【ゲーム開発】ゲームに対して真剣に「面白さ」を追求できないゲーム会社は生き残れない
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回は「ゲーム開発や面白さに本気になれないゲーム会社は生き残れない」
という話をしたいと思います。
そんなの当たり前ですよ!
といった指摘を受けそうですが、
当たり前だと思っていても、実際にできないものです。
なぜ、できないのか?
そして、どうすればできるようになるのか?
今回はこれらについて、踏み込んだ話をします。
なぜゲームの面白さを優先したゲーム開発ができないのか?
ゲーム開発をしている人なら、誰しもゲームの面白さを優先にしたゲーム開発をしたいものです。
そして現場ではゲームの面白さを常に最優先に考えているはずです。
しかし、ゲームの面白さを優先にしたゲーム開発ができない場面にたびたび遭遇します。
何故なのでしょうか?
大きく分けて2つの原因があげられます。
①売上から逆算したゲーム開発をしなければならないから
今回の新作スマホゲームの売上目標は月商1億円!!
といったように、達成しなければならない売上から逆算したゲーム開発に陥ってしまう場合があります。
これはこちらで「マーケティング戦略のフレームワーク」ついて説明した通り
「目的」ではなく「目標」が先行して物事が進められているのです。
現場が勝手に「目標先行」で物事を進めてしまうケースもありますが、
一方で、トップダウンで「目標設定」されてしまい、その通りに現場が動かなければならない場面もあります。
数字目標が先行してしまうと売上から逆算した開発コストと、その売りを実現するためのマネタイズが先に決まって、ゲーム開発が進められていく傾向があります。
そうすると、本来、そのゲームの面白さから積み上げたゲーム作りとは違った流れでゲーム開発が進められていくのです。
いやいや、そんな事はあるわけないですよー
という意見もあるかもしれませんが、そんな人は幸せだったりします。
いまの職場環境は恵まれていると思います。(または、ただ気づいていないだけかもしれませんが・・・)
売上から逆算したゲーム開発に陥っているわかりやすい例としては次のようなケースもあります。
追加開発費が必要となった場合、その追加開発費を承認するために、いくら売上が積み上げられるのかという議論がされる場合があります。 |
よって、追加開発費の承認には売上を積み上げられる理由が必要だったりします。
でも、ゲームの面白さって、
売上に直結しない部分に
ゲームの面白さが存在していたりするのです
マネタイズ(=売上)直結しないところ、無課金だけど、そのゲームを楽しんで、遊んでくれるところもゲームの面白さが含まれています。
そもそもゲーム開発として見込みが甘かったから、ゲームを作りきれていないゆえに追加開発費が必要という場合もあります。
(最初から開発費の試算が間違っていたというケースです)
よって、もし追加で開発費をかけても、作りきれていなかったゲームを作りきるための追加開発費にすぎず、純粋に売上や面白さの積み上げにならないという場面もあるのです。
(実際にそういうケースの方が多いかもしれませんね)
しかし、ゲーム事業の決裁者の人はこのように言うかもしれません。
追加開発費を獲得するには
売上が上がらないと承認できないよ
それが追加開発費を承認する上でのルールだから
(でも、そもそもそのゲームタイトルの開発チームも、その予算を決裁した事業責任者も、予算の見込みが甘かっただけなんですけどね)
このような思考に組織が陥っているならば
それは「売上から逆算したゲーム開発」をしているわかりやすい証拠です。
(組織としては結構、ヤバい状況といえます)
ちなみに、開発が佳境に入ってくると開発スケジュールをあわせるために、何かしら機能を削らなければならない場面にもたびたび遭遇します。
ここで削除されやすい機能も「売上にインパクトがないと思われる機能が優先的に削られます」
(課金要素は絶対に削らないけど、無駄なキャラ演出とか、アウトゲームの機能とか帳尻合わせのためにザクザク仕様を削っていくとおもいます)
これも「売上から逆算したゲーム開発」をしているわかりやすい証拠です。
もちろん、すべてのゲーム会社がこのような状況だとは断言しません。
しかし、どれかひとつでも、近い状況があるなら、それって
「ゲームに対して真剣に面白さを追求できていない」
または
「面白さを追求することを阻害する環境」
が何かしら存在していて、表題に掲げた
「ゲームに対して真剣に面白さを追求できなゲーム会社はこれからは生き残れない」
ここに繋がっていく可能性があります。
なぜなら、繰り返しになりますが、「面白さ」からブレイクダウンしたゲーム開発になっておらず、ゲーム事業ありき、そのゲーム会社の自己都合によるゲーム開発になっているからです。
②ゲームの面白さよりも、「仕組み」を重視した開発をしているから
なぜゲームの面白さを優先にした開発ができないのか?
