ゲーム業界における陥りやすいマーケティングマイオピア失敗事例14選

マーケティング

こんにちはトロネコです。

今回は20年以上にわたってゲーム業界でマーケティングをやってきたトロネコが実際に体験した、

「ゲーム業界における陥りやすいマーケティングマイオピア事例」

についてお話します。

マーケティングマイオピアとは何か?

マーケティングマイオピアとは日本語に訳すと「近視眼的マーケティング」という意味になります。

目の前のことしか目に入らず

本当に大切なことを見失ってしまうということ

多くの業界で、特に大企業において起こりやすいリスクとして考えられています。

 

でも実際のところ

大企業とか中小企業とか関係なく、特にゲーム業界ではかなりの確率でマーケティングマイオピアが日々、繰り返されています。

実際にどんなケースがゲーム業界ではマーケティングマイオピアとして繰り返されてきているのか?具体例をお話しましょう。

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ゲーム業界における陥りやすいマーケティングマイオピア失敗事例14選

実際にトロネコは20年以上に渡って家庭用ゲーム業界、スマホゲーム業界でマーケティングをしてきました。

そして現在は株式会社トロネコマーケティングの代表として、さまざまなゲーム会社様のマーケティング支援をしております。

そんな経験をもとに、実際にトロネコが出会った典型的なマーケティングマイオピアの事例をご紹介しましょう。

宣伝費を使うことが仕事だと考えている

「マーケティングの仕事とは、宣伝費を使うことである」

「だから宣伝費は100%使い切るし、宣伝費がたくさんあるゲーム会社はやりがいがある」

と思っている人は結構多いかもしれません。

 

マーケティングとは

「モノが売れる仕組みを作ること」

であり

プロモーションとは

「マーケティングの一部に過ぎない」

これは常識なのですが、

マーケティングマイオピアに陥ると

「マーケティングの一部に過ぎないプロモーションで宣伝費を使うことがマーケティングの全て」

と勘違いしてしまいます。

その結果、宣伝費がなくなった瞬間に何もできない、思考停止状態に陥るのです。

これは非常に怖い話なのですが、実際に宣伝費がなければ何もできないマーケターは多いモノです。

 

脳に汗をかくくらいに考えて、それでも解決できないとき、それがお金を使えば解決できるなら、お金を使う

というのがマーケターの鉄則です。

 

Web広告運用がマーケティングの全てだと考えている

「マーケティングマイオピアに陥ってしまうと宣伝費がカットされたら思考停止してしまい何もできなくなる」

というお話をしましたが、具体的な事例をちょっと挙げてみましょう。

スマホゲームの場合、お金を使ってWEB広告運用をすることでユーザーを獲得できます。

ユーザーを獲得すれば瞬間的にゲームアプリの売上も上がります。

だからマーケティングマイオピアに陥った典型的なマーケターは、

Webの運用広告を回すことがマーケティングの全てだと考えるようになります。

実際にそのような人は多く、結果的に短期的には売上も出るので、ゲーム会社内では短期的には評価される場合があります。(まぁ、それも変な話なのですが)

 

でも、これって宣伝費で売上を作っているようなモノなので、長続きがしません。

具体的には来期から宣伝費が0円になると、お金を使ってWEB広告運用をすることでユーザーを獲得することができなくなるので、

このマーケターは完全に思考停止してしまいました。

「使える宣伝費があること」「特定の施策で効果が出せる状態」

このような狭い世界でしか物事が見えない状態もマーケティングマイオピアの典型的な事例といっていいでしょう

実際にこのマーケターは完全に思考停止してしまい、何もできなくなり、結果的に居場所を失うことになりました。

戦略なき施策ありきHOW思考に染まっている

これも、あるあるの事例なのですが

とあるゲームのマーケティング担当になった人が最初にやったことが

そのゲームタイトルにおける施策リストを作り上げること

でした。

いわゆるこの人にはマーケティング戦略という考えはなく、施策リストを作って、それを上から順番に実施していくことがマーケティングだと勘違いしていたわけです。

いわゆるHOW思考に陥っている状態も典型的なマーケティングマイオピアです。

なぜなら、どんなに面白いバズりそうな施策を考えて実行したとしても、それがうまくいっても、そのゲームの成功や目標、目的達成に貢献するかは別の話だからです。

 

 

売上目標ありきでビジネスを考えている

我が社の今期の売上目標は100億円!!!

