【第2回:事業計画の作り方】事業計画を構成する獲得ユーザーの試算・積み上げ方法とテクニック

マーケティング

こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。

連載企画、第2回目は「事業計画策定」における獲得ユーザーの見積もりや、算出方法についてお話します。

前回、「マーケティング戦略」の策定についてお話をしましたが、それをクリアにしてから今回の記事を読んでくださいね。

前回の記事はこちらをご覧ください。

「事業計画」とは何か?構成する要素を整理しよう

最初に「事業計画」という言葉の意味について整理しておきましょう。

「事業計画」とは今期どれだけのユーザーを獲得、維持して、売上利益を生み出すか過去実績と今後の運営、施策による見込みを算出し、対外的に発表し、会社としてその計画を達成すべく推進していく「計画」になります。

ゲーム事業、特にスマホゲームにおける「事業計画」算出に必要な要素をあげると以下のようになります。

・開発領域

継続率※DAUや既存ユーザーに影響
課金率
課金単価
LTV

※過去実績、今後の見込み値から算出します。いずれもゲーム内の設計、ゲームコンテンツ等に依存する要素になります。

・マーケティング領域

新規ユーザー獲得数
離脱ユーザー復帰数

※DAUをつくるという視点でみれば「新規ユーザー」「離脱ユーザー」の獲得が重要になります。ただし、「どのように獲得するか」「どのように復帰させるか」その「流入経路」「獲得手法」によってユーザーの状態は常に変動しますので、獲得したユーザーの「状態」が結果的に現状は「開発領域」に記載している「継続率」「課金率」「課金単価」「LTV」に影響します。

つまり立て付け上、「開発」「マーケティング」で分類していますが、両方はつながっているのです。

獲得ユーザーについて整理しよう

「事業計画策定」において、マーケターが責任を持って数字を出さなければならないのがマーケティング領域で記載した次の2つになります。

新規ユーザー獲得数
離脱ユーザー復帰数

さらに、この2つを細かく分解すると次のような経路、時系列による見込みを立てる必要があります。

新規ユーザー獲得数
┗①定常施策で獲得が見込める自然流入ユーザー(=オーガニックユーザー)
┗②プロモーション施策で獲得が見込めるユーザー(=広告獲得ユーザー)

離脱ユーザー復帰数
┗①定常施策で獲得が見込める自然流入ユーザー(=オーガニックユーザー)
┗②プロモーション施策で獲得が見込めるユーザー(=広告獲得ユーザー)

①→特別なことをせず、いままでやってきた施策の範囲で獲得できるユーザー
これを自然流入ユーザー=オーガニックユーザーとここでは定義しています。
運営タイトルなら前年度に獲得したユーザー数のうち、広告経由以外で獲得したユーザー数がわかると比較的簡単に算出できます。

さらに長期運営タイトルの場合は経年劣化による減衰率がわかりますので精度の高い数字が出せますし、新規タイトルの場合でも、自社で他タイトルの数字からある程度の推測は可能です。

②→デジタル広告、TVCM、その他宣伝費を使って獲得したユーザーであり、お金をかければ獲得できる見込みが立つユーザーです。こちらも前年度の実績などから、今年もこの程度だったら広告経由で獲得できる見込みが立つ、といった数字が算出可能です。

上記について数字が算出できたら、続いて次のように時系列で分解します。

◆日別見込み

新規ユーザー 復帰ユーザー
オーガニック 広告 合算 オーガニック 広告 合算
4/1
4/2
4/3

◆月別見込み

新規ユーザー 復帰ユーザー
オーガニック 広告 合算 オーガニック 広告 合算
4月
5月
6月

オーガニックユーザーは、運営タイトルならば過去実績に対して経年劣化による減衰率をかけても算出できますし、新規タイトルの場合も自社の実績データや、または他社の実績データをApp Annieなどのデータから推測して算出することもできます。

算出する上で重要なことは

・必ず日別見込みで
・曜日、季節要素による変動込みで

分解するようにしてください。
なぜなら、最終的にその日別見込みが「目標」になり、その目標を達成し続けることが「事業計画」の達成になるからです。日別まで分解することで、目標に対する「達成度・進捗度」がわかるようになります。もし目標に対して実績値がビハインドしている状態になっても、日別で出しておけば、それを即時に把握できるので、早期対策を取りやすいというメリットがあります。

アドオンできる獲得ユーザーを考えよう

ここまで来たらマーケター領域の「事業計画」の作業はほぼ半分終わっている状態です。なぜなら

「獲得ユーザーの見込み数」と「ゲーム内の要素」を掛け合わせれば、今期の売上見込みを算出することができるからです。

ただし、現時点で算出した獲得ユーザーは過去実績から堅く見込める数に留まっていますので、宣伝費や施策を投下したり、マーケ戦略次第でもっと獲得できるユーザーが存在するはずです。

