長期運営オンラインゲームに対するマーケティング戦略とプロモーション施策

マーケティング

こんにちは

マーケティングスペシャリストのトロネコです。

今回は5年以上の長期運営オンラインゲームに対するマーケティング戦略とプロモーション施策の設計方法について解説していきます。

PCオンラインゲームなら10年以上の長期運営タイトルは当たり前ですが

最近はスマホゲームも多くが長期運営に入りつつあります。

新規タイトルが売れにくい中で長期運営タイトルをどうやって維持継続していけるかが、ゲーム会社にとって重要な課題になります。

ぜひ今回の記事の内容が皆様のお役に立てれば幸いです。

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長期運営オンラインゲームがゲーム会社にとって重要な理由

本来に入る前に、まず最初に押さえておきたいことがあります。それは

長期運営オンラインゲームはゲーム会社にとって非常に重要だということです。

 

これは当たり前の事実なのですが、ゲーム会社で働いていると、どうしても新規タイトルや、運営歴が浅いゲームばかりに注目が行きがちです。

実際に長期タイトルは宣伝費や開発費が抑えられ、むしろ新規タイトルにコストをかける傾向にあります。そして、新規タイトルをヒットさせることに、人的リソースをかけたり、会社内でも評価されやすい傾向があります。

 

一方で長期タイトルを担当している人は、結果を出すのが当たり前とされ、あまり社内評価されないケースもあるのです。

でも、ここは冷静になって考えて欲しいのです。

繰り返しになりますが

長期運営オンラインゲームはゲーム会社にとって非常に重要です。

 

そして、これからの時代、ゲーム会社にとって、ますます長期運営タイトルの重要性は高まります。なぜ重要なのか?その理由について3つほど挙げてみましょう。

①初期開発費を回収済みであり利益率が高い

大前提として長期運営ゲームタイトルは初期開発費をリクープ済(回収済み)であるため、非常に利益率が高いという点が挙げられます。

新作ゲームの場合は、まず初期開発費、初期宣伝費を回収しなければ利益が出ません。

いくら新規タイトルのサービス初月で大きな売上が出でも、その売上で利益が出ているとは限らないからです。

ゲーム事業はあくまでもビジネスです。

売上を作ることが目的ではありません。利益を生み出すことが目的になります。

 

そして世の中の新作ゲームの多くが初期投資を回収できず、サービス終了してしまう中で

長期運営オンラインゲームは利益を生み出す

「利益率の高い優秀なゲームである」

ということを忘れてはいけないのです。

②既存ユーザーの属性をゲーム運営を通して理解できている

新作ゲームの発売や配信に当たっては

事前に市場調査や分析によってマーケティング戦略が作られます。

マーケティング戦略の中には「ターゲットユーザー」も明確にされており

「どんなユーザーがゲームを楽しんでくれるのか」

「ユーザーが求めていることは何か?」

書かれていることでしょう。

 

でも、これはあくまでも仮説にすぎません。

実際にはゲーム運営をしながら「マーケティング戦略」も「ターゲットユーザー」もアップデートして、より精度の高い「マーケティング戦略」「ターゲットユーザー」を作り上げていく事になります。

長期運営オンラインゲームの場合は、時間をかけて、経験や結果を元に「マーケティング戦略」や「ターゲットユーザー」がアップデートされ続けてきましたので

「どんなユーザーがゲームを楽しんでくれるのか」

「ユーザーが求めていることは何か?」

非常に精度の高いレベルで理解できているはずです。

 

その結果、既存ユーザー維持しさせやすく、売上を立てやすく

何をすれば良いのか?

安定したゲーム運営がしやすい環境が整備されている状態といえます。

③新規ゲームタイトルの成功率が低い

毎日、何本もの新作スマホゲームが登場しては、その多くが名前も知らずに市場から消えていきます。これはコンシューマゲームでも同じことです。

新規ゲームタイトルの成功率は極めて低いのです。

 

ゲーム会社にとって、新規タイトルを開発、発売することは将来に対する投資です。

投資ですから、すぐにリターン(利益)は見込めません。

しかし、その多くは成功せず、利益を生み出す事なく消えていきます。

 

近年、スマホゲーム市場は中国からのゲーム会社参入も影響して、過当競争の状態が続いています。この状況は今後さらに加速すると思われ、新作ゲームの成功率はますます上がらない状態になると思われます。

そんな中で既存のゲーム会社を支えているのは、既存の長期運営オンラインゲームだったりします。

新規ゲームタイトルの担当をしていると

会社を支えているような感覚がしますし、何よりも新しいことをする仕事は華やかな感覚があり、社内でも注目されたりしますが

実は新規ゲームタイトルを開発発売できるのも、既存の長期運営オンラインゲームのおかげだったりすることを忘れてはいけません。

そして新規ゲームタイトルは、その時点では利益を生んでいないし、むしろ、会社にとって損失を与える確率の方が高く、既存運営タイトルが積み上げた利益を、無駄に消費してしまうリスクが高いのです。

ゲーム会社が生き残っていくためには「新規タイトル」への投資は必須です。でも、こうやって既存タイトルとの関係性を考えてみると、仕事に対する姿勢も変わると思いませんか?