と社長が公言したとしましょう。

その結果、100億円を達成するために社員は奔走するわけですが、実際のところ、この100億円が達成可能なのか?根拠があるのか?社長の思いつきではないのか?

わからないですよね

このように目的なきトップダウンの目標設定は、従業員をマーケティングマイオピアに陥れるわかりやすい事例です。

なぜなら、売上ありきの事業には、そこで勝利するための戦略設定が難しいからです。

 

事業は必ず、目的から戦略に向かって一方通行で作られます。

でも目標という売上ありきの場合は、事業としての目的を見失ってしまうのです。

 

自社のゲームに競争力があることを信じて疑わない

これまで20年以上に渡ってゲーム業界でマーケターや開発をやってきましたが、

「自社のゲームは市場競争力があって、発売すればヒットすることを信じて疑わない」

「でも実際に発売配信したら、全く戦いにならず失敗してしまう」

といった事が多くみられました。

 

実は自社のゲームの強み、弱みをしっかり理解せず

また理解していると思っているだけで、ユーザーからの客観的な意見に耳をかさなかったり、課題に直視しないケースが本当に多いのです。

SWOT分析というモノがありますが、これをしっかりできているゲーム会社はまだ少ないですね。

マーケティング担当がSWOT分析のフォーマットを埋めるだけでは、本当の「強み」「弱み」「機会」「脅威」は見えてきません。

実際にターゲットユーザーに対してテストを実施したり、意見をヒアリングしないとわからないことも多いのです。

裏付けのない自信と思い込みだけで、勝ち目のない戦いに挑んでいくのもマーケティングマイオピアの典型的な事例です。

 

 

ゲームを開発して発売配信することが仕事だと考えている

残念ながら世の中には次のような意識で働いている人も多いモノです。

「ゲームを開発して、宣伝して発売、配信することが仕事であり、発売した後はどうでもいい」

 

「発売がゴールであり、その後は運任せ、ゲームなんて発売してみないとわからない」

と思っている人も少なくないのです。

 

このような人と会話をすると必ず出てくるキーワードがあります。それは

ゲーム事業ってギャンブルですよね?

だから、やってみないとわからないですよね

 

ゲーム事業はギャンブルではありません。

ギャンブルにしているのは、マーケティングマイオピアに陥っている貴方がそうしているわけです。

今までやってきた宣伝やプロモーション手法を疑わない

これも典型的なマーケティングマイオピアの事例です。

これまで何年もやってきた、一見、常識と思えるようなことを疑わず、繰り返し実行しているような状態はゲーム業界では多くみられます。

 

例えば

・スマホゲームアプリのログインボーナス

・事前登録キャンペーンや家庭用ゲームの予約キャンペーン

・店頭に送られるポスターや販促ツール

 

実施しているログインボーナスの存在に対して疑問を持ち、やめる判断ができる人がどれだけいるでしょうか?

それまで当たり前にやってきたことをやめて、その結果、KPIが悪化したら責任を問われると思うと、恐すぎてやめられないですよね。

 

また、家庭用ゲームの店頭に送っているポスターをやめるという判断も、それまでの常識を否定するわけですから怖くてやめられないですよね・・・・・。

 

でもこのような「怖さ」こそマーケティングマイオピアと隣り合わせなのです。

 

ログボをやめたらDAUは下がるけど売上が上がることもあるし

店頭ポスターの半分以上が実際に使われずゴミになっています

この事実から目を逸らしているだけに過ぎないわけです。

 

無駄だとわかっていても否定しない

ビジネスにはいろんな無駄があります。

それら無駄をわかっていても、社内の人間関係を考えると否定できずに生きている人も多いモノです。

わかっているけど、できない

これもマーケティングマイオピアの一種かもしれません。

過去のデータばかり重視して、未来を予測できない

家庭用ゲームもスマホゲームも、多くのマーケターが

過去と現在の販売データやKPIを知りたがります。

とにかくデータが欲しい!あのタイトルのKPIと売上教えてください!!

これも典型的なマーケティングマイオピアの事例です。

 

ならば逆にお伺いしたいのですが

現在と過去のデータを知ったところで、皆さんのゲームの未来にどう貢献できるのですか?

