こんなデジタルマーケティング(web運用広告)が御社のゲーム事業を滅ぼす

ゲーム業界

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今回は

「こんなデジタルマーケティング(web広告)はゲーム事業をダメにする」

という、ちょっと刺激的なテーマでお話をします。

 

実際にこんな事がデジタルマーケティング部門の現場でありました。

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

一見、これは理にかなっているように思うかもしれません。
でも、これはゲーム事業をダメにする最初の一歩です。

例えば

「獲得したユーザーの継続率が悪いから広告を止めよう」

なら理解できます。

なぜなら継続率が悪いユーザーとは、そのゲームの内容とマッチしない、ターゲットユーザーではないユーザーを獲得している可能性があるからです。

 

しかし

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

という状態においては
課金率は悪いけど、継続率は悪くなく、遊んでくれているという事実があるからです。

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

この判断はゲーム事業はダメにする可能性があります。
継続率はいいのに課金率が悪いのは

・ゲーム内に問題がある可能性
・ゲームの設計やプレイサイクル上の都合で課金タイミングが少し先にある可能性

などが考えられます。

つまり広告的な問題はなくて、ゲームアプリの中に問題があり、それを改善する必要があるわけです。

なぜ、「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」
という判断をしてしまうのか?

それは次のような原因が考えられます。

広告部門が開発と断絶してROASしか見ていない状況

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

この言葉の裏にあるのは
広告運用担当が広告出稿においてROASだけしかみていない証拠でもあります。

※ROASとは、Return On Advertising Spendの略称。広告費用に対してどれくらいの売上が上がったのか、費用対効果を確認するための指標です。

こんな話をすると

ええ!? ゲームアプリの広告はROASを見るでしょ?なぜダメなの?

という声が聞こえてきそうです。

でも、ゲームアプリの場合は基本プレイ無料なので

売上をあげられるかはゲームアプリ内の設計と状態に依存します。

しかも、インストール直後に売り上げが上がるわけではなく、ゲームの進行と比例して課金売上が積み上がってきます。

LTV(Life Time Value:生涯顧客平均単価)というKPIがありますが
LTVにはday30LTV、day60LTV、day180LTVといった日数進行による累積LTVがあります。

平均的にday180LTV(3ヶ月でいくら課金するか)を広告で獲得したユーザーに対する売上として使う事が多いです(これはゲームによって変動します)

つまり、単純な広告費用に対する売上だけでは、そのユーザーを獲得する価値があったのか?
なかったのか?

ゲーム内に課題があるのではないか?

といったことがわからないわけです。

※ちなみにROASには致命的な課題があります。ROASが良い数字だからといって投資として成功しているとは言えません。

あくまでもROASは宣伝部門から見た場合の宣伝による効果指標にすぎません。

でも実際に重要なのは

このゲームが成功するために必要なユーザーを獲得する事であり
実際に売上が上がらないのは、広告で獲得したユーザーに問題があるのか?
それともゲームの中に問題があるのか

そこをワンチームとして突き止めて解決していくことにあります。

今回のポイントは

「Web広告で獲得したユーザーの継続率は悪くない」
でも
「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」
という広告部門の視点だけで物事を決められているという点にあります。

今はそのユーザーは課金をしていなけど、でも遊んでくれている
今後、どのタイミングで課金するのか?
課金する見込みがあるのか?ないのか?

そこを分析して、広告によるユーザー獲得が問題ではなく、ゲーム内に問題があるなら
ゲーム内の改善をしないと、そのゲームは確実に終わるのです。

つまり、ここに今回のテーマである
「広告担当が、広告担当視点だけで判断するとゲーム事業をつぶしてしまう」
という怖い話があります。

ゲーム開発から見ればWeb広告はブラックボックス

Web広告がどのように運用され、判断されているのか
ゲームプロデューサーや運用ディレクターにとってはブラックボックスな部分があります。

広告を出している面やコストは共有されている場合はありますが
今回のような

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

という判断は現場で決められており、プロデューサーも結果報告だけで終わるケースも多いのです。

普通に考えれば

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」
というのは正論のように聞こえます。

でも、本当にそれが正しい判断なのか皆さんは議論できていますでしょうか?

