ゲーム開発における潜在ニーズと顕在ニーズの違い【ゲームクリエイターとゲーム開発者の違い】

ゲーム開発

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今日は「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」というテーマでお話します。

ユーザーのニーズ、つまり需要には2種類のニーズが存在します。

これら2つのニーズの違いを理解して使い分けることで、ゲーム事業の成功確率が変わってくるので、ゲーム開発、ゲームマーケターは理解しておいて損はありません。

 

ところで、話は変わりますが、トロネコは20年間に渡ってマーケターをやってきましたが、そのうち3年ほどゲームプロデューサーを並行してやっていた時期があります。

 

マーケターでありながら、「ゲーム開発」をやった結果

下記でも紹介しているような3つのマーケティングプロセスの重要性を知り、そのうち、特に「①つくるマーケティング」がゲーム事業の成功確率の
大部分を占めるという結論に至りました。

「つくるマーケティング」については、このブログでもその重要性を、繰り返しお伝えしている通りです。

下記で詳しく書いていますのでお時間があれば合わせて読んでみてください。

 

3年間のゲームプロデューサー経験を踏まえて確信したことがあります。

トロネコは「ゲーム開発者」にはなれても「ゲームクリエイター」にはなれないということです。

 

なぜなら、「ゲームクリエイター」とは、いままでこの世界になかった新しい楽しさを作り出す、ゼロ→イチの能力に長けている人々を指すからです。

いわゆるアーティスト、発明家に近い人々です。

ゼロ→イチで未知なる楽しさを作り出す能力は、残念ながらトロネコには無いと思っています。

 

トロネコは決して、ゲームクリエイターにはなれませんが、ゲームクリエイターやゲーム開発者たちが間違った方向にいかないように、かつ、彼らの持っているポテンシャルを引き出すことが得意です。

 

つまり、間違った方向に進まないようにインプットする上で重要なのが

今回のテーマである「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」なのです。

 

これらニーズをインプットすることで、ゲームクリエイターやゲーム開発者が持っているポテンシャルを引き出すことができます。

そして

ゲーム開発者には「顕在ニーズ」をインプットすべきであり

ゲームクリエイターに対しては「潜在ニーズ」をインプットすることで、彼らのパフォーマンスを引き出すことができます。

つまり「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」はその価値を生むために使う相手が異なるというわけです。

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ゲーム開発における潜在ニーズと顕在ニーズの違い【ゲームクリエイターとゲーム開発者の違い】

ゲーム事業における潜在ニーズと顕在ニーズの定義

とりあえず「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」をググってみてください。
ググった上で、それらの定義をゲーム事業に当てはめてみると、次のようになります。

顕在ニーズ ゲームユーザー自身が「これは欲しい」とゲームの楽しさ、面白さ、魅力を自覚している状態を指します。
潜在ニーズ ゲームユーザー自身が自覚していないニーズであり、ユーザー自身も何が面白いのか、必要としているのか気づいていない状態です。

ただし、我々、ゲーム会社サイドが「これって好きだよね?」「面白いでしょう」と提示することで初めてニーズが存在していたことに気づく状態を指します。

 

自分で認識しているニーズが「顕在ニーズ」となります。いわゆる自分自身で自覚しているニーズですね。

一方で自分では認識していないけど、誰かに提案されて初めて「それ、いいね!!」と気づくニーズが「潜在ニーズ」というわけです。潜在意識の中に眠っているニーズというイメージで考えるとわかりやすいかもしれません。

 

「顕在ニーズ」は市場調査、ユーザーインタビューなど調査で引き出しやすいニーズです。

スーパーマリオはジャンプした時が面白い

ドラクエはドラゴンを倒した瞬間が楽しいといったように、ユーザーのこれまでの人生経験から想起できる範囲のニーズともいえます。

 

「潜在ニーズ」は市場調査、ユーザーインタビューなど調査で引き出しにくい(引き出せない)ニーズです。

なぜなら、ユーザーのこれまでの人生経験にはなかったニーズだからです。人生でまだ経験していないニーズですから自ら想起できません。

しかし、実際に体験してみたら

それ、いいね!!ありかもしれない!!