新規ユーザー獲得数
┗①定常施策で獲得が見込める自然流入ユーザー(=オーガニックユーザー)
┗②プロモーション施策で獲得が見込めるユーザー(=広告獲得ユーザー)
┗③宣伝費や施策でさらに獲得が見込めるユーザー(=アドオンユーザー)

離脱ユーザー復帰数
┗①定常施策で獲得が見込める自然流入ユーザー(=オーガニックユーザー)
┗②プロモーション施策で獲得が見込めるユーザー(=広告獲得ユーザー)
┗③宣伝費や施策でさらに獲得が見込めるユーザー(=アドオンユーザー)

③をどこまで積み上げられるか、③の数字が出せれば「事業計画」に必要な数字は完成します。

この施策の設計方法については次回、第3回のパートで「施策設計までのブレイクダウンの方法」をお話する予定です。

ただし、重要なのは「むやみに数字を積み上げてつくればいい」というわけではなく今回の記事の冒頭でも書いた通り 「どのように獲得するか」「どのように復帰させるか」その「流入経路」「獲得手法」によってユーザーの状態は常に変動しますし、それら獲得ユーザーによってゲーム内のKPIが構成され、売上利益が算出されますので大前提として「数」ではなく「質を伴った数」を算出する必要があります。

適切な宣伝費の決め方」という記事を書きましたが、下記の通り「一定のROIを超えたユーザー獲得を大前提とした上で、宣伝費や施策を投下することでアドオン獲得が見込めるユーザー数」をこちらも日別で列に追加してださい。(ROIの設定値は企業によってバラバラですが、それについてもこちらの記事で触れています)

ROI = LTV(Life Time Valueそのユーザーによる将来の見込み売上) ÷ CPI(Cost Per Installユーザーの獲得単価)

とはいっても、その数字には「根拠」は必要です。
根拠のない数字は「単なる思い込み」に過ぎません。対外的にも公開する「事業計画」の数字には正確性を欠くわけにはいきません。

アドオンできる獲得ユーザーの算出方法

アドオンできる獲得ユーザーの出し方にはいくつか方法があります。
今回代表的な4つの方法についてあげておきましょう。

①一定のROIに収まることを条件にアドオンできるデジタル広告経由の獲得ユーザー数を算出する
②定常施策で獲得できるユーザーに対して、定常施策の精度をあげることでアドオンできるユーザー数を算出する
③追加ゲーム内外施策を考え、その効果を算出する
例)TVCM、ゲーム内イベントの追加など施策数を増やす
④その他、従来ではやっていなかったユーザー獲得方法によって最低限見込める(≒目標設定できる)ユーザー獲得数を算出する

トロネコとしては①から④まで全部検討した上で「新規・離脱アドオンユーザー」の項目に見込み値を入れます。①②は数字の積み上げに限界はありますが、③は施策の成功状態によってノビシロがありますし、④は戦略からの企画次第でいくらでもノビシロがあります。

もちろん①②の方が施策実行ハードルは低く、③④に行くほどハードルは高くなります。そして多くのマーケターが①②③止まりで事業計画の数字を出しており、④にはチャレンジできていないのも事実です。

そんな感じでアドオンも日別に分解してシートに追加してください。

◆日別見込み

新規ユーザー 復帰ユーザー
オーガニック 広告 アドオン 合算 オーガニック 広告 アドオン 合算
4/1
4/2
4/3

◆月別見込み

新規ユーザー 復帰ユーザー
オーガニック 広告 アドオン 合算 オーガニック 広告 アドオン 合算
4月
5月
6月

 

獲得ユーザーに限界を感じたら検討するべきこと

ここまでできれば「事業計画に必要な数字」は、ほぼ出し切れている状態です。しかし、こんなことはありませんか?

「運営5年目に入っており、もう新規ユーザー、復帰ユーザーの獲得は難しい」
「ゲームジャンル的に新規がとりにくいジャンルである」
「このゲームにおける市場はほぼ取り切っている状態である」
「目標と現実との数字に埋められないほどの非現実的な乖離がある」
「宣伝費やプロモ・開発リソースに限界がある」

つまり「新規ユーザー・離脱ユーザーの獲得に埋められない溝がある状態ではどうするべきか」という話です。

ここで注目して欲しいのがDAUの構成要素について書いたこちらの記事です。

新規ユーザーを獲得しても翌日には50%辞めますし、離脱ユーザーを復帰させても、一度離脱経験させてしまったユーザーなので再度離脱しやすいのです。

よって、ユーザー獲得数に限界を感じた場合に次にやるべきことは

「ユーザー獲得数の限界を認識し、獲得したユーザーに対する継続率や課金率で補いDAUや売上に対する影響力をできる限り同一になるよう近づける」ということです。

記事の冒頭でも書いた通り 「どのように獲得するか」「どのように復帰させるか」その「流入経路」「獲得手法」によってユーザーの状態は常に変動しますしので、「数」ではなく「質」に注力した施策設計を行い、

