ゲームジャンル選びで売上、市場規模、マーケティング戦略の大部分は決まります【スマホアプリ/家庭用ゲーム】

ゲーム開発
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回は「ゲームジャンルの選び方」について解説します。
みなさんゲームジャンルですがなんとなく決めていませんか?
トロネコは家庭用ゲーム業界で13年、スマホゲーム業界で7年、合計20年のキャリアがありますが
家庭用ゲーム業界では
ゲームジャンルとは
市場規模であり
ゲーム事業の規模であり
その結果、攻略すべきユーザー属性が決まる
という認識が根強くあります。
ゲームジャンル選びは販売本数に大きく影響するという意識が高いため「ゲームジャンル選び」は非常に慎重に行います。
一方でスマホゲームの場合は、ゲームジャンルについてはそれほど議論されず、決められている印象があります。
実際に私も何度と目の当たりにしてきましたが、ゲームジャンルを選んだ時点で、市場規模と獲得すべきユーザー属性が自ずと決まってくるわけですが、そこを理解していないゲームプロデューサーが多いのです。

ゲームジャンル選びと、ユーザー属性がなぜ関連性があるの?

そこで、今回はゲームジャンル選びがそのタイトルの未来を大きく左右するというお話からはじめましょう。
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ゲームジャンル選定で決まること

ゲームジャンルといえば、RPG、アクション、シューティング、音ゲー、パズル、レース、シミュレーションなど様々なジャンルがあります。
ゲームジャンルとは何かというとユーザーの嗜好そのものです。
そもそもゲームというもの自体が嗜好の塊のような商材なのです。
これはエンタメ全体に言えることですが、エンタメは各ユーザーの個人的な嗜好性を満足させるコンテンツです。
ゲームビジネスをする上で基本的なことなのですが
これが理解できなかった前出のプロデューサーは、ゲームというものを理解しておらず、スマホゲームをお金を稼ぐ「サービス」のように考えていたのかもしれません。
選択したゲームジャンルによって、振り向かせられるユーザーの属性が全く異なります。
例えば次のように、ゲームジャンルとユーザー属性の組み合わせで、ターゲットユーザーと、市況規模との関連性を整理することができます。
ジャンル ターゲット性別 ゲーム層 市場規模
シューティング 男性 コアゲーマー
シミュレーション 男性 コアゲーマー
レース 男性 ゲームユーザー
ロールプレイングゲーム(RPG) 全方位(男女) ゲームユーザー
アクション やや男性 ゲームユーザー
音ゲー(リズムゲーム) 男女半々 ライトユーザー
パズル 女性多め カジュアルユーザー 特大
これらはあくまでも傾向に過ぎませんので例外もあります。
例えば、シューティングゲームを遊ぶ女性ユーザーも存在するでしょうし、パズルゲームが好きな男性ファンもいます。
各ゲームジャンルは掛け合わせることでバリエーションも広がります。
例えばRPGとシミュレーションを掛け合わせることで「シミュレーションRPG」というジャンルも作り出すことができます。
これによって、さらにユーザー属性と市場規模は細分化されていきます。
とはいえ、大体の傾向として上の表は大きくずれていないでしょう。
ここで注目して欲しいのは
表の上にいくほど男性×コアゲームユーザー向け
表の下にいくほど女性×ライトゲームユーザー向け
という点です。
つまり、ゲームジャンル選択は
・ターゲット性別
・ゲーム層
・市場規模
などを決める大きな要素であり、新規タイトルのゲームジャンルを選んだ時点で、そのゲームが好きなターゲットユーザーが決まってくるのです。

シューティングゲームというジャンルを選んだ時点で、そのゲームジャンルが好きな人は「男性」が多いので、男性向けのゲーム企画にならざるをえないのです。

シューティングゲームにイケメン恋愛要素で女性向けに寄り戻すこともできますが、そもそもシューティングゲームは女性が遊ばないゲームジャンルですから

コンセプトとゲームジャンルの不一致が生じて、あまり遊んでもらえません。

 

