常識に縛られて脱却できない6つの原因と脱却する方法
こんにちは
マーケティングスペシャリストのトロネコです。
今回のテーマは
・常識を疑え
・常識に囚われている状態とは思考停止している状態である ・思考停止しているとゲーム事業はうまくいかない、組織も個人も成長しない |
という話です。
ちなみにゲーム業界で働いていると毎日こんな話をよく耳にします。
ゲームKPI改善のために
ログインボーナスを入れましょう!
運営強化したいので同時に2つのログインボーナスを走らせましょう
そうすれば、毎日ログインしてくれるからDAU回復が狙えますよ
これらは、ログインボーナスを実施すれば、それを目的にしてDAU(Dail Active USers/1日あたりのプレイユーザー数)が回復できるという常識に囚われている発言です。
「ログボ=DAUを維持してくれる有効な施策」
というゲーム業界では当たり前のように語られている常識ですが、ここで皆さんにお伺いしたいことがあります。
・それって本当ですか?
・ログインボーナスがなかったらDAUは下がるのですか?
・DAUが下がったら何か問題あるのですか?
ここで重要なのは、ログインボーナスが本当にこのゲームアプリ運営にとってプラスなのか、むしろマイナスはないのか?というところに疑問を持って欲しいという点です。
「ログインボーナス=DAUを維持してくれる有効な施策」
いままで、周囲や先輩が当たり前にやってきたのでこれが正しいと思って、何も疑わず続けてしまうのは、まさに思考停止している状態です。
常識に囚われて思考停止している状態だと本質が見えないし、成長もしません |
ちなみに、ログインボーナスについては、運営中のタイトルの状態を踏まえて考える必要があります。
・ログインボーナスで維持しているユーザーはゲームをプレイしてくれているのか。ログインボーナスを取ってアプリ終了しているユーザーではないのか?
・ログインボーナスがゲームの課金や売上にどのような影響を与えているのか?
・ログインボーナスをやめたらDAUは減るかもしれないが、売上はむしろ上がるのではないか?
ログインボーナスの存在意義をまず考えて欲しいのです。
実際のところログボを辞めたら、DAUは減ったけど、ゲーム内の経済状況に変化が生まれて売上はあがった。ログボで維持していたユーザーは維持する価値はなく、むしろログボが本来重視すべきユーザーに悪い影響を与えていた
ということもあるのでログボの常識に縛られていると危険です。
KPIとかDAUって何?
という方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
【関連記事】KPI継続率に影響を与える10個の要素改善方法|リテンションマーケティングの正体
ゲーム業界における常識とは?
トロネコは20年以上にわたってゲーム業界ってマーケティングの仕事をしてきましたが、その中で様々な「業界の常識」を感じてきました。
それらの常識は
これまで、うまく行っていたから、それってきっと正しい
正しいからいまさら改めて考える必要ない |
といった感じで、現場にずっと居座り続けています。
「いままでやってきた常識だから、正しい、だからあえて疑う必要もない」
といった感じなのです。
全部あげるとキリがないので、初歩的な内容だけあげてみましょう。
これまでの常識 | 実は非常識!? | ||
スマホアプリ | ログボ | ログボはDAUを維持、改善してくれる | ログボで維持したユーザーってそもそも維持する必要あるの? |
チュートリアル | チュートリアルはゲームシステムを理解させ、初期離脱させない有効手段 | チュートリアルがゲームを難しく感じさせて、離脱要因になっていないか? | |
事前登録 | 事前登録はとにかく重要。どんな手段を使っても100万人を達成する必要がある。100万人達成したら流行っているアプリ感も演出できる | 数字上100万人を獲得しても、多くの人がインストールしない。数ではなく質が重要ではないか? | |
アプリアイコン変更 | アプリアイコンを変更すると「変わった感」を伝えられるので、アプリの起動率もあがる | アプリの起動率があがっても、起動した瞬間に離脱していないか?数字上のDAU稼ぎで本質ではないのでは? | |
家庭用ゲーム | 店頭予約特典 | 店頭予約特典があると事前登録数が増える→お店からの初回発注数が増える→初回生産数、出荷数が増えるから欠品リスクも下がり、売上も確保できる | そもそも店頭予約特典が欲しくてゲームを買うわけではない。なくても実際の売上と比例しないのでは?過剰サービスではないのか? |
店頭ポスター | 家庭用ゲームにおいて店頭ポスターは必須の販促ツール。どんなに宣伝費が少ないタイトルでもポスターは最低限必要 | 生産した店頭ポスターは実際にお店て貼られているのか?実はほとんど貼られずに捨てられているのではないのか?貼られたとしてもどれだけけのプロモーション効果があるのか? |
といった感じです。
書くとキリがないので、わかりやすいモノをピックアップしてみましたが、皆さんも心当たりがあるかもしれません。
常識に縛られて脱却できない6つの原因
なぜ常識に縛られて、そこから脱却できないのか?
