロが、これらのスキルや経験、ノウハウを言語化して若手に教えられるかと言うと、それはまた別の能力だったりします。
マーケターとして優秀な人が必ずしも教育者として優秀ではない
というわけです。
むしろマーケターは日々忙しくしていて、日々のタスクをこなすだけで精一杯な人も多いですから、失敗や成功要因を分析して、それをフィードバックして、さらに周囲に共有して教育できるかというと、できない人が多いかと思います。
さらにゲーム業界は人材の流動性が高い業界ですから、これではマーケティングスキルがゲーム会社組織に根付いて、マーケティング力をあげていくことは結構大変です。
100点まではいけない、50点くらいが限界だけど
短期間でマーケティングスキルを身につけて現場で活躍できるようになる
資料作成に膨大な時間をかけるのではなく、マーケターの仕事の本質である「分析」「戦略」「設計」「実行」「検証」「反映」をする部分に時間を投入する
そのための「可視化」「仕組み化」「ツール化」することを「マーケティングの標準化」と、ここでは定義しています。
マーケティング標準化のメリット
まずは「マーケティングの標準化」のメリットについて解説していきましょう。
人ではなく組織に根付く
ゲーム業界のマーケターの多くは「個人商店化」「属人化」しています。
知識やノウハウ、やり方、テクニック、失敗成功体験・・・・
あらゆる価値あることを周囲に共有して組織を良くしていこうと行動できる人は稀です。多くのマーケターは自分の中で閉じてしまうため、歴史があるゲーム会社ほど「個人商店化」「属人化」は加速していきます。
しかし、「マーケティングの標準化」によって、あらゆる結果は可視化され共有され、自分の中に閉まって置くことは許されなくなります。
誰でも「マーケティングの標準化」によって生まれたノウハウや、ツール、仕事の進め方を手にすることができ、決まった基準で物事が進められていきます。
これによって、マーケターの脱個人商店化、非属人化が実現でき
それらは会社組織に還元され根付いていくようになります。
人材異動による影響を受けにくい
「マーケティングの標準化」はゲームマーケティングの個人商店化、属人性を徹底的に排除する考え方ですから、
優秀な人材が退職したり、異動してもマーケティング力の低下を軽減できます。
人ではなく、組織に根付いているため、人材異動による影響を受けにくいのです。
このサイトもそうですが、
経験あるマーケターの脳みそを言語化して、可視化して、誰でも好きな時にアクセスして使えるような状態を「マーケティングの標準化」で目指す場所です。
アップデートしていくことで組織力が積み上がる、資産になる
私が今まで働いてきたゲーム会社では
毎年、期が変わるたびに
今年こそ、マーケティング力を高める組織にするぞ!
みたいな感じで始まるわけですが、
それが達成されることも、途中でテコ入れされることもないですし、未達で終わっても最初からなかったように来期から別のミッションが立てられます。
結果的に去年と今年では組織としてのマーケティング力は横ばい
むしろゲームマーケティングは属人性が高いので退職者や、異動者が出ると明らかな戦力ダウンになったりします。
しかし、「マーケティングの標準化」ができると、毎年戦力が積み上がっていきます。
なぜなら「マーケティングの標準化」とは属人性、個人商店化を排除した
「仕組み化」「ツール化」を指すからです。
わかりやすく伝えるならば、毎年、macのOSがアップデートしているように、ゲーム会社Aの「マーケティングの標準化」は前年度をベースにさらにブラッシュアップされ、精度が高まり、それがマーケティングメンバー全てに共有されるイメージです。
「マーケティングの標準化」ができると、上がることはあっても、下がることはありません。
毎年、運転免許証の更新をさせられて、運転に必要なレベリングが維持されていて、でも毎年少しづつ、運転免許証発行の基準が上がっていくようなイメージです。
この例え、伝わりますかね・・・
具体的な「マーケティングの標準化」の3つ方法
なんとなく「マーケティングの標準化」についてイメージが湧いてきたかもしれません。ここからは実際の「マーケティングの標準化」の中身について解説していきます。
①マーケターとしての教育プログラムを用意する
入社をしたら現場配属される前に研修みたいものがあると思いますが、
「マーケティングの標準化」では、定期的にゲームマーケティングの研修を受けます。
特別な内容ではなく、マーケターをして仕事をする上で最低限必要なことを研修で学び、そのレベルを維持するのです。
・マーケティングの定義
・マーケティング戦略の作り方
・KPIの見方
・ゲーム事業の進め方
・マーケティングの業務領域
これらは全て言語化して学べる領域です。しかしゲーム業界のマーケターはこれらを体系的に教えてもらってきた体験はないので、人によって理解度、基準がバラバラなのです。
ここの目線を合わせてあげる研修をするだけでも、その後のマーケターとしての仕事の質が全く変わってきます。
実際のところ当サイトでも下記の記事が該当します。
・マーケティングの定義→マーケティングとは何か?