となるわけですから、実は新しいゲームの面白さを生み出す上でのヒントが埋もれているというわけです。

これら「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」を「ゲーム開発担当者」「ゲームクリエイター」に当てはめると次のようになります。

 

ゲーム開発者 既存の売れているの「ゲームパーツ」や「仕組み」を「キャラクター版権」などを適切に組み合わせて顕在ニーズに沿った面白いゲームをつくることが得意な人
ゲームクリエイター まだ見たことがない体験したことがない
潜在的ニーズに踏み込んで新しい遊びつくりが得意な人

誤解して欲しくないのは、どっちがダメとか、イケているとかといった話ではありません。ゲーム事業においてはどちらもイケている状態なのです。

 

両者の違いは

「ゲーム開発者」は効率と仕組みを重視しながら結果を出しますが、

「ゲームクリエイター」は既存の概念にはまらない、新しい独自ルールや世界つくりを重視して、世の中にイノベーションを起こします。

 

全てのケースはこの両極端ではなく、その中間も存在しますが、ざっくり分類するとこのような感じになります。

この定義はあらゆるパターンに当てはまるとは断言できませんが、トロネコがお付き合いしてきた、優秀なゲーム開発者、ゲームクリエイターはだいたいこんな感じでした。

スマホゲームと家庭用ゲーム業界におけるニーズの違い

スマホゲームの場合はイノベーションを起こして「潜在ニーズ」に踏み込む必要はなく、「顕在ニーズ」をうまく扱えるゲーム開発者が結果を出しやすいと思います。

なぜなら、スマホゲームは「運用型ゲーム」であり、売り切り型の家庭用ゲームに比べると、「サービス運営」におけるウェイトが大きいからです。

新しいものを生み出すよりも、既存の仕組みを組み合わせてゲームを設計運用した方がうまくいきやすいのです。

一方で家庭用ゲームは1発勝負の売り切りゲームです。ユーザーにゲームを購入させるという大きなアクションを起させるためには、「どこかで見たような仕組み」を提示しただけでは戦えず、ある程度のイノベーションが必要になります。よって、ゲームクリエイターたちが切り開いてきた業界といえるかもしれません。

このあたりは時代の変化と共に、今後も変化し続けていくので、10年後は全然違うものになっているかもしれません。

ただ、多くのゲーム開発の現場を見てきた印象をお話すると

「スマホゲームに過度に潜在ニーズを取り入れてもうまくいかない」

「家庭用ゲームは顕在ニーズの集合体だけではうまくいかないけど、潜在ニーズに振り切ってもユーザーは理解できない」

といったように潜在ニーズ、顕在ニーズの混ぜ方がうまい人がゲーム事業を成功させることができます。

 

この混合割合を考えずに作っているゲーム事業って多いので要注意です。

・10年先を走りすぎているゲームを作っても売れないし

・ユーザーの理解を超えたゲームを作っても売れません

・ユーザーの期待値を超えないゲームも売れないけど

・ユーザーの期待値を大幅に超えすぎるものは開発費と売上のバランスが悪いので事業として成立しない

・しかも、ユーザーの期待値(=ユーザーの属性)はゲームタイトルごとに全部同じではなく

・年齢性別、これまでのゲーム経験などによってバラバラなので

・それらを考慮したゲーム設計と運営ができるかが重要

 

というわけです。

 

ゲームクリエイターは極度に「潜在ニーズ」を掘り下げがち

優秀なゲームクリエイターであればあるほど、成功する時もあれば、大失敗することもあります。そして生涯平均のヒット率をみると、安定せず、10本に1本くらいしかヒットしない場合もあります。

