こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回は最近、ゲーム業界の人とこんな話をしました。
1本目で大ヒットを作れたのに
2本目のヒットがなかなか作れない理由ってどこにあるんでしょうか・・・・
1本目でヒットを作れたから
2本目をつくることでゲーム事業を安定させたいし
ヒットが作れたなら、次もヒットがつくれるはず
そう考えるのは、ごく自然なことです。
でも、実際にはいかがでしょうか?
ゲーム事業を長くやってきた方なら、2本目のヒットを作るのは簡単なことではないと思われるかもしれません。
1本目で大ヒットを作れると、そのゲーム会社の経済基盤的には大きく安定します。
そこから2本目のヒットを作れれば、さらに経済基盤は安定してもっと大きなチャレンジができるようになります。
そして何よりも2回もヒットをつくれた経験によって
「ヒットを生み出すモノづくりの仕組み」を理解できて、言語化できて、横展開できるようになります。そして何よりも大きな自信になります。
マーケティングの定義は「モノが売れる仕組みづくり」ということは、当サイトでもたびたび解説してきましたが、「モノが売れる仕組みづくり」が完成すると、それ以降のゲームタイトルにおいては「ヒットの打率」があがります。
外れても空振り三振ではなく、バットに当てることはできるのです。
・ ヒットするモノづくりの仕組みの理解 |
・モノづくりに対する大きな自信 |
この2つはゲーム会社として、さらなる上に飛躍できるチャンスです。
2本目のヒットをつくれるか否かは、そのゲーム会社の将来を決めるといっても過言ではありません。
しかし、多くのケースで、大なり小なり規模感の違いはありますが、なかなか2本目のヒット創出に苦戦しています。
そこで、今回は
「なぜ、2本目のヒットをつくれないのか」
「その理由はマーケティングによる再現力にあるのではないか?」
というテーマでお話をします。
なぜ1本目でヒットをつくれたのに2本目のヒットをつくれないのか
なぜ1本目でヒットをつくれたのに
2本目のヒットをつくれないのか
その原因の正体について深く掘り下げてみましょう!!
①経験と記憶と個人に依存しているから
ヒットの法則は必ずしも言語化されているわけではなく、ゲームを開発する人や、マーケターの頭の中に経験と記憶として刻まれていることが大半です。
これはスマホゲーム業界だけでなく、家庭用ゲーム業界でも同じです。
だからこそ、同じ会社であっても
開発チームやマーケティング担当者が異なると「ヒットの作り方」が異なります。
ヒットの作り方がわかっているような人でも、ほとんどんケースで明確に言語化されておらず、過去の経験でうまくいった「感覚的なやり方」を「ヒットの作り方」として、やんわりと語られています。
つまり、多くのケースで
過去の経験や感覚、記憶と個人のセンスに依存したゲーム開発やマーケティングを行っているのです。
これはうまくいく場合もありますがデメリットがあります。
特定個人の経験や感覚にに依存してしまう
その個人の感覚が時代の流れを完全一致しているような神がかった状態も時には起こり得ます。音楽プロデューサーのセンスが時代とマッチすればヒットをだせますが、ちょっとズレ始めるとまったく結果がでなくなります。
特定個人がいなくなればヒットの再現性は困難
特定の個人に依存すぎているため、その人がいなくなればヒットを生む打率は下がります。
2本目のヒットを作る上で時間がかかる
基本的に「感覚に依存している状態」は打率が悪いので2本目のヒットを作るには時間がかかります。時間軸で見ると5年10年に1本しかヒットがでるかどうかの確率になります。
よって、2本目のヒットを作るまでにお金と労力もかかります。何よりも時間がかかりすぎるので、それまで1本目のゲームで食いつないでいかなければなりません。
長らく2本目のヒットが作れないと、いくら1本目のゲームが売上を出していても、2本目のヒットが作れるのか?会社としては心配になります。
この心配は不安となって従業員に伝搬しますから、さらにヒットが生まれにくい萎縮した状態で仕事をする雰囲気が形成されます
この萎縮した雰囲気は言語化できるものではないのですが、ゲームのような「楽しいエンタメ商材の創出」においては確実にマイナスであり、それが2本目のヒットを生み出す障害にもなります。
