ゲーム事業における広告宣伝費の決め方(スマホゲームと家庭用ゲームを比較解説)

宣伝・プロモーション

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今回は結構質問を受けることが多い「ゲーム事業における宣伝費の決め方」についてです。

正直なところ宣伝費の決め方はゲーム会社によってバラバラですし、十分に考えられていないケースも多いのですが一方で実はまだ正解が存在しないのかもしれません。

そこで今回は「宣伝費の決め方」についてあらゆるパターンをあげながら、それぞれのメリット、デメリットについても解説していきます。

【目次】

・ゲーム事業の宣伝費は誰が決めるのか?

・家庭用ゲーム

・スマホゲーム

ゲーム事業の宣伝費は誰が決めるのか?

そもそも、ゲーム事業の宣伝費は誰が決めるのでしょうか?
大きく分けると次の2種類に分類できます。

・トップダウン型

会社の経営層がゲーム事業における全体予算を決め、それを各タイトルごとに傾斜配分するケース

例)今期の予算は1億円
10タイトルあるので平均1000万円だけど、注力するタイトルに宣伝費を寄せる考え方

・ボトムアップ型

各タイトルごとで収支計画を出し、それを必要な宣伝費を上程して
その結果、ゲーム事業における必要な宣伝費が決まるケース

例)自社ゲーム全10タイトルの各担当プロデューサーが今期において必要な宣伝費を算出し、合算したものが宣伝費となる考え方

トップダウンとボトムアップの比較

トップダウン型は会社の上層部で宣伝費の管理ができるので、支出を抑えることができます。ただし、その宣伝費が事業において適切かというと疑問であり、会社のお財布事情から宣伝費が決められる状態といえますので、事業の成長という点では懸念があります。

ボトムアップ型は各ゲームタイトルで必要、かつ適切と思われる数字を出してきますが、各ゲームタイトルの担当者の試算能力に依存するため、出てきた数字を見極める「目利き」の存在が必要です。各タイトル担当者は自分のタイトルが大好きですから現場で数字を作って過剰な宣伝費を取りにいこう、という行動を助長しがちです。

その代わり、出てきた数字を見極める「目利き」を用意できれば、事業の成長に繋がる投資が可能になります。

家庭用ゲーム

まずは家庭用ゲームにおける宣伝費の算出方法について説明していきましょう。

①利益ベース

家庭用ゲームの場合は「パッケージ・ダウンロード売り切り型ビジネス」です。よって次の2つのタイミングで売上と利益が確定します。

・パッケージソフトを流通に出荷した時点
・ストアからゲームが売れた時点

特にパッケージソフト販売の場合は事前に数字を予測しやすいという特性があります。その理由は以下の通りです。

・流通(バイヤー)に対する事前ヒアリングで発注数が予測できる
・発売2か月前には大部分の発注見込み数、初回生産数が判明する
・シリーズタイトルなら過去実績、完全施策でも類似タイトル実績から発注数を予測できる

これらから事前に「見込み利益」が予測しやすいため「見込み利益」から、そのゲームタイトルにかけられる宣伝費も決めやすい特性があります。

スマホゲームのような基本プレイ無料の運用型ビジネスは、「ゲームが面白いか」が重要になりますが、家庭用ゲームの場合は「ゲームが面白いか」はそのゲームがロングセラーになるかには影響しますが初動の売上利益確定には影響を与えにくいのです。なぜなら、初動の売上利益の確定がパッケージ販売の場合はB to Cではなく、B to Bだからです。

見込み利益の10~50%(ダミーの数字です)といった金額を使える宣伝費としてゲーム会社ごとに事前に決めて、発売までに投下するというのが一般的な考え方です。

②エイヤーベース(お財布次第)

最近は減りましたが、新作タイトルを立ち上げるために1本目は利益度外視で、ファンを獲得するために、宣伝費をかけまくるという考え方です。

(エイヤーベースとはトロネコの言葉ですが、鶴の一言で宣伝費がトップダウンで決まるという意味です)

よって1本目では利益がでないのですが、とにかく販売数だけを目標とし、続編で利益を出していくという考え方で、自社立ち上げのオリジナルIPタイトルなどで、このような考え方があった時代もありました。しかし、これは非常にリスクの高い投資ですから最近はほとんど見られなくなっています。