かつては名前を馳せた有名クリエイターだったのに、最近は全くヒットを出せない人もいます。

この原因はシンプルです。

ゲームクリエイターとは「新しい遊び」を生み出すアーティストであり発明家という話をしましたが、誰も指摘してあげないと

一般ユーザーが理解できない世界まで踏み込んでしまうゲームを作ってしまう場合があるのです。

(個人的にはそれがゲームクリエイターさんの魅力ですがw)

いわゆるこんな感じです↓

「10年先で生きている、現時点では難解なゲームが作ってしまう」

→現時点ではゲーム事業として失敗するけど10年後に再評価されるみたいなケース

「特定の熱狂的ファンにしか理解できないゲームを作ってしまう」

→熱狂的なファンを生み出すので100人のオフイベントはいつも満員だけど、ゲーム事業としては成立しない

 

といったイメージです。

いずれの場合も、ゲーム事業としては成功しません。

一般ユーザーにおける「潜在ニーズ」とは彼らにとって全く理解できない、完全に未知なるものではありません。

いざ、目の前に提示されたら

あああ、そうそう、それそれ、それすぐに思いつかなかったけど、いわれると面白そうですね

と理解をすぐに引き出せる程度なのです。

 

ここで重要なのは

「あああ、そうそう、それそれ」であって

これがユーザーの未知なる体験と、期待値を超える「潜在ニーズ」がそこに埋もれている証拠なのです。

自ら発言はしないけど、「きっかけ」を与えれば理解できるのが「潜在ニーズ」です。

 

しかし、ゲームクリエイターが陥りがちなケースとしては、これら「潜在ニーズ」を遥かに超えたものを作りがちです。たとえば

「10年先で生きている、現時点では難解なゲームが作ってしまう」

「特定の熱狂的ファンにしか理解できないゲームを作ってしまう」

 

ここまで「潜在ニーズ」に踏み込んで「新しい遊び」を作ってしまうと、多くのユーザーからすると

なんか、よくわからないよー

となってしまうわけです。

潜在ニーズも度が超えると、よくわからない独りよがりのものになってしまいます。

 

なぜ、こんなことが起こってしまうのか?

それはゲーム開発している「ゲームクリエイター」が、一般ユーザーと、自分自身のギャップに対して、自己認識できていない場合が多いのです。

間違った道を歩み出しているのに、そこに対して、誰かが指摘できず放置していると、残念な結果になってしまいます。

これは勿体無いですよね・・

 

ゲーム事業として存続するためには、売り上げも重要ですし、ゲームクリエーターとしても多くの人に遊んで貰いたいという思いがあります。

全然悪気はないのですが、ユーザーの理解できる「潜在ニーズ」と、理解できない領域の境界線がわからないのが原因なのです。

その境界線を定量的、または定性的に可視化して、ゲームクリエイターに提案することがマーケターの役割です。

その提案をすることも、ゲームマーケティングの定義における「つくるマーケティング」になります。

 

 

結果、みんなが幸せになれるように、成功に続く道へ軌道修正してあげるのもマーケターの仕事なのです。

 

「潜在ニーズ」を見つける方法

「潜在ニーズ」は市場調査からは見つけにくいニーズです。

なぜなら、市場調査はその被験者の人生経験を定量、定性データで可視化した調査だからです。

つまり市場調査とは「顕在ニーズ」を可視化するための作業というわけですね。

 

ユーザーの人生体験になかった「潜在ニーズ」について、ユーザーにどれだけ調査で問いただしても自発的に意見を引き出すことはでいません。

 

しかし、ひとつだけ潜在ニーズに踏み込める方法があります

こちらで書いていますが、ゲームクリエイターといっしょに
企画ペラ1枚の段階から、

「このゲームは誰に、何を伝え、どう感じてほしいのか」考え

その上で仮説のマーケティング戦略をいっしょに作り

それをもとに、ユーザーインタビューを行い「ペルソナ分析」をする方法です。そうすると、潜在ニーズの欠片に近づくことができます。

 