このように、ゲームジャンル選定はそのゲームの将来に大きく影響しますし、しかも最初の紙1枚の企画書段階でゲームジャンルが決まるなら、その時点で事業規模も決まり、そのゲームの未来もおおよそ決まるのです。

もう少し分かりやすい例で例えると「映画」に例えるとさらにわかりやすくなります。
・恋愛映画
・アクション映画
・推理映画
・ホラー映画
・SF映画
映画のジャンルでも、観客の属性は全然異なりますよね?
恋愛映画は女性やカップルが多く、アクション映画は男性やファミリー層が多いイメージです。
この嗜好性は非常に強い要素であり、同じモチーフを使っても、ゲームジャンルの嗜好性に引っ張られます。
例えば、国民的アニメ「ワンピース」を題材にしたゲームを想像してみてください。
・ワンピース×パズル=女性でも楽しめるゲーム
・ワンピース×シミュレーション=男性のガチゲームファン向け
・ワンピース×RPG=女性、男性、年齢に関係なく広く楽しめる全方位向け
といったように、同じワンピースを使ったゲームでも、ジャンルが違うだけで、刺さるターゲットが全く違ったゲームになります。
もちろんワンピースは国民的漫画なので男性ファンが多いとしても、女性ファンも多いコンテンツです。
それでもゲームジャンルという「極めて嗜好性の強い要因」に引っ張られて、ゲームジャンルとの掛け合わせでターゲットユーザーが決まってしまうのです。

ゲームジャンルは「市場規模」「売上」「マーケティング戦略」に影響する

既に何度も繰り返しお話していますが
ゲームジャンルの選択によって、ターゲットの性別、ユーザーの嗜好性、市場規模、売上影響を与えます
もう少し踏み込むなら、世代によるゲームジャンルの好き嫌いもあるので、ターゲットユーザーの年齢にも影響します。
結果、ゲームジャンル選択によって
・そのゲームが狙える市場規模
・そのゲームが狙える売上規模
・そのゲームをヒットさせるためのマーケティング戦略
も異なってくるのです。

よってゲームジャンルごとにマーケティング戦略も考える必要があります

ゲームジャンル選択は、そのゲームの未来が大きく決める極めて重要な判断なのです。この認識をまず持って欲しいのです。
トロネコが家庭用ゲーム業界で働いていた時は、ゲームジャンルが事業に与える影響を理解していたゆえに、ゲームジャンル選定は慎重であり、時間をかけていました。
スマホゲームの比ではないくらいに時間をかけていたのです。
それには理由がありました。

なぜなら家庭用ゲームは基本的に最初にお金を支払って購入する「売り切り商材」だからです。

スマホゲームのように「とりあえず無料で遊んで、面白かったら課金する」という敷居の低さや気軽さはありません。
家庭用ゲームは「売り切り商材」ですから発表から発売までがすべてです。
新作タイトルとして発表された時点で

このゲームはなんか面白そう!おれアクションゲーム好きだし遊んでみたいなぁ

と思わせる必要があります。
思って頂けないなら、そこで試合終了なのです。
つまり、タイトルの発表時点で、もし「アクションゲーム」を選択していただなら、そのゲームは「アクションゲーム好きユーザー」にしか訴求できません。

このゲームはなんか面白そう!でも、おれアクションゲームはあまり好きじゃないんだよなぁ。どっちかというとRPGだったらよかったな

と思わせてしまうと、このユーザーを獲得することはできないでしょう。
もちろんワンピースというモチーフを使えば「ワンピースファンに訴求できるかも」しれません。
しかし、ゲームの基本的な遊び部分については、「アクションゲーム」を選んだ時点で、「アクションゲームに対する嗜好性が強いユーザー」の興味を惹くことになります。
つまりゲームを購入する決め手として、
「ワンピースというモチーフ」も決め手になりますが、
ゲームというコンテンツが嗜好性に強く依存しているエンタメコンテンツであるゆえに「アクションゲームというゲームジャンルの嗜好性」が大きく影響してくるのです。

