アニメ原作漫画ファンが必ずしもゲームのメインターゲットにならない理由|ターゲットユーザーの決め方

ゲーム開発
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アニメ原作漫画ファン=そのゲームのメインターゲットは失敗の始まりです

こんにちは
トロネコです。

突然ですが質問です。
こんな事ありませんか?

・人気アニメ漫画版権を使ったゲームを開発する

・自社でオリジナルアニメを製作して、追ってゲーム化を行う

いわゆる既存IPを使ったゲーム化、またはメディアミックスによるIP展開という方法です。

この場合、ほとんどのケースで次のような考え方がゲーム会社では前提として進められます。

人気アニメ漫画ファンはゲームをプレイするだろう

自社オリジナルアニメを観た人はゲームをプレイするだろう

 

アニメ漫画を読む=そのアニメ漫画のゲームをプレイする

といった前提で物事が語られるわけです。

 

よって、アニメ漫画を読むファンの市場規模は100万人だから

ゲームのインストール見込みは100万人

といった試算が行われます。

 

でも、これは間違いです。

 

先に結論をお伝えすると

アニメ漫画のファンは必ずしも、そのアニメをゲーム化したスマホゲームをインストールしてくれません。

なぜなら「アニメ」「漫画」「ゲーム」はあくまでも、そのIPを楽しむ手段の一つに過ぎないからです。

 

漫画アニメ好き=ゲーム好きとは必ずしもならないというわけです。

市場調査やユーザーインタビュー、数々のアニメ漫画版権のゲーム化や、自らIP立ち上げを経験すると間違いなく気づきます。

 

でも、多くの人は

アニメ漫画を読む=そのアニメ漫画のゲームをプレイする

といった前提で物事が語られます。

なぜなら、その方が深く考えなくていいので楽ですし

市場規模が多くみせられるので社内決裁を通しやすいですし

利益があがるような都合のいい事業計画を作れるからです。

 

でも、そのアニメ漫画ファンの市場規模は100万人だから

ゲームのインストール見込みは100万人

とはならないことは、もう実体験を持ってわかっているはずです。

 

広告宣伝で無理やりインストールを稼いで、数字を作っても

そのアニメ漫画ファンは100万人いるのに

まったくファンから振り向いてくれないこともわかっているはずです。

市場調査結果で、そのアニメ漫画ファン100万人の多くが「そのゲームをぷれいする」と答えたとしても、実際にユーザーを獲得できていないこともわかっているはずです。

どうして、こんなことが起こるのでしょうか?

繰り返しお伝えすると

アニメも漫画もゲームも

ファンにとっては、そのIPを楽しむ手段の一つに過ぎないからです

 

そこで、今回は

・ゲームとアニメの関係とは何なのか?
・事業全体におけるアニメの役割は何なのか?
・アニメをどのように活用すればゲーム事業に貢献できるのか?

といった、いわゆるメディアミックスの領域に踏み込んだ話をします。

実はトロネコはメディアミックスの経験も豊富なので、経験を踏まえて、みなさんの参考になる話ができれば幸いです。

アニメ原作漫画ファンが必ずしもゲームのメインターゲットにならない理由|ターゲットユーザーの決め方

漫画アニメIP展開におけるゲームのポジションとは

・とある有名アニメ漫画版権を使ったゲームを開発する
・自社でオリジナルアニメを製作して、そのゲーム化も行う

このようなケースはよく見かけます。

でも、これらを行う上で「漫画」「アニメ」「ゲーム」といったポジションを理解しておく必要があります。

今回は原作版権キャラIPのゲーム化に絞って解説していきましょう。

原作版権キャラIPを頂点に、様々なIP展開がぶら下がる形になります。

原作版権=人気漫画とするならば

アニメ、ゲーム、グッズ・・・・といったものはあくまでもIP展開の一つに過ぎません。

例を挙げると「鬼滅の刃」は漫画がスタートで、そこからアニメ、ノベルと展開していきました。アニメでブレイクしたわけですが、あくまでも原作漫画を頂点にアニメはIP展開のひとつになります。

ゲームを作る側からすると「ゲームが主役」のように錯覚してしまうかもしれませんが、ユーザー目線では「ゲームは楽しむためのひとつの手段」に過ぎないのです。

この場合、あくまでも頂点は原作漫画です。

なぜなら

・原作漫画のストーリーや世界観を他のIP展開は超えられない

・他のIP展開は原作漫画の範囲の中での展開を行う

となるからです。

ファン自体も原作が「神」であり、そこに矛盾することを嫌います。

 