 

現在と過去のデータは当時の市場環境や、そのゲーム会社の自社環境に大きく依存するので、再現性が難しいのです。

しかもデータとは過去の結果の数字にすぎません。

過去を知ったからといって未来はその通りになる保証はなく、むしろ、その通りにならないことの方がゲーム業界では多いんですよ。

だってゲームって人間の感情を動かすエンタメですから

 

むしろデータに縛られることで本質を見失ってしまうリスクの方が大きいとトロネコは考えます。

もちろんデータは重要です。

でも過去のデータだけで物事を判断しては絶対にダメです。

過去と現在から、少し先の未来を予測する

この「予測」こそがマーケティングマイオピアに陥らないために必要です。

 

他社で成功した事例ばかり気になる

これもあるあるな事例なのですが、他社で成功した事例ばかり知りたがって、それを模倣することをマーケティングだと考えている人が結構多いのです。

でも

・メディアで騒がれている成功事例は本当に成功しているとは限らない

・本当に成功していることは、対外的に教えたくない

・仮に成功事例の仕組みを知ったからといって、それを再現できるかは?全く別の特別なスキルが必要なので、そんな人はゼロから考えても成功できる

というわけです。

 

むしろ、他社で成功した事例ばかり知りたがって、それを模倣することをマーケティングだと考えている人の多くは、思考停止状態に陥っているとも言えます。

これこそマーケティングマイオピアそのものなのですが本人の自覚症状がない場合が多いのです。

過度な論理的思考に陥って数字ばかり目がいく

優秀なマーケターや、高学歴の人、頭が良い人ほど

物事を論理的に捉え、数字ばかり注目してしまう人が多いかもしれません。

数字に強い人は大きな失敗はしないし、既に存在するサービスやビジネスの改善には強みを発揮します。

しかし、ゲームのような人間の感情が左右するエンタメ商材で、さらに常に市場は変化するのでアップデートしていかなければならないようなケースにおいては

過度な論理的思考はマーケティングマイオピアの原因になります。

ゲームユーザーの視点との乖離が大きい

実際にトロネコも軽減があるのですが

ゲーム開発をしている人と、実際にそれをプレイするターゲットユーザーとの視点が大きく乖離しているゲームは少なくありません。

 

例えば、頭が良すぎる人が作ったゲームは一般人からすると難しすぎてついていけないですよね?

 

ゲーム業界で働いていると、その時点で普通ではないことを理解するべきです。

ゲーム業界は普通じゃないので、ゲームユーザー視点とのズレが何かしら存在することに対して、もっと意識する必要があります。

 

「これでいいんだ」

とアナタが思っても

「本当にユーザーはそう思っているのか?」

と疑ってかかるべきです。

 

そうでなくても、大抵の場合、作り手とゲームユーザーの間には何かしらのズレ、乖離が生じます。

このズレは簡単に修正する事ができないので、意識してユーザーテストやレビューをやることを強くお勧めします。そしてその様子は開発チームに生中継で見せるべきであるとトロネコは考えます。

ユーザーの生の声こそ、マーケティングマイオピアに染まった作り手に対して有効な薬はないからです。

 

 

コストや効率ばかり重視してゲームの本質を見失っている

スマホゲーム会社で働いていると、徹底的に無駄を省く事が大切であることを教えられます。

つまりKPIに影響を与えないことは全部無駄であり

開発費を追加するなら、それに基づいた売上も積み上げられないなら開発費の増額を承諾しないという風潮がスマホゲーム会社にはあるからです。

 

これは一見、すごく論理的で優秀なビジネス思考だと思われがちですが

でも、非常に危険なマーケティングマイオピアでもあるのです。

 

なぜならゲームは人間の感情を動かすエンタメであり

ゲームって無駄なことにこそ、人間の心を動かす力があるから

 

それを削ぎ落とす事はゲームとしての魅力を失い、実はゲームというよりもWEBサービスみたいなものを我々は作ろうとしている可能性があるからです。

 

ゲームがヒットした理由は自分の能力だと勘違いしている

ゲームがヒットするとゲームクリエイターやプロデューサー、マーケターは内外的に評価される傾向がありますが、でも、その多くの人が

2番目、3番目のヒットを生み出す事ができません。

過去にヒットした、たった1本のゲームタイトルや、そのシリーズモノだけで生きている人がゲーム業界にはたくさんいます。

 