広告によるユーザー獲得が釣りやひっかけによる獲得ユーザーの質を悪化させるような方法ではなく正統な方法で行われており、獲得したユーザーの継続率が悪くないのに

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪い」という場合は次のような原因が考えられます。

・もう市場には獲得ターゲットに相当するユーザーがいない
・ゲーム内に問題がある

前者であれば、広告を全て終了にして既存ユーザーだけで維持していくような守りのゲーム運営に切り替える必要があります。
一方で、ゲーム内に問題がある場合、そこに気づかず

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」
といったジャッジをしてしまうと

ここから、そのゲームは終焉に向かっていきます。

「なぜなら、ユーザーの流入をとめてしまうから」

そもそもゲームアプリの平均課金率はゲームジャンルにもよりますが3-10%くらいです。
10%を超えると

・ゲームとしてかなり優秀か
・課金率が非常に高いヘビーユーザーから支持されている特殊なゲームか
・経年劣化で課金ユーザーだけが残った濃縮ゲームか

というケースが考えられます。

でも仮に課金率10%だったとしても、残りの90%は無課金です。

これから新規にユーザーを獲得しても、そのほとんどは無課金ユーザーになります。
多くの無課金ユーザーの中から課金ユーザーを探してデジタルマーケティング広告でユーザーを獲得するわけです。

つまり

「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

というのは別におかしい話ではないんです。

だって、基本的にほとんどの獲得ユーザーは無課金ユーザーになるわけですから。

それに対して
「Web広告で獲得したユーザーの課金率が悪いから広告を止めよう」

というのは、10%の課金ユーザーだけを狙って獲得したいという希望に過ぎません。

ゲーム会社の広告担当の自己都合に過ぎないわけです。

継続率が極端に悪いユーザーしかとれないなら取り方、ターゲットユーザー属性に問題ありますので広告を止めましょう。

でも継続率が良いならば遊んでいる楽しんでいる証拠です。

だったら、Web広告担当の領域にとどまらずゲーム内の問題に踏み込まないと
そのゲームはいずれ終わります。

なぜこんなことが起こるのか?

「なぜこのようなことが起こるのか?だって同じゲーム会社内なのに」

外から見るとそう思うかもしれません。
でも、ここにこそゲーム事業をダメにするゲーム会社内の大きな課題があるのです。

広告担当がゲーム事業の全体を理解せず
広告担当としての役割を果たすことに注意が行き過ぎている
ROASを達成することが彼らの仕事なのです。

さらに、それを管理するマネージャーも
広告専門でゲーム事業の全体を理解していません。
だから、ひたすらROASだけを追いかけてしまいます。

そしてROASだけで物事を判断してしまいます。

ゲームプロデューサーやゲームディレクターからみると、広告現場でどのような判断がくだされているかはブラックボックス的な部分があります。

その判断がどのようになされているのか説明してもらえれば
今回のような「見落とし」を見つけられるかもしれません。

でも、誤解しないでください。

今回の登場人物の中には悪い人は一人もいないのです。

みんな自分の仕事を全うしようと努力している結果、このような状況を招いています。
そして、そんな努力がゲーム事業をサービス終了に向かわせているなんて誰も信じてません。

ぜひ、ここを解決して欲しいのです。

ゲーム事業は「点」ではなく「線」で「俯瞰的」に見よう

ゲーム会社にいると、その会社が大きければ大きいほど自分の仕事をこなすことで精一杯になります。

でも結果的に広告でユーザーを何件獲得したとか、基準のROASをクリアしたとか
そんなことはゲーム事業を全体で見たらどうでもいいことなのです。

重要なのはゲーム事業は投資活動であり、その投資活動は何年にもわたって続くし
できれば永久にサービス終了にならず続けたいものです。

よって各部門の役割を全うすることは大切ですが
そこから一歩踏み出して、全体を俯瞰的にみて物事を判断する必要があります。

宣伝担当だからといって、マーケターだからといってゲーム内に対して口を出してはダメというわけではないですし
その逆もそうで、ゲーム開発だからといってWeb広告に対して意見を言っていいのです。

多くのゲーム会社がゲーム開発部門と宣伝マーケティング部門の距離がまだまだ遠く感じます。
距離の近い会社もありますが、物理的な距離感というよりは、心の近さみたいなものが不足しています。

トロネコは考えます。

そもそもゲーム会社でゲーム開発部門と宣伝マーケティング部門を分けること自体がおかしいと

同じチームで部署も同じでやるくらいでないと実はうまくいきません。
特にゲーム運用が絡むスマホゲームやPCオンラインゲームにおいては合体しないと
本当の課題に気づいて、解決する事ができません。

点ではなく線で、全体をマネジメントできないとゲーム事業はうまくいきません。

これは断言します。

でも、たったこれだけの話です。

たった一歩踏み出すことで、皆さんのゲーム事業は大きく成長できます。

今回の話が皆様のお役に立てれば幸いです。

と言うわけで今回はここまで