・マーケティング戦略の作り方→マーケティング戦略のフレームワーク
・KPIの見方→基本的なKPI
・ゲーム事業の進め方→3つのマーケティングプロセス
・マーケティングの業務領域→マーケティング100リスト
マーケティングの定義とか、戦略の作り方とかベーシックな部分を学ぶことは非常に重要です。
最近、youtubeチャンネルも始めましたが、こちらは「マーケティングの標準化」にあたっての教材として試験的なコンテンツとして実施しています。
YouTubeの動画を一通り見れば、各テーマにおけるざっくりとしたことが理解できて、さらに学びたい人は「トロネコのゲームマーケティング大学」へ誘導される、みたいな作りにしています。
ちなみに研修は1回受けたら良いと言うわけではなく、ゲーム会社のマーケティング部門なら定期的に研修を受けることで、常に「マーケティングの標準化」をキープできます。
またマーケティングとは、そもそもマーケターだけのものではなくゲーム開発者こそ持っておくべきスキルです。なぜなら当サイトでも何度もお話していますが、ゲーム事業の80%以上はゲーム開発段階における「つくるマーケティング」で決まるからです。
ちなみに、ここでの研修は「マーケティングスペシャリスト」を作るものではありません。
個々のスキル格差をなくして現場投入しても戦力になる50点くらいのマーケターをここで育成するのが目的です。
50点というと低いと感じるかもしれませんが、多くの現場では50点以下、何もわからない手探り状態で実践投入されているのが実情ですから、50点でも価値はあります、
②マーケターとしてスキルレベルを定義して可視化する
続いて、ゲームマーケターとして求められるスキルレベルを定義して可視化します。
これは各ゲーム会社や、その会社の事業形態によって実際の定義内容は変動すると思いますが、次のように定義します。
例えば当サイトでもお伝えしている「つくるマーケティング」「とどけるマーケティング」「とどけつづけるマーケティング」がありますが
これらをマーケタースキルレベルごと
ざっくりと定義することでも、マーケターにおいて求められるスキルレベルの定義が作れます。
マーケタースキルレベル | つくるマーケティング | とどけるマーケティング | とどけつづけるマーケティング |
レベル1 | × | △ | × |
レベル2 | × | △ | △ |
レベル3 | × | ○ | △ |
レベル4 | △ | ○ | ○ |
レベル5 | ○ | ○ | ○ |
実際はこんなシンプルな定義ではなくて、
戦略が作れる、施策が作れる、KPIを理解して分析して活用できる、
失敗や成功要因を言語化して振り返りで周囲に共有して、周囲の行動を変えられる・・・
といった、広範囲に渡る内容になるでしょう。
ここは各ゲーム会社でどこまで求めるのか?次第ですが、ポイントは曖昧ではなく明確に定義することです。
例えば
「周囲から素晴らしいと言われている状況を作る」
「開発チームから評価されている状況を作る」
みたいな、曖昧で定性的な定義だと、何をすればいいのか?アクションがわかりにくいという欠点がありますし、なにしろ「素晴らしい」「評価されている」という状態は、評価する側の評価軸によっても変動します。
そして、人間の感性に依存した評価軸は共通定義できないので
「求められるスキルレベルを定義して可視化」しても、実際のマーケターの行動に直結しにくいのです。
このシートの目的は人事評価ではなく、「マーケティングの標準化」という観点において、個人がどのようにレベルアップして、次に何を学べばいいのか?可視化することで、道筋を明確にすることにあります。
ちなみに当サイトで公開している「マーケティング100リスト」を元に、定義しても良いかもしれません。方法は色々ありそうですね。
③マーケティングツールを標準化する
具体的な「マーケティングの標準化」について3つ目はマーケティングツールの標準化です。
10人のマーケター、10人のプロデューサーがいると
ゲーム企画書、マーケティング戦略の内容ってバラバラだったりしませんか?