もうひとつわかりやすい事例をあげてみましょう。
他のゲーム会社で、あるゲームが大ヒットしたら、そのゲームシステムをそのまま模倣して、キャラクターだけを変えたゲームが続々と発売されることがあります。
家庭用ゲームの開発現場では、まずありえないのですが、スマホゲームでは結構あります。 |
これは「 ゲームの面白さよりも、「仕組み」を重視した開発をしているから」に他なりません。
(仕組みとは特定のゲームの構造、マネタイズに紐づいたゲーム全体のシステムをここでは指します)
他社のゲームの仕組みをそのまま使えば、ゼロから考えたり発明しなくてもいいですし、ゼロから開発することって失敗のリスクもあるのですが、失敗のリスクヘッジもできるし
既にその「仕組み」が市場で実績が存在するということは、試算上では大外れすることなく、一定の売り上げが見込めるという考え方です。
(実際のところ「仕組みw」真似しても100%ヒットする保証はなく、失敗する可能性も大きいのですが、ゲーム会社が自社内で「試算」する上では都合がいいのです)
この状態は「ゲームの面白さ」ではなく、「売上・利益先行」でゲーム開発していると言わざるをえません。
よって、ゲーム会社なのに、ゲームに対して真剣に面白さの追求に向き合っていない証拠です。
ゲームというエンタメで世界を、ユーザーを驚かすのがゲーム会社の骨子ですが、会社としての事業利益ばかりに意識がフォーカスしている状態とも言い換えることができます。
これまでは「ビジネス視点」でも成功できたけど、これからは難しい理由
ここまでお話してきた「売上先行」「仕組み先行」でのゲーム開発は経営者視点で考えると、大きなヒットは見込めないけど、大きな失敗も避けられるのでこれまでのゲームビジネスの手段としては有効でした 。
特にソシャゲからスマホゲームへの移行期であった、2012年から2015年くらいまでは、この方法で戦えた時代があったのです。 |
しかし2021年、既に成功しているゲームアプリが多数存在し
スマホゲームのクオリティ、面白さ、開発費も家庭用ゲーム機並みに求められるような時代になると
「仕組み」や「売上から逆算したゲーム開発」では戦えないのは明白です。
市場では既存のゲームを夢中に遊んでいるユーザーがたくさんいます。
面白さに真剣になれないと、いま遊んでいるゲームを辞めさせて、新規タイトルを遊ばせることは不可能です。
どこかで見たような「ゲームの仕組み」では、もう遊んで頂けない時代なのです。
どうすれば「ゲームの面白さ」に本気になったゲーム開発ができるのか?
「ならば、どうすればゲームの面白さに対して真剣に向き合ったゲーム開発ができるのか?」
ここが重要なのですが、これは家庭用ゲームを作ってきた開発者なら、それほど難しい話ではありません。
実際に家庭用ゲーム会社の開発チームが長年やってきた、わかりやすい方法を3つあげてみましょう。
①ゲームの遊びや体感に踏み込んだ「基礎研究」を行う
どこかで売れたゲームシステムをそのまま真似をして、ガワ替えで発売するのではなく、まずゲームとしての遊びの本質に踏み込んだ基礎研究を徹底的に行う必要があります。
たとえば
・アクションゲームとしての面白さ
・RPGとしての面白さ
といったような、そのゲームならではの独自の面白さは何か徹底的に踏み込む必要があります。
家庭用ゲームの場合は、そのゲームのコアな遊びに踏み込むためにプロトタイプ版(試作版)を作る前に
・どんなアクションゲームが楽しいか
・どんなRPGが楽しいか
といった遊びの検証、いわゆる基礎研究から入ります。
しかし、多くのスマホゲーム会社では、
売れたゲームAの仕組み × 人気キャラクターB =新作ゲームC
といった掛け算で企画が立ち上がるケースが多く、家庭用ゲーム的なお作法である「遊びの検証」に時間を割くことは稀かもしれません。
「新作でRPGやアクションゲームを作ろう」と思ったら、いきなりプロトタイプ版(試作版)を作り始めます。
いきなり作り始めるので「遊びの検証」は作りながらするものの圧倒的に時間が足りず、ただ「ゲームっぽい動くもの」が作られることが多いのです。
よって、プロトタイプ版なのに「どんなゲームなのかわからないプロトタイプ版」が頻繁に作られます。
なぜ「遊びの検証」にスマホゲームの場合は時間をかけないのか?