・原作は必ず読む

・原作の世界を追体験、疑似体験、拡張体験するためにするためにゲームやノベル、舞台を楽しむ

といった主従関係が生まれます。

 

でも漫画が好き、アニメを観るからといってゲームを遊ぶかというとそうではありません。

「PS4、ニンテンドースイッチを持っていないかもしれない」

「スマホはあるけど、そもそもゲームをしない人生を送ってきたかもしれない」

冒頭でお話した

アニメ漫画を読む=そのアニメ漫画のゲームをプレイする

といった考え方は、あくまでもゲーム開発側の勝手な都合なのです。

 

冷静に考えるとそうですよね

漫画の平均発行部数と、そのゲームのDAUが必ずしもイコールではないことからもわかります。

・ゲームをプレイする

・舞台を観にいく

・音楽を聴いたり、グッズを買ったりする

それは原作漫画の楽しみ方のひとつであって、ユーザーによって楽しみ方の手段はバラバラというわけです。

よって、この関係性を理解していないと

市場調査設計や、マーケティング戦略、実際のプロモーションプランだけでなく、ゲーム開発、ゲーム運営も大きく間違える恐れがあります。

ゲームと原作漫画アニメの関係を整理しよう

ゲームと原作漫画アニメの関係について深く考えていくと

漫画アニメファンがゲームに期待すること

ゲームをインストールしてプレイする動機

について理解できます。

アニメ漫画ファン視点でゲームに期待すること

・漫画アニメのストーリーを追体験したい
・漫画アニメの世界観をもっと深く体験したい
・漫画アニメで描かれなかったストーリーを体験したい
・漫画アニメでは陽があたらなかったキャラを深堀りしたい
などなど

漫画やアニメでは満たされなかったもの、

または満たされたことの再現(=追体験)を期待します。

ただし、解決手段は必ずしもゲームとは限らず、その他のIP展開でもかまわないのです。

ゲーム開発側からすると、ゲームで満たすことで原作漫画アニメファンの気を惹くことはできます。

しかし、ゲームは「嗜好性が高く」「遊ぶ人を選ぶ商材」という弱点があります。

同じ題材であっても

ゲームジャンル × ゲームの中身 × ゲームの難易度

といった組み合わせで

同じ題材であっても全く別物になってしまうからです。

例えば、「漫画トロネコ」をゲーム化するとしても

パズルゲームとシミュレーションゲーム、シューティングゲームではゲームの楽しさ、ゲームプレイにおけるユーザーに求められる耐性が異なります。

そもそもパズルゲームは女性が好きなゲームジャンルであり

シミュレーションゲームは男性が好きだったりするので、ゲームジャンル選択だけで「漫画トロネコ」というモチーフは変わらないのに、遊んでくれるユーザー属性が変わるのです。

 

簡単にまとめると次のようになります。

実際にはもっと複雑なのですが、100万人の「漫画トロネコ」ファンは、実際にスマホゲームを遊ぶ人、ゲームジャンルの選定で40万人まで減ってしまいます。

ゲームユーザー視点で期待すること

・好きなゲームジャンルか
・ゲームの作り上、ストレスなく続けられるか
・ゲームそのものが面白いか
・遊び続けるモチベーションが維持し続けるゲームか
などなど

ゲームユーザー視点からすると、その漫画アニメのファンであることは「あくまでもゲームをするきっかけ」に過ぎません。

「人気漫画アニメのゲーム化決定!」

といわれても、

「ゲームジャンルはパズルゲームです!」

となると1回はプレイするかもしれないけど、パズルゲームが好きでなければプレイし続けることは難しいでしょう。

基本的にゲーム内容が重要になります。

逆をいえば、どんなに原作漫画やアニメが不人気でもゲームそのものが面白ければゲームは遊ばれます。

原作漫画アニメがない完全新規ゲームでも、ヒットの可能性があるのは、その裏付けでもあります。

実際のところ、ゲームをプレイしてハマった結果、そのゲームのアニメや漫画、小説を観たくなる、読みたくなるといった行動をするかもしれません。

でも、主役はゲームなのです。

 

