こんばんは
ゲームマーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回は「スマホゲーム・Webサービスにおけるプロモーションプランの設計方法」というテーマでお話をします。
様々なプロモーション施策がありますが、それぞれの特性を理解して使いこなすためのヒントをお伝え出来ればと思います。
【目次】
・ゲーム、Webサービスのプロモーション手段(ほぼ全部) ・各プロモーション施策の目的と効果 ・TVCM、デジタル施策が単体では結果を出せない理由 ・プロモーション設計で必要なこと ・プロモーション効果がほぼ見込めないダメな例 |
ゲーム・Webサービスのプロモーション手段
まず、最初にプロモーション手段として考えられることを全部列挙してみましょう。
細かい内容は今回は書き切れないので、ざっくり考えられる代表的な施策を書き出してみました。
これ以外にも細かい施策もいろいろあるのですが、大項目としてはこちらで、ほぼ網羅されていると思います。
・デジタル広告(運用広告/純広告/Youtuber) |
・デジタルコンテンツ(Webキャンペーン/PV動画コンテンツ/ネット番組放送/事前登録) |
・自社SNS(Twitter/youtube/LINE/Facebookなど) |
・自社オウンドメディア(公式サイト/ポータルサイト/自社コミュニティサイト) |
・OOH(out of home media・屋外広告、看板、デジタルサイネージ、鉄道広告、ビジョンなどの総称) |
・TVCM(スポット/タイム/提供/インフォマーシャル) |
・ラジオCM(スポット/タイム/提供/インフォマーシャル) |
・雑誌広告(純広告/ペイド広告) |
・PR(雑誌記事/Web記事/プレスリリースなどお金が発生しないもの) |
・アプリストア(ASO対策:App Store Optimization) |
・リアルイベント(ゲームショウ/自社独自イベント) |
・店頭施策(家庭用ゲームなどリアル流通を使う場合) |
ゲーム業界におけるプロモーションと呼ばれる施策は上記のどれかに該当します。(家庭用ゲームの場合はもう少し特殊な施策がありますが今回は割愛します)
各プロモーション施策の目的と効果
続いて、各施策の役割と効果についてまとめてみましょう。
ちなみに「目的」の部分の◯△×は、その目的に対して相性が良いか悪いか、「効果」の部分は期待できるKPI変動で想定されるものを記入しています。
このように媒体ごとに「目的」と「効果」を整理した上で、そのゲームのマーケティング戦略とセットで検討することで、
「どの施策にまず注力するべきか」「時系列に施策設計」することができます。その結果、必要な予算も算出できるので、これら施策の元になっているマーケティング戦略を達成するための手段が明確にすることができます。
プロモーション項目 | 目的 | 効果 | |||
新規ユーザー | 復帰ユーザー | 既存ユーザー | 事前登録 | ||
デジタル広告(運用広告/純広告/Youtuber) | ◯ | △ | × | △ | 売上、DAU |
デジタルコンテンツ(Webキャンペーン/PV動画コンテンツ/ネット番組放送 | ◯ | △ | △ | △ | 事前登録、売上、DAU
ただし、単体では見込みにくい |
SNS(Twitter/youtube/LINE/Facebookなど) | ◯ | ◯ | × | ◯ | DAU
ただし、単体では見込みにくい |
自社オウンドメディア(公式サイト/ポータルサイト/自社コミュニティサイト) | ◯ | △ | ◯ | ◯ | DAU |
OOH(out of home media・屋外広告、看板、デジタルサイネージ、鉄道広告、ビジョンなどの総称) | △ | △ | △ | △ | 単体では見込めず |
TVCM(スポット/タイム/提供/インフォマーシャル) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 事前登録、売上、DAU |
ラジオCM(スポット/タイム/提供/インフォマーシャル) | △ | △ | △ | △ | 単体では見込めず |
雑誌広告(純広告/ペイド広告) | △ | △ | △ | △ | 単体では見込めず |
PR(雑誌記事/Web記事/プレスリリースなどお金が発生しないもの) | △ | × | △ | △ | 単体では見込めず |
アプリストア(ASO対策:App Store Optimization) | ◯ | × | × | × | 単体では見込めず |
店頭施策(家庭用ゲームなどリアル流通を使う場合)※スマホアプリはアプリストア、家庭用パッケージゲームはリアル店舗という切り分け | ◯ | – | – | – | – |
リアルイベント(ゲームショウ/自社独自イベント) | △ | × | ◯ | × | 単体では見込めず |
※DAUとはDaily Active Usersの頭文字を取った言葉であり、1日あたりのプレイしている人数になります。
各プロモーション施策をする本当の目的は?