長期運営オンラインゲームで良く見られるありがちな間違い

長期運営オンラインゲームを見ると、多くのケースで、ありがちな間違いをしている場合が見られます。

代表的な3つの間違いについて、今回は解説していきましょう。

①カムバックキャンペーンを実施する

長期運営ゲームになると、なかなか新規ユーザーが取れなくなります。

その結果、一度辞めてしまったユーザーを復帰させるための「カムバックキャンペーン」なるものを頻繁に実施するケースが見られます。

でも、冷静になって考えてみてください。

一度辞めたユーザーに対して「カムバックキャンペーン」を実施しても、その内容がゲームを辞めたユーザーに伝わらないと意味ないですよね?

ゲーム内や、公式サイト、公式Twitterで「カムバックキャンペーン」を告知しても、ゲームを辞めたユーザーに伝わるのでしょうか?

仮にゲームを辞めたユーザーに情報が伝わったとして、「カムバックキャンペーン」の内容は、ユーザーが戻すだけの内容なのでしょうか?

ユーザーが辞めた理由はゲームそのものにあるのではないですか?「カムバックキャンペーン」で貰えるアイテムとか報酬で、彼らが辞めた原因を解決できないのではないでしょうか?

 

ここで取り上げた内容は、カムバックキャンペーンを実施する際にまず考えるべきことです。しかし多くのケースで、このような核心に踏み込んだ部分まで考えてカムバックキャンペーンは設計されていません。

 

さらにもう少し踏み込むと

カムバックキャンペーンで一度辞めたユーザーを復帰させても、LTVは低いし、すぐに辞めてしまう可能性は高いです。(実際にKPIのデータでは裏付けがされています)

そこまでして、一度辞めたユーザーを「カムバックキャンペーン」で戻すだけの投資価値ってあるんでしょうか?(実際に費用対効果を試算されていますか?)

カムバックキャンペーンを実施することで、既存ユーザーに対する心象とか影響はどのように分析されていますか?

といった部分も考える必要があります。

実は「カムバックキャンペーン」ってあんまり推奨できない施策だったりします。そして、そもそも「カムバックキャンペーン」という名前を使っている時点で、その名前が与える心象や効果があまり考えられていないことを自白しているようなものなのです。

そもそも、トロネコなら「カムバックキャンペーン」という名前は使いません(使えません)

施策効果だけでなくデメリットも多いからです。

②ゲームの内容がわからない(内容説明がされていない)

これは多くの長期運営オンラインゲームに言えるんですけど

長期運営タイトルになればなるほど、もう、ネットで検索しても、そのゲームがどんなゲームなのか?簡潔にまとめられた記事や情報にたどり着くことが難しいのです。

ゲームアプリでもアプリストアにおけるゲーム紹介情報が「ふわっとした内容」で終わっていたり、PCオンラインゲームの場合も、かなり前に書かれた「ゲームの概要」程度で終わっていたりします。

公式サイトに行って「ゲーム概要」「ゲームシステム」という項目を何度読み直しても、どんなゲームなのかさっぱりわからないケースが多いのです。

 

・情報が古いまま更新されていない

・そもそもゲーム概要が適切にまとめられていない(マーケティング意識が低い時代のままで時間が止まっている)

・情報を新しくアップデートする重要性を理解していない

といったところが原因として考えられます。

ネットで見つけられる「ゲーム概要」に書かれている内容からはどんなゲームかわからないのですが

実際にプレイしてみると、「すげー、面白いじゃん」「いろんな遊びが実装されているじゃん」みたいな事は長期ゲームタイトルでは多いですね

まずは、ちゃんと自分たちのゲームの内容を理解して、適切に外に対して届ける努力をしましょう。それができていないのに「カムバックキャンペーン」とか言っているのは矛盾以外の何者でもありません。

③開発現場はルーチンワークの繰り返しである

長期ゲーム運営タイトルになると、

過去の実績や成功体験が新しいチャレンジへの障壁になります。

過去にやった事ベースでしか、ゲーム運営や開発を考えられないようになります。

(もう、これは紛れもない事実ですよね)

 

その結果、日々のゲーム開発、ゲーム運営、マーケティングやプロモーションもそうですけど「ルーチン」の繰り返しになります。

 

でも、その繰り返している作業は本当に正解なのか?ちゃんと分析されることもなく、習慣として続けられている現場も多いのです。

そんなルーチンの繰り返しても、長期運営ゲームの場合は現状維持ができているような感覚に陥ってしまう事が多いのです。しかし、実際のところ現状維持もできておらず、ゆっくりと破滅に向かっている場合がほとんどなんですよね。

習慣に慣れてしまうと、そことは別のことをやって失敗する事に対して、極度に恐れるようになったりします。

現場がそんな体質になってしまうと、未来は破滅しかありません。

 

今回ピックアップしたのは「わかりやすい代表的な間違い」になります。他にもいろいろな間違いが存在します。

 

なぜ、このような間違いをしてしまうのか?