それでもこんな意見がゲーム開発内部から出てくるかもしれません。

ゲーム展開で原作アニメ版権キャラファンの母数を広げて

その結果、ゲームの売り上げもあげよう

アニメ漫画とゲームを連携してユーザーの交流や誘導をおこなうことでアニメ漫画ファン=ゲームファンにできるはず

一見、すごくポジティブでゲーム事業に向き合っていて、ユーザーのこともわかっているような発言に聞こえますが、

これは「理想」と「希望」と「現実」が区別できていない状態です。

原作版権キャラIPの裾野を広げるのは原作版権キャラIPの役割ですし、原作版権キャラIPしか実行できません。なぜならファンは原作の展開が何よりも求めているからです。

あくまでも原作がこの世界をつくるルールであり神であって

ゲームはそれを再現した楽しみ方のひとつに過ぎないのです。

 

 

ゲーム展開で原作アニメ版権キャラファンの母数を広げて

その結果、ゲームの売り上げもあげよう

アニメ漫画とゲームを連携してユーザーの交流や誘導をおこなうことでアニメ漫画ファン=ゲームファンにできるはず

このような考え方は、むしろマーケティングマインドが高く、ゲーム開発に対する意識が高いゲーム会社で生まれがちで、当人たちは本気でそう思っているくらいなので、悪いことではありません。

でも、この裏側には

「この漫画やアニメのIP展開における利益の大半をゲームに依存している」

という内部事情が混在しており冷静な判断ができていない状態ともいえるのです。

漫画アニメは「きっかけ」になるけど、ゲームを遊ぶ「決め手」にならない

とある漫画アニメのゲーム化にあたって、ゲームユーザーに対して市場調査をしたとしましょう。

このゲームプレイしたい!

と答えた人は、必ずしもこの漫画アニメ好きとは限りません。

実際のところ

「この漫画アニメはよく知らないけど、ゲームは面白そうだから遊んでみたいかも!?」

と回答する人が結構多かったりします。

実は、とある漫画アニメ向けのゲームとして開発しているのに、実際にはそれ以外のユーザーもゲームが面白ければ遊んでくれる可能性があるというわけです。

逆をいうならば

原作漫画やアニメを知っていることは

ゲームをインストールするきっかけになるけど

ゲームをプレイし続ける決め手にならない

ということになります。

むしろアニメを見ない、知らなくてもゲームが好きなジャンルで、面白いならプレイし続けてくれます。それほどゲームって嗜好性が強い商品なのです。

よって

「漫画アニメのファン、観ている、観ていない」

で市場調査を行い、それを戦略に落とし込むと大きな間違いを犯してしまうことがあります。

メインターゲットに設定した漫画アニメファンに対してプロモーションかけているのに、インストール数がとれない、取れても定着しない、売上があがらない。

 

なぜなら、そこが本来、攻めるべきメインターゲットではないかもしれないからです。

 

アニメ漫画を読む=そのアニメ漫画のゲームをプレイする

これを前提としてプロジェクトをスタートさせてしまうと、実はそれ以外にターゲットユーザーがいるかもしれないのに、見えないままゲーム事業を行っている場合もあります。

それていて、

アニメ漫画を読む=そのアニメ漫画のゲームをプレイする

と思い込んで、そのアニメ漫画ファンに徹底的にプロモーションしているのにユーザーがとれない、定着しない、事業継続ができない

といったことになるわけです。

 

こちらの記事も併せて読むと理解が深まりますよ

自社初オリジナルアニメとゲームとのメディアミックスの場合

最後に既存の漫画アニメIPを使ったゲーム化ではなく

自社IPをつくるべく、オリジナルアニメとゲームを同時に立ち上げるようなケースについて解説していきます。

ゲームとアニメのメディアミックスが失敗する典型的なケース

自社でアニメとゲームを両方立ち上げて

IPもつくるし、ゲームでも利益をあげるぞ!

こんな考えて

「ゲーム化にあわせてアニメも同時展開する」

といったいわばメディアミックスを仕掛けるゲーム会社も増えています。

この狙いには次のような前提があります。

・アニメでファンを獲得すればゲームにも誘導できてゲームの売り上げもあがる

・アニメのアナザーストーリーがゲームで楽しめるからアニメファンをゲームに誘導できる

・ゲームとアニメを連動させることで、アニメを観て、ゲームを遊んでといったサイクルが作れる

すごく理想的なプランなのですが、実際にはうまくいきません。

なぜなら前のパートでお話をした通り

ゲームとアニメは楽しみ方の手段であり、両者を楽しむ人の特徴は必ずしもイコールではないからです。

下記の図で説明しましたが、100万人のアニメ視聴者がいても、実際にゲームをするかというとそうではないんですね

その逆で、ゲーム先行型なら次のようなイメージになります。

ゲームジャンルでユーザー属性が決まるので、そこからどれだけアニメに持っていけるかという話になります。

重要なのは

アニメとゲームを同時展開しても完全一致で双方に強力なブースト施策にになることは難しい

ということです。

もちろん効果はゼロではなく、必ずプラスにはなるのですが、強力なブーストを見込んでゲームとアニメの収支計画を立てるのはリスクが高いというわけですね。

 