ところで、表を見ていただいて何か気づいたことはありませんか?たぶん、次のような事が気になったと思います。
・各施策ごとに得意、不得意な分野がある |
・効果が見込めるもの(見込みやすいもの)がある |
・単体では効果が見込みにくいものがある |
つまり、プロモーション施策ごとに、さまざまな特性があることに気がつくと思います。
そうなんです。とりあえず、そのプロモーションだけやっておけばOK!みたいな万能なプロモーションは存在しないことに気づきます。
最近、TVCMの効果が下がった
だからTVCMはもう期待できないなんて極論を平然と話す開発プロデューサーが結構いることに愕然とします
原因はTVCM単体で、効果を出そうという考え方が時代遅れなだけ
消費者の行動や嗜好が多様化している現代でTVCMを含めたクロスプロモーションは必須です
— トロネコ@ゲームマーケティングスペシャリスト (@toroneko_market) November 28, 2019
トロネコも、こんなTweetをしました。以前は「TVCMをやっておけば結果が出る」時代もありましたが、最近はネットの登場で消費者の行動や嗜好が多様化しておりTVCM単体では効果はでにくくなっています。
でも、TVCMと他の施策を組み合わせることで、まだまだ大きな効果を出すことができます。また、こんな投稿もしました。
海外のゲーム会社は
デジタル広告にマーケティング予算を振り切って投下して成功した
我々もそうするべきみたいな根拠なき持論を平然と話す開発担当もいます
デジタル広告で獲得できるユーザーには限界あります
高いコストを払って獲得しても最終的に黒字にならないと、その場しのぎの自己満足です
— トロネコ@ゲームマーケティングスペシャリスト (@toroneko_market) November 28, 2019
「デジタル広告はそれ単体で新規ユーザーをいくらでもとれる」
と思っているかもしれませんが、それは間違いです。
デジタル広告とは、金脈を見つけて掘り続けて、掘り尽くしたら、次の金脈を探しにいく、みたいなイメージを持っていただくとわかりやすいと思いますが次の2つは重要な事としてぜひ押さえておいてほしい点になります。
・デジタル広告は永遠に獲得できません(特定のクリエイティブ、メディアで撮り尽くしたら終了です) |
・獲得単価をあげれば無理やりでも理論上は獲得できますが、獲得したユーザーから利益を必ずしも生み出せません |
繰り返しになりますが永遠にユーザーが獲得できる万能な施策はないのです。ましてデジタル広告を万能な施策と思ってしまうと、取れなくなってしまった時に何も打ち手がなくなってしまいます
TVCM、デジタル広告が単体では結果を出せない理由
TVCM、デジタル広告は、ある程度、ターゲットを絞って情報接触ができるメディアです。
人は4−5回ほど情報に接触すると、その商品の購入意欲があがるとされていますが、これをフリークエンシー(接触回数)といいます。つまり、TVCM、デジタル広告もフリークエンシーを稼ぐための施策にすぎません。
TVCM、デジタル広告単体だけでフリークエンシーを稼げばゲームをインストール、または購入してくれる時代もありましたが、現在の消費者は行動が多様化しすぎており、TVCM、デジタル広告単体だけで獲得するには効率が悪くなっているのです。
これが「TVCM、デジタル広告が単体では結果を出せない理由」です。以前はTVCM、デジタル広告だけの単発施策でも結果を出せましたが、最近は以前ほど結果が出にくくなっています。
プロモーション設計で必要なこと
消費者が多様化している中で、フリークエンシーを稼ぐにはTVCM、デジタル広告だけでなく今回あげたプロモーション施策を複数組み合わせて実施することで対応できます。
しかも、それをバラバラに実施するのではなく
・ある一定期間の中で
・足並みを合わせて
・同じ訴求軸、クリエイティブで
・同時に実施して
・様々なメディア経由でフリークエンシーを稼ぐ
ということが必要です。これがプロモーション設計に必要です。
たとえば、一見、それ単体では効果が見えにくい「雑誌広告」「SNS運用」「PR記事」「OOH」「デジタルコンテンツ」なども同時多発的に実施すれば、フリークエンシーを稼いたり、ネット上でのトレンドをつくることができる施策です。
フリークエンシーを稼ぐと、消費者は購買行動に走るだけでなく、クチコミも促進されます。
ネット上でのトレンド施策はまさにクチコミのひとつですがこのクチコミ自体もフリークエンシーのひとつとしてカウントされることを忘れないでください。
すべての購入者、アプリインストールユーザーは広告経由ではなく全体数の8割は自発的に、またはクチコミによる購入、アプリインストールになります。
つまり、広告で獲得できるユーザーはわずか2割程度で、その2割を獲得するにも膨大なコストがかかるのです。
いいかえるならばプロモーションとはクチコミを促進するための「きっかけ」をつくる役割にすぎません。
ここを理解しておくと、プロモーション設計に何が必要なのか見えてくると思います。
それでもデジタル広告しか頭にない人のために
ここまでの話をしても、依然として次のような話をする人がいます。
海外のゲーム会社は
デジタル広告にマーケティング予算を振り切って投下して成功した
我々もそうするべきみたいな根拠なき持論を平然と話す開発担当もいます
デジタル広告で獲得できるユーザーには限界あります
高いコストを払って獲得しても最終的に黒字にならないと、その場しのぎの自己満足です
— トロネコ@ゲームマーケティングスペシャリスト (@toroneko_market) November 28, 2019
事実、デジタル広告はユーザーが獲得できますしお金をかければ、数字がつくれる施策です。
でも、そこまでお金をかけて獲得して最終的に黒字になるのか?(むしろ、黒字にならない場合が多い)
そこまでして獲得する価値があるユーザーなのか(むしろ、獲得しても翌日にはすぐに辞めてしまうようなユーザーなのに必死になって獲得しているかも!?)