ワンピースというモチーフも強力ですが

ゲームは嗜好性の塊ですから

ワンピースという要素以上にゲームジャンルがユーザーのプレイ意欲に影響を与えるというわけですね

ゲームジャンル選定ミスが招く大きな過ち

繰り返しますがゲームとは「嗜好性」が高いエンターテイメントです。
ですから、ゲームジャンル選定を間違えてしまったり

「ゲームジャンルなんて、どれを選んでも大した差はない」

と前出のプロデューサーのように適当に決めてしまうと、悲しい未来がまっています。
たとえばこんな事が実際に起こっています。
・パズルゲームを開発
 でもパズルゲームは女性ユーザーが多く、一人当たりの売上が少ないから
 TVCMなど大型プロモーションをしかけても費用を回収しにくい
・シミュレーションゲームを開発
 でもシミュレーションゲームは超ヘビーなコアゲーム向きだから、一人当たりの売上は高いけど、TVCMなど大型プロモーションをしかけてもユーザー数を広げにくい。だから費用を回収しにくい
一概に、必ずこのパターンに当てはまるかというと、そうとは限らないのですが
ニッチにヒットを狙うなら市場規模が限られているけど、1ユーザーあたりの熱量と課金単価が高い高いシミュレーションゲームでもいいのですが
大きくヒットを狙うならやっぱりRPGを選ぶべきです。
でも、シミュレーションゲームを選択してしまった以上、シミュレーションの嗜好性の世界の中で勝負しなければなりません。
開発してしまったシミュレーションゲームをRPGファンに訴求することは不可能ではないですが、訴求してもユーザーが獲得できるかは別です。
シミュレーションを選んでおきながら、多くのユーザーに訴求しなければならないという条件は、勝てる確率を自ら減らしているようなものです。
ときどき、こんなことを言う人がいます。

ゲームジャンルによる嗜好性のハードルを、なんとかしてマーケティングで突破せよ!

それがマーケティングの仕事だよな?
このような意見に対してトロネコは次のように回答します。

不可能とは断言しないけど効率はめっちゃ悪いです

シミュレーションゲームの世界で戦略を立てて戦うべきです
このジャンル選択の重要性について、スマホゲーム業界では意識が低いと感じています。意識が低いゆえに、致命的で取り返しがつかないミスを犯していることにも、気づかない人が多いです。
「その原因は何だと思いますか?」
様々な原因がありますが、
その中でも特に大きな原因は、スマホゲームの開発責任者がゲーム開発出身ではなく、ゲーム開発の基礎知識がない状態でゲームジャンルを決めているからです。
もしくは圧倒的にゲーム事業における経験もスキルも足りていないのが原因です。
しかし、会社の都合上、シミュレーションを選ばなければならないというケースも見られます。
・どの市場を取りにいくのか
・どのくらいの規模なのか
・ターゲットユーザーは誰なのか?
といった当たり前の議論がされず
・できること(我が社はシミュレーションゲームしかつくれない)
・やりたいこと
・思い込み
だけでゲームジャンルが決められている場合があるのです。
家庭用ゲームからすると、信じられないと思いますが、これが現実です。

ちなみにパズルゲームを選んでしまったばかりに、何十万ユーザーもプレイしているのにサービス終了をしなければならなくなった、黒字倒産みたいなゲームも世の中には存在します。

 

ゲーム開発として、これほど悲しいことはありません。

まさにゲームジャンルとターゲットユーザー選択の基礎的な間違いが原因なのです。

失敗しないゲームジャンルの選び方

ここまでのお話を聞かされたら、やはり失敗しないゲームジャンルの選び方が知りたくなりませんか?
ジャンルの選び方について少しだけお話しましょう。
まずやってはいけないことは「ゲームジャンル選択から入ることです」
これは絶対にダメです。
なぜならゲームジャンルを選ぶことは
「目標」「戦略」を決めることだからです。
マーケティング戦略の作り方をここでご紹介しましょう。
戦略は次の順番で設計されます。ここに、ほぼ例外はありません。
下記の表は「マーケティング戦略をつくるためのフレームワーク」と私は呼んでいますが、これはゲーム業界に限らず、あらゆる業界で使える基礎中の基礎ですので、丸暗記して理解した上で、頭の中で5つの関係性を描けるようにしておきましょう。
①目的を決める 目的とはこのゲームで達成したい状態を指します
②目標を決める 目標は目的を数値化したものであり、この数値を達成すれば目的を達成できるという標(しるし)です
③課題を決める 課題は目標を達成するための障害になっているハードルを指します
④戦略を決める 戦略は課題をクリアにするための方針であり、攻略法でもあります
⑤戦術を決める 戦術は戦略を具体的なアクションに落とし込んだプランを指します