ゲームとアニメのメディアミックスの本来の目的はIP展開による「ファンの裾野」を広げることにあるわけですから下記の図でも説明したとおり、アニメとゲームだけではなく、様々なIP展開を同時並行で実施しながら、ファンにとって「楽しみ方の多様性」を提供することが重要です。

そして、その売り上げはゲーム事業における短期的な収益ではなく、自社IPを作り、育てていくことで、今後、長期にわたって利益を生み出す「仕組みづくり」に本来あるべきです。

でも多くのゲーム会社が立ち上げるアニメとゲームのメディアミックスは

「ゲーム事業の売り上げ促進」といった短期的視点にフォーカスされている場合があり、短期で結果を出そうとします。

これが失敗する原因です。

メディアミックスが失敗して、仮にゲームアプリのサービスが終了してしまうと、そのIP展開はそこで終わります。

 

ゲーム運営が継続している前提で設計されていることが多いので、ゲーム運営の終了リスクはIPの終了と直結しているというわけです。

 

 

 

ゲームアプリのサービスが終了しても

・次のゲームアプリが用意されている

・PS4やニンテンドースイッチでの展開がある

・漫画やグッズ、イベント展開はまだまだ続く

といったようにIP展開を考えるなら、特定のゲームアプリとアニメの2本柱ではなく、様々なIP展開を戦略的に、かつ同時多発的に進めていく必要があります。

でも、多くのゲーム会社では、特にスマホゲームアプリにおけるメディアミックスでは特定のゲームアプリとアニメの2本柱で物事が進められているので、失敗が絶えないのです。

ゲーム事業に貢献できるアニメの使い方

ならば、ゲーム事業におけるアニメの使い方はどうすればいいのか?

これについてはいろいろ方法や考え方はあるので、今回は

「自社でオリジナルアニメ、そのゲーム化の両方を立ち上げる」

という条件に絞って「考え方の例」をあげてみましょう。

あくまでも「考え方の例」ですので、他にもやり方はありますが、重要なのはアニメの役割を明確に決めるという点にあります。

 

たとえば次のような

・ターゲットユーザーをイノベーター理論で分解する
 ※イノベーター理論はこちらを参考にしてください。

・ゲームを先行配信して、ゲームが盛り上がって「アーリーアダプタ」と「アーリーマジョリティ」の間にある「キャズム」を超える瞬間にあわせてアニメの配信を行う

 

この考え方は

・ゲームは人を選ぶ嗜好性の高い商材

・アニメは比較的マスにリーチできる商材

といったことを前提としています

(アニメやゲームによってこの前提は変動します)

 

つまり、ゲームをトレンドとして押し上げ、広く遊んでもらうためにアニメを活用するという考え方です。

 

このように考えていくと、アニメとゲームの役割が明確になりますし、アニメとゲームの投下時期をセットで設計する必要があります。

でも、制作開発都合でアニメとゲームの配信時期が大きく離れることは、イノベーター理論からすると持っているポテンシャルを最大限発揮できないことにもなります。

 

他にも「考え方」はありますし、これが必ずしも正解とはいえません。

でも、ここで重要なのはこのように「アニメとゲームの関係とそれぞれの役割を明確にすること」なのです。

メディアミックスにおいて

アニメとゲームの役割は明確になっていますか?

そして、冒頭からお話した通り

アニメファンは必ずしもゲームのメインターゲットにはなりません。ゲーム耐性と、それぞれが期待している要素が異なるからです。

よって、それらを理解できると

・アニメとゲームをどう繋いでいくのか
・アニメとゲームの直接連携以外で両者を繋ぐ方法はないのか
・ゲーム耐性の低いアニメファンをどう対策するのか

いろいろ考えることがでてきませんか?

このように「考えること」を洗い出せると事前に対策が取れますし、結果、プロジェクトの成功確率があがります。

まとめ

「アニメファンが必ずしもゲームのターゲットにはならない理由」というテーマでお話してみました。

読んで頂いた方にとって何かしら「気づき」があればトロネコとしても嬉しいです。

というわけで今回はここまで!