(いや、時間をかけている会社も一部あります。でも、本当に一部です)
なぜなら、「遊びの検証」に時間をかけても、それが売上に繋がるか不明ですし、時間をかければかけるほど、配信スケジュールは遅れ、開発費は膨らみ、売上と利益が落ちるからです。
これはゲーム開発というよりも、ゲーム事業的、ゲーム会社の経営者的な発想です。
かつて、この発想でも戦える時代がありましたが、この発想ではもう戦うことはできないのです。
②ゲーム開発者ではなく、ゲームクリエイターによる面白さの創出が重要
世の中にゲームが溢れている状態ですから、どこかで見たことがあるゲームでは戦うことはできません。
スマホゲームも家庭用ゲームと同様に
ゲーム開発者ではなく、ゲームクリエイターによる新しい遊びの創出が求められる時代になったのです。
既存の仕組みの組み合わせが得意な「ゲーム開発者」ではなく新しい遊びをつくれる「ゲームクリエイター」の重要性が高まっています。
ここでの言葉の定義は以下の通りです。
ゲーム開発者 | 既存のゲームのパーツとコンセプトを組み合わせてゲームを作る人。イノベーションを起こすというよりも、既存テクノロジーの組み合わせでサービスを作って運営しているイメージ |
ゲームクリエイター | 既存のゲームのパーツとコンセプトは組み合わせながらも、いままでにない、またはユーザーの期待値を超える「新たな遊び」を生み出し世の中に提供する人 |
ゲーム開発者とゲームクリエイターは、同じようで、実は異なります。
もちろんこちらで書いた通り 「ゲームクリエイター」における弊害もあるのでそこはマーケターの出番というわけです。
③一見、売上に直結しなさそうな「無駄」からゲームの面白さは生まれる
これまでの家庭用ゲームにおいては、課金とかいう概念はなく、あくまでもパッケージ売り切りビジネスですから、ゲームの面白さだけで勝負していました。
それゆえに、ゲームってそもそも無駄な事の集合体だったのです。
・無駄に豪華なCGムービー
・無駄に豪華なフルボイス
・無駄に豪華な必殺技演出
・無駄にやりごたえがあるサブクエストの充実
これらはあくまでも一例ですが、このような無駄から従来のゲームは構成されていました。
一方でスマホゲームのように売上から逆算された「課金ビジネス」になった事で、従来のゲーム開発では「無駄」と判断されたものはコストカットの最優先事項にあがるようになりました。
でも、この「無駄」にこそ、ゲームの面白さそのものなのです。
分かりやすい具体例をあげると、家庭用ゲームはとにかくキャラが動いて、表情も多彩に変化しますが、スマホゲームはキャラは1枚絵で、表情も変わらない、といったケースはよくあります。
(最近のスマホゲームは1枚絵のゲームなんて無くなりつつありますが)
しかし、実際にキャラが動かず、無表情でも売上との関連性を説明するのは難しいです。
(だからキャラが動かない事と売上減の関連性を証明する事をゲーム事業の決裁者に対して説明し納得させるのは難しいものがあります)
でも、厳密にはスマホゲームにおけるユーザーの満足度=プレイ継続率なので、 キャラが動かず、無表情だと競合他社のスマホゲームに負けるので継続率は下がります。継続率が下がるともちろん売上にも影響します。
でも、その関連性が論理的に説明できるか?というと結構大変なものがあります。
2021年に 1枚絵で、表情も変わらないゲームなんて冷静に考えればありえないですよね
ユーザーは課金をするためにゲームをするのではありません。
そのゲームを遊んだした結果、
・そのゲームの面白さにはまり
・そのゲームに共感し
・そのゲームに夢中になった結果
課金するのです。
課金とはゲームを楽しんで仕方ない上に生じたユーザー行動の「結果」に過ぎないのです。
この課金(=売上)までのプロセスが理解できていれば、
・無駄に豪華なCGムービー
・無駄に豪華なフルボイス
・無駄に豪華な必殺技演出
・無駄にやりごたえがあるサブクエストの充実
(これらはあくまでも一例ですよ)
といった「これまでのスマホゲームにおける思考では、売上には直結しないと判断されてきた無駄なこと」
こそが、ゲーム事業において重要であり、売上を生む事になります。
よって「無駄なところ」にゲームの面白さがあるという理解が
ゲームを作る側、特に現場ではなく事業判断をする側にあるかが重要です。
でも、スマホゲーム事業の現場の多くは、このような
「面白さの源である無駄」を安易に切り捨てている(切り捨ててしまっている)場合が多いのです。
まとめ
というわけで、今回の話をまとめましょう。
トロネコとしては無条件に「ゲーム内における無駄」を推奨しているわけではありません。
でも売上から逆算して無条件に「無駄」を切り捨てると「戦えない」「戦闘力の低いゲーム」を作ってしまう結果になります。
マーケティング視点でお話すると
「一見、売上には直結しないと判断されてきた多くの無駄」は下記でお話した通り、「おいしそうに見えるラーメン作り」に繋がっています。
なぜなら、これらはトロネコが繰り返しお伝えしている「つくるマーケティング」には必要であり、結果、「とどけるマーケティング」に大きく影響するからです。
実際には無駄に豪華でCGが多用されたゲーム画面ってアプリストア上でも、ユーザーの関心を惹きますから、「ASO上のインストール転換率」も高くなります。
ゲームの見た目は地味だけど、「実際に遊んでみたら楽しいゲーム」はアプリストア上でインストールさせることは難しいですし、インストールしてもらえなければ、その時点で試合終了なのです。
すでに「従来のスマホゲームにおける無駄」と判断されていたことについて、どこまで真剣に向き合い、面白さを徹底的に追及したゲーム開発ができる会社しか生き残れない時代になっています。
だからこそ、ゲームはビジネスだけど、売上、利益も重要だけど、それ以上に「面白さを諦めないエンタメマインド」だけは忘れないことが大切です。
というわけで、今日はここまで!