こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回は「事前登録キャンペーン施策」で獲得したユーザーの課金率・生涯課金金額(LTV)が高い理由 についてお話します。
※LTV(Life Time Value=顧客生涯価値、特定期間に使ったお金)
最初に結論をお伝えすると
事前登録キャンペーン施策で獲得したユーザーの課金率・生涯課金金額(LTV)は、ゲーム配信後に、事前登録以外からインストールするユーザーよりも圧倒的に高いです
これは、結構、常識的な話なので、いまさら説明不要ですよね
しかし、事前登録ユーザーの課金率・生涯課金金額(LTV)が圧倒的に高いということは
アプリ配信直後に流入してきたユーザーこそ、このゲームにとって、もっとも重要なお客様であり、なんとしてもゲームを離脱させず、維持する必要があります。
これを意識してゲームアプリ配信日からゲーム運営できているかが重要なのです。
そして、先に答えをお話してしまいますが、ここからが重要です。
・事前登録するような良質なユーザーは、このゲームタイトルの運営において2度と現れない。ただ1度切りのチャンスであるということ
・事前登録で獲得した熱量の高いユーザーが、このゲームの生涯売上の大部分を占める課金ユーザーになること
・このゲームタイトルを成功させる上で、最も重要なのは事前登録を行い、アプリ配信直後にプレイ開始したユーザーであるということ
・アプリ配信後、しばらく経過してからゲームを始めたユーザーの何倍もの価値があるということ
これ全部事実です。
これを知っていると、ゲームアプリ配信直後に大きな失敗をすると、そのゲームの生涯売上において大ダメージを受けてしまうことがわかると思います。
そして、事前登録からゲームインストールして、プレイしてくれているユーザーを獲得・維持できると、アプリ初月の売上は大きくなりますし、
さらに半年後、1年後、2年後のゲーム運用もかなり楽になるのです。
つまり事前登録から、配信直後に流入するユーザーを維持することが、そのスマホゲームの未来をほぼ決めるというわけです
ユーザーが離脱する理由、離脱を食い止める方法については、下記の記事で書いていますので参考にしてください。
これを知っていると事前登録のユーザーや、配信直後に入ってきたユーザーをおろそかにすることなんて絶対にできません。まして中途半端な状態でアプリ配信をしてしまったり、
とりあえず配信初動はゲームがつまらなくても、1年かけてなんとかアップデートしていけば、なんとかなるよね
といった発想を持つこと自体が危険であることもわかるのです。
(↑これで、うまく言っているような気になれた時代もありましたが、そもそも、ユーザーをがっかりさせておいて、1年後に運営でなんとかするという発想は誤った考え方です)
とても重要なユーザーを配信初動で「がっかり」させてしまって、ゲームを離脱させてしまって、1年後にゲームが復活したようにみえるような事が過去の体験であるならば、それは「幻想」なのです。
もっと高い山を目指せたのに、小さい山に登って、そこが世界の頂上のように錯覚しているだけに過ぎません。
では、なぜ
「事前登録キャンペーン施策で獲得したユーザーの課金率・生涯課金金額(LTV)は、事前登録以外からインストールするユーザーよりも圧倒的に高い 」のでしょうか?