個人が良いと思っているものを作成するわけですが、それって個人の経験やスキルに依存するので、抜け漏れが多かったりします。
Aの企画書はちゃんとターゲットユーザーが明確になっているのに
Bの企画書はターゲットユーザーが「ふわっと」していてる
そんなことを防ぐことができます。
そして、多くの現場では各資料のフレームを作るために膨大な時間を費やしたりしているわけですが、これって無駄です。
やるべきことは、資料作成に膨大な時間をかけるのではなく、マーケターの仕事の本質である
「分析」「戦略」「設計」「実行」「検証」「反映」をする部分に時間をかけるべきです。
あくまでも一例ですが、次のようなツールの標準化をすることで「マーケティングの標準化」を加速できます。
・マーケティング戦略フォーマットの標準化
・試算設計シートの標準化
・マーケティング活動のチェックシートの標準化
さらには
KPIの定義はもちろん、算出ロジックの標準化と社内における公開
他タイトルのKPIや市場調査設計の標準化と、結果を横並びで閲覧できるようにするなど
ツール化をしようと思ったらできることは無限にあります。
でも、一度、ツール化すれば、社内における「公用語」が明確に決まるので、新作タイトルのたびに資料をゼロから作ったり、ゼロから考えたりすることはなく、これらの過去資産が強力な武器として使えます。
繰り返しますがマーケターやプロデューサーが時間をかけるべきことは
「分析」「戦略」「設計」「実行」「検証」「反映」です。
こちらはトロネコが用意しているマーケティング戦略のフォーマットですが、これも「マーケティングの標準化」の一部です。マーケティング戦略を定義することで必要な要素を漏れなく盛り込むことができます。
こちらもトロネコオリジナルの資料ですが
見込みシート、試算シート、施策設計シートとか、あらゆるマーケターが必ずやるべき工程もツールによって標準化可能です。
その都度、試算シートとか、設計項目を考える必要はなく、抜け漏れがない必要な事項が網羅されたツールを使えば、その中身を考えることに時間を集中投下できます。
中身がわからないなら質問すればいいですし
その質問こそがマーケターとして最も重要なことだったりするわけです。
ちなみに、これら資料はトロネコのプロフィールのページに詳しく書いていますのでそちらもご覧ください。
まとめると、この3つが「マーケティングの標準化」のコア部分であり
100点満点の人材は作れないけれど、50点平均の人材と組織は作れるので、全体の戦闘力をあげられて結果的にパフォーマンスの高い組織作りができると言うわけです。
マーケティングの標準化のデメリット
ここまで「マーケティングの標準化」について解説してきましたが
これが実現できればゲーム会社のマーケティングスキルは大きく改善すると思うかもしれません。
でも、一方で、これって「理想」であって
「現実」はそういかない
と思われたかもしれません。
実は「マーケティングの標準化」についてはデメリットも存在します。ここからは、このデメリットについて解説していきます。
打率はあがるけど、大ヒットは出せない
「マーケティングの標準化」によって20点平均の組織を50点に引き上げ、戦える組織を作ることができます。
しかし、それでもまだ50点平均ですから、ここから「マーケティングスペシャリスト」を生み出せるかというと、それは別の話です。
つまり
成功の打率は上がるけど、場外ホームランを打てるようになるわけではない。
というわけです。
まずは50点平均まで引き上げて、その先は別の方法が必要になります。
そこで甘んじてしまう可能性はある
50点でも従来と比べれば、かなり戦える状況になります。
俺って結構でデキるんじゃないか・・・
と勘違いしてしまい、そこで満足してしまう可能性はあります。
実際に50点取れると、結構、打率が上がるので
場外ホームランは打てなくても、センター前ヒットとか普通に連発できるようになります。
マーケティングの標準化を推進する人材次第
最後に「マーケティングの標準化」における最大のデメリットは
そもそも誰が「マーケティングの標準化」を推進するのか
そんな人材が存在するのか?
仮に存在していても諦めずに推進できるだけの根気とキャパがあるのか?
という話です。
「マーケティングの標準化」に必要なツールや言語化をまとめられる人はいるかもしれません。でも、実際にそれらを運用して組織メンバーに定着できるかは別問題です。
だいたいのケースで資料を作って終わってしまったりするものです。
「マーケティングの標準化」みたいな資料を作ることが目的になってしまうケースです。
今期こそは「マーケティングの標準化」をやろう!
と盛り上がるけど最初だけで誰も追いかけません。
なぜなら、「マーケティングの標準化」は
圧倒的なゲームマーケターとしての経験と、仕事を超えた圧倒的な布教活動における情熱が必要だからです。
そして、もしそんな人が社内に存在するなら、今回のテーマであるマーケティングの標準化は既に社内で達成されているはずです。
つまりそんな人材がどこのゲーム会社もいないのです。
かつては、いたかもしれないけど、今はいないから、みなさん悩んでいるわけです。
まとめ
というわけで「マーケティングの標準化」について興味を持っていただけましたでしょうか
「マーケティングの標準化」は結構深い話ですが、ゲーム会社として
10年、20年と継続していくためにはやってみる価値はありますので、ぜひ参考にしてみてください。
最後に今回、ご紹介した内容についてご相談したいことがあればLINEチャットで無料相談できる「トロネコのカベウチ」をお気軽にご利用ください。
トロネコがチャットでご相談に乗ります。もちろんメールでご連絡いただいても結構です。
みなさまのお役に立てればトロネコは幸せです。