マーケティング戦略をつくり、それをユーザーインタビューの中で仮説検証しながら、潜在ニーズのありかを探し出す

というわけです。

と考えると、ユーザーインタビューとは「顕在ニーズ」の確認もできますが、本当の役割は「潜在ニーズのありか」を探しだすための作業とも言えます。

市場調査とユーザーインタビューは、そもそも役割が違うわけです。

ただし、この方法も万能ではないので、その後、プロトタイプ版(試作版)のゲームでユーザー調査を繰り返すなど、ありとあらゆる方法で潜在ニーズの欠片を探し、つないでいく必要があります。

 

そう簡単に、本当の「潜在ニーズ」はみつけられないので、とにかく「諦めずに探し続ける姿勢」が必要です

最後はゲームクリエイターの感性と強い意思が重要です

いま大ヒットしているゲームやシリーズ化されて長年売れているゲームの多くは、

「こんなゲーム絶対に売れないよ」

「開発は中止すべきだ」

と会社内で評価されながら、そこを突破した結果、大ヒットにつながったゲームは多いかもしれません。特に家庭用ゲームではその傾向は多いですね。

 

周囲は大反対するのに、ゲームクリエイターが押し通した理由としては、そこまでして、人生をかけても、このゲームは売れるという確信があったからです。

特にいままでになかったようなイノベーションを起こすような新規タイトルでは、この「強い意志」は重要です。

なぜなら「潜在ニーズ」に踏み込んで、そこにゲームクリエイターとしての確信はあっても、「潜在ニーズ」ゆえに、最終ジャッジする決裁権を持った人が正しい判断ができない場合が多いからです。

 

でも、これはただ単純に否定した人が悪いのではなく
ゲームの目利き力を持たない人にジャッジさせることが適切ではないという話です。

ゲームの目利きがある人、先見の目がある人=「潜在ニーズ」に踏み込んで判断できる人=ゲームクリエーターとするならば、その目利き力は尊重に値します。

常にゲームの面白さばかり考えているのがゲームクリエイターですから、基本的にクリエイターの意思は尊重するべきです。

(実際に尊重した方がうまくいくケースも多いです)

 

しかし、何でもかんでも、信用すればいいかというと前のパートで説明した通り

10年先を行っているゲームが作られたり、特定の熱狂的ファンにしか理解できないゲームをつくってしまうとゲーム事業として継続ができません。

よって間違った道を進んでいなかマーケターがサポートする必要があります。

 

マーケターは将来、起こりえる事象をある程度想定することが得意な人なので、ここはゲームクリエーターをサポートしながら、想定されるリスクを洗い出すことでゲームクリエーターをバックアップできます。

そして、想定されるリスクを洗い出しきれたなら、あとは、細かいことは言わず、ゲームクリエーターの完成と意思を尊重する必要があります。

それでもなお、ゲームの目利き力がない人がジャッジをしたい・・・という場面を避けられないなら・・・・・(実際にありますよね)

「ゲームクリエイター」による「潜在ニーズ」に踏み込んだゲームは諦めて

「ゲーム開発者」による「顕在ニーズ」を集めたゲームだけに特化するべきです。

つまり、新しいイノベーションを起こそう!

といった話は諦めて、既存のテクノロジーや、遊び方の仕組みやIPなどを組み合わせて「顕在ニーズ」を刺激して満足させる世界で勝負をしよう!

ということです。

 

これは、これで健全なゲーム事業をする上で正しい判断です。

世の中を変えるようなイノベーションは起こせないけど、

安定した打率でゲーム事業を継続、成功することができます。

 

「顕在ニーズ」を満たすゲームを作るのか

「潜在ニーズ」に踏み込んだゲームを作るのか

どっちかに振り切った方が成功確率はあがります。

 

まとめ

今回、ゲーム事業に必要な「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」についてお話しました。

みなさまの気づきになれば幸いです。

というわけで今回はここまで!