大きな原因としては、人的リソースが不足していたり、経験値が高い人が新作ゲームに持っていかれたり、ゲーム会社としての社内の課題がある事が多いのですが

もう少し俯瞰的に物事を観察してみると

ゲーム会社内における「長期運営タイトルに対する価値観や評価が低い」というところは根っこにあるかもしれません。

長期運営オンラインゲームに対するマーケティング戦略とプロモーション施策

最後に長期運営オンラインゲームに対する基本的な「マーケティング戦略」と「プロモーション施策」の考え方について解説します。

個別ゲームタイトルによって状況は変わりますので、今回はあくまでも

「一般的な考え方」について、ざっくりお話しをしましょう。

みなさんが担当している長期タイトルごとの細かいマーケティング戦略、プロモーションについて興味がございましたらトロネコまでご相談ください。

マーケティング戦略の基本的な考え方

新作ゲームと長期運営タイトルにおける「マーケティング戦略」の考え方には大きな違いがあります。

「マーケティング戦略」に作り方については当サイトでも「フレームワーク」を公開していますので、そのフレームワークに沿って考えてみましょう。

 

新作ゲームと、運営2年目、5年以上という区切りで整理してみました。細かい内容はタイトルによって大きく変わりますので、下記ではあくまでも各項目における「考え方」に絞って記載しています。

(記載している内容は実際の目的、目標、課題、戦略とイコールではありませんのでご注意ください)

新作ゲーム 運営2年目 運営5年以上
目的 ・将来の収益の柱に対する先行投資

・特定ゲームジャンル市場におけるユーザー獲得

・現在進行形の投資、収益活動

・特定ゲームジャンルの残存ユーザー獲得

・現在進行形の投資、収益活動

・既存ユーザー維持による長期ビジネス継続

目標 ・新規ユーザー獲得 ・市場残存ユーザー獲得と既存ユーザー維持 ・既存ユーザー維持
課題 ・ターゲットユーザーに対する情報伝達と獲得 ・残存ターゲットユーザーに対する情報伝達と獲得

・既存ユーザーの維持

・既存ユーザーの維持
戦略 ・効率的にターゲットユーザーに対するリーチ、獲得を行うための方針 ・効率的に市場の残存ターゲットユーザーに対するリーチ、獲得を行うための方針

・及び効率的に既存ユーザーの維持を行うための方針

・効率的に既存ユーザーの維持を行うための方針

ポイントは

新規タイトルと、運営年数が経過したタイトルでは

マーケティング戦略に対する考え方が大きく異なるという点です。

そして、

マーケティング戦略の変化は

そのゲームタイトルのターゲットユーザーの市場残存数によって比例して変化します。

つまり

長期運営タイトルになればなるほど、市場に残存しているターゲットユーザー数が減っていきますので「目的」「目標」「課題」「戦略」も大きく変わってくるというわけですね。

戦略に基づいたプロモーション施策の設計方法

マーケティング戦略が作れたら、それに基づいたプロモーション施策が必要になります。

こちらも詳細についてはここのタイトルで状況は変わるので「施策の考え方」について整理してみましょう。

新作ゲーム 運営2年 運営5年以上
戦略 ・効率的にターゲットユーザーに対するリーチ、獲得を行うための方針 ・効率的に市場の残存ターゲットユーザーに対するリーチ、獲得を行うための方針

・及び効率的に既存ユーザーの維持を行うための方針

・効率的に既存ユーザーの維持を行うための方針
施策 戦略に基づいた上での以下の施策設計

・事前登録キャンペーン

・Web運用広告/SNS施策

・TVCM/OOHなど

戦略に基づいた上での以下の施策設計

・Web運用広告/SNS施策

・TVCM/OOH

・既存ユーザー定着維持を目的としたゲーム内施策

戦略に基づいた上での以下の施策設計

・既存ユーザー定着維持を目的としたゲーム内施策

ポイントは

新規タイトルと、運営年数が経過したタイトルでは

マーケティング戦略に対する考え方が大きく異なる

マーケティング戦略が変われば、施策も変わるという点ですね。

まとめ

長期運営ゲームタイトルはゲーム会社にとって、経営を支える柱であり

それがあるから新規タイトルに投資ができる「原資の源」でもあります。

現在のゲーム市場を鑑みると、新規で大ヒットゲームを作るのは今後さらに厳しくなります。その中で、既存タイトルをいかに維持していけるかが、ゲーム会社として生き残れるか

そして、そこでの原資を持って新たなチャレンジができるか?

ここにかかっています。

長期運営タイトルで課題を感じている方がいらっしゃいましたら

こちらからトロネコまでご相談ください。