③宣伝費0円

・外部に出ていくキャッシュアウトの宣伝費0円
・ただし社内リソース(人件費)は使っても良い
といった判断も家庭用ゲームではたまに見られます。

ダウンロード販売型や、受注数数千本程度の小規模のパッケージソフトなどで見られますが、むしろ、宣伝費が0円といわれた方が自由な発想でプロモーションができたりします。

いまはTwitter、Youtubeなどを使えばいくらでもキャッシュアウトなしでプロモーションが可能な時代ですし、宣伝費があると、その宣伝費をどう使うのかHOW思考から入ってしまう人が多いのは事実ですので、宣伝費があるということはむしろ「思考停止」を招くリスクもあります。

話がちょっとズレますが、新人でマーケターを目指す人にこそ、宣伝費0円のタイトルをどんどん任せて「考える力」を養うのはアリです。

スマホゲーム

発売前、および発売直後に売上利益が確定する家庭用ゲームと異なり、配信後に売上が立つ、または全く立たないかもしれない、非常に不安定な事業がスマホゲームです。なぜなら基本プレイ無料の「運営型ビジネス」であるからです。スマホゲームにおける「宣伝費の決め方」として6パターンをご紹介しましょう。

①当月実績ベース

「当月の売上実績」「当月の 利益実績」から翌月以降の宣伝費を決めるやり方です。

売上実績=成長速度
利益実績=投資できるキャッシュ

となり、売上、または利益のX%を翌月以降の宣伝費にまわす、という考え方です。当月実績ベースでは短すぎるならば3ヶ月、6ヶ月単位の実績ベースで決める場合もあります。

メリット
これらを翌月以降の宣伝費に投下するため、実態に沿った投資ができます。
既に安定運用ができているスマホゲームには向いています。

デメリット
1ヶ月単位の直近の実績から宣伝費が決まる場合は、制作を伴うような実施に時間がかかる施策には不向きのため、デジタル広告など比較的短期的に運用できる宣伝手段に限定されます。これから配信する新規タイトルには不向きです。

②将来の見込みベース

「将来の見込み売上」「将来の 見込み利益」から事前に宣伝費を決めた上で運用するやり方です。

メリット
事前に宣伝費を決められるので、仕込みに時間がかかる施策も実施できます。

デメリット
見込みベースであるため、見込みが外れた場合、過剰な宣伝費、過剰なプロモーションになるリスクがあります。スマホゲームの場合はインストール数を稼げても、売上が伴わない「いわゆる課金がまわらない」ケースが多々ありますし、アプリ配信直後で深刻なサーバー障害に見舞われる場合もあり、大きく見込みが外れる場合も多いのです。

③獲得ユーザーの価値ベース

ROI(Return On Investment/投資に対する利益の比率を表す指標)ベースで宣伝費を決める考え方です。

ROIは以下の計算式で算出されます。

ROI = LTV(Life Time Valueそのユーザーによる将来の見込み売上) ÷ CPI(Cost Per Installユーザーの獲得単価)

例えばLTVが1000円のユーザーを500円の宣伝費で獲得できればROIは2になります。500円の投資に対して2倍のリターンが見込めるというわけです。

ゲーム開発段階でLTVの設計はされた状態で開発されていますし
(もしLTV設計されていない開発をしているなら問題外ですが・・・)
獲得手段や、獲得タイミングによってCPIも過去実績からある程度推測できます。また実際にゲーム配信以降で運用をしてけばリアルなLTV、CPIの数字が出てきます。

これらを使ってROI1.4以上(数字はダミーです)は維持しながら宣伝費を決め、獲得していこうという考え方です。これは非常にロジカルで理にかなった方法ですが、試算や運用の両方である程度の経験値とスキルは求められます。 アプリ配信前の事前登録フェーズでもROIの考え方は使えます。

※ちなみにROI1.4はあくまでもダミーの数字であり、ROIをどこに設定するかは、そのタイトルのマーケティング戦略や会社の方針に依存します。「ROI1.0を切っても投資する必要がある」という判断も場合によってはアリなのです。