今回はここについて、深掘りしていきます。
事前登録キャンペーン施策で獲得したユーザーの課金率・生涯課金金額(LTV)が高い5つの理由
課金率、LTVと、そのゲームに対する興味関心、プレイモチベーションは比例します。
これはイメージしやすいと思いますが、その理由は「そもそもプレイモチベーションが続かなければ、課金しようと思わない」からです。
ゲーム事業が成功する上では次のような方程式が存在します。
継続モチベーション(DAU)×課金モチベーション(単価)=売上
継続モチベーション:
このゲームをプレイしたくなる、したくてたまらない、ゲームに対するプレイ意欲のこと
課金モチベーション:
このゲームをもっと楽しみたい、お金を使うことでもっと楽しめる、ゲームに対する課金意欲のこと。
この2つが組み合わさった時にスマホゲーム、PCオンラインゲームなどの「運営型ビジネス」は成功します。
逆をいえば、どちらかひとつだけ成立してもゲーム事業はうまく行きません。
(ユーザーの継続モチベーションが高いのにゲーム運営を終了しなければならないゲームってありますよね)
事前登録ユーザーは一般ユーザーに比べて
継続モチベーションと課金モチベーションがが圧倒的に高いのです。
だからこそ、「事前登録をしてそのゲームを待つ」わけです。
事前登録という行動は「継続モチベーション」と「課金モチベーション」が事前登録という「行動」にあわられた結果なのです。
細かく分けると事前登録ユーザーの課金率が高い理由として次の5つがあげられます。
次のパートでは、この5つの理由について解説していきましょう。
①そのゲームに対するファンだから(興味があるから) ②そのゲームに対するプレイモチベーションが高いから ③自ら情報収集するユーザーだから ④ゲーム属性の高いユーザーだから ⑤まとめるとイノベーター理論における「イノベーター」だから |
①そのゲームに対するファンだから
有名ゲームの続編、有名キャラクター版権を使ったゲームなど既に一定のファンが存在するようなゲームの場合は、そのキャラクターのファンであることが事前登録をする「モチベーション(=理由)」や「きっかけ(=認知)」になります。
有名ゲームの続編、有名キャラクター版権を使ったゲームを開発している段階で「既にファン化できており、ファンが存在している」ので、あとはファンの期待を裏切らないように
事前登録フェーズでは適切に情報を提供し、アプリ配信後のゲーム本編でユーザーの期待を超えるゲームを用意するだけです
これは、スマホゲームだけでなく、PS4やニンテンドースイッチにおける有力キャラを使った作品がある程度の売上が見込めるのと同じです。
②そのゲームに対するプレイモチベーションが高いから
有名ゲームの続編、有名キャラクター版権を使ったゲームではなくても、
新しいゲームが発表された時に、「タイトル名」「ゲーム画面」など視覚から入ってくる情報をもとに多くのスマホユーザーの中では瞬間的に
これはオレが好きなゲームだ
これはワタシ向きのゲームではない
といったラベリングが無意識で行われます。
「これはオレが好きなゲームだ」というラベリングが無意識の中で瞬間的に行われると、反射的に事前登録のアクションに移行します。
このラベリングは文字などで説明されて理解するというより、1枚のキービジュアルゲーム画面など視覚的情報で直感的に、かつ、瞬間的にユーザーは判断します。
RPG好きなら、RPGと思われる画面を見たら興味を惹きますし
シミュレーションゲーム好きなら、戦略性の高いゲーム画面を見たら反応しますし
美少女好きなら、自分の好みのタッチのイラストの女の子なら反応する
といった感じです。
「これはオレが好きなゲームだ」というラベリングがされた時点で「プレイモチベーション」が、これも無意識のうちにユーザーの中で作られます。
プレイモチベーション=遊んでみて面白かったら遊び続けてもいいかも
というタイトルの心の準備が整うイメージです。
その一方で
これはワタシ向きのゲームではない
もし、このように思わせてしまったら、ユーザーを再び振り向かせるのは大変です。ここから絶対に挽回できないとは断言できませんが、挽回するのは結構大変なのです。
こう思わせてしまった人がそのゲームの「ターゲットユーザー外」なら特に問題ありません。
しかし、「ターゲットユーザー」なのに、そう思わせてしまった時点で、ゲーム開発(つくるマーケティング)で大きな間違いを犯している可能性があります。
ゲームって恋愛に近いものがあると思うのです。
最初の出会い方、見た目の印象とか、ファーストインプレッションは、その後の恋愛に大きく影響を与えるからです。
③自ら情報収集するユーザーだから
TVCMを投下しないと獲得できないユーザーと
アプリ配信前に情報を出すだけで獲得できるユーザーでは
そもそも情報に対する意識が全く違います。
アプリ配信前の情報で動く | 情報に対して自発的であり、日常的に自ら収集する傾向あり |
TVCMから得た情報で動く | 情報に対して能動的であり、自ら収集するよりも誰かに提示されてから収集する傾向あり |
といった感じで