つまりネガティブな連鎖がずっと続いていくので、さらにヒットが生まれにくくなるというわけです。
でも、必ずしもすべての直感が悪いわけではありません。
なぜなら、ゲームのようなエンタメは人間の心に訴えかけて、共感させ、心を動かす商材です。人間の心は移ろいやすく、必ずしも論理的に分析できるものではないからです。
ゲームKPIのDAUが
数字による現状を把握できても、DAUの先にある人間の感情までわからないように、感情は直感で理解できる場合もあるからです。
ただし、特定個人の経験と記憶と感性に依存している限り、2本目のヒットを生み出すには膨大な時間と、膨大なトライ&エラーが必要です。
つまり、手探り状態でヒットを探しているようなみたいなので、相当の無駄な回り道を何度も繰り返さなければなりません。
②1本目のヒットは偶然、またはキャラクター版権力によるヒットである
ゲーム業界には「たまたまヒットした・・」というケースが結構あります。
マーケターもそうなのですが、
「能力はないけど、たまたま担当したタイトルがヒットした・・・」というケースがあるのです。
または人気キャラクターの力があったらこそ、ゲームはつまらなくても結果的に数字上はヒットしてしまう場合もあります。
「偶然のヒット」であってもその「ヒット要因」に対して真剣に向き合い、「ヒットの仕組み」を掘り下げて次に活かせるなら2本目のヒットを作れる確率は上がります。
しかし、人間は「偶然のヒット」であっても
「そのヒットは事前から仕込まれていた」という
「後付けのストーリー」を作り上げ辻褄をあわせたくなるものです。
つまり、「たまたまラッキーな偶然のヒット」であっても、その事実から目を逸らしたくなるわけですね。
しかし、「後付けのストーリーで辻褄を合わせ」はゲーム事業における最大の害です。
ここに行ってしまうと、「ヒットの再現性」を見つける絶好のチャンスを失ってしまいます。だから2本目のヒットがでないですし、1本目のヒットを評価されて、別のゲーム会社にヘッドハンティングされても、結果が出ません。
ヒットをつくるには再現力が必要です
では、どうすれば「2本目のヒット」が作れるのか、その本質について踏み込んでいきましょう。
前のパートで説明した「2本目のヒットが作れない原因」をまず排除するのが、最初の一歩です。でも、それだけで不十分なのです。
これからあげる3つの方法を同時並行で実施しながら
「ヒットを作りやすい再現力を持った組織作り」
が必要なのです。
①成功要因を明らかにして組織に共有する
1本目がヒットしたなら、成功要因を徹底的に分析して、その要因を組織に対して徹底的に共有し、理解させる状態まで持っていくと組織自体が「再現力」を持つことができます。
特定の人に「再現力」があっても、結局のところゲーム事業はひとりではできないのでいかに組織に「再現力」を浸透させるかが重要です。
・なぜヒットしたのか?
・どうすれば別タイトルへの横展開ができるのか?
・これらを会社組織のメンバーにいかに浸透させるのか?
ヒットした原因みたいなものを社内で分析しているゲーム会社はあるかもしれませんが、
「その分析は適切なのか」「会社組織に浸透するまで共有されてるのか」「実際に横展開されているのか」
というとできていないゲーム会社がほとんどでしょう
だから、2本目のヒットがでにくいですし、ヒットの打率が悪いのです。
過去の失敗や成功体験は生かされず、別の新しいゲームのチームではゼロスタートするので、同じような間違いが1年単位で繰り返されます。
②他のゲーム会社には真似できない得意分野を作る
例えば、ゲーム会社Aがあったとしましょう。
この会社がRPG、パズル、レース、アクション、カードゲーム、いろいろなゲームジャンルを開発しているとします。
でも家庭用ゲーム開発視点でみると、これほど非効率なゲーム開発はありません。なぜなら
いろいろなゲームジャンルを分散して作っているので
特定のゲームジャンルにおける強みが蓄積されないからです。
分かりやすい例をあげるならば
家庭用ゲームにおけるレースゲームなら、長年プレイステーションフォーマットで発売されている「グランツーリスモ」に対抗して、いまから新作レースゲームを作ってもまず勝てません。
これは長い間、サッカーゲームを作り上げてきたウイイレ、FIFAに対しても同じことが言えます。いまからサッカーゲームを新規開発してもウイイレ、FIFAに勝つのはかなり厳しいのです。