もっと詳しく知りたい方は下記の記事がおすすめです。

 

ゲームジャンルの選定は「目標」と「戦略」に大きな影響を与えます。
なぜならパズルゲームを選んだ場合、目指せる市場規模(=目標数)と、獲得しやすいターゲット像(戦略を決める要素のひとつ)が絞られてしまうためです。
でも、すでにあなたはパズルゲームを選んで開発を進めているとします。
「目的」がない状態で、パズルゲームというゲームジャンル(=目標を決める要素)を選んでいるため、「目的」と「目標」にマーケティング戦略のフレームワークで説明した関連性は一切ありません。
よってゲームジャンルを決める時にマーケティング戦略のフレームワークにそった「目的」設定が必要になります。
例えば目的を「女性のスマホユーザーに支えられる日本No1のゲームをつくる」と設定するならば
日本でもっとも女性に支持されている他社ゲームアプリの売上、ダウンロード数が目標設定の参考値になります。
たとえば、仮に日本でもっとも女性に支持されているゲームの月商売上を1億円だとしましょう。
そのゲームは「パズルゲーム」であり、その他のゲームジャンルでは「日本でもっとも女性に支持されているゲームをつくる」という目的達成は難しい判断に至った。だから「目的「を達成するための「パズルゲーム」を選択した
この流れは、「目的」と「目標」がリンクしており違和感がありません。
でも次のようなケースならどうしますか?

会社都合でどうしても月商10億円のゲームが必要だ

この場合、「目的」よりも「目標」が先行しているのでマーケター視点からするとありえない話ですが、企業で働いていると、トップダウンによる「目標」ありきの話は普通にあります。
月商10億円を「目標」とした時点で「パズルゲームで女性ユーザーNo1のゲーム」を作っても1億円しか獲得できないので「目標」を達成できません。
よって、「女性のスマホユーザーに支えられる日本No1のゲームをつくる」という「目的」は成立しません。

よって女性向けパズルゲームというゲームジャンル選択はとれないことになります。

例えば次のような「目的設定」ではいかがでしょう。
「20代のゲームファンに支えられ1番目は無理だけど、2番目に遊ばれるゲームをつくる」
例えばの話ですが、この「目的」を数値化すると「月商10億円」という数字に落とし込めるゲームジャンルが見えてくるかもしれません。
例えば2番目に遊ばれるゲームとして月商10億円を売るためには
レッドオーシャンなゲームジャンルであるRPGで勝負するよりも変化球をつけて差別化するために「RPG×シミュレーション」という組み合わせジャンルで勝負する
というジャンル選定もあるかもしれませんね。
「RPG×シミュレーション」で2番手ポジションで月商10億円稼げるかは別としておくとして、こういうフレームワークによる考え方が重要なのです。

まとめ

最後に今日学んだことをおさらいしましょう。
失敗しないゲームジャンルの選び方は
・ゲームジャンルから選ばない
・マーケティング戦略のフレームワークに沿ってゲームジャンルを選択する
ゲームジャンル選択を間違えると
・戦い方が制限されるし、後日、もっと上を目指しなければならなくなっても目指せない可能性あり
・目指したとしてもプロモーション施策の効果を最大化できない
家庭用ゲームではジャンル選定ミスは致命的だとされたきた
・スマホゲームも市場の成熟と、よりゲーム性が強い嗜好性の高い「家庭用ゲーム化」が進むにあたって、これからはジャンル選定ミスをしてしまうと戦えない
いかがでしょうか。
なかなか深い話ですよね。
ぜひ、理解するまで何度も読み直してみてください。特にマーケティング戦略のフレームワークは必須項目です。
というわけで今回はここまで!