情報収集や情報に対する感度、アンテナが全く異なります。
アプリ配信前に、自発的に情報収集するユーザーは、新しい商品に対する感度が高く、その商材が彼らの求めるのと一致すればお金を使ってくれる可能性が高いユーザーとも言えます。
➃ゲーム属性の高いユーザーだから
そもそもゲームは嗜好性の高い商材です。
多くの場合、新作ゲームの新情報はゲーム媒体で発表、掲載されます。
そしてゲーム媒体を毎日ウォッチしているユーザーはゲーム属性の高いユーザーです。
基本的な考え方ですが、
ゲームは嗜好性の高い商材です。ですから、スマホ端末を持っている人なら誰でもターゲットになるというわけではなく、ゲームが好きで、ゲームに対してお金を払ってもいいと考えている人、
いわゆる「ゲームユーザー」「ゲーム属性の高いユーザー」が、ゲーム運営を支えているのです。
そんなユーザーは事前登録するようなユーザーと、ほぼイコールと考えていいと思います。
つまりゲームという商材の事前登録をする人は
ゲーム属性の高いユーザーというわけです。
となると、ただTwitterをフォローしてなんとなく事前登録するユーザーと
大手有名ゲームメディア経由で情報収集して事前登録するユーザーを比べると
圧倒的に後者の方が課金率、LTVは高くなります。
同じ1ユーザーですが、その課金率、LTVには数倍の違いがでます。
⑤まとめるとイノベーター理論における「イノベーター」だから
細かく説明してきましたが、ざっくりまとめると、事前登録するユーザーはイノベーター理論でいう「イノベーター」に相当するから、となります。
①から➃まで説明してきた行動特性はゲームアプリにおいては典型的な「イノベーター」の特徴です。
下記にてわかりやすいイメージの図を載せておきましょう。
イノベーターは事前登録を行い、配信1ヶ月以内に獲得できる熱心なユーザーです。イノベーターとアーリーアダプター以降のユーザーは同じ1ユーザーであることに変わりはないのですが、中身が全然違います。
中身とは先ほどお話をした下記の方程式を構成する数字が異なるという意味です。
継続モチベーション(DAU)×課金モチベーション(単価)=売上
イノベーター層を攻略して、事前登録に誘導して、数年に渡る長いゲーム運営に維持できるかがゲーム事業を成功させるために、まず最初にやることです。
イノベーター理論については下記の記事でも書いていますので、お時間があればあわせて読んでみてください。
事前登録ユーザーの「集客方法」と「集客後の熱量維持」で課金率・生涯課金金額(LTV)は大きく変わります
ここから、さらに深掘りします。
というか、ここからが重要です。
前のパートの①から⑤までの特徴を踏まえると
事前登録でいかに「イノベーター」を収集し、「その状態を維持できる」かが、アプリ配信直後の売上に影響することがわかると思います。
ということは事前登録における「集客方法」と「集客後の熱量維持」 によって同じ事前登録1ユーザーでも、アプリ配信直後の「状態」が異なります。
たとえば下記の①②ような「事前登録数を稼ぐ施策」を実施すると
イノベーター層とは異なるユーザーが事前登録ユーザーとしてカウントされ、アプリ配信後に流入してくることになります。
例)
①ゲームと無関係のインセンティブ(金券など)でSNSをフォローさせる |
SNSの媒体力(拡散力など)を高める上では有効な場合がありますが、本来の目的であるゲームを遊んで頂き売上をあげるという点においては、目的と一致しません。 |
②ゲームと無関係ではないけど、ゲームユーザー属性の遠いインセンティブ施策(声優さんの色紙)でフォローさせる |
ゲームとは無関係ではないけど、ゲーム耐性の低いユーザーである可能性があるので、事前登録させた後の 「集客後の熱量維持」が重要になってきます。 |
繰り返しますが、「事前登録という行為」はなぜ発生するのか?
それは、そのゲームに対する
継続モチベーション(DAU)×課金モチベーション(単価)
この2つを掛け合わせた上で、ゲームに対する期待値が事前登録というアクションに繋がるのです。
しかし、一般的に事前登録=TwitterやLINEのフォローとされていますが、物やお金で釣って「見た目上の事前登録数が伸びても」それは、ここでいうところの本質的な事前登録と一致しません。
ですから、「100万事前登録突破」といったゲームが、短期間でサービス終了してしまったりします。
同じ事前登録1ユーザーでも「集客方法」と「集客後の熱量維持」 によって同じ事前登録1ユーザーでも、アプリ配信直後の「状態」が変わるという事を理解しておくと、適切な事前登録施策設計ができるようになります。
まとめ
今回は事前登録キャンペーン施策で獲得したユーザーの課金率・生涯課金金額(LTV)が高い理由 についてお話しました。
当たり前のこととして、知っている人も多い話だと思うのですが、今回の記事で何かしら、新しい「気づき」があったらトロネコとしても嬉しいです。
この「気づき」こそ、マーケティングの本質に踏み込む第一歩です。
ぜひ、今回の「気づき」をプロモーション設計の参考にして頂けますと幸いです。
というわけで今日はここまで!