その理由は5つに分類できそうです。ひとつずつ説明していきましょう。
①常識は100%正しいから
一番多いケースは、常識とされているものが長年に渡って人や組織に刷り込まれているケースです。
そうなると、その組織においては誰も疑うことなく、当たり前の「正解」として「常識」が存在し続けてしまいます。
ログインボーナスも、最初に誰かが始めたのでしょうが
みんなやっているから、たぶん効果があるのだろう
という「常識」が作られていったのだと思われます。
実際にログインボーナスを実施すると数字の上ではDAUは改善していそうな気はしますが、実際のところログインボーナスのDAUに対する影響を詳しく研究している人がどれだけいるかというと不明です
でもDAUを改善させることがゲームアプリの「目的」ではありません。
マーケティング戦略のフレームワークでもお話しましたが、本当の目的は別のところにあって、それを達成するための役割としてDAUを改善する必要があるわけです。
ログボって、ラーメン屋さんのスタンプカードのようなものです。スタンプカードをやめても来客数は変わらないラーメン屋もありますし、そもそもスタンプカードなんてやらなくても人気のラーメン屋もあります。
②常識を疑って別のことを試して失敗したら責められるから
ログインボーナスが本当に必要なのか?
それって何か違うんじゃないか?
と疑問を持っている人も結構な人数います(いると思いたい・・・)
でも、みんなが「常識」として思い込んでいるコトに対して、
それって違うんじゃないですかね!
と声を上げるのは勇気が必要です。
そんな常識を疑うより、他にやることがあるだろうし、周囲の人からは「面倒臭い奴だな」と思われるのがオチです。
しかし、勇気を持って、常識に対する疑問を提言して
みんなを納得して、実際にログボをやめてみる
ログボに代わる新しいことをやってみたけど
様々な要因で明確な「効果」が出ない、見えにくい場合もあります。
みんなを巻き込んで、時間をとらせて、結果が出なくて
責められるのはイヤですよね・・・
と考えると「常識」を疑い、行動することも躊躇しますよね・・・。
でも、行動を躊躇させてしまうのはゲーム事業としてもっと大きな問題です。
本当は常識を疑って、実際に試してみて、結果が出なくても責められず、雰囲気も悪くならないチームビルディングが構築されている状態が必要です。そういう状態が作れないとゲーム事業なんて成功できません。
これについてはチームビルディングの記事で触れていますので興味があれば。
【関連記事】ゲーム業界におけるチームビルディングをつくる方法【実際にやってみて効果あり】
③毎日の仕事に追われて考える時間的余裕がないから
ログインボーナスが本当に必要なのか?
それって何か違うんじゃないか?
そんな疑問はあるけど、毎日の仕事をこなすだけで精一杯です!
本当に無理っす!考えている余裕がないっす!
実はゲーム業界では「毎日の仕事で精一杯でそれ以外をこなす余裕がない人」が結構多いのです。日々の多忙さも「常識」から目をそらして、思考停止させてしまう原因のひとつです。
時間的余裕がないと、マーケティング戦略を作る時間を確保することもままならず結果、マーケティング戦略も適当で、HOW思考で作られたプロモーション施策になりがちです。
【関連記事】なぜ、HOW思考で作られたプロモーション施策は結果がでにくいのか?