「このユーザーは1インストールユーザーだけど、このゲームの平均的な1ユーザーよりも2倍の価値がある状態だから、2インストール分の価値がある」

という獲得ユーザーの積み上げもアリです。

ただしこれを実現するにはゲーム内外で連携して

・獲得ユーザーの状態

・ユーザー獲得後の受け皿(ゲーム内の継続率、課金率に影響する要素)

をセットで考える必要があります。

トロネコがいつもお話している「とどけるマーケティング」にとどまらず「つくるマーケティング」に踏み込む必要があります。

新規・離脱ユーザーの獲得が難しいなら、既存ユーザーに対してとことん寄り添い、その結果、既存ユーザーの「継続率」「課金率」「LTV」を上げるのも策です。つまり、ユーザー獲得積み上げによる「事業計画作り」ではないところを探る必要があります。
よって、新規離脱ユーザーの積み上げが見込めないけど「既存ユーザー」に対する維持、ファン化施策でKPI貢献する施策で貢献するのもありです。

重要なのはマーケターとはユーザーを獲得することではなくゲーム内に踏み込むのもマーケターの役割であり、貢献できる部分にあります。

絶対にやってはいけないこと

最後に事業計画策定においてやってはいけない4つのことをお話します。

①根拠のない数字の積み上げ

この数字はどうやって出したの?

と聞かれたら、根拠を示して即時に答えられるようにしましょう。即時に答えられることが重要なのではなく、答えられるくらいまでに算出根拠を持って数字を積み上げて作成した「事業計画」が必要という意味です。

②数字優先の積み上げ

繰り返しお伝えしていますが 「どのように獲得するか」「どのように復帰させるか」その「流入経路」「獲得手法」によってユーザーの状態は常に変動しますしので、最終的に重要なのは「数」ではなく「質」です。

そして、ゲーム事業の目的はDAUをつくることではなく、利益を出すことです。(DAUは利益を出すための構成要素のひとつに過ぎません)

DAU < 売上 < 利益

といった優先順位を意識しつつ、DAUよりも、売上、売上よりも利益で評価されるような組織を作る必要があります。「売上」だけで評価されるのはNGです。なぜなら「売上」は大きく伸びていても中身は大赤字であり、「つくられた売上」である可能性があるからです。

スマホゲームは宣伝費を投下すれば「瞬間的に売上をつくること」が可能です。しかしスマホゲーム事業の本質は「長期運営の結果、利益はどうだったのか?」という点にありますので、 「瞬間的につくった売上」が、事業全体でみると「大きな損失」になる可能性は多々あります。

③実現不可能、またはトップダウンによる事業計画作り

「目標売上100億円!!」

といわれでも不可能なものは不可能で、気合や想いでどうにかなる世界ではありません。

もちろん、ROI度外視で宣伝費を投下し続ければ「数」は稼ぐことはできます。そして、それらを一般的には「パワーマーケティング」と呼んだりもしますが、配信直後のパワーマーケティングで「質」よりも「数」を重視した結果、なかなかプロジェクト全体として黒字転換できず苦しんでいるゲームも多いのです。

よってトップダウンで決められた計画に、あわせに行くような事業計画の作り方はNGです。

④達成可能な「事業計画」を設定して、それを達成したことで評価される体質

事業計画とは100%達成確実な見込みではなく
頑張りによって達成が狙える「目標」といった意味が強いのです。

つまり、何もせず定常施策だけで達成できてしまう数字は「目標」ではなく「見込み」に過ぎず、「見込み」を追いかけている状態は組織、企業としても成長が見込めませんし肝心のゲームサービスも改善しませんから、ユーザー側としても好ましくありません。

しかし、世の中には様々な人がいて
「100%達成可能な見込み」を「目標」に設定して、
それを達成することで会社からの評価を得ようとする人もいます。

いわゆる「生き方がうまい人」なのですが
これを許してしまうと真面目に真剣に頑張っている他のチームの不満を招くとともに、 組織、企業としても成長が見込めません。

まとめ

今回、連載企画第2回目ということで「事業計画を構成するユーザーの積み上げ方法」についてお話しました。次回は作成した「事業計画」を実際に推進しながら達成するための方法についてお話します。

その他シリーズ記事はこちらをご覧ください。

【第1回】マーケティング戦略策定と試算シミュレーションに向けた事前準備

【第3回】各プロモーション施策のブレイクダウンと実行・推進方法

 

というわけで、今回はここまで!

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