という事を真剣に考えなければなりません。でも、多くの人が考えていないのも事実です。
なぜならデジタル広告で数字をつくって、売上をあげれば、その時点で担当者は評価されるからです。
でも、その担当者から引き継いだ3年後の担当者は大変な苦労をしますし、アプリ配信直後に無駄に使ったコストを回収し続けなければなりません。(膨大な借金を負わされた状態でタイトルは引き継がれていくわけです)
こんな話をしても、それでもなおデジタル広告に対する依存症から抜け出せない人が多いのですがこれには明確な理由があります。
それは、デジタル広告は、それ経由で獲得したユーザー数を把握することができる「仕組み」が存在するからです。
「効果がわかる仕組み」がある施策って、効果を出すことができるので、依存してしまいがちです(ちょっと深い話でうまく伝わらないかもしれません)
一方で、OOH、PR、ゲーム雑誌、Twitter運用などでは、それ経由で獲得したユーザーを算出するのは仕組み上難しく、算出しても数字上は微々たるものになります。
だからこそ、多くの人がデジタル広告依存症になってしまい
・デジタル広告で取れなくなった
・予算がつきた
その瞬間で、何も別の施策が思いつかない、実施できない思考停止状態に陥るのです。
でも、ここで、ネタバラシをするとOOH、PR、ゲーム雑誌、Twitter運用などでフリークエンシーがつくれればそれがない状態のTVCMやデジタル広告よりも、かけるコストが抑えられて商品購入、インストールにつなげることができるのです。
なぜなら、本来、TVCM、デジタル広告だけで対応しなければならなかったフリークエンシーが、OOH、PR、ゲーム雑誌、Twitter運用で稼げますし、さらにクチコミによるフリークエンシーをさらに稼ぐこともできるからです。しかもTVCMやデジタル広告よりも「質がいいフリークエンシー」です。
OOHなどはデジタル広告、TVCMのコストを10〜20%はコストダウンさせる設計が可能です。
「広告経由が全体の2割、全体数の8割は自発的に、またはクチコミによる購入、アプリインストール」という話を冒頭でしましたが、施策でクチコミまで起こせれば、全体数の8割の部分の比率をさらに拡大できることができます。
よって、結果どうなるかというと、
広告予算に過度に依存しない事業ができます。そうなると広告予算の底がついてしまったり、デジタル広告でユーザーを獲得できなくなっても、思考停止にならず他の施策でユーザーを獲得できるようになります。
本来、マーケターはここを目指すべく、マーケティング戦略を設計するのが「マーケティングの本質」なのです。
プロモーション効果がほぼ見込めないダメな例
そう考えていくと、普段、我々が疑問を持たずやっているプロモーションは、実はほぼ効果が見込めない(見込めていない)という恐ろしい可能性があることに気づきます。
厳密には見込めないのではなく、ゼロではないけれど、ほぼ風を起こせないので効果が限りなくゼロに近い、という意味です。
たとえば
・Twitter施策
・Webキャンペーン
・雑誌広告
などを単体で単発的に実施しても、池の中に小さな石をバラバラと投げているに過ぎません。波紋はできますが、すぐに消えてしまいます。
しかし、TVCM、デジタル広告などを同時多発的になげたら大きな波紋が立って単発施策よりも、どこまでも広がっていくでしょう。これがプロモーションでは重要というわけです。
毎日やっているTwitter運用をやめよう!と言っているわけではありません。
「でも、普通にやっているだけでは、ほぼ無風ですよ」とトロネコはお伝えしたいのです。
まとめ
今回は「スマホゲーム・Webサービスにおけるプロモーションプランの設計方法」というテーマでお話をしました。
複雑な話になってしまい、全然伝えきれていないかもしれませんが、少しでも皆さんのヒントになれば幸いです。
というわけで今日はここまで!