・ゲーム会社として他にはない強みをつくる ・そして、その強みをベースにして2本目のヒットを狙う |
これは「再現力」のある成功確率の高いゲーム事業の進め方です。
実際のところ、そういう会社には、資産となるゲームコアエンジンをもっており、それを元に新作を作ります。スマホゲーム会社でありがちな
新作ゲームを立ち上げるたびにゼロスタートとなるゲーム開発とはならないのです。
また、このように自社の強みになるような「ゲームコアエンジン開発」についてはわかっているゲーム会社は外部の開発会社では作らず、必ず自社開発をします。
なぜなら、それが自社開発チームのノウハウとして蓄積され、組織における「再現力」を高めることを知っているからです。
外部の開発会社で作ってしまうと、ノウハウは自社に残らず外部に蓄積されますし、外部会社との関係が切れてしまえば、大きなロスが発生するからです。
③同じ間違いを繰り返さない組織作り
開発チームだけでなく、マーケティングチームにおいても「個人」ではなく「組織力」を高めることで「再現性の高い安定したプロモーション」ができるようになります。
隣のチームで失敗した事例Aを、そのチームに閉ざさず、組織に対して「原因」を「振り返る」ことで、同じ間違いしにくくなります。
さらに、人材流動の激しいゲーム業界(特にスマホゲーム会社は激しいですよね)において、キーパーソンが退職しても、戦闘力を落とさず戦える体制作りができます。
しかし、多くのゲーム会社では、隣の人が何をやっていて
そこで得た知識、経験、失敗体験などが共有されていません
そもそも、自分以外の他人のことなんて興味がない
という人も多いのでゲーム会社として同じような失敗が後を絶ちません。
この状態は、いまに始まったことではなく昔からこんな感じです。
でも歴史ある家庭用ゲーム会社の場合は比較的、社内の人間同士の繋がりが密ですから、まだましなのですが
人材流動も多く1年で従業員が入れ替わるスマホゲーム会社の場合は、隣の人と口をきかず、同じチームだけど関心がない、みたいなこともあります。
(全ての会社がそうであるとは断言しませんが、そういう会社が多いのです)
だからこそ、
隣のチームで失敗した事例Aを、そのチームに閉ざさず、組織に対して「原因」を「振り返る」ことを率先して行う、もしくは強く推進する人がゲーム会社には必要です。
でも、人間って
成功した結果を自分の手柄のように都合よくアピールするのは好きでも
失敗した結果を自分の落ち度のように反省することはやりたくないものです。
なぜなら成果をアピールすることが人事評価に繋がり
失敗をあえてさらけ出すことは人事評価ではマイナスになる
と考えがちだからです。
「失敗した原因を振り返ることは決してマイナスではなく、むしろプラス評価であるという認識を会社組織で徹底する」
「自分たちでできないなら第三者に客観的に成功失敗要因を深掘りしてもらい組織にフィードバックする仕組みをつくる」
といった対策は必要です。
これは現場に対してではなく、プロデューサーや経営者に対してトロネコからお伝えしたいことです。
そうしないと、ずっとこの無駄な繰り返しを続けていくことになります。
でも、実際は会社として内部留保もあるし、いまのゲームも売れているので明日、潰れるようなことはありません。
しかし、いま歩いている道はゆっくりと「終わり」に向かっているのは間違いないのです。
最後に
「1本目で大ヒットを作れたのに、2本目のヒットが作れない理由について」掘り下げてみました。
今回のテーマについては
「あまり直視したくない、目をそらしたい」
と思う人が多いかもしれません。
それくらい面倒な作業ですし、成功体験の否定から入っていかなければならない部分もあるので、人間としては抵抗もあります。
「成功体験の否定」「面倒臭さ」
加えて
「1本目がヒットしたからこその差し迫った不安がない状態」
これらが2本目のヒットを作りにくくしている原因です。
でも、ここに踏み込めるとゲーム会社として成長できます。
というか、これからもゲーム会社として生き残っていくには踏み込むしかないのです。
最後に今回、ご紹介した内容についてご相談したいことがございましたら、LINEチャットで無料相談できる「トロネコのカベウチ」をお気軽にご利用ください。トロネコがチャットでご相談に乗ります。もちろんメールでご連絡いただいても結構です。
contact_us@gamemarketinglab.com
みなさまのお役に立てればトロネコは幸せです。