ゲームがヒットした理由は自分の才能であり、自分は特別な存在だと誤解してしまうことは極めてリスクの高いマーケティングマイオピアの一種です。

かつて大ヒットを飛ばしたクリエイターが、現在では全くヒットを作れず、過去の実績の中で生きている人がどれだけいるでしょうか。

優秀なクリエイター、プロデューサー、マーケターは決して過信することはなく、常に愚直に学び、自分をアップデートし続けています。

決して世の中を動かす世紀の大ヒットは作れなくても、手がけたタイトルの多くは「平均的にヒットする」「中小ヒットタイトルが多い」ようなケースこそ、優秀なクリエイター、プロデューサー、マーケターの証です。

優秀な人はとにかくヒットの再現性が高く、成功打率が高いのです。

 

 

マーケティングマイオピアに陥らない方法

最後にマーケティングマイオピアに陥らない方法についてもご紹介しましょう。

その方法はたった3つです。

たった3つをやるだけで、マーケティングマイオピアに陥らず成長し、結果を出し続ける事ができます

論理的思考 × 感情的思考 = エンタメ成功率アップ

ゲーム業界でマーケティングマイオピアに陥らない方法としては

論理的思考 × 感情的思考

の組み合わせを常に意識することにあります。

 

具体的には

論理的思考で、ロジカルに戦略を作り、数字でシミュレートして、失敗する確率を下げます。

テストやSNSを通じてユーザーの感情を把握するのも有効です。

 

その上でゲームという人間の心を動かすエンタメ商材の特性を理解し

感情的思考を忘れずに掛け合わせていきます。

 

この両方が両立できる人は決してマーケティングマイオピアに陥ることはありません。

 

過去 ×  現在 = 少し未来を推測する

多くの人は過去にこだわります。

少し進んでいる人は過去だけでなく現在もこわだります。

でも、実際にゲームを開発して世の中に出すのはもう少し先だったり、現在運用中のオンラインゲームも未来に向けて運用しているはずです。

だから過去と現在だけではゲーム事業はうまくいかないのです。

 

過去 ×  現在 = 少し未来を推測する

これがゲーム事業には重要であり、これができていればマーケティングマイオピアに陥ることはありません。

 

実際にあった話ですが、今、この瞬間に大ヒットしている他社タイトルを参考に新作ゲームを2年かけて開発したわけですが、2年後にはトレンドが大きく変わってしまい、全く競争力を持たない2年落ちのゲームを作ってしまった・・・・

というケースは実際によくある話です。

今ではなく、2年後のちょっと先の未来を、

過去と現在から予測してゲーム事業を設計することが重要なのです。

常識を疑え

他のゲーム会社のニュースを見ると、そのまま受け止めてしまい

あのゲーム会社すげー!!

開発もマーケティングもうまくいっているなぁ!!

と間に受けてしまう人が多いのですが、実際に、他のゲーム会社のニュースが正しいのか?というと、正しくないことが多かったりするものです。

 

これまでの常識や、目の前に存在する事実とされるものを、そのまま受け入れるのではなく、常に疑い続けることを止めない

これもマーケティングマイオピアに陥らない方法として有効です。

 

絶対に思考停止しない

どんな事に対しても「なぜ、なぜ、なぜ」を繰り返し自問自答する

周囲の声の大きい人の意見に押し切られない、染まらない

これも重要なのです。

 

ちなみにトロネコは常にこう思いながらマーケティングの仕事をしています。

決断と妥協は表裏一体

だからこそ

なぜ、なぜ、なぜ、をやめない事がマーケターには必要なのだ

 

まとめ

ゲーム業界で長く働いてきた経験からすると

実際にマーケティングマイオピアに陥っている人の多くは、自覚症状がない人が多いかもしれません。

だからこそマーケティングマイオピアから抜け出すには、周囲からのインプットによる「強い気づき」を与えられるかが重要になります。

でも、実際のところ、会社というものは人間関係が重要ですから、わかっていても、周囲からインプットを与えるのは難しいものです。

そんな時、おすすめなのが社外からのインプットをもらうことです。

社外なら損得勘定や人間関係はどうでもいい事なので、むしろ忖度なしに社外から指摘を受けた方が改善することも多いのです。

そんなお手伝いをトロネコはやっていますので

もしご興味がございましたらご相談ください。

というわけで今回はここまで!