④考えることが辛いから
「常識を疑うということ」とは「考えること」です
そして「考えること」って結構辛いです。
わかりやすい例をあげると
・言われたことをただやっている
・自分で考えてやっている |
両者には大きな違いがあります。
「言われたことをただやっている」状態は何も考えない思考停止状態かもしれません。そして
「言われたことをちゃんとやれば」結果を出せる仕事かもしれません
一方で
「自分で考えてやっている」というのは、自分で考えて、正解と思える方法を導き出し、それを達成するためのやり方も考えなければなりません。結構、考えることってスタミナを消費するので、慣れないと辛いです。
考えることが辛いと感じるから常識から脱却できないというわけです。
(慣れると、考えることって楽しくなるんですけどね・・・)
⑤面倒臭いです
ログインボーナスが本当に必要なのか?
それって何か違うんじゃないか?
そんな疑問はあるけど、それを解決するのって面倒臭いからやらないというパターンもあります。
なぜなら、適当でも給料はもらえるし、時間をかけてやっても対価を期待できないからです。そうなると
「面倒臭いから、そこまでやらなくてもいいや」
となってしまいます。
これは仕事をジブンゴト化できていない典型的なパターンで、そういう人でチームが構成されると「常識」を疑わないチームの完成です。
【関連記事】ゲーム事業でメンバーをジブンゴト化させる方法【スキルアップに効果あり】
⑥そもそも「考える」ってどういうことですか?
中には「考える」という事がわからないという人もいます。
これはどういう事かというと
わかりやすい例をあげると「マーケティング戦略のつくり方」がいい例です。
フレームワークを提示しても、フレームワークにおける前後関係を踏まえた上で「考える」ことができない人がいます。
各項目は埋められるのですが、考えられていないので前後関係に整合性がなかったりします。でも本人はバッチリ埋められたと自信を持っています。
【関連記事】【基本編】マーケティング戦略のつくり方【汎用性の高いフレームワークをご紹介】
常識を疑わないことのデメリット
常識を疑うことができないと様々なデメリットがあります。
・間違っていても、気づかず続けてしまうので失敗する
・正しいと思って続けているので失敗から学び、次に活かせない
・常識に縛られて新しいチャレンジができない
・結果、成長できない
このようなデメリットはありますが、一方でゲーム業界は常識を疑わず、ただ仕事をしていても成功できる場合もあります。たまたま担当したゲームタイトルが、たまたまヒットするというケースがありえるからです。
でも常識を疑い、そこにチャレンジすればもっと大きな成功を収められる可能性があります。
常識を疑うことで得られるメリット
常識を疑うことができれば様々なメリットがあります。
・本質に踏み込んだ改善ができる
・多くの人が常識を疑うことができないからアドバンテージになる
・常識に縛られず新しいチャレンジができる
・チーム、個人、組織が成長できる
一番大きなメリットは、常識を疑うことができている人が圧倒的に少ないため、もし自分ができれば他に対して圧倒的なアドバンテージになるという点です。
まとめ
では「常識」を疑うことができる思考をどうやって身につければいいのでしょうか?
下記の記事でチームビルディングの話をしましたが、チーム全体を変えて、何でもいえる信頼関係を築くのもひとつの方法です。
しかし、このチームビルディングをつくる方法は1年くらい時間がかかります。
スマホアプリの運営タイトルは、毎日が勝負ですし1年後までタイトルが生き残っている保証はありません。
時間の猶予がない場合は、やはりある程度の権限を持ったポジションの人から「常識を疑え!」「思考停止してはダメだ!」と言い続けなければなりません。
ゲーム事業の場合、理想はゲームプロデューサーだったりしますが、
「自分がいままで正しいと思ってきたことを否定できるのか」
というと結構タフな話です。
そこでゲーム開発から一歩引いた位置から、何でも言えるマーケターは
「常識を疑え!」「思考停止してはダメだ!」と言い続ける役割としては好都合です。もしこれを読んでいる人がマーケターなら、そんな役割を演じてみると常識にとらわれないゲーム事業をつくることができます。