メリット
ロジカルドリブンで適切な宣伝費の決定、運用、PDCAがまわせる

デメリット
試算、運用にはある程度の経験とスキルが必要。経験とスキルが低いと配信前に算出した見込みLTVが大きく外れるので、まったく役に立たないケースもある。

④目標ベース

・インストール数がわかれば、継続率をかけて見込みDAUがわかる
・見込みDAUがわかれば、見込み課金率、課金単価をかけて売上が予測できる

つまりインストール数が売上をつくる入口になるので、必要インストール数を「目標」に設定してそれに必要な宣伝費を算出しよう、という考え方です。

インストールの結果、本当に売上や利益が出るのか不確実性はありますが、インストール数だけに注力することでシンプルに考えることができます。

配信初速で10万インストール必要
1インストールあたり(CPI単価)は100円なので宣伝費は1000万円
という算出方法になります。
※CPIなどの数字はダミーです

メリット
「目標インストール数を獲得するための必要コスト」とシンプルに考えられるので宣伝費を決める上での分かりやすさがあります。

デメリット
「目標インストールを稼ぐこと=マーケターの役割」という意識が全面に出やすい考え方ですから、ゲーム事業成功に向けてワンチームとして寄り添いにくい場面があります。いわゆる「マーケティング=プロモーション」という発想が色濃く出ている考え方です。

宣伝費ですべてのインストールを獲得することは困難であり、最終的に獲得ユーザーを100とするなら、宣伝費で獲得できるユーザーは20くらいなので、オーガニックで獲得が必要な残り80の獲得に対して意識がいかなくなる可能性があります。

⑤エイヤーベース(お財布次第)

ロジカルドリブンではなく、「このゲームの立ち上げは1億円必要!」と感覚で宣伝費が決められたり、「今期は1億円しか予算を出せないから1億円で決定!」といった会社事情で決められるケースです。

論理的思考や根拠はなく、宣伝予算を決める人の「経験や時代を読む肌感覚」に依存している部分が大きいのですが、決める人のセンスが時代にマッチしていると、結果がついてくる場合もあります。ただし、結果がついてきても、本当に決める人のセンスが時代にマッチしているのかも怪しいケースもあります。

メリット
事前に宣伝費がトップダウンで決められるため、その宣伝費の範囲内であるものの時間をかけて施策を仕込みやすい

デメリット
そのゲームに対して適切な宣伝費か不明であり、過剰な宣伝費であったり、不足している場合もある。感覚で決められているため結果が出ても「振り返り」が困難であり、結果から得られる示唆を組織に還元しにくく、組織としての成長は見込みにくい

うまく行っている時なら「イケイケドンドン」で進められるが、歴史的にも永遠にうまく行かないことは証明されており必ず終わりがくる。かつ特定人物のセンスに依存している場合、その人がいなくなったらうまくいかなくなる場合がほとんどです

⑥宣伝費0円

・キャッシュアウトの宣伝費0円
・ただし社内リソース(人件費)は使っても良い
といった宣伝費0円は家庭用ゲームではたまに見られますが、スマホゲームではインディーズゲーム以外では皆無です。

ゲーム開発に数億から数十億かけているのに宣伝費0円というのは「ありえない」というのが一般的な考え方です。

ただし、いまはTwitter、Youtubeなどを使えばいくらでもキャッシュアウトなしでプロモーションが可能な時代ですし、宣伝費があると、その宣伝費をどう使うのかHOW思考から入ってしまう人が多いのは事実ですので、宣伝費があるということはむしろ「思考停止」を招くリスクもあります。

また、スマホゲームはどこまで長期運営ができ、長期に渡って売上と利益を出せるか、という継続型ビジネスですから、理論上はいずれ宣伝費0円になるフェーズが来ます。

宣伝費0円になった場合、「打ち手なし」といったいわゆる「思考停止状態」になるプロモーション担当は多いのも事実です。「宣伝費0円」のタイトルほど、マーケター、プロモーション担当の能力が試される、といってもいいでしょう。

マーケター、プロモーション担当のヤリガイ=運用できる宣伝費の金額

といったことを平気で公言する人もいますが
宣伝費の金額でしかユーザー獲得維持ができない人はむしろ能力が低い証拠だったりします。

まとめ

今回、「ゲーム事業における宣伝費の決め方」についてお話してみました。
様々な考え方が存在し、100%の正解がない話ですが、ゲーム以外の宣伝費の決め方にも応用できる話だと思います。

ぜひ、日々の仕事の中で参考にしてみてください。

というわけで今回はここまで!

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